第39話・トリプルデート?【百合編】 山ラ部の活動
ユーちゃんからの質問はまだ続きます。
「初対面の女性を見るとき、まずどこを見る?」
なんの意味があるのだろうと疑問に思いながらも僕は答えます。
「……うーん、顔かな」
「え……? 股間じゃないの?」
「なんで!? なんでそんな意外そうな顔をするのユーちゃん!?」
僕は初対面で人の股間なんて見ないよ! 見るとしたらその人ただのドスケベだよ!
「それじゃあタモくんの趣味は『切手集め……は表の趣味で実際は切手の裏を舐めて体に張り付けることに無情の悦びを感じる』ことだよね?」
「断定!? それは断定されていることなの!? 僕、そんな特殊なことしたことないからね!」
「え? じゃあ『スカート覗き・改』は?」
「なに『改』って!? スカート覗きのどこを改める必要があるの!? それもしたことなんかないよ!」
なんかユーちゃんには僕に関する間違った知識が多々あるようです。それを改めるためにも、僕のことを正しく知ってもらう必要があります。
「ね、ねぇユーちゃん提案があるんだけど、いい?」
「却下」
即答でした。
「え、えぇー? なんで却下なのっ?」
「だ、だって……タモくんからなにか提案してきたら、それは身体目当ての汚れた要求だって、日登美さんが……」
「アイツめぇぇ!」
僕は天に向かって吠えます。ユーちゃんに間違った知識を植え付けたのは日登美だったみたいです。九割方そうだと確信していましたが、本当に彼女は悪い意味で予想を裏切らない女性ですねまったく。
「あ、あのね、ユーちゃん……。それは誤解なんだ。本当の僕は、誠実で礼儀正しくてだけど少しオチャメで愉快なみんなの人気者なんだよ」
少し誇張が入っているかも知れませんがほぼ言った通りでしょう。
「そうなの……?」
ユーちゃんが半信半疑な表情を浮かべます。
「君は僕と日登美のどっちを信じるんだい!?」
僕は憤慨します。日登美に比べたら僕はかなり信頼に足りると自負できるのですが。
「も、もちろんタモくんだよ!」
顔を真っ赤にさせて強く頷くユーちゃんにホッとします。もし桐花だったら、『あんたを信じるぐらいなら天邪鬼を信じた方がマシだわ』と切って捨てていたでしょう。
「じゃあ提案なんだけど。僕達、まだお互いのことを良く知らないよね? だから、お互い順番に質問して、それに答えていくやり方で知り合おうと思うんだけど、いいかな?」
「……えーと、つまり、私が質問してタモくんが答えたら、次はタモくんが服を脱いで私に質問するってことだね?」
「うん、そう――じゃないよ!? ちょっと待って! 服を脱ぐってどういうこと!? 僕、そんなこと一言も言ってないし、なんで僕だけが脱いでるの!?」
「え……? わ、私も脱ぐの?」
「そういう問題じゃないッ! ってユーちゃん!? 頬を紅く染めながらゆっくりとまるでジラすように服を脱ごうとしないで! なんか妙にドキドキしてきちゃうから!」
服を脱ごうとするユーちゃんをなんとか押しとどめ、再度わかりやすく説明することでやっとユーちゃんも分かってくれました。それにしても、ユーちゃんには日登美属性(注※よく分からない人のことを差す)が若干あるようですね。気を付けなければ。
「それじゃあ私から質問するね。……タモくんの本当の趣味はなんですか?」
「本当の趣味もなにも……昔も今も『切手集め』だからね僕の趣味は。そこに『……は表の趣味で実際は切手の裏を舐めて体に張り付けることに無情の悦びを感じる』なんてものは付加されないからね」
では、次は僕が質問する番です。
「ユーちゃんの特技ってなにかな?」
「山ラ部で習った『タモくんの声マネ』かな?」
ナニソレ。
「僕の声マネってなに!? どういうこと!?」
驚き詰め寄る僕にユーちゃんは静かに言いました。
「次は、私の番だよ」
く、くそぅ! じゃあ早く僕に質問して! それにすぐ答えて聞くから!
