第47話・トリプルデート?【百合編】 メールだよ♪
《PM03:20》
デッドコースターとの空の旅も終わり、地上に降り立った僕はふらふらとした足取りで出口からここのエリア内を出ます。
するとすぐにユーちゃんが僕に駆け付けて来てくれました。僕を気遣うように心配そうな顔をして顔を覗き込んできます。
「タモちゃん大丈夫?」
僕は自然と笑みを溢して頷きました。
「うん、大丈夫。……っていうか、アレ、かなり楽しかったよ」
「えぇっ?」
僕の言葉に口に手を当てて驚くユーちゃん。それもそのはずです。なぜなら今の僕も同じ気持ちなのですから。
あのとき狂ったように笑いながらデッドコースターを体験していた僕は、いつしか自分が空を飛んでいるような感覚を抱いていました。縦横無尽に切り替わる空の景色はまるで空を自由に飛び回る鳥の目線のようで、見慣れた空がとても新鮮に見えたのです。
そうしていつの間にか恐怖から出ていた笑い声もその感動により打ち消され、純粋な楽しさによる歓喜の悲鳴を上げていました。
「正直、僕はまた乗ってみたいと思ってるけど……ユーちゃんはどうする?」
あの感動をユーちゃんにも味わってほしいと思いましたが、やはり苦笑いを浮かべて首を振りました。
「私は……せっかくだけど、遠慮するよ」
僕は『そっか』と頷いて次はどこに行こうかなと思案します。ユーちゃんはまだなにも乗っていないので、そろそろ一緒に楽しめるような乗り物に乗ってみたいですね。
「……あ、そうだ。メリーゴーランドでも乗ってみようか?」
あの回転木馬なら普通に乗れるだろうと思っての提案です。たとえ改良しすぎて変な乗り物になっているとしても二人で一緒に乗れそうだし……。べ、別にユーちゃんと密着したいってわけじゃないんだからね!(ツンデレ風に)
「うん。私も乗ってみたいかな。ちょっと子供っぽいかも知れないけど……」
「でもユーちゃんの身体は大人っぽいよ? 特にお尻は僕好みだし」
あれ?
「え、なななに言ってるのタモちゃん!?」
「ま、待って! 違うよっ! 今のは確かに僕の声に似てたけど僕じゃないからね!? クソッ、誰だ!! あ、あれ? 後ろには壁しかない……? ほ、本当に僕じゃないんだからねユーちゃん!? ……ん、待てよ。もしや!」
僕は急いでズボンのポケットから携帯を取り出しました。
「あぁあ! やっぱり! さっきのメールの着信音だ! ……え、だから違うってユーちゃん!? 僕がこんな着信音を設定するわけないだろ! そんな目をしないでっ! というかものすごいタイミング良く鳴ったなオイ!?」
それにしても誰からメールが送られてきたのでしょう。僕は受信ボックスを開き名前を見てみます。
そこには[諏訪日登美]という文字がありました。
「日登美からだ……。まさか、日登美があんな着信音を設定したのか?」
……いや、日登美には確かに前科はありますが、それだけで彼女を疑うのはよくありません。
僕はなんの用件だろうとメールを開きました。
[私ではありません]
「こいつだぁぁァアッ!! 犯人は絶対に日登美だ! 最初に弁解がくるところからしてすでに怪しい!」
一瞬でも日登美を信じた僕がバカだった……!
「わかったよユーちゃん! それもシロかクロかと言われたら絶対にクロだとはっきり断言できるぐらい自信がある! ……え? ちょっと待って。なんでユーちゃん、顔を真っ赤にして僕から離れていくの……? ち、違うよ!? 僕は別にユーちゃんの下着の色を当てているわけじゃないからねっ!? 犯人が日登美だっていうことを僕は言っているだけだからねっ!? それにユーちゃんの下着の色って白でしょ!? え、なんで知ってるかって……? ぐ、偶然っ! 偶然だよッ!! うん!」
今日の下着の色が白なのはユーちゃんの部屋で見ちゃってるから……なんて言えません。…………。……だ、ダメだ! 思い出したらダメだ!
「まあ、僕はユーちゃんの下着よりも日登美の身体の方が興味津々だけどね」
「た、タモちゃん……?」
「違うから! またメールの着信音だよっ! ってかどんな原理で着信音が変わるんだ!? 同じ人からなのに!」
僕は悪態を吐きつつ再び送られてきたメールを開きました。
[問題です。今、私はなにをしているでしょう?]
「……? なにこれ?」
いきなりのことに眉間にシワを寄せて下へとスクロールします。
[1・存さんが複数の女子高生に代わる代わる抱かれている仔猫を見たとき『僕も仔猫になりたい……!』と半ば本気で呟いていたことをご近所の皆様に言い振らしている]
「!?」
[2・下着姿の存さん(女性物バージョン)の写真をネットで配信中]
「んな……っ……!」
[3・存さん秘蔵のお姉さんシリーズのDVDを全て売り払っている]
「なんだこれはァァァ!? この中からどれかを今現在日登美は実行しているということなのか!? しかも1は言ったことすらないし2はただの変態で3は惨すぎる! 全部嫌だよ!」
だが……あえて、……あえて! この中で選ぶとしたら………………1、だ。これなら、まだ、……耐えられる。もう外を出歩けなくなるけど、まだ、なんとか、耐えられる……!
血の涙を流したながら、[1!!!!!!!!!]とメールを打ち、日登美に送信しました。頼む。これで、あってくれ…………!!
そして十秒も過ぎない内に、
「メールだよ♪」
という日登美の声での着信音が……!
いったいどんな原理になっているんだと叫び出したくなる気持ちをグッと抑え、僕は日登美からのメールを開きました。
[正解は、
……………1]
「やったぁぁっ! って違ぁうっ! この反応は違うだろ僕! くそぅ! なんなんだコレ! 嬉しくないのに嬉しいというこの矛盾な感覚は……!」
味わったことのない不思議な感覚に戸惑いながらホッとしていると、……まだ、下にスクロールできることに気付きました。
僕は、下に、スクロールしました。
[と、2と3]
「って全部かよぉぉぉ!! あいつめぇぇぇっ!!!!」
涙ながらに絶叫します。こうなると予感してはいましたが、心のどこかで未だに日登美のことを信じていた部分が生きていたようです。……だけど、今、そいつは死んだ……!
今度は憤怒の表情で絶叫していると、視線の片隅でユーちゃんが僕を睨んでいるのが見えました。
「……あれ? ど、どうしたのユーちゃん?」
怒りなど瞬時に消え去りました。おろおろしながら聞くと、ムスッとした表情で視線どころか体ごとそっぽを向けられました。
「……タモくんって、日登美さんのことになるといつも楽しそうだね」
「楽しそう!? どこが!?」
僕はいつも迷惑を被っているのに、どうして楽しそうになんて見えるのでしょう。それでは本当に僕はドMじゃないですか。
「……鏡を見たら、すぐに分かると思うよ」
プイッ、とふてくされた様子でスタスタとどんどん先に行ってしまいます。
「ま、待ってよユーちゃぁぁん!」
僕はその背中を訳も分からず追い掛けました。
……でも、と僕は思います。
確かに僕は、日登美から被害や災難を受けても彼女のことをどうしても嫌いになれないのです。
すぐに仕方ないなと諦め、苦笑しながらも受け入れてしまう。
それはいったい、なぜなのでしょうね?
(つづく) |