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山羅くんの不幸
作:紫水晃



第18話・不幸な毎日【月曜日編】 山ラ部って、なに!?


 



 月曜日。

 昨日の僕のコレクション玄関勢揃い事件を見たときは、疑問よりもまず恥ずかしさが僕を襲いました。日登美は外に待ってもらってすぐに片付けた僕は、なにか盗られてないか日登美と一緒に調べましたが、なにも盗られてないようでした。……犯人はなにがしたかったのでしょう。

 それはまあ置いといて。

 この日は部紹介のある日です。三時間使ってそれぞれの部紹介をし、そのあと教室でどこの部活に入るか紙に書いて提出するのです。マイナーな部活からメジャーな部活まで紹介するので、結構時間が掛るみたいですね。中学生の頃は泉水と同じ空手部に入っていた僕ですが、高校では入りません。え? なぜかって?


 ……それは中学生の頃の記憶。


……………………………


〜エピソード1〜
【人体実験】


「存ー、人は何度殴られたら死ぬのか実験してみない?」

「残酷すぎるその実験になんの意味が!? ……ちなみに、モルモット(犠牲者)はやっぱり?」

「もぅ! 存に決まってるでしょ♪」

「そりゃそうだよね! あはははは! ……全ては生きる為にぃぃ!!」


 ……そのあと追い掛けてくる泉水から生きる為に必死に逃げました。


〜エピソード2〜
【試合(死合)】


「そろそろ存の試合が始まるわよ」

「そうなの? なにがなんだか分からず無理矢理ここに連れてこられたけど……よし! そんなことなら僕、行ってくるよ!」

「頑張りなさい! 相手は“泉水流・血霧暗殺剣”の使い手だから気を付けるのよ!」

「うん! …………は? え、ちょっと待って。なに言ってるの泉水?」

「なにって……あんたの対戦相手のことだけど」

「えーと……僕は空手の試合をしに行くんだよね?」

「ええ、そうよ? あんたは空手でこの【殺死合ころしあい】っていう裏試合に出るのよ」

「なにその試合!? 聞いたことないよ!?」

「あんたの大好きな“裏”だからね」

「別に好きじゃないよ! ってかさっきの“泉水流・血霧暗殺剣”ってなに!?」

「私が編み出した暗殺剣術よ。存をどう殺そうか試行錯誤してたら偶然産まれたの」

「嫌な誕生秘話だなオイッ!」

「ちなみにだけど、対戦相手は私ね♪」

「それは薄々は感付いてたけど…………こんな試合出られるかぁ!!」


 僕はすぐに逃げ出しました。……後日、泉水と(一方的な)殺し合いをすることになりましたが。


〜エピソード3〜
【一撃必殺】


「ねぇ存、刃物を持った手で正拳突きしてもいい?」

「一撃必殺!? 絶対嫌だよ! 文字通り一撃で必ず殺されるじゃん!」

「でも、万が一ってこともあるはずよ」

「君に限ってそんなことあるわけないだろ! この全身凶器め! そんなに君は僕を殺したいのかっ!」

「当然っ!」

「クッ、……もう頭にきた! 泉水! さすがの僕も怒るよ!」

「へぇ……。やる気なの?」

「う……、……うん! や、やってやるさ!」

「……面白い! 殺れるもんなら殺ってみろッ山羅ァァ!」

「ち、ちょっと待って! なんで部長が殺る気満々なの!?」

「泉水の姐さんの敵は俺の敵じャァァい!!」


 ……空手部部長との死闘は二時間に渡りました。つまり、二時間ほど逃げて捕まったということ。


……………………………


「絶対に空手部なんて入るもんか……!!」

 僕は握り拳を作り、グッと自分に改めて誓いを立てました。

「では存さんはどの部活に入るのですか?」

 もう隣にいるのが自然となってきた日登美が僕に尋ねてきました。

 今、僕達は体育館で部紹介が始まるのを待っているところです。

「とりあえず、体を動かす部活に入ろうかなと。僕、こう見えてスポーツ全般は得意なんだ」

「復讐者に鍛えてもらったからですよね」

「あ、やっぱり知ってたか。うん。『お前、このままだと泉水に殺されるぞ』と言われて、僕も常日頃いつ殺されるか戦々恐々としてたから『助けて!』って頼んだら『自分の身は自分で守れ。……まあ、それまでは鍛えてやるよ』ということで鍛えてもらったんだけど……」

 僕は遠い目をします。

「……僕が強くなれば強くなるほど、泉水も強くなっていくからなんの意味もなかったんだよなぁ」

 今や空手界のトップに君臨するあの覇王を育てたのは、ある意味では僕なのかも知れません。

「日登美は……いや、やっぱりいいや」

 僕も日登美が何部に入るか聞こうと思いましたが、僕と同じ部活に入るんだろうなと思って聞くのをやめました。

 しかし、どうやら違うようです。

「私は部を創ろうかと思っているんです」

 意外でした。僕と同じ部に入らずに部を創るとは。確かに顧問と規定人数を集めたら部活を作れるようですが、日登美は何部を創るのかな?

