挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~ 作者:埴輪星人

フォーレ編後日談・こぼれ話

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

91/223

後日談 その3

「せや、採取いこか」

 工場建設のための資材手配が終わったある日、唐突に宏がそんな事を言い出した。

「なんか、京都に行くようなノリで言い出したけど、採取に行くってどこに?」

 朝食の片付けを終えた春菜が、いきなりの宏の宣言に首をかしげながら確認をとる。

「そらもう、フォーレの山奥に決まってるやん」

「いやいやいや。決まってるやんって、何の前触れもなくその土地が出てくる理由が分からないよ」

 あまり説明をする気がなさそうな宏の言葉に、ついつい全力で突っ込む春菜。確かに色々あって、結局フォーレの山岳地帯には入らなかった。が、今ここで唐突に、その地域に採取に行くと宣言する理由とはならない。

「そんなもん、色々作るための材料集めにいかなあかんから、以外の理由が必要か?」

「まあ、そうなんだけど、何でいきなりそんな話に?」

 採取に出かけるなど、いつもの事だ。なのに、わざわざ唐突に京都に行くノリで宣言する理由が分からない。

「そろそろテレスらにも、ちょっと難しい素材の収集を教えとった方がええか、思うてな」

「それだけ?」

「せやで」

「本当に?」

 妙に疑り深い春菜に、思わず苦笑が漏れる。本当に単に唐突に思い立っただけで、特に何か企んでいる訳ではないのだ。このあたり、今までの実績が実によく出ている。

「それで、いろいろ作るって、何作るの?」

「まずは、即死回避の使い捨てアイテムやな。これが二つほどパターンあるから、両方作っとけば二回即死潰せるし」

「二回って、たくさん作って持っておいて、効果が出たら使い直すとかは駄目なの?」

「どっちも再使用に制限がかかっとるからな。それに、片っぽはダメージを肩代わりするシステムやから、複数同時に準備とかやると、同時に壊れおんねん」

「なるほど。思い通りにいかないあたり、世の中上手く出来てるよね」

 宏の説明に納得する春菜。ポーション中毒をはじめとして、この世界は便利なものには大体何らかの制限がある。今回のものは死亡を防ぐだけあって、特に制限がきついようだ。

「再使用制限って、どれぐらい?」

「肩代わりする方は別のペナルティもあるから二十四時間、単に死亡を防ぐ方は四十八時間やな」

「悩ましいところだね」

「まあ、普通に考えてそんなもんやろう」

 予想通り、それなりに厳しい再使用制限に、むう、という感じの顔をする春菜。宏からすると、即死防止などホイホイ機能するようではいろんな意味で困るのだから、これぐらいの制限はむしろ軽いと思うのだが。

「とりあえずそれはいいとして、他には何を作るの?」

「エルとアルチェムの武器や。エルのは前の懐剣をバージョンアップした感じでええとして、アルチェムはやっぱ弓やろうなあ」

「弓だけ強くしても、矢が普通だとあまり意味がない気がするんだけど」

「そこは考えとるから、安心し」

 春菜の指摘に問題ない事を告げる宏。澪の使っている矢も普通の矢なのだから、当然いろいろ工夫はする。

「まあ、そんな訳やから、弁当と道具用意してハイキングや」

「了解」

 宏の宣言に頷き、おにぎりを主体とした行楽弁当の準備に入る春菜。ミートボールは必須だろうと考えて、ベヒモスとガルバレンジアとワイバーンのどれを使うかでちょっと悩む。その間にも無意識に卵焼きやエビフライなんかの調理を進めていくあたりは、屋台での経験が生きているようだ。

「伝言~、伝言~」

「Q2~、Q2~」

「エルちゃん無理~」

「あらら、残念」

 料理をしている最中に、オクトガルが飛んできてそんな連絡をする。どうやら宏が、達也所有のタコつぼを経由してオクトガルネットワークでエアリスの予定を確認していたらしい。

