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フリーナイン
作:スグル



第7話「世界中の誰もが解らなくても」


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ここは、高速道の橋の下。
夜なだけあって、車のマフラー音が響いていた。

そんな場所に、学生服を肩に掛け、太めの腹にさらしを巻いたリーゼントの男と、細めの学生服を着た少年の二人がいた。
二人の手には、木刀が合った。
どうやら、他の不良たちと大きな喧嘩をするようであった。

「本当に来るのか・・」

と細めの少年、池田が言った。
足が震えていた。

「大丈夫だ!!フリーナインの噂が本当なら、あの伝説の「関東圏の悪夢」の異名を持つ元不良が、シビックに乗って現れるはずだ・・」

と、太目の大田が言った。

これは、都市伝説レベルの噂であった。
EKシビックのマフラーと共に、奴は現れる」
という言葉が、この地域にあった。
そして、伝説にもなっていた。

この二人がフリーナインに頼ったのも、事情があってだった。

池田、大田の二人は、某高校の不良コンビであった。
そして、集団で行動を取らないという美学があった。
そのせいで、ホモと誤解されていた。
この二人が他校の生徒と揉め事を起こし、今日の決戦のような形に入った。
だが普段、集団で行動しなかったため味方が少なく、向こうの高校が集団で攻めてくるとのことを聞いて、人数不足の穴埋めにフリーナインに頼ったのだった。
まさに、神にすがる気分であった。

二人は、シビックの爆音かつ、旋律の様に美しくもあるリズムのマフラー音が来るのを待っていた。
もうすぐ他校が来る。
ここで、退いたら、自分たちの面子やプライドが地面に着く。
それだけは出来ない。
だから、必死に二人はシビックを待っていた。

そのとき・・。

チャリンチャリン!

「!!」
「!!」

弱々しい自転車のベルが鳴った。
キコキコと、ペダルの音がした。

「待たせたな・・」

フリーナインこと、九乃助が自転車にまたがって現れた。

サラッ・・

二人の手から、木刀が落ちた。


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「プハー」

九乃助は、いつものように吸い終わったタバコを携帯灰皿に押し付けて火を消した。
ちょうど、一本吸い終わったのだった。
不良の二人が、白い目で九乃助を見つめていた。

「いやだからさ・・。本当に、私がフリーナインの焼野原です・・。シビックはね・・。大破したのよ・・」

と、必死で身柄の証明を高校生にしていた。


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池田と大田は、九乃助と距離を離して隅っこで二人っきりになった。

「本当に、あいつが噂のフリーナインなのか!」

と、池田が弱々しくも大田を問い詰めていた。
呼んだ本人の大田は、困っていた。

「弱そうだぞ!!」
「うるさいな!!」
「なんだと、ゴラァ!!」

大田は逆ギレした。
その態度に、池田は大田の襟首を掴んだ。
ついには、喧嘩に発展した。

その二人っきりで言い争う光景を見て、九乃助は、この二人はホモか?と思いつつ、タバコを吸っていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

いつの間にか、高速道路の橋の下は賑やかになっていた。

「おい、お前ら、3人だけか?」
「マジかよ・・」
「÷10で、ちょうどだぜ・・」

と他校の30人の集団が、高速道路の橋の下に現れた。
しかも、丁寧に木刀、チェーン、バッドなどの武器を持っていた。
それにびびりまくる池田と大田の二人は、すでに傷まみれであった。
何故なら、さっきの言い争いで、二人は30人が来る前にエネルギーを使い切っていた。

「抹茶アイス、うめー」

近くのコンビニで買ってきたアイスを、九乃助は食べていた。
30人も来たのに、動じても居なかった。

「おい、コラ・・」

一人の木刀を持った巨漢の学生が九乃助に近づいてきた。

「てめ、こいつらの使いか?」

と、九乃助の首に木刀をつけた。

「ああ」

気にせずに、アイスを口に入れていた。
その態度が、巨漢の勘に障った。

「アイスじゃなくて、俺を舐めてのか・・」

バゴッ!

