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契約編
第三話 精界
「あの〜、すいません」
 突然昇に話しかけてきたのは幼い女の子だった。
 年齢は一二ぐらいだろうか、金髪のポニーテールが良く似合う、その少女がおどおどしながら昇に話しかけてきた。
 だが少女は手をもじもじさせるだけで、それ以上は何もく喋ることなく、明らかに困りきってるようだ。
 しかたなく昇はその少女に離しかける。
「えっと、僕に何か用?」
「えっ、いやっ、あのっ、その、何と言いましょうか」
 突然昇が口を開いた事に驚いた少女は取り乱して、あきらに挙動不審でオロオロとして誰かに助けを求めてるようにも見える
 えっと、この子はいったい何がしたいんだろう?
 ワケの分からない少女の行動に戸惑う昇。
「キャ」
 だが突然少女は横から蹴飛ばされて床に倒れこんでしまった。
「なっ…」
 突然のことで言葉が出ない昇を放っておいて、そいつは少女の元へいくと髪を掴んで無理矢理顔を向けさせると怒鳴り散らした。
「おい、テメー、いつまで何やってんだよ。さっさとこの契約者をぶっ倒せって言っただろ」
「すいません。けど、陽悟、私」
 陽悟と呼ばれた男の拳が少女の頬を当たり、少女は再び床に倒れる。
「陽悟様、だろ。何度言ったら分かるんだテメーわ」
「すいません、陽悟様」
 涙を浮かべながらも少女は健気に陽悟に言われたとおりの言葉使いをする。
 いったい何なんだこの二人は。
 すっかり取り残されている昇だが、目の前でこんなことをされているのを黙ってみているつもりは無い。まあ昇としては正義に味方を気取るつもりは無いが、このまま無視する事も出来なかった。
 昇は立ち上がると少女を守るように二人の間に割ってはいると、思いっきり陽悟を睨み付ける。
「いい加減にしろよ。この子も泣いてるだろ」
「あぁ!」
 こわっ!
 逆に睨み返してくる陽悟に昇は思わず後退りしそうになるが、何とか押しとどまり陽悟と睨み合いを続けているのだが、内心はかなりビビっていた。
 ヤンキーってこういう人のことを言うのかな。なんか目を合わせるだけで凄く怖いんだけど。
 それでもなけなしの勇気を振り絞って陽悟をにらみ返す昇だが、そんな昇の行動を陽悟は笑い飛ばした。
「バカか、テメーは、敵かばってどうすんだよ」
「えっ、敵?」
「おい、ミリア。さっさとやっちまうぞ」
「はい、陽悟様」
 ミリアは涙を拭くと今までと別人のような目つきになり、昇に敵意を向ける。
「なっ、何で?」
「ごめんなさい。でも、契約者であるあなたを倒さないと、陽悟様はエレメンタルロードテナーになれないんです」
「じゃあ、君は…」
「はい、私は陽悟様と契約をした精霊」
 ミリアは手を地にかざすと床に魔方陣が現れ、茶色い光を放っている。
「アースシールドハルバード<地の盾を持つ槍斧>」
 魔方陣から槍の横に斧が付いたハルバードが表れ始めて、ミリアがハルバードを手にとると今度はミリア自身が光り輝きだしてミリアを包み込んでいった。
 そして光が消えて姿を見せたミリアの姿はその体に似合わないほど大きなハルバードを持ち、重厚とも思える鎧。いや、甲冑を着ていた。
 いったい何なんだ、この子は。
 昇が戸惑うのも無理は無い。ミリアが精霊だといわれてもピンとはこないし、いきなり武装されても昇にはどうする事も出来なかった。
 それでもミリアの兜が羽飾りのようになっている為、ミリアの表情はよく昇に見えた事が更に昇を惑わす。
 たぶんだけどこの子は契約者である僕を倒そうとしてるんだろ。じゃあ、なんでそんな顔をしてるんだろ。
「ごめんなさい」
 涙を浮かべながらその言葉を口にするミリア。
 昇は直感的に危険を感じるとその場から離れて振り向くことなく走り出して、二人からかなりの距離をとったところで振り返った。
 うそ、だろ。
 先程まで昇がいたところにはハルバードが床に刺さっており、あの場所から逃げ出さなければ確実に昇の頭はカチ割られていただろう。
「ちっ、仕留めそこなったか。結構アイツ足が速いな、もうあんなところにいら〜」
「すみません、陽悟様」
「まあいい、アイツの精霊が来る前に仕留めるぞ」
「はい」
 ミリアは再びハルバードを構え、何故か陽悟も片手で構えを取る。
「行くぞ」
「はい」
 走り出そうとする二人だが、突然の違和感にその行動が止まる。
「なんだ〜」
 陽悟が違和感の元を探そうとする前に、それはもう始まってた。
 デパートの中央、そこを突き抜けるように太い光の柱が天井を突き抜けていた。。それはデパートをまったく壊すことなく突き抜けている。
「精界」
 呟くようにその言葉を口にしたミリアを陽悟は「あぁ」と言いながら尋ねるが、その顔がよっぽど怖かったのかミリアは一歩下がると説明を始めた。
「これは精界といって、精霊と契約者だけを飲み込む結界のことです。ですから、あの人の精霊にも気付かれたようです」
「せいかいだ〜?」
「はい、簡単に申しますと精界の中に入れる者は精霊と契約者だけ、それにどれだけ精界の中で物を壊そうとも人間界には影響が出ません。つまり、精霊達の戦場のことです」
 それでもミリアの説明が難しかったのか、陽悟は頭をかきながらどうでもいいような態度をとる
「っで、これからどうなってくんだよ」
「あの光の柱はその範囲を広げて一定の空間を人間界から精霊界へと移転させます。その大きさは精界を作り出している精霊が決めることですが、精界が展開されればこの空間は私達とあの人達だけになります。つまり、精霊と契約者だけが精界に居るわけです」
「つまり、あの光の柱が広がれば他の邪魔な奴は全て消えて、俺達だけになるわけだ」
「はい、そうです」
「それにどれだけぶっ壊しても大丈夫、ははっ、まさかこんなに便利な物があるなんて思いもよらなかったぜ」
 楽しそうに笑い出す陽悟を見てミリアはまた一歩後ろに下がった。


 だが一方、事情が分からない昇は困惑していた。
 何だ? いったいどうなってるんだ。
 突然現れた光の柱。それはデパートを突き抜けてはるか頭上まで伸びていた。そして伸びきると今度はその範囲を広げていく。
「うわぁぁぁーーー」
 迫ってくる光の柱に思わず悲鳴を上げる昇だが、光の柱は昇を通り抜けてその範囲をさらに広げ続ける。
 あれ、なんとも無い、どうなってんの? ……うわ、なんだあれ、空が白い
 駐車場の隙間から見える空は真っ白だった。それは雲なんかではなく、空の色が本当に真っ白になったように白い。だが白くなったのは空だけではない。周りの景色も少し白を混ぜたように薄くなっている。
 なんだこれ、どうなってるんだ!。
 そして精界はデパート全体を包むと拡大を止めて完全に人間界と遮断した。
 ……なんか、凄い静かだ。
 急に訪れた静寂に昇は寒気が走った。
 今まであんなに騒がしかったのに今じゃ何も音がしない。何なんだよ、これ!
 だがそんな静寂を急に破るように走り来る足音が響く。
 昇が振り向くとそこにはすでにミリアが迫っていた。ハルバードを振り上げる風きり音と共に殺気を放ちながら昇へと迫る。
 昇は恐怖から目を閉じて、振り下ろされてくるハルバードために全身に力を込める。こんなことをしても仕方ないと思っているけど、とっさの防衛本能が昇を硬直させた。
 そして振り下ろされるハルバード。
 振り下ろされたハルバードは床をも砕き、土煙が立ち込める。いったいあの小さいミリアにどれだけの力が在るのか疑いたくなる程の破壊力だ。
 そして土煙が晴れて視界が戻ったミリアは下ではなく横を向く。そう、昇が居る方向へと目を向けた。