「まあ、無理なものはしょうがないか」

 伝言を持ってきたオクトガルに卵焼きやミートボールをあげながら、割と残念そうにつぶやく春菜。なお、ミートボールは結局、ガルバレンジアを使ったようだ。最近ベヒモスが続いていた事と、ワイバーンは唐揚げに回す事にしたのが理由である。

「お弁当、出来たよ」

「ほな、春菜さんが着替えたら、出発やな。ひよひよはオクトガルと一緒に留守番頼むわ」

「きゅっ!」

 宏に促され、エプロンを外しながら台所を出ていく春菜。出発できたのは、宏が採取にいこうと言いだしてから約一時間後であった。







「親方、色々と非常に気になるものがあるのですが……」

 出発から二時間後。中腹を超え、もうそろそろ予定している採取場所につきそうだという頃合いに、ノーラが周囲を見渡して眉をひそめながら宏に確認をとる。

「そらまあ、この辺は素材の宝庫やからな。ノーラはどの辺が気になっとん?」

「たとえばあの木、葉っぱから皮から花や実まで、全部何かに使えそうな気がするのです」

「正解やな。あれはオルドットっちゅうてな。六級前後の各種ポーションの素材に使えんねん。ただ、使えるように葉っぱとか取るんがちょっと厄介やから、素人が手ぇ出しても無駄やねんけどな」

「……なんとなく、分かるのです……」

 宏の解説を聞き、真剣な顔で頷くノーラ。テレスやファムも同様である。ノーラ達三人とも、匂いや魔力などからオルドットが薬の材料として非常に優れている事は分かるが、今の自分達ではちゃんと素材として使えるように回収できる確率は三割を切っていることもなんとなく分かってしまうのだ。

「他にもいろいろあるんやけど、目的地についてから説明するわ」

「はいなのです」

 宏に言われて、大人しく引き下がるノーラ。歩きながら説明を聞いてメモをとるのは、重要な内容を取りこぼす危険が大きい。こういう講義は、落ち着いて腰を据えて聞きたい。

「親方~、親方~」

「なんやのん?」

「あれ、たべられる?」

 ジャケットの裾を引っ張って質問してくるライムに答えるため、彼女が指さしている方向に視線を向ける宏。そこには

「オーヴィルとか、また珍しいもんが生っとんなあ」

 フォーレの初夏の果物が熟していた。大木まで育たないと実をつけないため、野生のものはやや珍しい。

「たべられるの?」

「ちゃんと食えんで。取るか?」

「うん!」

 ライムのリクエストに応え、オーヴィルの実をもぎに行こうとする宏。それを、再びジャケットの裾を引っ張って阻止するライム。

「何や?」

「ライムがとりたい! だめ?」

「さよか。肩車しよか?」

「うん!」

 再び炸裂したライムのわがままに小さく微笑んで頷くと、その幼い身体を軽々と抱えあげて肩車する宏。普段持ち歩いている装備の重量を考えれば、ライムの体重なんてあってないようなものである。

「……」

 そんな宏とライムの様子をじっと見つめるファム。何処となく複雑そうだ。

「ファムちゃん、どうしたの?」

「何でもない」

 それに気が付いて声をかける春菜に、誤魔化すように首を横に振るファム。一連の流れで、なんとなくファムの気持ちを察してしまう春菜。

「ファムちゃんも、あれぐらいのわがままは言ってもいいと思うんだけど……」

「親方、あたしも一応女にカウントしてるから……」

「ん~……」

 ファムの言葉に、少し考え込む春菜。確かに、宏はファムを女性にカウントしている。性的な関心を持っているとかそういう意味では無く、いわゆる警戒するべき対象としてだ。このあたりの分類は、宏の生存本能が勝手に行うもので、本人にもどうにもならない。

 ファム達工房職員は、宏が過去にどんな目にあってきたかは知らない。だが、知らないなりにかなりひどい目にあってきたらしい事は察しており、春菜を見習ってできるだけ宏に負担をかけないように注意深く立ち回っている。

