アーカイス魔法学校物語‡ドラウプニルの腕輪‡PDFで表示縦書き表示RDF


アーカイス魔法学校物語‡ドラウプニルの腕輪‡
作:青牙 ゆうひ


「ジャス!早く起きないと遅刻するよ。」
 すがすがしい朝、暑くもなく寒くもないという丁度良い気温で、快晴。窓の外からは朝の陽射しが差し込んで鳥のさえずる声が聞こえる。
「んぁ〜、先に行っててアウル〜。」
 アウルと呼ばれた少年の前にあるベットから手だけ出してヒラヒラとしている。
「ったく。今日から授業が始まるってのに……。もう八時十五分だよ。」 アウルは自分のカバンに教科書を詰めながら言った。
「ちなみに授業って何時から?」
「八時半。」
「マジで!?」
 布団を勢いよくはねのけ、中から黒髪の少年が現れた。
 彼の名前は、ジャスティル・サウストール。この物語の主人公である。







 ここは《アーカイス魔法学校》。名前の通り魔法の教育を行う学校である。
 この世界には魔法が存在し、家事、スポーツ、軍事など、全が魔法でなりたつ、言わば魔法中心の社会だ。
 各地には魔法学校があり、その中でも《アーカイス魔法学校》はかなり古くからある由緒正しい学校である。
 この物語はそんな魔法学校に通う少年ジャスティル・サウストールと彼を取り巻く仲間達の物語である。








「遅れてすみませ〜……」

〈パァン〉

 ゆっくりとドアを空けたジャスの額で乾いた破裂音が鳴り響き、白い粉末が飛び散った。
「ほぉーう。最初の授業から遅刻するとは、余裕ですね。名前は?」
「ジャスティル……サウストールです……。」
 額をおさえながらジャスは答えた。かなり痛かったのか、少し涙ぐんでいる。
「では、サウストール。席に着きなさい。」
 そう言われてジャスはそそくさとアウルの隣の席に向かった。
「さっき言い忘れましたが、私、ハールスト・テーリーの授業で遅刻、居眠り等をしたら、さっきのような《チョーク弾》が飛んでくるので気をつけるように。」
 ハールストはちらりとジャスの方を見た。
 かなりの高齢のようだが、声に張りがあり、半月眼鏡をかけたその目はとても鋭かった。
「初日から遅刻なんてやるな〜。」
 ジャスが席に着くと、隣でアウルが笑みを浮かべながら小声で話しかけてきた。
「うるっせーよ。ていうか何だよあの先生。すごく痛いんだけ……。」
〈パァンパァン〉
 再び白い弾丸がジャスとアウルの額に直撃した。
「そこの二人。私語は慎むように。」
「「はい……。」」




