フリーナイン(21/37)縦書き表示RDF


フリーナイン
作:スグル



第20話「人は一人では生きてゆけない(前編)」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アパートに、キエラという苗字の部屋が出来ていた。
彼女は、九乃助らのいるアパートに引っ越した。
「信代会」のメンバーから、所在を隠すためである。

「ワンワン!!」

午後の昼下がりに、キエラは子犬の散歩をしていた。
その光景が、九乃助の部屋の窓から見えた。
純太は、彼女が九乃助のいとこだと信じられなかった。
もちろん、それは嘘であるが・・。

「本当に、いとこなんすか?」

と扇風機の前にいる、タンクトップのジーンズでダレる九乃助に聞いた。

「そうだよ・・」
「嘘だ!!あんたみたいな遺伝子を、彼女からは感じられない!!」

それは、そうである。

「それより、依頼は?」
「ああ・・、そうでした」

純太は、依頼のメモを渡した。
九乃助は、尻をかきつつメモを受け取った。

「・・『午後6時のカラオケ大会にて、審査員をお願いしたい。 by 居酒屋の店主』・・」

と読みながら、横になりながら缶コーヒーをすすった。
当然、ちょっとこぼれた。
この場所は、ちょうど、今は縁日中であった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

このカラオケ大会とは・・。
市内が縁日で行うメインイベントのひとつ。
このカラオケ大会は、市内が総力を上げて特選のカラオケスタジオを用意し、そこで、プロアマ関係なく自由参加で歌を歌ってもらうという企画。
大会と称してるだけあって、審査員の評価によって優勝者が決まる。
そして、その優勝者は、この一年間S県でもっとも歌の上手い者として讃えられるのだ。
例年によると、出場者のレベルが上がっており、しかも、芸能界からのスカウトもあるなど、この大会での優勝はステイタスとなっていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして、午後の6時。
市内は、縁日だけあって人が大賑わいしていた。
道路は歩行者天国となっており、出店などが多く並んでいた。
だが、中でも市内が総力を上げたカラオケスタジオには、出場者、観客で溢れ返っていた。

その審査員席に、九乃助と行きつけの居酒屋の店主と、ほか数名の審査員が居た。
ちなみに、主催者は、行きつけの居酒屋の店主であった。
その店主から、九乃助は審査員役を頼まれたのであった。

「悪いね、九ちゃん」

と、マスターが隣の席の九乃助に話しかけた。

「いや、別に気にせんでいいよ・・。しかし、俺の審査は厳しいぜ・・」

と、九乃助は微笑を浮かべた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「いやー、二人とも、よく似合うよ!」
「本当!?」
「・・」

とTシャツ、半ズボンでシルバーを身につけた純太が、キエラとレビンの着物姿を褒めていた。
レンタルで借りてきたのであった。
この3人も、縁日の道路を歩いていた。
ちなみに、キエラの子犬はお留守番。

「でも、キエラちゃん、スタイルいいねー」
「そっ、そうかな・・」

と、レビンはキエラに言った。
それには、ちょっとキエラは恥ずかしそうだった。

「いや、レビンちゃんもスタイルいいよ」

と、純太が話しに入ってきた。

「もー、純太君ったらー」
「そりゃ、キエラちゃんは体のラインが綺麗で、ウェストもいいし、でも、レビンちゃんはラインはともかく、その分、胸や尻で補って・・」

バゴッ!!

余計なことを言った純太の顔に、レビンの鉄拳がめり込んだ。
純太は地面に倒れた。

「さぁ、カラオケ会場に行きましょう・・」
「うっ・・、うん・・」
「あたしも、出場するんだから・・」

レビンは、キエラの手を引いて会場に向かった。
どうやら、彼女らも出場するのであった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして、カラオケ大会はスタートした。
まさに、スタジオの観客席の興奮は、早くも最高潮であった。
今、スタジオには、今回の大会の司会を務めている男が立っていた。

「ようこそ!!みなさん!!市内総出を上げての夏の祭典が始まりましたー!!」

彼のMCに合わせて、観客は盛り上がっていた。

「司会は、この私!借金が返せないのに、こんな場所に居る阿部健七でお送りいたします!!」

と司会は、観客を盛り上げた。
そして、彼は審査員席に手を指した。

「彼らが審査員だ!!彼の耳を唸らせるのは、果たして誰だ!!」

と、審査員席の九乃助らにスポットが当たった。
そして、審査員が手を振ると、観客も盛り上がっていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

こうして、参加者のカラオケがスタートした。

と、スタジオに純太が出現した。
審査員席の九乃助は渋い顔をした。

「なんで、出てんだよ・・」

そう愚痴っていた。
スタジオでは、司会者が純太にマイクを向けた。

「自信のほどは・・」
「今日の俺は・・」

純太は、渋く声を出した。

「では、歌ってもらいましょう!!」
「おい!!!」

喋りの途中で、司会はマイクを自分の向きに戻した。
カラオケのイントロが流れた。
そして、純太は歌い始めた。
別に面白くないので、歌ってる状況はカットさせてもらう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

純太は歌い切って、息を切らしていた。
でも、何故か、歌った気がしなかった。
司会者は、マイクを握った。

「審査員の評価は果たして!!」

と、審査員は歌の採点を手持ちの札に書かれた数字で評価する。
審査員は5人で、一人の持ち点が20点で合計100点が最高点であった。
そうして、純太の歌に採点が下さった。

審査員1
5点
感想:暗黒の世界へ戻れ。

審査員2
1点
感想:ここから、いなくなれ。

審査員3
1点
感想:遊びでやってんじゃないんだよ。

店主
5点
感想:音程が酷い。

九乃助
0点
感想:ジゴクニ、オチロ。

合計:12点


その評価を見て、純太はキレた。

「なんだ!!てめーら!!!この扱いはなんだ!!!なんで、一人だけ、片言だ!!」

だが、彼は警備員につまみ出されていた。
それでも、納得できない彼は叫び続けていた。
どうやら、とても審査の目が厳しいと見られた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その状況を、観客席から見つめる男が居た。
その男は、篤元豪であった。

「甘いな・・、純太・・」

そう言って、微笑んでいた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう