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拝啓、乙女ゲームのヒロイン様へ

拝啓、乙女ゲーのヒロイン様へ   ~のし付けて全てお返ししますわ~

作者:TAKAHA
なんか乙女ゲー転生がはやっているみたいなので、その波に乗っかってみました。
結構さらっと書いたので、分かりにくいかと・・・はい、ごめんなさい。

沢山の方から注意やご意見いただきまして、5/9に多少修正いたしました。未だに読み辛いかと思いますが、あまり修正すると大幅に話が変わりそうなのでこれ以上は手を加えないことにします。

最後に1つ。だいぶキャラの口調が悪いのでご注意ください。

違う、こんなの現実なんて認めない。







いの一番に思ったことだ。








私の名前は荻原おぎわら あかり
好きなものは育成系のシミュレーションゲーム――自分でデザインするカフェやモンスターに酪農などなど――に、本は活字中毒ではないが推理からファンタジーに恋愛なんでもこいの本好き。人付き合いがそれほど得意ではなく、灯だなんてとっても名前負けなインドア派の短大に通うごく普通の学生だった。





そう、“だった”のだ。自分でも認めたくはないけれど過去形です。








転生・・なんでしょうねぇ。








何故かずっとデジャブ的な感じはずっとしていたためか、5歳の時にはこの世界の事をどこかすんなりと受け入れている私がいた。が、どうしても納得いかない事がある。

ゲームの始まりは高校の入学式に、主人公の天真爛漫系小動物美少女で柿本かきもと 美咲みさきが入学するところから始まる。
舞台の高校はありがちな金持ち学校で、多種多様などこぞの社長やら華族やらの名のある家の子息子女が通っている。もちろん、主人公の柿本美咲は一般市民。勉強は下から数えた方が早く、運動はいまいちの庶民中の庶民。唯一の特技は料理と歌唱力で、なんでそんな子が入学できるんだ?
と言う疑問はゲームなため、そう突っ込んではいけないが・・・母子家庭で育ったがその母が不慮の事故で亡くなってしまい、彼女を不憫に思った中学の担任の先生が全寮制の私立伏見高等学校へ歌唱力の高さから推薦したという設定。


因みにそんな主人公有するこのゲームのストーリーは人気のあるネット小説作家3人の合作であり、某有名イラストレーターが絵を手掛け、モブに至るまで声優陣が選び抜かれている。そして、反響がでか過ぎた為に追加ソフトと言う形で第3弾まで出ていた。


ぶっちゃけ言えば私は乙ゲーには一切の興味はなかった。
無駄に花を背負ったキラキラな男どもが臭い台詞吐くだけで鳥肌が立つし、何より優しいのはいい事だがあっち行ったりこっち行ったりと・・逆ハーと言う主人公のビッチな感じが私に合わない。




――――心の底から、イラッとくる。




何故そんな乙ゲーファンに刺されそうな事をズバッと吐く私がこんな説明を言えるほど知っているのかと言うのは、作家の先生の内1人が大好きで、イラストレーターさんも1番好きな人で、何より声優陣に魅かれて――葛藤に葛藤を重ねた末に――ゲームをプレイしていた。


攻略本を片手に――トータル2回は絶対行かないといけないから仕方なくやったけど――逆ハーに行かない様に、必死で。


1弾は通常のほのぼのラブな学園もので期間は入学から先輩の卒業式までの2年間をライバルと攻略キャラを奪い合ったり、くっさいセリフを吐くあり得ないほどキラッキラした男どもとの恋愛使様だ。
追加ソフトの2弾は1弾のキャラをすべてクリアしてからじゃないと遊べなく、ストーリーはほぼ同じだが新たなイベントやキャラが追加されている。第3弾は・・所謂大人向けで、監禁惨殺等のヤンデレ要素等が盛り込まれていた。




正直第2弾でやめときゃよかったと思ったものだ。




さて、そんな私の現在の立ち位置は斎賀さいが みいるという先祖は皇族ゆかりの華族の血を引く由緒ある家の長女であり、同じく華族の血筋でメイン攻略対象の天清寺てんしょうじ 鷹彰たかあきの婚約者でもあり、メインに近い攻略対象者の斎賀さいが かいの仲の悪い妹でもあった。

勘の良い方はお気づきだろう。そう、ゲーム中の私は自分の事を“わたくし”といい“~ですわ!”との語尾をつけ、極めつけに“貧乏人が気安くわたくしに話しかけるとは何事ですの?!恥を知りなさい”を口癖のように言う主人公のライバルポジションのプライドの高いお嬢様設定な痛い子だ。
第1弾~第2弾では家族から絶縁されるや学校を退学させられるし、第3弾では合計8人のEND中5ルートで必ず殺される役だ。因みにいえばみいるがベタ惚れな婚約者も仲の悪い兄も躊躇わずにわたしを殺すと言う徹底ぶり。
2人とももちろん攻略対象者なだけあって見目はいいし声もいいが、そんなん受け入れられると思うだろうか。



いや――――ふざけんじゃねぇよ。こちとら殺されてたまるか!!



てなわけで、ストーリー自体は変えられないと思うが多少動かすことは出来るだろう!と気持ちを切り替えて少しずつ少しずつ抗って成長し現在15歳。あと1年ほどしたらスタートするあのゲーム・・・何故私は転生したか良く覚えてないが、私が死んだ後に第4弾とか出て居なければいいと思う。


とにかく頑張った。


勉強はあまり好きではなかったが、やっぱり脳の出来が違うみたいで学校での成績は上の中辺りをずっとキープしており、言葉遣いもお嬢様言葉などではなく丁寧語を心掛けていた。そして何より、ゲームの中でお互いゴミかのような扱いをしあっていた兄妹の幼少期は仲良かったらしくそのまま嫌われない様に心がけた。しかも、兄の声優は私が一番好きな声優・・・178cmの身長に弓道部に入って鍛えられたあの背筋。見目も好みの部類に入るので、できれば仲良くなりたい。



ただし、第3弾では監禁束縛系のヤンデレ化していたので多少注意が必要かもしれない、というのはある。



一応攻略対象者をざっと説明しておこう。ここでの学年等は入学時と思っておいてほしい。


まずは、私の兄で金茶色の少し長めの髪と紫色の瞳を持つ斎賀さいが かい(高2)。兄はメインではないが人気のある人で、生徒会書記をしている物腰の柔らかい腹黒王子様系。


婚約者でメイン攻略対象者の青い髪と灰色の瞳の天清寺てんしょうじ 鷹彰たかあき(高1)。日本のトップクラスの資産家で、皇族に最も近い一族。ツンデレの俺様系。


伏見高校理事の息子で風紀委員の伏見ふしみ 昂柳こうりゅう(高2)。唯一の眼鏡キャラで、クール~心配性の世話焼きお兄さん。


この辺りは私のかかわりもある人たちだ。


その他は・・・1年生の同学年に、童顔小動物系の椎名しいな 明斗みんとと爽やか運動テニス部の里笹さとざさ 将彦まさひこ

そして、後々出てくるシークレットとして留学生の正真正銘王子様エドワルド・カナリス・ルースディルア。クールビューティー生徒会長三宮さんのみや 晴久はるひさ。理事の甥っ子で大人の魅力漂う担任里見さとみ 大稀だいきがいる。