 なんだ、いったいなにがあったんだ?
 昇は立ち上る土煙を見ながら事態を把握できていなかった。だが感じることは出来た、知っている匂いと温もりを。
「ごめん、精界を張ってたら遅くなった」
「シエラ!」
 ハルバードが振り下ろされる寸前、ギリギリ間に合ったシエラは昇に体当たりをするようにその場から退避たから、昇は無事にミリアの攻撃をかわすことが出来た。
 けどミリアも手応えの無さから昇がかわしたことを知りえていた。だからこそ、下ではなく昇を見ている。
 シエラは昇から離れるとミリアと対峙する。
「ずいぶんと私の昇をいじめてくれたみたいね」
「ごめんなさい」
「えっ」
 まさかすんなりと謝られると思っていなかったシリアは拍子抜けした。
「まあいいわ、どっちにしろ引く気は無いのでしょう」
「すいませんが、それはできません」
「まあ、分かりきってたことだけど」
 シエラは手を前に出すと何かを握るように拳を作り、拳から魔方陣が展開される。
「ウイングクレイモア<翼のある大剣>」
 魔方陣から噴出したのは羽。
その羽はシエラの拳から広がり大きな剣を作り出していく。そしてシエラの手には大きな、その刃だけでもシエラの身長を超えるほどの長く、幅の広い大剣が現れた。
 それと同時にシエラの体も光だし、今まで着ていた白いドレスから甲冑へと姿を変えていく。
 シエラの甲冑はミリアの物とは違い、かなりの軽装で肌も少し露出している。だがその分動きが軽やかになり、早く動けることが出来る。
 だがそんな意味があることを知らない昇が思うことは只一つ。
 このシエラの姿もちょっと可愛い。って、僕はいったいこんな時になにを考えてるんだ!
 二人との殺気を出して今にでもぶつかり合いそうな中でも、昇がそう思うぐらいシエラの戦闘服、精霊用語では精霊武具と呼ばれている姿はかなり似合っていた。
 だがそんな昇の妄想に関係なく精霊二人はそれぞれの構えを取り、すでに戦闘体制に入っていた。
 先に動いたのはシエラだ。シエラはクレイモアを肩より後ろに構えるとミリアへと疾走する。
 迫り来るシエラにミリアは防御の姿勢をとることなく、ハルバードの柄を床へと突き付ける。
「アースウオール!」
 突然コンクリの床がせり上がり、ミリアの前に壁を展開する。
「ショット」
 そして壁から放たれてくるコンクリの弾丸。シエラはその弾丸の雨をかわしつつ、一気に壁へと迫った。
「無理ですよ、その壁は鋼鉄よりも硬いですから」
「さあ、それはどうかしら」
 壁の真横に回りこんだシエラはクレイモアを水平に構えると一気に突っ込む。
「ウイングブースター!」
 突然クレイモアから生えた白い一対の翼は、シエラの後ろにその翼を伸ばすと、羽先が揺らぐほどの推進力を生み出して一気にシエラごとクレイモアを加速される。
 そして一瞬にして音速近くまで加速されたクレイモアは。軽々とミリアの作り出した壁を切り裂いた。
 さすがにあのスピードだと切り裂けない物はほとんど無いだろう。水ですら超高速で発射されると鉄すら切り裂けるぐらいだから、それがクレイモアという大剣となるとその切れ味はドン倍だ。
 シエラは切り裂く時に少し角度をつけていたのか、壁は横へずり落ちるようにして倒れ去った。
「これでどう」
「まだまだ、これからですよ」
 再び対峙する精霊達。だがそれはあくまでも精霊たちの戦いであっただけだ。


 昇はシエラの戦いを固唾を呑むように見守っていたのだが、突然炎の玉が昇に直撃する。
「あっちも始めたことだし、こっちもはじめようとするか、なあ」
「いったい……なにを?」
「はぁ、決まってんだろ。契約者は特殊能力を得ることが出来るんだぜ、こいつを使わない手は無いだろう」
「くっ」
「昇!」
 陽悟の攻撃に昇の援護に向かおうとするシエラだが、ミリアのその前に立ちはだかる。
「悪いけど退いてくれる」
「力ずくでどうぞ」
「昇!」
 直撃はしたものの、何とか昇は立ち上がると陽悟を睨み付けた。
「ヒュー、女みたいなツラしながら、なかなかタフだね〜」
 だが実際にはかなりのダメージを負っていた。
 正直立っているのがやっとだ。けど、次に喰らったらもう立てる自信は無い。というか契約者に特殊能力が宿るっているなら、僕にも宿ってるはずだよな。……って、僕の特殊能力ってなに?
 昇が考えを巡らす中、陽悟は先程の攻撃がかなり効いてると思っているのか余裕を見せるように炎を自分の指に灯すとタバコに火をつけた。
「俺の能力は見ての通りさ、どうやらフレイヤーと言うらしいがな。さあ、次はテメーの番だ。さあ、さっさと能力を見せてみな!」
 そう言いながら陽悟は三つの火の玉を作り出し、昇へと放った。
 いや、そんな事を言われても実際僕は自分の能力なんて知らないんだけど。というか、どうすればいいんですか、この状況!
 迫り来る三つの火の玉を前にして昇はせいぜい腕の顔の前でクロスさせて、全身に力を入れるしか出来なかった。そうすればすこしは耐えられると思ったのだろうが。
 そんな事では防ぎきれないような火の玉はすでに昇の目の前に迫っていた。





 そんなワケで始まりました戦い、昇にとってはワケの分からないことだけですが、作者の私はいつ頃このバトルが終わるまであとどれぐらいかかるのかが不安です。
 もしからしたらこのバトルだけであと数話位書くかもしれない。それでも、やっとシリアスになってきた事にちょっと安心しました。というかあのままコメディー調が続いてもね。
 それに、何故か連載になると話が進みません、といいますか私の力量不足なんですかね。話がうまくまとまらないのは、けど、これでも修正済みなので、こんな形になったわけですが。まあ、大幅なストーリー修正は出来ないのでこういう風になりました。
 なんか中途半端な気もしますがそれは気のせいです。というか、そういうことにしといてください。もし、そう思わない人には土下座しますんで、この話は決して中途半端ではないです。まあ、そんな訳でして、そこのところは承諾してください。
 ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。更に評価感想もお待ちしております。
 以上、このバトルが(初戦なのに)いつ頃終わるのか不安な葵夢幻でした。


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