「へぇ、何部?」

「山ラ部です」


 ……………………。


「…………………………あ、ごめん。よく聞き取れなかった。何部ダッテ?」

「山ラ部です。正確には、山羅存とラブラ部で、略して山ラ部です」

「……………………へぇ。参考までに聞くけど、……ナニヲスル部活ナノカナ?」

「はい。夜は誰よりも熱い存さんの、女装姿がブログランキング一位になった存さんによる、どんなに自分が絶倫なのかを世に知らしめようとする存さんの為の部活です」

 僕は大きく息を吸い込みました。

「君は――!」

「もう始まりますよ?」

 どこまで僕を陥れたら気が済むんだァァ!! と怒鳴ろうとしたところで口を塞がれます。……うぐぐ! あとでちゃんと聞くからね! ってかなんで僕の女装姿がブログランキング一位なんだ!?

 そんな苦悶と葛藤しながら、僕は部紹介に意識を向けました。


……………………………


【サッカー部】


「どうも、サッカー部です! 先に一つ言っときます! ボールは友達じゃない! ボールは『恋人』だァ!! ああキャサリン……君は今日も美しい…美しすぎる! 君の滑らかなボディを蹴るなんて考えただけでもおぞましいよ。……え? あの女は誰かって? ち、違うんだキャサリン! あれは浮気じゃない! ただ、投げてくれって言われたから投げただけなんだ! 野球ボールになんか興味ないよ!」


 いい感じに終わってました(人が)。ここのサッカー部はみんなこうなのかな?


【ジョジョ部】


「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!」

「ロードローラーだッ!」

「なにをするだァー!」

「貧弱貧弱ゥ!」

「メメタァ!」

「ジョ、ジョジョ部に入れば本当にジョジョ全巻があるんだな?」

「ああ、全て初版だ。入れば好きなだけ読めるぞ?」

「だが断る」

 部紹介としてはダメじゃん。……でも、別の意味では楽しそうな部活でした。


【ストーカー研究部】


「我々は、ストーカー心理学の研究をしている。……ここで一つ残念な知らせだ。我が男子部員がストーカーの被害に遭う女子生徒の家に行き……」

 悔やむように顔をしかめます。

「……警察に捕まった。彼こそがストーカー本人だったのだ。まさか我が部員からストーカーが出るとは……面目ない」

 え、と……こんな部紹介で部員は確保できるんですか?

「現在いる部員三十八名は二度とこんなことにならないことを誓います」

 結構いるんですね。


……………………………


 昼休みになりました。

 部紹介のときは本当にいろいろな部活があったので迷いましたが、僕は何部に入るか決めてプリントを提出しています。

「存は何部に入るの?」

 泉水が弁当持参で僕の椅子に座りながら聞いてきました。僕は床に座って理不尽な想いを抱きながら食べていたのを中断して答えます。

「剣道部に入ることにしたよ。朱雀がよく剣道はいいぞって言ってたから興味あったんだけど、さっきの部紹介でした『秘剣・紅三日月こうみかづき』を目にしたらどうしようもなく入りたくなっちゃった」