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




〈コォーンコォーン〉

 授業終了の鐘と共に生徒達が教室からゾロゾロと出て来る。
「いってー、あの先生。投げたチョーク全部当たったぜ?」
「多分コントロール魔法かなんかだよ。あんな真っ直ぐに飛ぶなんてありえない。」
 二人はブツブツと文句を言いながら教室をでた。
「もぉ〜、おでこ真っ赤じゃない。あの後なん回投げられたの?」
「おっすイリア。」
 話し掛けてきた少女は二人の幼なじみ、イリア・ホールスンである。
 エルフ特有の尖った耳で銀髪をポニーテールに結っている。
「二人とも手どけて。初日からそれじゃあみっともないでしょ。」
 ジャス達は言われるがままに抑えていた手をどけた。チョークの当たったところはさっきよりもひどくなり、内出血している。イリアはそこに手をあてて呪文を唱えた。
「《ヒール》」
 ジャスは額が温かくなり、ズキズキとした痛みがだんだんと和らぐのを感じた。
「さっすが治癒術師の娘。もうほとんど痛くないぜ。」
「今日は特別よ。あんまり魔法ばかりに頼ったら自分の自然治癒力が弱まるんだから。」
 イリアはため息をつきながら言った。
 昔からイリアは三人の中で一番冷静で、いつも子供っぽいふるまいをするジャス、アウルのお守り役の様になっている。
「ところでジャスってまだ朝ご飯食べてないんでしょ?どうせ次の時間は授業無いし朝ご飯食べに行かない?」
「あっ、そういえば。じゃあ今から食堂へ行こうぜ。」
 アウルの言葉に自分が朝ご飯も食べてなかったのを思いだし、突然腹の減りに気付いた。
「じゃあわたしも行こうっと。」
 そう言いながら三人は横に並んで食堂に向かった。
「なんだよ、着いていくんのかよ。」
「いいじゃない。私もヒマなの。」
 他愛もない話をしていると、アウルが突然何かを思い出したように話だした。
「ねぇねぇ、『隠れ倉庫』って知ってる?」
「なぁにそれ?」
 ジャスとイリアの二人は頭に疑問符を浮かべながらアウルの方を見た。「この学校にある隠された部屋らしいんだけど、学校が建てられた時からあって、時々決まった周期でその部屋への入口が出現するんだって。」
「で、それがどうしたんだ?」
 話しているうちに食堂に着いた三人は長いテーブルに座り、食事を注文する。ジャスは既に食べ物の事しかなかった。
「でね、その部屋には……あ、先に注文してもいいよ。」
 メニューを持ってうずうずしているジャスを見てこのままでは話も聞かないだろうと思いアウルは苦笑しながら言った。
「じゃあ、お言葉に甘えて。《トーストとベーコンエッグ。飲み物はコーンスープ》で。」
 ポンッという心地よい音と共にテーブルにジャスが注文した品々が現れた。
「で、ほの部屋に何がはふっへ?」
 さっそくトーストを口に頬張りながらアウルに話の続きを聞く。
「その部屋にはね、『願いを叶えてくれる精霊』が封印されてるんだって。」
 アウルは幼い子供のような笑顔で語りだす。
「でさ、今晩その部屋を探しに行かな……」
「だめよ! そんなもの探しに消灯後に部屋からでるなんて。先生に見つかったら罰則よ。」
 アウルの言葉を遮り、イリアが注意をうながす。別にアウルに怒っているわけでなく心配なだけだ。
「それに『願いを叶えてくれる』のにわざわざ封印されてるなんておかしいわ。ねぇ、ジャス。ジャスもそう思うでしょ?」
 イリアがジャスに同意を求めようと振り返ると、ジャスは興味津々という顔で目を輝かせている。さっき注文したものは全て食べ終わり、ちゃっかりデザートを追加していた。
「もぉ〜、ジャスまで〜。」
 こうなったら二人をとめることはできない。イリアはガックリと肩を落とし、ため息を附いた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




【午後十時】
「よし、《隠れ倉庫》捜しにしゅっぱーつ。」 消灯後だということも忘れて、ジャスはノリノリで廊下を歩く。後ろにはアウル、イリアの順で列んでいた。
「ちょっとジャス。静かにしてよ。見つかったらどうするんだよ。」
 暗い廊下には三人が持つランプの光で三本の陰がゆらゆらと揺れている。
「もう帰ろうよ〜。みつかっちゃうよ〜。」
 結局着いてきたイリアはビクビクしながら二人の後を着いていく。
「ところでアウル。その『入口』ってどういう所にあるんだ?」
 イリアの言葉をいつも通り無視して二人は話を続ける。
「色んな所にあるんだって。普通にドアがあったり、絵の裏みたいにわかりにくいトコだったり。」
「へぇ〜、じゃあ結構念入りに調べないとな。」 そう言うとジャスは絵の横を通る度に裏をめくっていく。



「……!?」
 五分ほど歩いたころ、イリアが突然立ち止まった。
「どうしたんだいイリア?」
「ここの床、何かおかしいわ。音がちがうもん。」
 イリアは足元の絨毯を指差しながら相変わらずビクビクしている。アウルが近寄ってみると確かに足音が変わる。何か空洞になっている音だ。
「ジャスー、ちょっと手伝ってー。」
 さっきから絵の裏ばかり探しているジャスを呼び戻し、絨毯をめくろうとする。
「「いっせーのーで。」」
 二人のが一気に絨毯を剥がしたしたには少し小さめの木製のドアが床に張り付いていた。
「まさか……これ?」
「以外と簡単に見つかるもんだね。」
 すでにアウルはドアに手を掛けて開けていた。中は真っ暗で、風が奥の方に吹き込んでいる。まるで三人を誘っているようだ。
「で、誰から入る?オレは言い出しっぺのアウルだと思うけど。」
「一番ノリノリなのはジャスじゃん。」
 いざ入るとなったら二人共怖いらしく、お互い先に入るのを嫌がる。確かに奥はどうなってるかも解らない。飛び降りるのに恐怖があって普通なのだ。
「じゃあ『三人で』じゃんけんしようぜ。」
「ちょっとまってよ。私も入ってるの?」
「だってイリアが勝手に着いてきたんだしねぇ。」
 三人ともあーだこーだと言って中々話が決まらない。と、そのとき。