因みに、一番難易度の高いシークレットキャラは王子様だ。



ゲームの初期設定としてはもちろん全員が有名どころのお金持ちで、迷惑限りないが魅とも幼いころから関わりがある。



***




私の住む斎賀家は世界でも有数な資産家の家だ。まぁ、天清寺家こんやくしゃには劣るけど・・。

「う~~~・・・はぁ、朝かぁ・・」

父は家を継いで忙しく世界を飛び回っているし、元モデルと言う経歴を持つ母も父と共に世界を飛び回っては自身のジュエリーブランドを盛り上げている。因みに政略結婚に見えてあれで恋愛結婚しているからすごいと思う。
そんな両親を持つ私の容姿も、自惚れじゃないが良いと思う。ゲームの中という事で生粋の日本人であっても髪色や瞳の色が生前の世界ではありえないが、私も兄も父譲りの金茶色の髪と母譲りの紫の瞳をしている。因みにいえば私は無表情がデフォルトなクールビューティーな父似で、1つ年上の兄はほんわか綺麗系な母似だ。

「登校日なんかいらんだろう・・・特に何も行事など無いくせに」


毎朝の事だが今日も今日とて夏の長期休みの中間日、ぶっちゃけ学校に行くのがとても嫌だが仕方ない。


私の両親は放任主義だが人一倍子煩悩な両親に涙ながらに説得されたので、嫌々ながらもゲームの舞台の伏見高校に行くことになった。
制服は――汚れの目立つ――白が基調とされているブレザーにセーラー(女用)or学ラン(男用)を足して2で割ったようなかっこいい系なのは気に入っている。
そんな制服を着た金茶色の髪の、少しきつ目な顔立ちのどっから見ても悪役な少女・・つまり私が鏡の中こちらを見ている。
腰ほどまでに延ばされた髪はコテで巻かれてモリモリに結われ、その顔にはばっちりメイクをされて目はまるで猛禽類・・などと言うゲームの容姿などにするわけがなく、前髪は長めに伸ばし腰ほどにまで伸ばした髪は高い位置で一纏めにしている。本当はボーイッシュと呼ばれるくらいまで切りたかったのだが、数人から3時間も説教されたのであきらめた。


しばらくじっと鏡を見ていたが、ちらりと見た時計の刺す時間に一つ大きく深呼吸をして覚悟を決めてから部屋を出た。


今日は特に嫌だが、仕方ない。


「おはようございます、兄様。待たせちゃってごめんなさい」

重い足取りで階段を下りて純和風のリビングに行くと、すでにお手伝いさんの手によって整えられた朝食のテーブルにすでに兄が座って新聞を読んでいた。
兄はみいるととても仲が悪い設定だ。と言うよりは妹の事を毛嫌いしている。それは高飛車で傲慢と言う性格のまさにお嬢様が嫌いだから他ならない。


しかし、私が口元をゆるめて兄に近寄ると兄はぱっと新聞から顔をあげてふわっと微笑んで返した。


「あぁ、おはよう。全然待ってなんかないよ、僕のみぃ。さぁ、ご飯を食べよう」

微笑む様はまるで王子様。1つ年上のお兄様は3年生で1年生のころから生徒会に在籍しており、そして3年生の今は副会長を任せられるほど。
兄の向かいに座って話しかければ、これでもかと言うほど兄は甘い顔をして話し出す。いい加減何かにつけて私の事を“僕の”を付けて呼ばないでいただきたい。

「遅くなってごめんなさい。髪の毛が上手く纏まらなくって・・・もう、切っちゃいたい」
「切るだなんて駄目!絶対駄目!僕のみぃに一番似合うのはその綺麗なストレートの長い髪だよ。苦手だったら僕がやってあげるって言ってるのに」
「・・・忙しい兄様にそんなこと頼めないよ」
「僕のかわいいかわいいみぃの為ならなんだってやってあげるよ。僕のみぃはお姫様だからね」




さて、お気づきか?




お互い嫌い合っている設定の兄妹だったが、頑張ったかいがあって今ではシスコンブラコン兄妹と呼ばれるほどだ。いや、シスコンになるとは思いもよらなかったが・・。
因みに兄は『ごめんね・・僕、みぃ以外の女の子を特に守りたいって思わないんだ』が告白を断る時の常套句だ。私?勿論私は『お兄様以外目に入らない』と兄に合わせて言っておりますが、何か問題でも?


