第40話・トリプルデート?【百合編】 危機一髪
《PM01:30》
「ねぇ、タモくん。今から遊園地に行かない?」
そろそろ互いのことを分かってきたかなと思い始めた頃、ユーちゃんがふと思い付いたようにそう提案してきました。
「遊園地?」
僕はキョトンとして聞き返します。別に行っても構わないのですが、この近くに遊園地ってあったっけ?
「うん。最近できた遊園地なんだけど、“今までにない新しい試みを取り組んだアトラクション”だから大人気なんだって」
「……へぇー」
なんとなく『“”』があることになにかの伏線があるとしか考えられませんが、これも運命だと諦めましょう。
「うん。じゃあ、そこに行ってみよっか。場所はどこなの?」
「えっとね……」
そうしてユーちゃんから聞かされた場所は、なんと電車でも一日かかるんじゃないかというほど遠く離れた場所でした。
「ちょ、ちょっと遠すぎない?」
僕が場所が場所なので困惑した表情を見せると、
「大丈夫!」
ユーちゃんは自信満々に頷き、僕にとびっきりの笑顔を向けて言いました。
「私、自家用ジェット機を持ってるから!」
……ユーちゃんが遠い存在だということに今更ながらに思い知らされました。
……………………………
ユーちゃんの自家用ジェット機はマンションの裏に普通に置かれてました。しかもちゃんと滑走路もあります。ブルジョワだ…。
「ユ、ユーちゃんってお金持ちなんだね……」
やはり人気アイドルというのは普通のサラリーマンとは収入が桁違いなんでしょうね。
「え? 私、お金持ちじゃないよ?」
キョトンとした様子のユーちゃんに、自覚ないお金持ちって本当にいるんだなぁ、と思っていると、
「だって私、余計なお金はほとんど寄付してるから」
というユーちゃんの言葉に驚かされました。
「え、寄付って……?」
そう聞いた僕にユーちゃんは説明してくれました。
なんとユーちゃんは、仕事で得たお金のほとんどを福祉施設に寄付しているそうなのです。
「そんなにお金を貰っても使い道がないし、どうせなら有意義に使いたいって思うでしょ?」
というのがユーちゃんの弁。電化製品や車やジェット機は便利なのでそこはお金を使ったらしいですが……、でも、女の子がアクセサリーやら宝石やらブランド品などにお金を使わないことに僕は感心しました。なんとなく、女性は高級なものが大好きだというイメージがあったので。
思えば僕は、よくテレビで紹介されるお金持ちってよくまあ高級なものを買うもんだなぁと呆れたことがあります。壺やら絵に何億やら何千万やらを出して買うのに、それぐらいのお金を寄付しようとは思わないのかなぁ、と。
もちろんそれはお金持ちではないからこそ言える言葉だと僕自身感じています。実際自分がお金持ちになったとき、やはりまず最初に考えるのは、自分の為にどう使うか、だと思います。もしくは、家族の為、恋人の為……。そこに、他人の為、なんてことを考える人は今の世の中、少ないのかも知れません。
だからこそ、余計なお金、と言って寄付するユーちゃんのことを僕は感心したのです。そして同時に思うのです。だからこそ、ユーちゃんは万人受けする人気者なんだなぁ、と。
「ゆ、ユーちゃん……僕、君を尊敬するよ!」
僕は感動で泣き出しそうになりました。両腕を大きく広げて思わず抱き締めそうになります。……こんな、……こんな素晴らしい人間がすぐ側にいるなんて! うぅ……僕の周りにはロクな人がいなかったから感動もヒトシオだなぁ。ホント、あの傍若無人悪逆非道冷酷無比の破壊魔神の桐花にも見習わせてやり、
…………ハッ!?
その瞬間、脳から危険信号が発せられ、全身に危機回避能力アップの命令を電気信号として送り、筋肉へと伝達されると一瞬で筋肉の繊維の一つ一つが刹那よりも早く伸縮すると、僕の体はほぼ条件反射に近い行動力で横に跳びました。
そしてついさっきまで僕がいたところに、ビュンッ! という鋭い風切り音。
次の瞬間には今さっきまで僕の頭があったところの直進上から、スパァァンッ! という軽音が。
「ハアハアハアハア……」
尻餅をついて呆然と見上げます。目を疑うような信じられない光景がそこにはありました。
矢。
確実に僕を仕留めようとした凶器が、そこにはありました。
「な、なんで矢が……」
視線を巡らせ飛んできた方向を見るも、人影も障害物もなく、街の住宅街だけが見えます。近くてもここからは百メートルは離れているマンションしかありません。ま、まさかあそこから狙ったのか……?
もう一度矢に目を向けると、僕は矢になにかが結ばれていることに気が付きます。
矢文……でしょうか。僕は震えながら立ち上がると、恐る恐る矢から文を取り出し、開きました。
そこには、赤い、まるで血のように紅い文字で、こう書かれていました。
【オマエヲカナラズ】
「必ずなに!? なにをするの!?」
大きく書きすぎてそこまでしか書けていません。滑稽なのですが、それが逆に不気味に思えてかなり怖いです。
……僕は今日、生き延びることができるのでしょうか?
(つづく) |