〈コツコツ〉

 何者かがこちらに向かって歩いてくる足音が聞こえた。
「やばい、見回りの先生だ。もういいや一気に飛び込もう。」
 アウルの一言と共に、三人は意を決して真っ暗な暗黒の中に飛び込んだ。
「うわぁ〜〜〜」

 頭がクラクラし、上下が判らなくなる。ジャスは体がとても重たく感じた。
「ちょっと……、二人共上からどいて……。」
「おっとゴメンゴメン。」
 下からジャス、アウル、イリアの順番で重なっていたのだからジャスの体が重たいのも無理は無かった。
 やっと二人の重さから解放されたジャスはあることに気付いた。
「アウル、あれって俺達が入ったドアだよな?」
 ジャスはそう言いながらアウルの後ろを指差す。
「バカだなジャス。僕らは上から落ちてきた……。」
 アウルはそんなわけないだろうとジャスの指差す方を見た。見た先にはドアがあり、外には見覚えのある壁がある。
「あれって、廊下の天井よね?」
 イリアは信じられないという表情でドアの向こうを見る。確かにドアの向こうにはもと来た廊下の天井があった。

〈ギィィィィ〉

 三人が確認するのをまっていたかの様にドアが独りでに閉まった。幸い明かりは持っているので真っ暗にならずに済んだもののやはり奥は見えにくい。
「どうする?やっぱりやめとこうか……。」
「こ、ここまで来たんだから行こうぜ。せっかく扉も見つかったんだし。」
 そう言うとジャスは闇の中へと進んでいった。 だがいくら歩いても目に入るのは闇とほんの少しの明かりのみ。
「ねぇ、やっぱり帰ろうよ。何も見つからないわよ。」
 いつもは冷静なイリアが半ば泣きそうになりながら二人の手を握りしめている。そんなイリアを見てジャスとアウルも次第に不安になってきた。 闇は人の心を侵食する。どんな人でも何も見えない闇の中に取り残されたら、数分で頭がおかしくなってしまうだろう。ましてやジャスたちはまだ子供。《闇》の恐怖は三人をみるみるうちに飲み込んでいく。
「もう帰ろう!僕達はまだ大丈夫だけどイリアはもう限界だ。」
「ちょっとまて。あっちがなんだか明るいぜ?」 進行方向にはゆらゆらと蝋燭らしき明かりが見えた。だか少し広く、部屋の様になっているようだ。
「やっと着いたぜ。オレ一番乗りー。」
 明かりが見えて気が大きくなったのか早く明るい所へ行きたいためか、ジャスは走りだした。
「あ、ちょっと待ってよジャスー。」
 段々と明るい部屋が近づいてくる。イリアも少し落ち着いたのか何も言わずにアウルに着いて走った。


「スゲーー」
 一番に部屋に着いたジャスは呆然としていた。
 ジャスの目の前にはただっ広い部屋が広がっていた。壁には蝋燭が一列に等間隔で掛けられていて、壁も天井も白い石がしきつめられている。部屋の真ん中にぽつんと少し大きめの机のような石造りの台座があった。
「これが『隠れ倉庫』?」
「倉庫と言うよりただの広間ね。」
 後から来た二人もそれぞれの感想を述べた。
「おーい、二人ともきてみろよー。」
 ジャスは台座の前で手を振りながら大声で叫んだ。ジャスの声は部屋の中を反響し少しの間辺りに響く。
「何かあったの?」
 アウル達がジャスの所へ行くと、ジャスはしげしげと台座の上で金色にひかる物体を見つめていた。
「ほらアウル、これ見てみろよ。」
 ジャスが指した先には何やら古い文字で書かれていた。

 ――――精霊―――共に―――――封印――――――腕輪によって――――呼び出――――復活――――――

 かなり長く書き綴られているがこれ以上読めなかった。文字の書かれた上には金色の腕輪が蝋燭の炎の光を反射してユラユラと妖しく輝いている。

「きっとこの腕輪を着けるんだぜ。そしたら精霊が出てきて願いを叶えてくれるんだ。」
 そう言うとジャスは金色に光るそれに手を伸ばした。
「ちょっとジャス。不用意に触らない方が……。」
 アウルが言い終わるより先に、ジャスは腕輪に触れてしまった。

