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山羅くんの不幸
作:紫水晃



第31話・トリプルデート?【泉水編】 運命の悪戯


 

《AM10:30》


 ……なにをしているんだろう、私。

 はぁ、と泉水桐花は小さく溜め息を吐いた。

 せっかくの二人きりだというのにチャンスをまったく生かしきれていない。それが憂鬱だった。無理して、…その、可愛子ぶるようなこともしたけど、それもどこか不自然になり、空回り。変な雰囲気にしてしまう。

 いきなり変えようとしても無理があるのよね、と二度溜め息を吐く。

「どうしたの泉水?」

 存が私の気持ちなどこれっぽっちも分かっていない顔で声を掛けてくる。憎たらしい。

「溜め息ばかり吐いてると、幸せが逃げちゃうよ」

「幸せから嫌われてるあんたにだけは言われたくないわ」

「どういう意味だよ!」

 こうやって存に嫌味を返すのも条件反射の域。……ホント、なにやってんのかなぁ私。

 三度溜め息を吐き、隣を歩く存に目を向ける。

 勇気というか勢いで腕を組んだけど、なんの効果もなさそう。それはそれでムカつく。

「……死ねばいいのに」

「こ、小声でそんな不吉なこと言わないでよ!」

 ……やっぱり、諦めた方がいいのかなぁ。

 もう、溜め息も出なかった。


【AM10:35】


 泉水が小声で『死ねばいいのに』と呟くのでそれにビクビクしながら歩いて数分。ようやく目的地に辿り着きました。

「ここまで来るのに、長かったような、短かったような……」

 今までのことを思い返します。……変態との出会い……金髪マッチョとの死闘……怪しい占い師の結末……なんというか、濃ゆいなぁ……。

 人生で一度も経験したくない経験を何度もしてしまった僕。本当に運がないです。泉水の言う通り、幸せから嫌われてるから逃げられてるのかなぁ……。

「どうしたの?」

 なぜか目から汗が流れてくる僕を気味悪そうに泉水が見てきます。

「……ううん、なんでもないよ」

 流れ出る汗を拭い、目の前にある洋服店へと向かいます。自動ドアが開き、お店の中に入ると、すぐ手前にいた店員さん(女性)と目が合いました。

「邪魔するよ〜」

 すると隣の泉水がそんなことを言いました。僕は『は?』と首を傾げて泉水を見ます。

「邪魔するなら隣の奴だけ死んで〜」

「はいよ〜」

「なにこのやりとり!?」

 まるで吉○新喜劇のようなやりとりです。若干残酷なオリジナリティも含まれていますが。

「いつそんな打ち合わせしたんだよ!」

 それを聞いた泉水と店員さん(女性)は同時に答えました。

「「目が合ったその瞬間に」」

 なんという意志疎通。僕はなにも感じなかったのに……。

「私、ちょっとあれ見てくるからそこらで待ってて」

 泉水がそう言って僕から離れていきます。腕に感じていた感触から解放され、嬉しいような、男としては悲しいような……。

 泉水が向かった先には様々な種類の帽子がありました。帽子売り場のようです。その隣には下着売り場があり、そこのレジにいる店員さん(女性)と目が合いました。睨まれました。やましくないのになぜか気まずくなり目を反らします。

 他にも、スカート売り場、カツラ売り場、化粧品売り場、装飾品売り場、とあります。もちろん洋服店ですから洋服売り場もあります。そのそれぞれの売り場に店員さん(オール女性)がいて、お客さんに説明などをしています。

「いろいろあるなぁ」

 まるで女性のための洋服店ですね。洋服店かどうかは甚だ疑問ですが。

「……あれ?」

 店内を見回していると、こちらに背を向けて店員さんと話をしている泉水に目を留めました。その頭には帽子が被られているのですが……。

(か、カッコいい……)

 僕は目を奪われました。血色というか死色の真紅というか。その毒々しい色に心がときめきます。

 そう! 似合わないと思いますが、僕は赤色が大好きなのです! 昔、泉水に『そんなに好きなら真っ赤に染めてやるよ。……てめぇの血の色でなぁ』と死亡フラグが立ちかけたことがあるほど好きなのです!