 現在、その唯一の例外がライムであり、なんだかんだいって宏はライムのわがままを結構聞き入れる。無論、駄目な事は駄目だとしかる事は忘れないが。

 問題なのは、ファムとライムではたった二つしか年が離れていない事だ。ファムだって、九月の誕生日が来てようやく八歳。いくらしっかりしていると言っても、まだまだ大人に甘えたい年頃なのである。

「親方は命の恩人だから、あたしがわがまま言って負担かけるの、嫌なんだ」

 出会いこそあれだったが、ファムも宏に懐いていない訳ではない。春菜や澪のように恋愛感情を持っている訳ではないが、良き父として良き兄として、そして尊敬できる先達として、さらに命の恩人として心の底から慕っている。

 だからこそ、時折ものすごく甘えたくなるのをぐっとこらえ、もの分かりのいい姉として振舞っているのだ。

「ファムも、もうちょっと甘えてわがまま言ってもいいと思うんだけど……」

「あたしはお姉ちゃんだから、そういうのはライムに譲るよ」

「ファム、子供がやせ我慢するものではないのです」

 強がりを言ってわがままを封印しようとするファムを、テレスとノーラが窘める。家庭環境からどうしてもある程度の自立心が必要ではあるが、ここまで我慢が必要なものでもない。

「ねえ、テレス、ノーラ。ちょっと聞いていい?」

 そのやり取りを見ていた真琴が、ふと気になって声をかける。ファムの態度とテレスやノーラの表情に、ちょっとまずいものを感じたのだ。

「なんですか、真琴さん?」

「ノーラ達に分かる事なのですか?」

「あたし達はあんまり工房に居ないから分かんないんだけど、最近のファムって、レラさんにちゃんと甘えてる?」

 振り向いた二人に、ファムに聞こえないように小声で質問をする真琴。真琴の質問に沈黙を返す二人。それで、大体の事を察する真琴。

「達也、いける?」

「おう」

 こっそり忍び寄ってきたラケーテンエイプをオキサイドサークルで仕留めていた達也が、真琴の言葉に頷く。直接会話に参加していなかったが、真琴がギルドカードを使って日本人メンバー全員に今の会話を流していたのだ。ここまでの流れを聞いていて、テレスとノーラが返事をしなかった意味を理解しない人間はここにはいない。

「春菜、真琴、手伝え」

「了解」

「分かってるわよ」

 やる事は決まったものの、意地っ張りなファムがそう簡単に乗ってくれる訳がない。故に、達也は春菜と真琴に手助けを頼んだのだ。

「澪」

「ん、ばらしておく」

 かといって、仕留めたラケーテンエイプを放置するのもあれなので、そっちは澪に振っておく。いろんな意味でファム達の訓練に手ごろな素材なので、血の一滴たりとも無駄にする気はない。特にこいつの体内にある榴弾袋は、数々のネタアイテムの材料に使える美味しい素材なので、絶対に確保しておきたい。

「という訳で、確保」

「うわっ!?」

 オーヴィルを収穫中のライムに意識が向いていたファムを、真琴があっさり捕まえる。真琴が首尾よくファムを捕まえたのを見て、春菜が持ち上げるのに協力する。女性である事と華奢な見た目に誤魔化されがちだが、二人とも宏のヘビーモールを普通に振り回せる程度には筋力がある。ファム一人ぐらい、余裕でかつぎあげることが出来る。