〈ガチャン〉

「え……!?」
 少し触れただけで腕輪は独りでにジャスの右腕に着いた。ジャスは驚いて外そうとするが全く外れる様子はない。
「ちょ、外れないぜこれ!」
 何度も引っ張るが外れない。腕輪が外れるより先にジャスの腕が外れるだろう。
「ジャス!何か浮き出てきた。」
 ジャスの腕輪からは金属を熱したような赤い色で何やら文字が浮かび上がってきた。古代文字の様で読む事は出来ない。更にその文字から白と黒の帯のようなものが出てきた。
 二つの帯は螺旋を描きながらジャスの頭上を昇り、やがて二つに別れた。別れた帯はそれぞれ一つの塊になり三人を挟んで部屋の両側で直径一メートルほどの球体となってぷかぷかと浮かんでいる。
「なんだこれ。」
「綺麗……」
 白い球体のある方は真昼の様に明るく、黒い球体がある方は今にも吸い込まれそうなほど真っ暗になって、部屋の中央でくっきりと境界が出来ている。
『ヒャーハッハッハ、久しぶりのシャバの空気だぜー!』
 三人がこの光景に見とれていると黒い球体の方から甲高い声がした。見ると今までの球体が形を成し、一匹の竜の姿になっていた。眼は黄色く瞳はぱっくりと切れたように縦長に伸びている。体はごつごつとして首から背中にかけて刺のような物が生えている。
『お、外に出てすぐこんなうまそうなガキがいるじゃねぇか。なんだてめぇら、食っていいのか?』
 そう言いながら漆黒の竜は三人にむかって鋭い牙を剥きだしにして飛んできた。三人はまだ何が起こっているのかわからず、ただその場に立ち尽くすしかなかった。