「……ね、ねえ泉水」

 こんな色の帽子があるなんて! 僕は我慢できず泉水に近付いていきます。少し興奮していたかも知れません。

「んぁ?」

 店員さんと話していた泉水が顔だけこちらに向けました。泉水と話をしていた店員さんも僕を見ます。

「僕も……その、……それを頭に被っても……いいかな?」

 僕がそう言った直後、


「「……は?」」


 なぜか泉水と店員さんが絶句して固まりました。え? 僕なにかおかしなこと言った?

 店員さんは震えながら両手で自分の口を押さえ、泉水は顔を少し青くさせて僕を見てきます。

「あ……」

 ようやく泉水が声を絞り出すように発しました。

「……あんたが、そ、…そう言うなら私は、その…、と、止めないけど……」

 ……なにかがおかしいです。

 まるで犯罪者を見るような目で見てくる店員さんもそうですが、泉水が少し震えながら顔に冷や汗を浮かべて見てくるのに嫌な予感がします。

 僕はハテナマークをいくつも浮かべながら、ふと、僕は視線を下に向けました。

 そこは泉水の手元。


 ……そうして僕は見てしまうのでした。


 その手元に…………女性用の下着、…………つまり………、


 パンツ。


 があるということを。

「………え…と………」

 さて、状況を整理するとしよう。

 泉水がパンツを持っていました。なぜ? あ、そういえば、帽子売り場の隣は下着売り場でしたね。……で、そこに少し興奮状態の僕が近付き、言ったのですよね。

 ……あれれー?

 ボクハナニヲイッタンダッケ?

 タシカ……。



『僕も……その、……それを頭に被っても……いいかな?』



 頭に被ってもいいかな?


 …………ナニヲ?


「ち、違う!!!!」


 導き出された答えに気が付いた瞬間、僕の口から否定の言葉が吐き出されました。

 これは断固否定しなくてはいけません!

 だってそうしないと、さっきの僕の言葉が、

『僕も……その、……それ(パンツ)を頭に被っても……いいかな?』

 になるじゃないですかァアアアア!!

 しかも頭にってなんだよ! なんでわざわざ頭にって付けてるんだよ僕は! くそぅ! これは運命の悪戯か!? ……いや、違う! これは………貴様の悪戯か作者ァアアアアアア!!!!(注※錯乱中)

 これだと僕は変態でもド変態でもない! 超変態になってしまいます! 早く五階を……じゃなくて、誤解を解かなくては!

「違うんだ! 僕が被りたいって言ったのは泉水の、」

「わ、私の!?」

 泉水が一歩後ろへ下がり、その前に店員さんが泉水を守るように立ち塞がります。

「ち、違うよ!! そこで僕の言葉を切らないでよ! 人の話は最後まで聞こうよ! ね!? ……ってオーイ! 早まらないで店員さーん!!」

 非常ベルを押そうとする店員さんを必死で止めます。

「お願いします! 僕の話を聞いてください! なんなら土下座だってしてみせますよ!?」

 僕はその場に土下座をします。プライド? そんなもの、とうの昔に捨てました。

「キャー!」

 しかし悲鳴が上がります。なんで!?

「ち、痴漢よ! この人スカートの中を覗こうとしたわ! この覗き魔! 盗撮魔! 変態! 性犯罪者!」

 どんどん僕の呼び名が増えていきます。もう死にたい気分です。


 そうして、泉水が『話ぐらいは聞きましょうよ』と助け舟が出るまで、僕は店員さんに罵られ続けるのでした。……ちなみにその頃には、僕の呼び名は『ドM』となっていました。






(つづく)


 
 