「な、何!?」

「宏君は無理でも、達也さんなら問題ないって事で」

「大人しく、達也に肩車されてなさい」

「はあ!?」

 春菜と真琴の言葉に、一瞬抵抗を忘れるファム。その隙を見逃さず、しゃがみ込んでいた達也の肩に速やかにファムをセットする春菜と真琴。

「よっと」

「た、タツヤさん!?」

「俺でもお前さんを肩車するぐらいは問題ないんだから、子供が遠慮なんざするもんじゃないぞ」

 そんな事を言いながら、危なげない足取りでオーヴィルの収穫に混ざりに行く達也。

「おねーちゃん、高~い」

「まあ、ファムはライムより年上やし、僕より兄貴の方が大分背ぇ高いからなあ」

 同年代の中では背が低い方のファムだが、二歳も年上だけあってライムよりは体が大きい。宏より十センチ近く背が高い達也との組み合わせだと、頭の高さがかなり上に来るのは当然である。

「ほな、じゃんじゃん取ってまおうか」

 宏に促されて、よく熟した実を選んで人数分収穫するファムとライム。鼻を近付けると甘い匂いがするのが美味しそうだ。大きさは大人の握りこぶしよりは大きく、ライムの顔よりは小さい程度。

 実の特徴自体は瓜に分類できるため、恐らく植物学上は野菜になるそれをせっせと収穫し、手の届く範囲のものが無くなったところで実に満足そうな顔で肩車から降りるファムとライム。

「満足したのですか?」

「うん」

「なら、良かったのです」

 満面の笑みで答えたファムに、これまた満面の笑みを向けるノーラ。

「ボク達よりずっと年上のテレスはともかく、ノーラは羨ましいとか、ない?」

「巣立つまでにたっぷり甘えているのです。もう親が恋しい年では無いのです」

 澪の問いかけに、すました顔でノーラが答える。実際、モーラ族は十二歳で巣立ちを迎えるが、それまでに徹底的に愛を注ぎながら巣立ちの準備を整えさせるのが普通だ。なので、巣立った後しばらくはともかく、ノーラほどの年齢になると親が恋しくなる事は無い。

 無論、何かのきっかけで親と顔を合わせた時は、素直にお互いに愛を注ぎ合う。

「それにしても、親方やタツヤさんに父親の代わりをさせるのって、ちょっと気の毒なような気がしますね」

「どちらも、あんな大きな子供がいるような年には見えないのです」

「タツヤさんはまだしも、親方は実年齢的にも普通あんな大きな子供はいないし」

 まるで親子のように見えるライムと男性陣の姿に、男っ気がなさすぎるアズマ工房の現状をなんとなく嘆きたくなるテレスとノーラ。職場恋愛までは望まないものの、もう少しいろんな意味で潤いが欲しい。

「そう言えば、春菜」

「何?」

「宏達を見て、横に並んだら母親に見えるかな、とか考えてたりしない?」

「……ん~、子供自体はいずれ欲しいけど、今はまだそこまでは考えてないかな?」

 最近の様子を知っている真琴がからかうつもりで発した問いかけに、割と真面目な回答が返ってくる。どうやら春菜は、結構真剣にそのあたりの事を考えているようだ。

「母親ってそういうものじゃないのはなんとなく分かってるんだけど、今の私じゃ子育てするにはいろいろ足りない感じだから、やっぱりそういうのはちゃんと大人になってからかな、って」

「春姉で足りないんだったら、ボク達は問題外……」

 春菜にさっくりハードルを上げられ、思わずうなだれる他の子作り可能な女性陣。その様子を、ちょっと不思議そうに見ているファム。かなり大人びている彼女だが、そういう部分はやはり子供のようだ。

「まあ、そういう話は置いておくとして、そろそろ目的地みたい」

 春菜の指摘に前を見ると、いつの間にか開けた場所が見えていた。

「ちょうど昼時やし、食うてから採取やな」

「本当に、ピクニックだよね」

 山の中腹にある草原に、苦笑がちに春菜が言う。敷物を敷いて弁当を広げるなど、本当にピクニック以外の何物でもない。

「まあ、弁当食うてからが本番やし、ここまではピクニックでええやん」

 宏の言葉に、楽しければいいかで済ませることにした春菜。てきぱきと弁当を広げていく。

「こらまた、見事な行楽弁当だな」

 俵型のおにぎりに彩りよく配置されたおかずの数々。それを見た達也が感嘆の声を上げる。澪などは、先ほどから弁当の中身に釘付けだ。オクトガル達は弁当作りの時につまみ食いしているので、この場には出て来ていない。