朝食を食べた後は家のお抱え運転手に学校まで兄と共に仲良く送ってもらった。


「みぃ、今日は何かあるかい?」
「えっと、今日は午前だけだし特に何も・・帰ってきてからパウンドケーキを作る予定」
「勿論、僕にくれるよね?」
「うん、兄様が食べてくれるなら」
「食べるに決まっているだろう。みぃの作る物は世界一美味しいんだから。楽しみにしているからね」

車の中で兄は始終ニコニコとしていて、何故か私の手を握っている。まぁ、私としてはここから死亡ENDにさえならなければそれだけで満足なので構わない。

「兄様の為に、頑張って作るね」
「うん、ありがとう。おっと、学校に着いたみたいだね」

学校の正門まで付き、先に兄が降りて私は兄にエスコートされて車から降りて・・・そっとため息をつく。そう、ここまではいい。



問題はここからだ。




ゲーム内で私は悪役だ。多種多様ある派閥の学年リーダー的存在で、庶民を目の敵にしており・・自分の婚約者と仲良くする主人公を徹底的に排除しようとする悪役。
話の流れ的にも分かってくれるとは思うが、誰がそんな自分の首を絞めるようなことがわかっていてやるものか!!ちなみに言えば幼少時代から婚約者とも必要最低限接触は図りたくなく、互いの家での約束のみと言う形で成立しているようなもの。
それに婚約者の天清寺だって私に会うたびに悪態しかついてこないのだ、勿論売られた喧嘩は100倍にして買ってやったさ。



はっきり言って、私はあの婚約者が本気で大嫌いだ。



『オレ様はお前の事なんてこんやくしゃだなんて認めねぇからな!』
『ありがとうございます、とっても嬉しいのでさっさとこの婚約を破棄できるように他に好きな人を作ってくださいね。だって、わたくしから断るなんてできないんですもの』


『お前なんかオレ様のタイプでも何でもないんだ。こんやくしゃ者だからって調子に乗んなよ!』
『もちろんです、たかあき様・・いえ、てんしょうじ様。私の、りそーの男性はお兄様なのでご安心ください。ですので、私の視界に入ってこないでください。ふゆかいです』



会うたび会うたびつっかかってくるから敢えて毎回とてもいい笑顔で受け答えしてやったさ。そして、唖然としている間に兄の元に行ってずっと張り付いていた。
というより、一度くっついたら兄が離してくれなかったと言うのが正解。



確かに見目は攻略対象者だから頗るよろしいが、第一印象から最悪だった上にゲーム内容知っていれば深入りしたいと思わないじゃない、普通。

「きゃ~!カイさまぁ~、おはようございますぅ~」
「・・おはよう」



耳障りな甲高い声と共に、おいでなさった。




校門を兄と一緒に潜ったところでどこから現れたかは知らないが、私を突き飛ばして兄まっしぐらに抱きついて行った。突き飛ばされて私がよろめいたのを見たのか、人当たりの良いあの兄の声が若干低かったような気もするが・・ま、知らん。


薄いピンクのふわふわした髪に水色の瞳の150cmもなさそうな小動物の様に愛らしい少女。そう、主人公の柿本だ。その後ろには、攻略キャラ――多分攻略済み――だろう男が4人控えている。合計8人なので、5人目として狙っているのが私の兄なのだろう。4人の中には私の婚約者も含まれており、何故か睨みつけられている。
残りの3人は・・・柿本、あぁ名前を言うのですら嫌になる。あの女について私にねちねちと嫌味を言い続けてきやがった奴ら、椎名と里笹・・・何故か、大学生のはずの三宮がいる。いくら隣だからって、朝っぱらから気持ち悪っ!!
しかも、良く見れば昇降口のあたりにはあの女の担任の里見の姿まである。あぁ、嫌だなぁ・・あのど変態ロリコン