山羅「今回の僕……可哀想すぎる……」

泉水「読者にとっては愉快痛快なんでしょうけどね」

山羅「……確か今回で泉水編が終わる予定だったのに『いいネタ思い付いたァ!』ってテンション上がって創ったら長くなったみたいだね。このふざけたネタのせいで……」

泉水「なので泉水編最終話は次話に持ち越しね。たぶん短くなると思うけど」

山羅「さて、今回ももしもシリーズをしようかと思います」

泉水「作者はなにをしているんだ? という作品創りが遅い疑問に答えるため今回は【もしも作者をネタにしたら…】というお話にしたわ」

山羅「つまり長々とした言い訳です」

泉水「ちなみに、以下のは全て実話だからね」


【もしも作者をネタにしたら…】

エピソード・1
【猫に悶絶】

 私は実家で猫を三匹飼っているのですが、そのうちの一匹が私によくなついてくれるのです…。

 ご飯を食べているとその猫が私の膝に乗ってきてゴロゴロと喉を鳴らし、見上げるように私の顔を見てきたときはもう萌え死にましたね。(可愛すぎる……!)って思わず顔を真上に反らしましたよ。

 で、その猫に構ってると、ご飯がいつも冷めてしまいます。えぇ。後悔なんてありませんとも。

 ただ、それだけのお話です。

 えーと、つまり。実家に帰ると猫といることで精一杯なわけですよ。

 ……そして実家の家族も生きるのに必死なのですよ。親会社が潰れたからね。


エピソード・2
【仕事中に思わず】

 もちろん仕事中でも小説の構想を怠らない素晴らしい私。そのときも私は暇な時間を潰すために構想を練っていました。

「えーと……泉水編はこうこうあれしてそうしてこうなってそうなってああなると……」

 そうして休み時間。泉水編の構想を携帯に打ち込んでいると、あることに気付いたのです。

「しまったぁあああ! 百合編のことを忘れていたぁ!!!」

 思わず口に出してしまいました。

 横をちらりとみると先輩が『なにを言ってるんだ?』という目をしていました。

 ……そんな、とりとめのない話。

 泉水編、日登美編だけ考え、百合編だけを考えていなかった悲しいお話です。


泉水「最低ね……」

山羅「か、勘違いしないように。ゆ、ユーちゃんの話にネタを入れ忘れていただけの話だから、ちゃんと百合編のストーリーはできてるから」

泉水「そんな補足いらないわよ。作者の話ってつまらないってことよ」

山羅「それはそうだよ。作者のネタはほとんど山羅くんに出してるんだから」

泉水「じゃあ見たことがあるやつでいいからネタ見せなさいよ作者」


エピソード3
【体育館にて】

 その昔のこと。

 体育館でつまらない校長の話を聞いていたら、隣から友達が話しかけてきました。

「あーあ、つまんねぇなぁホント」

「そうだねぇ」

「なんか面白いことないかなぁ。……あ、そうだ。なぁ紫水」

「なに?」

「今から死んでくれないか?」

「なにその残酷な要求? どこが面白いんだよ」

「いやいやいや、意外性があるだろ?」

「あるとしても事件性だろ。笑い話にもならんよ」

 まあ、こうして山羅くんにて笑い話になるわけですが。ちなみにこのネタは【怪しい転校生】にて使っています。


泉水「ちなみにその友達って他にもいろいろネタを提供してくれたのよねー」

山羅「うん。【まともじゃない奴ら】では大半その人とのネタだし」

泉水「とまあ、こんな感じで今回も終わりにしましょうか」

山羅「うん、そうだね。それではまた次回〜」

泉水「感想とかお願いしま〜す。こういうことしてくれっていう要望があったら大歓迎でっす」

山羅「頼むから『一回山羅くんを殺してみない?』というのはやめてくださいね〜」

泉水「まあ、もう何度も死んでるけどね〜」

山羅「うぅ……(涙)」


最近はサッカーに強制参加させられ土日休みがありません。
誰か、……誰か助けてください!
私は家でゆっくりしたいんだぁ!!

……以上。もうすぐ二十歳だというのに体力が四十代並の紫水晃でした。











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