「定番メニューを詰め込んでみました」

 達也の声に、微妙にドヤ顔で春菜が説明する。中身はワイバーンの唐揚げ、ガルバレンジアのミートボール、コマオウエビのエビフライ、卵焼きにパイルポテトのポテトサラダなど、食材を気にしなければ本当に定番のメニューばかりである。

「さて、がっつり食ってがっつり採取すんで」

「あたし達はどうしてればいい?」

「適当にモンスターでもしばいといて。この辺のモンスター素材にも、ちょこちょこ欲しい奴あるんよ」

「了解」

「ほな、方針も決まったし、食べようや」

 宏の一声に、いただきますが唱和する。この後、皆で山盛りの素材をかき集めてホクホク顔でスティレンに帰還し、ついでにクレストケイブに移動してカカシに職員達を紹介、精錬と鍛冶の基本を軽く伝授しておく。材料も集まり職員達の新たな技能教育の道筋もつけ、ローレン行きの前の準備がまた一つ進むのであった。







 翌日。

「さて、材料揃ったし、色々作んで~」

 朝食とファム達への講義を終え、春菜と澪を呼んだ宏がそう宣言する。ファム達は今、昨日回収してきた素材を前に必死になっている頃合いだろう。

「師匠、何から行くの?」

「まずは、スケープドールからやな」

 ピクニック会場で回収してきた大量のススキのような植物を並べながら、澪の問いかけにそうきっぱり言い切る宏。聞き覚えのないアイテム名に、首をかしげる春菜。

身代わり人形(スケープドール)?」

「せや。その名の通り、ダメージを肩代わりしてくれる人形やな。品質によって、どんぐらい肩代わりしてくれるかは変わるんやけど」

「具体的には?」

「ゲーム的な説明するんやったら、品質によって合計で最大HPの50%~150%までのダメージを肩代わりしてくれんねん。状態異常としての即死攻撃とかは残り量に関係なく一回防いで終わりで、肩代わりできる残りHPを超える攻撃食らったら、超えた分は使用者が食らう。人形壊した上で即死するようなダメージ食らった場合は、人形が壊れたあと使用者が残りHP1で生き残る、っちゅう所や」

「要するに、一回だけ死亡を防ぐ機能が付いた外付けのHP、だって事でいいんだよね?」

「そんなとこやな。まあ、副作用っちゅうか欠陥もあるけど」

 欠陥と聞いて、微妙に不安になる春菜。まったく問題のない完璧なアイテムを用意しろ、とは言わないが、欠陥なんてものは無いに越した事は無い。

「何かちょっと不安なんだけど、欠陥って?」

「人形が受けたダメージが、使用者の方に来おんねん。まあ、人形がどんだけダメージ食らっても、使用者はHP1で生き残るんやけどな」

「うわあ……」

 まるで呪いの人形のような欠陥に、思わず小さく呻く春菜。はっきり言って、あまり許容したくない欠陥だ。

「他にも、最初から受けとったダメージには効果ないとか、老衰で死ぬんは防げんとか、人形が肩代わりしたダメージを回復する手段がないとか色々細かい問題点はあるんやけど、いっちゃんおっきい欠陥はそれやな」

「それ、本当に大丈夫なの?」

「結局は、人形の保管方法やからな。倉庫に突っ込んどけばまあ、大丈夫やで」

 宏の言葉にも、いまいち安心しきれない春菜。その様子を見た澪が、横から口を挟む。

「春姉、壊されても即死はしないんだから割り切ろう」

「割り切り辛いなあ……」

 澪の意見にも、悩ましそうな表情が変わらない春菜。メリットとデメリットを比較した場合、間違いなくメリットの方が上回るアイテムではあるが、デメリットも状況によっては命にかかわるのが怖い。