「・・・おはようございます。天清寺様に皆様」
「・・・・・・ふん」
「「・・・・」」

兄があの女と揉めているのを尻目にさっさと教室に行こうとしたが、それをやると兄にねちねちと『僕を置いて一人で行くってどういうこと?』などと嫌味を言われるので仕方がないからその場にいやいや留まっている。
背後霊の様な男どもは眼も合ってしまった為に一応挨拶をしたのだが、婚約者殿は鼻を鳴らして顔をそらし、他3名も無視。




――――腹立つわぁ・・!!




「カイさま!今日、家庭部があるんですぅ~、みさきのつくったものぉ~・・食べてくださいねぇ。あぁ、もちろんみんなもたべるよねぇ」
「あぁ」
「もっちろん!たのしみだなぁ」
「美咲の料理が一番うまいからな」
「楽しみだ」

兄はともかく4人はだらしなく鼻の下を伸ばしている姿がとても気持ち悪い。
まだ予想でしかはないが、多分あの女も私と同じ転生者のはずだ。さもなければ私が一度も邪魔などしていない筈なのに、起こる筈のないイベントが起きて進んでいくのがその証拠じゃないか。

「うふふ、たのしみにぃしてくださぁい」

語尾を伸ばすぶりっ子特有の間延びした喋り方に若干気分が悪くなるが、あの女はそれを本気でかわいいと思っているのだろうか・・?
私達が高校生になってもうすでに1年半経過の、現在は2年生の夏休み中の登校日・・・大体のゲーム終了まで残り半年。本当だったらここで魅が親衛隊を引き連れてあの女を罵って傷つける日だ。


夏休み明けにはどのルートだろうと全校生徒の目の前で、私はそれまでの罪を暴露され――今の私にはそんな罪など一切ないが――まるでごみの様に婚約者に捨てられるというモノだったはず・・・・あ?好きでもないやつになぜ捨てられなきゃならないんだよ。

「――――――・・・の・・・」
「・・・何か?」

そう、考えに耽っていた私に話しかけてきた声がありふと顔をあげると・・・見たくもないあの女が、嫌そうに顔を顰めた兄に巻きついて何か言っていた。

「聞いてなかったんですのぉ?」
「えぇ、何か?」


小馬鹿にしたような顔を向ける女の顔は、如何やら私にしか見えて居なさそうだが・・登校時間の校門近くという事で大分注目を浴びている。





しかし、私もそろそろ限界だ。






何って、我慢の限界だよ。





私が実際全く聞いていなかったから正直に口にした言葉を小馬鹿にされたとでも思ったのだろうか、形の良い眉をひそめてその瞳には苛立ちが見て取れる。
何故お前がそんな顔を?逆に私が切れそうだ。

「たかあきさまはぁ、貴女のことぉ何とも思ってないんですってぇ~。早くぅ、みをひきなさいよぉ」
「・・・」

うん。それを私に言って何を期待しているのですか?でしたらあえて、この場で暴露してやりましょうとも。
てか、さっさとその汚い手を私の兄から放せや。兄の嫌そうに歪んだ顔がお前には見えないのか?
お前がその気ならいいだろう、私をなめるなよ。ゲームの中の斎賀魅さいがみいるは権力を揮いまくる姑息な悪役だったが、かくいう私も使えるものは何でも使って色々と幼いころから手回しは抜かりない。私の見た目は180度ゲームの中と違って――女らしさは多少残して――ボーイッシュよりでかっこいいとよく言われている。周りの同級生や後輩――時折先輩――からお姉様orナイトと呼ばれている。