「ふーん……」

「泉水はやっぱり空手部?」

「いや違うわ。私、部を創ろうかなと思ってるから」

 意外でした。小学生の頃から空手バカだった泉水が空手部に入らないなんて。

「え、泉水も? 何部?」

「山ラ部」


 ……………………。


「…………………………あ、ごめん。よく聞き取れなかった。何部ダッテ?」

「山ラ部よ。正確には、山羅存をぶっ殺したい奴に無料でマーダラーライセンス(殺人許可証)発行部。略して山ラ部」

「……………………へぇ。聞かなくてもわかるけど一応聞くよ。……ナニヲスル部活ナノカナ?」

「あらゆる凶器の扱いをマスターし、どんな状況でも任務を完遂する判断力・実行力・応用力を育成し、完全犯罪を成功させる為の知識を養う部活よ」

「最先端の犯罪教育!? やめてよそんなの! この国を犯罪大国にするつもりか!」

「そういえばユーちゃんの姿が見えないけどどこにいるの?」

 ……話をそらされました。

 僕は泉水の創る部活を全力で阻止することを誓うと共に答えました。

「……昼から『いいとも!』にゲスト出演するからいないんだよ」

 人気アイドルは忙しいのです。

「……ってか、君もユーちゃんって呼んでるんだね」

「昔からね」

「え、えぇっ? じゃあ昔からの友達ってこと?」

 僕と泉水は昔からの幼馴染みですが、泉水の友達の中にアイドルがいたなんて初耳です。

「いつ知り合ったの?」

 僕が聞くと、ジトーとした目で僕を見てきました。

「な、なに?」

「……なんでもないわ」

 泉水はごくごくと水筒のお茶を飲むと立ち上がりました。

「教室に戻るわ」

 そう言って教室から出ていこうとすると、ちらりと僕に振り返ります。

「……あんた、お姉さん好きにもほどがあるわよ」

「……は? えっ、な、…ど、どういう意味だよ!」

 僕の疑問に薄い笑みを返し、泉水は去っていきました。

「なんなんだよ……」

 僕は釈然としない思いを抱きながらも、弁当を持って立ち上がり椅子に座りました。

 すると、今まで会話に参加せず僕と泉水のやりとりを見ていた日登美がようやく口を開きました。

「私もそう思います。存さんは他のジャンルにも手を出さないと」

「……なんの話?」

 …………なんとなく予想できましたが。


……………………………


 放課後になりました。

 今日はクラスメイトは騒がしくなかったですね。ただ、授業中にときどき聞こえてくる『完全犯罪か…』という呟きにはホント参ります。

「……はあ、ようやく帰れるね。月曜日は休み明けだからなにかと疲れやすいや。……でもっ、なにも起きなくて本当によかった!」

 金曜日に起きた男子生徒達の暴動を思い出してブルルと震えます。なにも起こらなくて本当によかった。やっと帰れるという気持ちで隣にいる日登美にそう言うと、妖しい笑みを向けられました。

「でも、まだ月曜日です。明日からなにが起こるかわかりませんよ?」

「え、なにその予言みたいな忠告? ってかほとんど君のせいなんだからね!?」

 僕が詰め寄ると、日登美は笑いながら駆け出しました。……に、逃げたっ?

「ちょ、ちょっと待ってよ!」


 ……あ、それから僕の女装姿がブログランキング一位ってどういうこと!? 僕はそれを追求するべく、日登美の背中を追い掛けました。






(おわり)


 
 
山羅「どうも、山羅です」

泉水「つまり、変態です」

山羅「違うから!?」

諏訪「ここでは裏話をキャラクターの口から語るコーナーです」

泉水「つまり制作秘話」

山羅「本当ならこのコーナーはプロローグからあるはずだったんだけど…」

泉水「存が住宅街を裸で走ったからおじゃんになったのよね」

山羅「なにその設定!? やめてよそんな虚実は!」

諏訪「今回はこの『山羅くんの不幸』の話数の話をします」

泉水「何話で完結するようにしてるんだっけ?」

山羅「確か8話で完結する予定だよ」

泉水「早いわね。早すぎるとモテないわよ存!」

山羅「なんの話だよ! ……でも、3、4話はもう一つの別の話の宣伝として作ったらしいから増えるかも」

泉水「え、そうなの?」

山羅「うん。シリアス部分はほとんど朱雀のためだからね」

泉水「それじゃあ今は何話完結予定なの?」

諏訪「10話ですね」

泉水「やっぱり短いわね」

山羅「読者の声援があれば増えるかも知れないよ?」

諏訪「それはないです」

山羅「え、そうなの?」

諏訪「冗談です」

山羅「ここでもかよ!」

泉水「確かプロローグ時点ですでに全てのタイトルは決めてたらしいわね」

山羅「うん。4『不幸な毎日』5『トリプルデート!?』6『それぞれの気持ち』7『過去の傷痕』8『答えは…』エピローグ『災難の始まり』で、そのタイトルに沿ったストーリーを作るようにしてたみたい」

泉水「ふーん。存は結局最後は誰とヤるの?」

山羅「しないから! これは全年齢だから!」

泉水「つまり、全年齢じゃなかったらするの?」

山羅「え?」

泉水「どうなの?」

山羅「……そ、そりゃあ全年齢じゃなかったらそうなるわけで………、……え、なにこの空気?」

諏訪「とりあえず今回はこれで終了します」

泉水「感想待ってるわ」

山羅「うわ変な空気で終わった!」

 感想、ご意見お待ちしております。











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