「で、こいつは壊れてから二十四時間経たんと、新しい奴の効果が出えへん。同時に複数使うとっても、ダメージ受けたら同時に同じだけ壊れていきおるしな」

「同時に使えるの?」

「使うだけやったらな。ただ、今言うたように、一緒に使うとる人形は、受けたダメージを同時に肩代わりしおるから、壊れるときは同時に壊れおるから無意味やけど。で、壊れた後二十四時間は、人形の使用手順をふんどっても肩代わりはしてくれへん。まあ、待機時間が過ぎた時点で、肩代わりを始めるんやけど」

「なるほどね」

 複数同時に使えるという点にちょっと思い付く事があるが、恐らく春菜が思い付くような事は宏もしくはその関係者が最初から実験しているだろう。

「で、もう一つ作る予定なんが、生存確保の札っちゅう奴や。こいつはダメージカットとかの機能がない代わりに、ありとあらゆる死亡を一回だけ完璧にチャラにすんねん」

「そっちが、再使用に四十八時間かかるの?」

「せやねん。まあ、こいつは持っとくだけで効果あるから、特に使う必要とかはあらへんねんけど」

「スケープドールとの優先順位は?」

「ダメージ受けての死亡はスケープドール優先、状態異常とかでの即死は生存確保の札が優先や」

 どうやら、有利になる順番で死亡を防いでくれるらしい。

「で、春菜さん呼んだんはな、スケープドールは、錬金術の初級が終わりかけ、ぐらいからチャレンジは出来んねんな。せやから、練習も兼ねて、思うたんよ」

「メイキングマスタリーはいいの?」

「ほんまやったらそっち優先にしたいんやけど、手ごろな船作る用事がないねん。純粋に練習のために作ってもええんやけど、とりあえずこっち優先でも大差ないか、思うてな」

 割と適当な事を言い出す宏に、どこから突っ込むべきか悩んですぐにあきらめる春菜。恐らく、メイキングマスタリーの有無が誤差の範囲なのだろう。

「で、澪の方には生存確保の札を教えるから、せっせと作ったって。そいつは品質の影響特にあらへんし」

「了解」

 宏の指示に、一つ頷く澪。そのまま、三人でものづくりの作業が始まる。

「師匠、紙すきの段階で組み込む術式はこれでいい?」

「それで問題あらへんで」

「宏君、藁の長さはこんなもの?」

「そうそう。それを人形型にして、術式を込めながらこっちの生地に漬け込むねん」

 エンチャントで術を込めながら紙をすく澪と、出来るだけ無駄が出ないようにススキの長さを切り揃えていく春菜。そんな二人に指導をしながら、見本を見せるように手際よく双方のアイテムを作っていく宏。もっとも、宏の作業を見ても、作業手順が理解できるだけで何の参考にもならないのだが。

「……ねえ、宏君、澪ちゃん……」

「何や?」

「春姉、どうしたの?」

「この作業って、傍から見るとものすごく怪しいよね……」

 藁人形を作りながらぽつりとつぶやいた春菜に、確かに怪しいと内心で同意する宏と澪。作っているのが藁人形と謎の御札とか、呪いの儀式の準備以外の何物でもない。これで白装束を着て頭に鉢巻きでろうそくを固定し、藁人形に御札と憎いあいつの顔写真を張って、夜中に人形に五寸釘を打ち込めば見事な丑の刻参りの成立である。