九乃助のアイスを持つ手に、木刀で叩いた。

バチャッ・・。

アイスが九乃助の左手から落ちた。
木刀で殴られた手が真っ赤になっていた。

「ひっ!!」

それを見た池田と大田は、ひゃっとした。
血の気が一気に引いていた。
そして、二人して意識が消えそうになった。

「はははっ!!ざまーねー」

一方の30人組は、大笑いしていた。
九乃助の服は、アイスで汚れていた。
ちょうど、ズボンの股間にアイスはかかった。
その姿は、無様にしか見えなく30人の笑いを誘った。

「・・」

九乃助は、下を向いて震えていた。
木刀を持った巨漢は、今度は木刀を大きく振り上げた。
剣道で見る面の体制だった。

「いつまで震えてんだ・・、こら!」

木刀で振り落とされたら、当然、無事では済まされない。
巨漢は、それを解ってて振りかぶった。
そのように、彼らに容赦がなかった。

だが、本当に容赦がなかったのは、九乃助であった。

「貴様・・」

九乃助は、木刀をふりかぶった巨漢を睨みつけて立ち上がった。

「あっ?」

巨漢が、睨み返した瞬間。
九乃助は、左手を動かした。

さっ!!

巨漢の顎に、なにかが当たった。
痛くはなかった。
だが・・。

「あれ・・」

巨漢は不思議な光景が見えた。
景色と地面が傾いた。
まるで、地球の重力がおかしくなったかのごとく。

よく見ると、九乃助の赤くなった左腕が大きく開いていた。
いつの間に・・。
あんなに動いた・・。
あの左手が顎に当たったようだった。

と思った瞬間に、巨漢の意識が消えた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

バタン!!

「なんだ!!」

巨漢が、地面に横に倒れた。
そのことに、不良たちは驚いた。

「てめら・・」

九乃助の巨漢の顎を叩いた左手が、ポケットに入った。
そして、30人にメンチを切った。

「このズボン、いくらしたと思ってんだ・・」

股間が、アイスで汚れていた。
そして、見っとも無かった。

「やっちまえ!!」

集団のリーダー格が、そう言った。
それに合わせて、ドドドド!!と、九乃助に30人が突進して行った。

「ケッ!」

九乃助は、両腕をポケットから出した。
そして、ボクシングのスタイルのように構えた。
30人の顔が迫ってるのに怯えては居なかった。
むしろ、冷静に歩を出していた。

そして、集団が九乃助の数メートルに来た。

「おら!!」

九乃助の拳が前に出て、一人を吹っ飛ばした。
更に、後ろから攻めてきた者を蹴りではじき返した。
そして、木刀で殴りかかってきた者を足で手元を蹴り上げ、持っていた木刀を離せた。

四方八方から敵が来た。
だが攻撃を受けつつも九乃助の猛攻は、早くも16人の意識を吹っ飛ばした。
そして、一人、また一人と意識を吹っ飛ばして行った。
チェーンが手に巻きつかれても、九乃助は相手にもしない。
顔が切られても、相手にもしない。
木刀の打撃が来ても、相手にはしない。
痛みにおびえてはいない。
これが、九乃助の強さだった。

ちなみに、いつの間にか、池田と大田は気絶していた。
だから、この光景は見ていなかった。


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俺、大田 太(17歳)、女性経験なしは、池田と共に死んでしまったのだろうか・・。
役に立たないお兄さんの登場と、30人の集団にびびり上がって気を失ってしまった・・。

ああ・・、なんという恥ずかしさだ・・。
これが、高校で番張ってた俺が、こんな無様にやられるなんて・・。
高校では、ホモ扱いされてたな・・。
いや、それはどうでもいいや・・。

ああ・・、なんて恥ずかしい死に方だ・・。
これが、「恥ずか死」
なんちゃって・・。

はははは!!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

気づけば、もう朝日が昇った頃だった・・。

「はっ!!」

大田が、目を開けた時には信じられない光景が広がっていた。
30人もの不良たちが、地面とキスをしていた。
いや、彼らは「大地愛好家」ではない。
地面に倒れこんでいたのだ、30人全員。

そして、その先には陸橋の足にもたれて、タバコを吸っている九乃助がいた。
信じられなかったが、大田は九乃助が全員を倒した思った。

「嘘だろ・・。自転車の兄ちゃんが・・」

大田は、目を疑った。
だが、九乃助の生傷が30人を倒したことを証明していた。

「はー」

いつものように吸い終わったタバコを携帯灰皿に押し付けて火を消した。
そして、目を覚ました大田の方を向いた。

「やっと、起きたか・・」

そういうと立ち上がった。
大きく背伸びをした。

「じゃあ、帰るぜ・・。依頼料は、銀行に振り込めよ」

そう言って、大田に背中を向けて去って行った。
朝日と、九乃助の背中が重なった。
そのせいか、九乃助が輝いて見えた。

「なんて・・」

大田は、思わず声を上げた。

「いい男・・」
「・・」

彼はホモなのか、誰にもわからなかった。
ただ、九乃助の背中には悪寒が走った。
あと、ズボンには、まだ股間に変な染みがついていた。

「お母さん、これおからだよ・・」

訳のわからない寝言を、池田は言った。


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