覚悟しろ海綿体のくず女、お前がのさばっているゲームの中の斎賀魅はこの現実の中にはもういないんだよ。


暫くに沈黙ののち、私は指を鳴らしてからあの女にゆっくりと数歩近寄ってから口を開いた。


「えぇ、勿論存じておりますわ」

いつも無表情気味の私が微笑、さばさばした喋り方の私がお嬢様言葉を使う時は――ぶち切れた時。様子を窺いつつ周りにいた――自分でいうのもなんだが――私の崇拝きょうりょく者たちが私の後ろに男女問わず集まった。
睨みつけるとか悔しそうな顔をすると思っていたのだろうあの女は、オリンピック並と言われる私の笑みに呆気にとられたような顔をしている。
柿本の後ろには4人の他に里見先生ロリコンまで来ていて、私の為に集まってきている生徒達と私を見比べて驚いたような狼狽えた様な顔をしている。

「天清寺様とはわたくし達が生まれる前に“勝手に”互いの家が決めた婚約者と言う関係だけ。私は天清寺様をお慕いした事など今の今まで、そしてこれからも“一切ない”ときっぱり言えますわ。しかも、婚約という“家の為に仕方ない立場”に居ながらその責任の無さは嫌悪の対象ですの」
「!!」

あえてゆっくりと、みんなに聞こえるように、大きな声で、言い聞かせるように言い切った私に、私の後ろに控える子達が囃し立てる。

「政略結婚など皆さんも当たり前でしょう?庶民との違いは嫌でも家の決定に従うしかないのですもの・・・何を驚くのです?」

「ねぇ、みなさん」と私が後ろを振り向けば、各々カメラやディスク、それに紙の束を持ったみんなが1歩前へ出てとても冷めた目をあの女どもに向けた。

「えぇ、勿論です。斎賀様の言うとおりですわ」
「私にも家に決められた許嫁が居りますもの」
「僕もです。魅様」
「庶民出身と蔑んでしまったわたくし達を戒めて、貴女の事を庇って下さった恩を忘れてなんて浅ましい女なんでしょう」

勿論その手にはこれまで、私のせいと言いふらしやがったあの女の悪事の数々が収められている。写真等が今まさに配られているが、本人たちは気が付いていなさそうだ。
兄は嫌悪も露わに女を引きはがして小走りで私の所に来ると、天清寺以下3名の方へも険しい視線を向けている。
ざわざわとそんな批判をしていた皆も、兄がこちらに来ると一度話を止めて口をつぐんだ。

「それはそうと、里見先生はこちらで何をしておいでなのですか?」
「何?どういう意味だ」
「いいえ、先ほどこちらの高崎様からお聞きしたのですが・・・」

私に話しかけられたことでとても嫌そうな顔を浮かべたロリコン教師に、私の後ろに控えていた大学3年生の高崎たかさき 由香利ゆかり様という“里見先生”攻略のためのライバルキャラである彼女が1歩前へ出た。

「柿本さんがご自身で大勢の方に言いふらされておられたそうで、私の耳にも当然入ってきましたわ!大稀さんは柿本さんとお付き合いをされているとか・・現在理事会が開かれているそうですわ。侮辱もいいところですわ」
「!!?」

彼女の言葉に顔色をなくすロリコン教師に私は思わず不敵な笑みが浮かぶ。おっと、やばいやばい!
勿論、まだこれでは終わらせない。


「まぁ、里見先生が?私は三宮様が柿本様とお付き合いをされているからと婚約破棄されましたの。ですので今日、弟君の冬弥とうや様が次期当主となるので婚約者変更を申し渡されましたわ」


「そうなのか?将彦と付き合ってると俺は聞いたから父にそういってしまったぞ?日本舞踊界わがやに何も知らない庶民が入ることは認められないからと、今朝方愛に生きたいのならば縁を切ると手続していた」


「うっ・・うぅ・・ざ、残念ですわ。明斗様・・先日のうちとの婚約破棄で明斗様の家への援助は打ち切りました。次からは柿本様にお頼みくださいませ」


由香利お姉様・・おっと、私は高崎様の事をお姉様と慕っているのですよ。見目は縦ロールにしている髪で怖そうなのだが、とっても心優しい純粋な人なのだ。で、由香利お姉様に続いたのは同じクラスのお友達のまるで日本人形の様な荒木あらき 玲那れいな言わずもがなライバルの立場の子。
里笹の兄の里笹 梁雅りょうがも嫌悪も露わに弟を始め柿本たちに視線を向けている。そして、大泣きしながら最後に話し出したのは言わずもがな椎名の婚約者のフランス人形の様な倉木くらき アリア様。因みに中学2年生。

そう言えば椎名の家は誰のせいとは言わないが、最近とてつもない負債を抱え込んで倒産寸前だったらしい。



――――ま、私には一切関係のない事だけど。



取りあえず顔色をなくして固まっている彼らの事を哀れだなんて思ってやらない。それ相応の事をしたと言う自覚を持ってほしいね、本当に。

「柿本様が私に何を求めているのかは存じませんが、天清寺様との婚約など家の為イヤイヤ受けていただけの事ですので・・・それに私は常々言っておりましたよね?さっさとあなたの愛する人を見つけて婚約破棄をして欲しい、と」
「!!」

最後に私が天清寺に向かって言い切ると、何故か目を見開いて驚きの顔を表している天清寺・・・なんだ?


そこでいったん区切って兄に顔を向けると、眩しい笑顔で微笑んでくれた。
なので私は大好きな兄に腕をからめて彼女らに高らかに宣言してやった。

「喜んでください柿本様。天清寺鷹彰様など、のしつけて差し上げますわ。だって、私たちは“お互いに”好きあっておりませんし、私の兄様が私の婚約者として認めておりませんもの」
「な、ちょっ・・」
「なんですの、天清寺様?貴方はご自分で柿本様を選ばれたのでしょう?あぁ、お互いの家のことなど気にしなくてもよろしいのですよ?」

ねぇ?と後ろに視線を向けると、私の事を慕ってくれていて兄に信頼されている天清寺の従弟の姿。
彼の名前は天寺あまでら ひびきと言い、天清寺と同等の能力を持つ同い年の天清寺家の後継者候補。ゲーム内では彼は魅の協力者で、最後はともに殺される役だった。

「勿論だよ、魅。たった今おじ上から連絡が来たし。鷹彰の縁を切って俺の事を天清寺家の次期当主とするってさ」
「まぁ、それは素敵ですわ。望みがかなってよかったですね、天清寺様。だってあなたは家ではなく愛を取ったのですもの!心から祝福いたしますわ!」

私の言葉にワーッと盛り上がるまわりは、決して彼らに喋らせはしない。




全ての上層部を巻き込んでやったさ。柿本さん、貴女は見た目だけで最早何も持たなくなった彼らの中からしか将来の相手を選べないんだよ?そして、貴様らも自分の愚かさを悔やむがいい!




唖然とする彼ら6人をその場に置き去り、私達は全員校舎へと入った。その時兄がそっと肩を抱き寄せて私の耳元に顔を寄せた。

「あの女以外の彼らは今後の態度で処遇が決まるけど、あの女の事は社会的に抹殺してあげるよ。かわいいかわいい僕のみぃを殺させやしない」
「え・・兄様。まさか・・」

「兄様も転生者なのですか?!」と言う台詞は、しぃ~と兄の人差し指で塞がれた私の口から出る事はなかった。




読んで頂いた方々、ありがとうございます。
こんなものまで読んでいただけてとてもうれしく思います。

気の強いヒロインと俺様と思いきや、実はへたれイケメンヒーローの組み合わせとか超好きです。
長編で書く気がなくってギュ~っとつめちゃいましたけど、裏設定としては鷹彰は魅のことが実は好きだったりします。ゲームの世界ではそれはないですが、転生記憶有でだいぶ抗っていたのでその副産物として・・いかがでしたでしょうか?

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