「まあ、錬金術ってのは、傍から見たら怪しいもんや」

「まあ、そうなんだけど……」

 この怪しさは、そんな生ぬるいものではない。正直、人に見られたら普通に通報されそうだ。別に犯罪行為ではないので、恐らく逮捕まではされないだろうが。

「それにしても、藁人形見てて思ったんだけど」

 とりあえず、怪しいのは気にしても無駄だと言うことにして人形作りに精を出しながら、藁人形から連想した光景について、ちょっとした疑問を口にする春菜。

「丑の刻参りの格好って、頭に鉢巻きでろうそく固定してるよね?」

「しとるなあ」

「あんなところにあんな風にろうそくなんかつけたら、ろうが垂れて頭が酷い事にならないのかな?」

 春菜の指摘に、思わず黙り込む宏と澪。言われるまで気が付かなかったが、考えてみれば頭に火のついたろうそくなんて固定すれば、いろんな意味でただでは済まない。

 釘を打つときだけ頭のろうそくに火をつけて、ろうが垂れないように頭を動かさずにすればいい、なんて意見もあるだろうが、大抵の動作は普通、頭を動かさずにするのは難しい、というより素人には不可能だ。それに、釘を打つ衝撃でろうが垂れないとも思えない。

「何ぞ、想像するとあれ、非常に難易度高いやんなあ」

「最初にあんな格好で呪いかけるとか言い出したの、誰だろう?」

 色々考えた末、宏と澪がそんな感想を漏らす。この分だと他にも、ネタになっているあれこれは色々と実現不可能な種類の問題がありそうだ。

「……とりあえず、あんまり深く突っ込まん方がよさそうや」

「……師匠に賛成。あまりつつくと、また余計な事に気が付きそう」

「……そうだね。何かごめん」

 色々とアレな事に気が付きかけ、この話題を深く掘り下げるのは危険だと判断する宏。同じく余計な疑問を思い付いてしまった澪が宏に賛同し、春菜も会話の流れを作ったことを謝罪する事で話を終わらせようとする。

 実際のところ、澪は既にSでMな人たちが使っている赤い低温ろうそくまで連想し、それが髪についた時、どうやって処理してるんだろうという余計な疑問を持ってしまっている。が、この場でそういう話をするのは流石にはばかられるため、とりあえず話を変えたかったのだ。

 澪は正直、達也や真琴相手ならともかく、宏と春菜を前にその手の猥談はしたくない。特に春菜相手だと、いくら自分が汚れの自覚があるとはいえ、その落差にひどくダメージを受けそうな予感がするのである。

「で、術式はこうだっけ?」

「そうそう。そのままその生地に突っ込めば下ごしらえはOKや」

 話を戻すついでに作業を再度確認する春菜。作業内容や術式は全て完璧に覚えてはいるが、最初の説明を聞いた際に勘違いしているとも限らない。それに、自分の技量を超える作業だから、ちゃんと理解できていない可能性も否定できない。そのあたりを考えて、春菜はいちいち宏に確認をとっているのである。

