山羅くんの不幸(28/69)PDFで表示縦書き表示RDF


 初めて見る人とすでに見た人のために少しだけ加筆修正しました。
 しかし、短編のまともじゃない奴らは削除したのになぜ消えないのだろうか? ……よくわからない。

 さて、次は第5話の最後の次の日……つまり土曜日の話ですが、外伝その3です。主人公が違うので。
山羅くんの不幸
作:紫水晃



外伝その2 まともじゃない奴ら


 

 俺、斑鳩新明いかるがシンメイにはまともな知り合いがいない。それは聖帝第一学園に入学してからずっとだ。

「新明、金くれ」

 小等部からの友人がいつものように金をせびってくる。この時点でもうろくでもない奴だとわかるが、続きを見てくれ。

「嫌だよ」

「まあ、そう言うなって。十倍にして返すからさ」

「その根拠は?」

「今日か明日、銀行強盗の事件が報道されるはずだ」

「………………」

 ……後日、彼は退学処分となった。

 俺が貸した百円は、二度と戻ってこない。


 他にも。


「斑鳩くん、ちょっとこっちにきて」

 俺は呼ばれたので、仕方なしに近寄った。

「なに?」

「私、あなたのことが好きなの!」

「へぇ、そうなんだ。じゃあ後ろ手に持ってる録音器はなにかな?」

「……チィ! 笑い者にしてやろうと思ったのに。あーあ、しらけたわ」

「その前にお前オトコだろ。俺にはそんな趣味ないよ」

 ってかあってたまるか。


 まだあるぞ。


 ちょいと未来の話になるが、バレンタインのときになる。

 いつもよりそわそわしている男子達が、期待を込めて女子達を見ていた。チョコくれよ。

 女子達は嘲るような冷ややかな目で男子達を見ていた。誰がやるか。

 俺は、毎年いつも後輩から貰えるので物欲しくはならないが……そういや俺、なんで年下に好かれやすいんだ?

 その疑問に前の席の吉本が答えた。

「それは君がロリコンだからだよ」

「死にやがれ」

 そう言い捨て、ふと廊下を見ると、噂の二人が言い争いをしていた。そのうちの一人はずっと前に、ある趣味で友人になった奴だ。

「存さん、今日はバレンタイン伯爵が撲殺された日ですよ!」

「喜び方が違いすぎる!? 普通にバレンタインデーって言ってよ!!」

 山羅存と諏訪日登美。
おそらく学園中に知らぬ者のいないお騒がせバカップルだ。他にも泉水桐花と真中百合を愛人にしているという情報もある。変なことを言う諏訪にツッコミしているが、それでも満更でもなさそうな顔で、彼はハート型の包み紙を受け取っていた。……なるほど。男子達がなぜ激怒するかよくわかる。なんかムカつく。

「開けてみてください」

「え、ここで? ま、まあいいけど」

 そう言って彼は包み紙を開き、ゆっくりと箱を取る。そうして出てきたのは、甘くて黒い……、

「に、ニトログリセリン……?」

 俺は思わず呟いた。

 なにか重油のように粘っこい固形液体? が視界に入ったのだ。しかもこの前の授業で匂ったニトログリセリンと同じ匂いがする。

 彼は固まっていたが、やがて【………】よりはマシのはず、と少し聞き取りにくかったがそんな呟きが聞こえた直後、それを口に運び、……倒れた。

「………………死ぬな」

 俺は期せずに彼が最期に呟いた言葉を呟いていた。

 これはまともじゃない知り合いではなく、不幸な知り合いだな。


 まだあるんだなこれが。話を今に戻そう。


 俺のクラスには超常現象好きのバカが二人いるのだが、いつも俺の隣の席で討論するから鬱陶しいことこの上ない。

「絶対幽霊だって!」

「ああ、テレビは真っ黒なのに聞こえてきたあの声は絶対幽霊だ! お前もそうだと思うだろ斑鳩!」

「はいはい。壊れたビデオデッキから声しか聞こえないので幽霊がでたと被害妄想してるんだな。俺が責任もって病院紹介してやる」

 俺は気だるそうに言う。

「違う!」

「安心しろ。医者はヤブ医者だ」

「ダメじゃん!」

「ちぇっ、お前が心霊現象好きだって言ってたから話を振ってやったのによ!」

「誰がなんだって?」

「そうだそうだ! だから超常現象研究部に入れ」

「ハハハ、言ってもないことが聞こえるのか。お前らの頭ん中ですでに超常現象が起きてるんじゃないか?」

 そこで授業開始のチャイムが鳴る。

「俺達の頭の中ですでに超常現象が……!」

「部長に報告だ!」

 授業が始まるというのに出ていくバカ達。

 ……あ、俺が煽ったせいか?