「タモくんが学園の小等部の女の子のブルマを盗んだって本当?」
「チクショウ! 僕の声マネのことを詳しく聞きたいのにこのとんでもない嘘を流した犯人を先に聞かなければならない!! もちろんこれは虚実だからねユーちゃん! そして質問! 流したのは誰だッ!!」
「佐藤さん」
「え、誰ッ!?」
日登美か桐花だと確信していた僕は見知らぬ佐藤さん(第三勢力)の存在に驚愕します。
「同じ山ラ部の先輩だよ」
また山ラ部か……! そういえば僕、山ラ部がどんな活動をしているのか良く知らないんですよね。僕を『苦しめよう・陥れよう・殺そう』の基本三原則は残念ながら知っていますが。いったいどんなことをしているのでしょうか。
山ラ部について疑問に思っていると、ユーちゃんが続いての質問を口にしました。
「タモくんはどうしてお姉さん系がタイプなの?」
「………………えぇーーと……その、……いろいろツッコミたいとこだけど長くなりそうだからこの際ハッキリ言うよ。あのね、ユーちゃん……“それが普通”だからね!? 僕はロリコン&熟女専門じゃないんだから必然的にお年頃の女性がタイプになるわけ! 分かった!?」
僕がそう巻くし立てると、ユーちゃんはどこかホッとしたように息を吐きました。
「そっかぁ…………良かった。もしかしたらタモくんの興味の対象が『胸』だとばかり思ってたから」
「………………………」
「…………タモくん?」
つい、と目を反らした僕をジトーとユーちゃんが半眼で睨んできます。ごめんユーちゃん。もしかしなくても胸にはバッチリ興味があります。だけどそれは言うなれば男の本能。遺伝子レベルにまで刻み込まれた男の性なのです。
「じ、じゃあ僕から質問するね」
もうとっくに互いについての質問ではなくなりましたが仕方ありません。これも僕の名誉のためです。
「僕の声マネで……いったいなにをしてるのかな?」
「えーと……、知らない人の家に電話をかけて『オレ、オレだよオレ、山羅存だよ。あなたの下着を盗んだのオレだ!』ってする部活に使ったの」
「おぉい!? なにその新しいオレオレ詐欺!? 手口も悪質さも格段にレベルアップしてるじゃん!?」
しかも僕の声で僕の名前を語っています。これはもはや部活動ではありません。僕を陥れようとする悪意ある犯罪です。それとも、僕に対しては法は適用されないのでしょうか。
それはそれで有り得そうだから怖いなぁ、と憂鬱になりつつもようやく本来の目的である互いについての質問になりました。
「タモくんの好きな料理は?」
「魚料理だね。特に秋刀魚の塩焼きが好きかな。ユーちゃんの好きな料理は?」
「私も魚料理。特にマグロの目玉が大好き!」
「へ、へぇー、そうなんだぁ。ちょっと変わった好物だね」
確かマグロの目玉にはコラーゲンがたっぷりあると聞きます。ああ、なるほど。だからユーちゃんは肌が綺麗なんですね。
「タモくんの誕生日って確か五月三日だっけ?」
「誰かから聞いたの? うん、そうだよ。……誰かさんは『ゴミの日』っていう嫌な覚え方をしてるけど」
ゴミのあんたにはお似合いね、と鼻で笑った悪魔のことを思い出します。全国の五月三日生まれの人に謝れ!
ちなみに誰かさんの誕生日は九月二日。僕はクツの日ではなくクズの日と覚えています。もちろんそれは僕だけの秘密です。もし知られたら僕はゴミクズにされるでしょう。
「その誕生日プレゼントにマグロの目玉を持っていってあげるよ!」
「………………え?」
一瞬だけ表情が固まりました。
「嫌……かな?」
そんな泣きそうな目で見られたら僕の返答はこれしかないじゃないですか。
「そ、そんなことないよ! わ、わーい、うーれしぃなぁ!」
こうして僕の誕生日にはマグロの目玉が贈られることが決まりました。DHAたっぷりな日になりそうです。
「そ、それでユーちゃんの誕生日はいつなの?」
御返しにその日になにかをプレゼントしてあげようと考えながら尋ねます。
「私は八月八日だよ」
だったらハハ(母)の日って覚えようかな。それとも日登美のバストサイズの日……という覚え方したら僕はただのスケベですね。やめときましょう。
「あ……………」
思わず声が出ました。今頃気が付きましたが、そういえば僕、日登美の誕生日を知らないです。バストサイズは知っていて誕生日は知らないなんて、僕はなんて駄目人間なのでしょう。
今日の夜にでも日登美に聞こうと決めると、僕は再びユーちゃんとの質問会話に戻りました。
(つづく) |