〈ギィン〉

 金属のぶつかるような音が鳴り響き、黒い竜の動きは遮られた。
 三人と黒竜の間には黒竜とは正反対の色をした銀色の竜が現れた。全身が銀色の鱗で被われていて、瞳も銀色。黄色い角が頭に生えている。
『全く、相変わらず下品だね。』
『ちっ、もう起きやがったか。』
 光と闇はお互い顔を突き合わせ、睨み合いながら言う。
「な、なんだこいつら。」
「とりあえず逃げよう。ここは危険だ。」
 何がどうなっているかわからないまま三人はもと来た方向へと全速力で走った。だが部屋の入口まであと数歩のところで、
『ヒャハ、逃がしはしないぜー。』
 黒い竜は再び帯の様になり、三人に向かっていく。そしてその後ろから銀色の竜も追い掛けるが、
「うわぁぁぁ!」
 黒い帯はアウルの中に吸い込まれる様に入っていった。
『ちっ、間に合わなかったか。』
 アウルはその場に倒れ、肌はだんだん黒くなっていく。
「どうしたんだよアウル。まさか、しんでないよな?」
 ジャスが恐る恐る近寄り、倒れたアウルに触れようとする。
『危ない!』
 銀の竜がそう叫ぶと同時にアウルは突然起き上がり、手から黒い球体を二つ、ジャスとイリアに向かって放った。
 が、球体は二人には当たらず、そのまま直進し、部屋の壁を破壊した。
『ふう、間一髪だね。』
 銀の竜は二人を連れてアウルの後ろに戻っていた。アウルはゆらりとこちらに振り返った。
 すでにアウルの面影はなく肌は黒ずみ、眼は黄色く、瞳が縦に切れたようになっている。
「ちょっとおまえ、何者だよ。それにアウルはどうなったんだ?」
『僕は君の着けた腕輪に宿っている精霊ドラウプニル、そして君の友達の中に入ったのはファーブニル。人々の〈邪悪〉が集まって生まれた闇の竜だよ。』
 ジャスの質問に対してドラウプニルという銀色の竜は丁寧に答えた。
『ぼーっとしてると危ないぜ。』
 アウル、いや、ファーブニルはそう言うとまたもや黒い球体を放った。そしてドラウプニルはさっきと同じ様に二人を連れて逃げる。人の頭ぐらいね大きさしかないのにどこからそんな力がでているのかというほど二人を軽々と移動させる。
『あまり喋ってるヒマはないよ。彼の体とファーブニルが完全に同調したら引き剥がすのはほぼ不可能だ。』
「じゃあどうすればいいんだよ。」
 時間が無いと聞き、ジャスは早口で質問する。
『奴を引き剥がすには僕が〈覚醒〉する必要がある。それに必要なのは主の魔力と言霊。そしてその主は腕輪を着けている君だ。』
「どうしろって言うんだよ。俺、まだ魔法も使えねぇし、言霊って……」
『大丈夫、魔力は君の中に眠っているだけで言霊は僕が今から言うのを真似すればいい。』
『グタグタと何喋ってんだー?』
 気がつくとファーブニルは両手を前に向け、さっきとは比べものにならないくらい大きい球体を作っていた。
「白銀の竜よ我が名はジャスティル・サウストール。主の名のもとに汝の姿を現せ」
『ちっ、覚醒する気か。』
 そう言いながらファーブニルは黒い球体をジャス達に放った。
「目覚めよ、白銀の竜、〈ドラウプニル〉」
 ジャスが言い終わると共に、ドラウプニルが白く輝きみるみるうちに巨大になっていく。白い光が眩しくその姿を直視するのは難しい。
 その大きな白い光はファーブニルの放った黒い球体を掻き消した。
『さぁ、さっきの言葉を叫んで。』
 光がおさまり現れたのは巨大な竜で元のドラウプニルよりも更に輝いていて、とても神秘的だった。
 その姿に見とれていたジャスは、ハッと我に帰る。
「浄化の炎・白炎シルバーブレス
 ドラウプニルの口から白い炎が放たれ、ファーブニルの周りを覆う。それと同時にアウルの体から再び黒い帯が吹き出した。
『ヒャハ、そのチビの魔力じゃ、オレを消滅させるのは出来なかったようだな。』
 ファーブニルはそう言いながらジャス達の来た道へと消えていった。
『クソッ、逃げられた。』
 ドラウプニルは元の姿に戻り、ジャスの横でプカプカと浮いていた。
「アウル!」
 ジャスは倒れているアウルな駆け寄る。が、足に力が入らずそのまま転んでしまった。
「ジャス。大丈夫?」
 イリアが駆け寄り心配そうにジャスを覗き込むように見た。
「なんか足に力が入らないや。」
 ジャスは足を動かそうとするが少し動いただけで持ち上げることはできない。
『魔力を使いすぎただけだよ。一晩寝たら直る。友達も大丈夫みたいだし。』
 ドラウプニルはちらりとアウルの方をみた。
「痛い……、何が起こったんだ。」
 倒れていたアウルは頭を押さえながらムクリと起き上がった。
「「アウル!」」
 ジャスとイリアは声を揃えて喜びの声をあげた。
「どうしたの二人共?そういえばあの黒い竜は?」
 ハッとしてアウルは辺りを警戒する。
『大丈夫、もういないよ。』
「よかった〜。」
 アウルはホッとしてその場に座りこんだ。
「そういえば、ドラウプニルだっけ? この腕輪、外せねぇの?」
 その場で立てないままのジャスが竜に尋ねた。
『あ、その腕輪、着けた人の命が尽きるまで外れないから。』
 ドラウプニルは何事もないように言った。一瞬沈黙が流れる。
「「「え〜〜〜〜!!」」」
 三人の驚きの声が部屋中に響いてこだました。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「朝だよジャスーー。」
 アウルはいつものようにこんもりと膨らんだベットに向かって叫ぶ。
「あと五分〜〜」
 そしていつものように手だけが出てきてヒラヒラと動いている。
「よーし、ドラウプニル。やっちゃえー。」
『りょうかーい』
 しかしいつもと違うことが一つ。
『食らえー、〈清々しい朝の刺激的な目覚まし〉』
 そう言いながらドラウプニルはベットの中のジャスに熱い炎を吹きかけた。
「あちぃーー!」
 新しい仲間が加わり、ジャス達の一日がはじまる。





the end


最後まで読んで頂きありがとうございました。 感想などを頂けると嬉しいです。 この話は元々連載をしようと思っていた作品で、続きも少し考えてあるのですが、時間の都合上短編という形で投稿させてもらいました。ジャス達のその後の話も時間ができれば書きたいと思っています。













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