 その翌日だ。


「昨日、ユーフォーが現れたんだ!」

 今度はそれか。

「びっくりしたぜ!」

「そうかそうか。じゃあ今すぐ病院の精神内科に行ってみな。俺以上に親身になって聞いてくれる人がいっぱいいるぞ」

「え、マジで!?」

「行こう遠山!」

 そうしてバカ達は去る。俺は欠伸をすると、机に突っ伏した。

 そして翌日から、バカ達は学校に来なくなった。

 おそらく、精神内科の先生達といろいろなお話をしていることだろう。


 これで最後にしよう。ちょいと長いぞ。


 あれは朝のHRのときだったかな。

「突然ですけど、転校生です」

 ホントに突然だ。

「女の子ですよ」

 男達から歓声が上がる。安心しろ。期待するような美少女だったらお前らは絶対に相手にされないから。

 俺はそんなことを思いながら前を見る。

「皆さんに紹介します。斑鳩希望さんです。入ってきてください」

 ワーワー、パチパチと歓迎される中、彼女は姿を現した。

「…………は?」

 艶やかな長髪。少し寂しい胸元を補うかのような淡麗な造形。女子も思わず息を詰めるような美少女がそこにいた。

 というか、俺のよく知る人物だった。

「義兄さん!」

 黒板の前に立たずに彼女はいきなり俺の座ってる席にくると、

「ぬぁっ!?」

 将来を心配してしまうような怪力で俺を無理矢理立たせ、抱きついてきた。

「お、おい」

「あー、久しぶりの抱き心地だー……最高ぅ」

 ごろごろと喉を鳴らしながらすりついてくる。それをぽかんと先生と生徒達は眺めていた。

「……希望、そろそろ離れろ。自己紹介まだだろう」

「うーん……じゃ、このままで!」

 すると俺に抱きついたまま彼女は自己紹介を始めた。

「初めまして。斑鳩希望です。きぼうと書いてのぞみです。この斑鳩新明の義理の妹です!」

 元気よく自己紹介する希望にほんの少し懐かしさに浸りながらも、

「ほら、離れな。さっきから義理の妹という言葉に過剰な偏見を持つ男子生徒三名が目を血走らせてしかも泡を吹いて気絶寸前ながらも殺意という強固な意識を持って睨んでくるだろ?」

「うん、わかった。あれが世にいう変態さんなんだね!」

 素直に離れる……かと思いきや、体からは離れたが腕を組んで離さない。

「…………仕方ないな」

 ま、いいか。会ったときから希望はこんなだし。

「あの、斑鳩くん?」

 担任の先生・保志利津子……永遠の二十三歳(独身)がにこにこ笑いながら言った。

「義理だからといって妹とそんなことしてるの?」

 そこで、なにかしらけたような雰囲気になっていることに気付く。生徒達から嫌悪と侮蔑の視線がきている。なぜだ?

「いや、今、一年ぶりの再会なんです」

「嘘でしょ?」

「生徒を信じろよ」

「本当なの?」

 希望に聞く。おい、なぜ信じない?

「そうです。だから私、義兄さんの隣の席に座りたいです!」

 俺の隣の席は遠山だ。しかし席は空。今は病院で違う意味の先生(つまり医師)と話をしていることだろう。

「じゃ、希望さんはそこの机の中身を退けて座って」

「遠山はどうなる?」

「エイリアンが地球に来たという証拠物件として持っていったと言えば納得するわ」

「あんた最低だな」

 保志先生は松下の机の中身をいそいそとナイロン袋の中に詰めた。……なにしてるんだ?

