月明かりが水面に乱反射し、とても幻想的な輝きを放つ。真っ暗な辺りに、その湖は浮かび上がって見えた。
その畔にしゃがみこんでいたユウナは思い詰めた表情をしていて、何か考え込んでいるようだ。
「ユウナ」
声をかけられユウナが振り返ると、優しく微笑むティーダがいた。ユウナも微笑み返したつもりだが、僅かに口角を吊り上げただけだった。
「とうとう……だな」
「──そうだね……終わらせなきゃ」
ユウナは隣に立つティーダを見上げ眉尻を下げた。
「ユウナ!」
「えっ……きゃあっ!」
突然ティーダがユウナの腕を掴み、引っ張り立たせる。困惑するユウナに、まるで悪戯っ子のような笑みを見せたティーダは、ユウナ共々湖に飛込んだ。
水面から顔を出したユウナに少し遅れてティーダも顔を出す。ユウナのこわばった表情を見てティーダの顔からはだんだんと笑顔が消えていき、ティーダの手がユウナの頬に伸びて張り付く髪をかき上げた。
二人とも湖と同じく水に濡れ、月明かりに照らされキラキラと光る。
「ユウナ……笑って?」
「──でも……」
ティーダの唇がそっとユウナの唇に重なる。驚き身を固くするユウナ。だが、徐々に体の力を抜いていき、ティーダの首に手を回した。
冷たい水の中で唯一、暖かい体。熱いとさえ思ってしまう唇。
少しずつ水によって奪われていく体温をそこから熱を得ようと、互いにむさぼりあう。
だがその口付けはとても優しいものだった。
「また一緒にここに来ようね?」
「うん」
「君のザナルカンドに行きたいブリッツの試合特等席、用意してくれるよね?」
「うん」
笑顔で言葉を紡ぐユウナの瞳から一筋の涙が溢れる。ティーダはその涙を拭うと、あやすようにユウナの背を叩く。
「いろんな所に連れて行ってくれる?──もっと……もっと、もっと……ずっと一緒にいたいよ……」
「うん」
「──嘘つき……」
なぜだろうね。
あの時、君が遠くに行ってしまうってなんとなくわかってたんだ。
だから君を困らせるような我が儘をいっぱい言った。
あの時、涙を拭ってくれた君の手の温かさ、今でもはっきり覚えてる。
あの唇の熱さも……。
「ティーダッ……!」
「ユウナ……」
気付いた時、君は消えかかっていて。
もう触れることができない。
「嫌だよ……」
「ごめんな……約束、守ってやれなくて」
「嫌だよ!」
せめて君をちゃんと見たいのに、涙が邪魔してた。
「俺……ユウナのこと好きだったから!」
「過去系でなんか言わないで……ずっと一緒にいたいってうんって言ったのに……!」
悲しそうに、だけど優しく微笑んだのが君の最後の姿。
「ティーダ……」
なんで私、笑顔でいられなかったんだろう。
本当……自分が嫌になっちゃうな。
弱い私でごめんね?
でも必ず君に届けるから。
この気持ち、君に必ず。
「大好き」
って。
fin
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