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フリーナイン
作:スグル



第28話「ボーイズ・ブラボー(前編)」


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武田剛志(25)独身。好きな焼肉のメニューは、タン塩。
彼は高校教師。
授業も終わり、昼休み中、高校のトイレの便座に座り用を足していた。

「ふー」
スッキリした武田は、水を流した。
そして、ドアに手をかけた。
「あれ・・」
なんと、ドアが押しても、引いても開かない。
鍵部分が壊れているようだ。
何度も、工夫したがドアは開かない。
他には誰も居ないようである。
これでは、外側から開けて貰うことも出来ない。
しかも、下手したら外に出られなくなるかもしれない・・。
そういう不安が、武田によぎった。

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ジリリリリリ・・・

と、いきなり九乃助の部屋の電話が鳴った。
九乃助は受話器を握った。
「もしもし・・」
「おおー、九乃・・」
受話器からは、トイレから電話をかけている武田の声がした。

ガシャン!

その声を聞いた瞬間。
有無を言わず、九乃助は受話器を置いた。

ジリリリリリ・・・

と、また九乃助の部屋の電話が鳴った。
嫌な顔をして、九乃助は受話器を握った。
「もしもし・・」
「なんで切るんだよ!!」
受話器の声はもちろん、トイレから電話をかけている武田。
「お前の声聞くと、食事中のトイレ洗浄剤のCM見てる気分になるの・・」
「なんじゃ、その例え!!」
と訳のわからない例えを、ドス黒い声で九乃助は言った。
九乃助が、機嫌悪いのは以下のことがあったからである・・。

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数週間前・・

『「みんなのサラ金」

貸し
500万円

武田剛志  

保証人 

焼野原九乃助』

消費者金融から、このような紙が来た。
それを受け取った九乃助は、固まった。
なった覚えの無い保証人になっている。
この500万は、九乃助を担保にした借金であった。
こうして、九乃助は500万の呪縛を抱えた。

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「あれから、収入が全部、消費者金融に・・」
と、九乃助は怨念を込めて言った。
それに対して、武田は・・。
「元は、貴様が俺をだしにして500万取ろうとしたからだろうが!!」
逆ギレした。
正論では、あるが。
「くっ・・」
そのため、九乃助は怯んだ。
実際に、そうだったんで文句は言えなかった。
「解ったよ・・、助けてやるよ・・」
九乃助は、折れることにした。
「さすがー、九ちゃんー」
と、武田は喜んでいる。

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それから、数分後・・。
高校の駐車場に、CR−Xが駐車した。
九乃助が現れたのである。
そして、例の武田が閉じ込められているトイレに居た。

「本当に開かないな・・」
いろいろ、外側から試してみたが開かない。
いっそ壊そうと思ったが、弁償されるとマズイのでやめた。
しかも、授業の時間は迫って来ている。
武田は焦った。
「早くしろ!!俺の授業があるんだよ!!」
「うるせぇな!!待ってろ!!」
と外側から、九乃助は思いっきりドアノブを握った。

ボキッ!

「あっ・・」
ドアノブが外れた。
思いっきり握ったせいで・・。
二人の血の気が引いた。
「・・」
「・・」
「・・」
「・・」
二人は沈黙した。
「接着剤・・、持ってる?」
と、九乃助は聞いた。
「持ってねぇよ!!!」
武田は、叫んだ。
ここから、出れる可能性が低くなった・・。
「さらば!!」
「待て、コラァ!!!」
九乃助は、この場から去って行った。

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このことにより、武田はトイレの中で念仏を唱えるように独り言を言っていた。
それは、そろそろ始業の時間になる苛立ちからである。
「畜生・・、九乃助め・・」
この苛立ちを、なにかで癒そうと武田は考えた。
すると、なにか閃いた。
そして、再び、携帯を握った。

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「だからって、私に電話かけないで下さい・・」
と、武田の携帯から、レビンの声がした。
トイレから、レビンの携帯に電話をしたのである。
「いいじゃないー。それにしても、九乃助の野郎は最悪だよねー」
と、武田は笑って言う。
「確かに、九乃助さんもヒドイですけど・・」
話題がトイレなのが嫌なので、レビンは話題を変えようと考えを巡らせた。
「大体、なんで、お二人は友人なんですか・・」
と、何気なくレビンは言った。

「・・!」

その言葉を聞いて、武田は口ごもった。
「えっ・・」
電話とはいえ、急に武田が沈黙したのに気づいた。
まずい質問をしてしまったかと、焦った。
「それは・・」
数秒の沈黙を止め、武田は口を開いた。
高校時代のことを思い出していた。
そして、レビンに高校時代のことを語り始める。

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その武田の記憶を遡る事に、数年前。
時代は、ノストラダムスの大予言やら、なんやらで無駄な大騒ぎのあった世相である。
だが、実際は、みな平然と夏を過ごしていた。

とあるローカル線。
その線の電車の中で、もたれるように椅子に座る少年がいた。
彼は喧嘩での傷が目立つ、見るからに解る不良少年。
さっきも喧嘩してきたような生傷と、青痣があった。
その少年こそ、高校1年生時代の焼野原九乃助自身。
どこか、苛立ちのある目つき。
他人を近づけない生傷の数々。
見る人を怯えさせていた。
「けっ・・」
どこか不機嫌な感じであった。
別に、腹の立つ出来事にあったわけでもない。
それでも、彼は意味もなく苛立っている。
たぶん、彼は寂しかったのだろう。

ガタン・・

各駅停車のため、電車は九乃助の家がある駅の3つ前の駅に止まった。
九乃助の目の前の電車のドアが開くと、学ランの男が電車に入った。
その学ランは、九乃助とは別の高校である。
その男は、筋肉質でガタイがいい。
「・・」
九乃助は、その男に目を向けた。
同じ不良の匂いを感じたのだ。
男は、九乃助の隣の席に座った。

この男こそ、高校3年生であり、自分の高校の番長であった不良界を牛耳っていた若き日の武田剛志である・・。
こうして、二人は出会った。












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