「じゃ、先生はこれを焼却炉に持っていくから、みんなは希望さんとお話ししててね」

 さらっととんでもないことを言いながら教室を出ていく。もちろん、

「遠山くんと松下くんには内緒よ。じゃないと怖い人がいる事務所に腹に爆弾を巻いて突っ込ませるからね」

 口止を忘れていない。冗談に聞こえないから怖い。……冗談じゃないんだろうな。

 そうして、この時間は希望の自己紹介タイムとなった。

「抱かせてくれ」

「消えろてめぇ」

 しょっぱなからげんなりするような質問だ。俺はとりあえず二階から突き落とす。ま、下のなぜかあるトランポリンで大丈夫だろう。他の奴らも次々に質問していく。

「希望ちゃんは斑鳩なんかが義理の兄貴で嬉しい?」

「なんだよその質問」

「嬉しい。結婚できますから(ポッ)」

「斑鳩! アンタ最っ低ね! 調教するなんて!」

「調教ってなんだ?」

「い、妹プレイ……」

「なんてプレイをしてるんだ!」

「逆に聞きこう。どんなプレイだ」

「信じられない……人じゃないわ!」

「俺はみんなの思考が信じられない」

「希望さん……悪いことは言わないわ。殺しなさい」

「それ悪いことだろ」

「え、と……みんな義兄さんが嫌いなの?」

「「「大ッ嫌い!」」」

「俺もお前らが大嫌いだよ」

「気にするな斑鳩。俺はお前を害虫以下としか思ってないから」

「もっと最悪だな」

「でも義兄さんは凄い人なんですよ」

 希望が弁解すると思ったが、違ったようだ。

「なにが?」

「夜になると……(ポッ)」

「何!? 夜になると凄いのかコイツ!?」

「え、そ、そんなに凄いの……?(赤面)」

「あ、案外そうなのかも……(赤面)」

「絶倫?(涎)」

「つ、つまり下のも凄いのか?(驚愕)」

「クッ……所詮俺らはマイナー級。メジャー級のバットには勝てないのか……(悔し涙)」

「凄いなぁ。みんなの妄想って(侮蔑)」


 とまあ、こんな感じで、まともな知り合いがいないわけだ。最近では家族すらもまともに見えなくなってきた。

 だから俺は最近知り合った切手マニアの少年にこの学園はいいぞと嘘を吐いた。

 見るからに不幸体質そうだったからな。面白半分に勧めたんだよ。

 さっき話したバレンタインのときの奴がそうだ。

 それは見事大当たりしたから俺は満足している。

 ん? なぜそんなことをしたかって?

 だってさ、つまらないだろ。

 面白みもない学校生活なんてよ。

 まともじゃないから普通なことなんてない。

 それが楽しければ、俺はそれでいい。

 だからあいつを誘ったのさ。今よりも俺を楽しませてもらうために。あいつにはもっともっと不幸になってもらう。今よりも俺を楽しませてもらうために。

 まともじゃない友人の話をしていて、不満があるのかと思われがちだが、聞いていて楽しかったろ? まあ、そう思うのは人それぞれだけどさ。

 まともじゃない奴は大歓迎だ。

 幸い、この学園にはまともじゃない奴らが多い。

 それにより山羅存が不幸になるのだから面白くなるのではないか。そう思うのは俺だけか? 違うはずだ。

 まともじゃないから非現実的で面白い。

 ……まあ、こんな俺が一番まともじゃないかも知れないけどな。俺自身、あまり面白くなくてすまんが。






(おわり)


 
 
新明「外伝ってことで俺と、」

希望「私と、」

泉水「私で進行するわ!」

新明「誰だてめぇ」

希望「本編キャラは消えてください」

泉水「黙れ」

新明「……なぜに釘バット」

希望「人夢可酒、前のヤンキー?」

新明「一昔、前だぞ」

希望「いや……ひとむかしで変換したらでたからつい」

泉水「それにしてもよかったわね。作者の勘違いで山羅くんの不幸からさよならになった二人よ」

新明「この見下した目」

希望「余裕の表情……」

新明「ムカつくな」

希望「尊敬します!」

新明「……にいちゃん、義妹の将来が心配だぁ」

希望「なに弁? なまってるよ?」

新明「俺もわからん」

泉水「さて、二人ともなにか言いたいことある?」

新明「眠い」

希望「義兄さんと寝たい」

泉水「じゃあ寝ろよ」

新明「わかった……グー」

希望「やった! ……グー」

泉水「…………」

新明「グー……」

希望「グー……」

泉水「……本当に寝たからこれで終わりにしすわ。じゃあ、次回……グー」


毎回なにがしたいんだろこのコーナー。











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