「えっと、こうやって、こう、っと」

 もう一度確認してから藁人形を生地に突っ込むと、魔力に反応して生地が変化を起こし……

「わっ!?」

 ぼふんという音を立てて消し炭になる。

「失敗しちゃったか~……」

「まあ、元々技量が足りてへん作業やから、失敗もあるわな」

「何がまずかったと思う?」

「魔力の通し方が、ちょっとムラになっとったわ。ここら辺は人のん見たからっちゅうてすぐできる種類のもんでもないし、やって慣れるしかあらへんからなあ」

「練習あるのみ、かあ……」

 春菜の失敗を解説しながら、消し炭を回収する宏。これはこれで使い道があるのだ。

「あっ……」

「澪も失敗か?」

「師匠、ごめん。かなりやらかしたと思う……」

 澪の声と素敵な感じに暴走している魔力に振り返ってみると、酷くいびつな魔法陣が宙に浮かんでるのが目に入る。

「あ~、こらなんか妙なもんが出てくるな」

「えっと、大丈夫なの、それ?」

「まあ、武器ぐらいは用意しといたほうがええやろう」

「それ、かなり厄介な状況だと思うんだけど……」

 かなり大事だというのに、妙に平常運転の宏。それに不安になり、控えめに突っ込みを入れておく春菜。結果を言うならば

「そおい!」

 魔法陣から出てきた巨大なハエは、宏のポールアックスが見事に一刀両断し、一瞬で片が付いたのだが。

「で、何やらかしたんよ?」

「春姉が失敗したのとちょうど同じタイミングで、すいてる最中の紙にハエが飛び込んだ」

「で、そいつと春菜さんの失敗作の魔力と紙に込められた術式がおかしな反応した、っちゅう所か」

「うん。正直、制御できなかった」

「まあ、しゃあないわな。大事に至った訳でなし、美味しい素材も追加されたんやし、ランクの高い錬金術系はどうしてもこういう事故が付きもんやしな」

 結局特に問題がなかったこともあり、あっさり話を終わらせる宏。その後は特に問題も無く、午前中のうちに作る予定だったアイテム類を十分な数作り上げる宏達であった。







 昼食を終え、後はエアリスとアルチェムの装備を完成させれば終わり、となったところで、レイオットが訪ねてくる。

「エアリスとアルチェムの装備を作ると聞いたのだが、もう完成したのか?」

「いんや、これから作る予定や」

「そうか。だったら悪いが、一緒にレイニーの装備品も作ってやってくれないか?」

 レイニーの名前を聞き、意外そうな顔をする宏。自分達にとってはそれなりに情が移っている相手だが、レイオットとしては単なる使い捨ての手駒でしかないのではないかと思っていたのだ。

「前回のエルザ神殿の調査で、奴の装備が大方使い物にならなくなった事は知っていると思う」

「まあ、その場におったからな。せやけど、たかが手駒の一つにうちの装備とか、ちょっと問題あらへん?」

「たかが手駒の一つ、という訳にもいかなくなったからな。流石に巫女に選ばれたりこそしないが、どうやらダールの女王とフォーレの重鎮のお気に入りになっているようで、迂闊に切り捨てられん」

「さよか」

「それに、そこまで人脈を作り上げた部下を、そこらの下っ端と同じ扱いというのもな」

 レイオットの言葉を聞き、なんとなく生温かい視線を向けてしまう宏。なんだかんだで、レイオットもあの色ボケ諜報員に情が移っているらしい。

「まあええけど、具体的にはどんなもんがええ?」

「まずは防具だな。荒事に巻き込まれることも少なくないから、それなりにちゃんとしたものが欲しい。出来れば、ある程度探知系を誤魔化せ、かつ印象に残り辛いものがいいな。武器は隠し持てるもの。基本は短剣だ。後、可能であれば移動手段を頼みたい」

「移動手段?」

「ああ。お前達の先回りをさせる都合上、そろそろ普通の交通手段でどうにかするのは厳しくなってきた。だから、スピードがあって小回りがきく物があるとありがたい」

「了解や。防具の方の素材はどないする? 後、服も作るんやったら、ある程度服のデザインを自由に変えるようなんも作れんで」

 宏の提案を聞き、しばし考え込むレイオット。まずは候補となる素材を聞いてからの判断だと思い至り、素直にそこを聞くことにする。

「そうだな。素材としての選択肢は?」

「鎧はソフトレザーアーマーがよさそうやから、ロックボア、ワイバーン、ガルバレンジア、ベヒモスあたりやな。服は普通の木綿と麻、スパイダーシルク、霊布が選択肢や。変わり種としてはマンイーターの繊維で作った麻もどきやけど、これはちょっと在庫持ってへんから、材料調達に時間かかるで」

「……服はスパイダーシルクとして、お前のお勧めの鎧素材はどれだ?」

「性能で言うんやったら、ベヒモスかガルバレンジアやな。ベヒモスはちょっと前にダンジョンで三体ほど仕留めてるから、在庫もぎょうさんあって使い放題や。ガルバレンジアもいまいち出番あらへんから、皮はほとんど丸々在庫残ってんねん」

「つまり、その二つは値段の差は無い、という事か?」

「そうなるな。後、武器はこっちで勝手にオリハルコンあたりで作っとくから。オリハルコンも在庫ぎょうさんあるし」

 出てきた素材に内心でめまいを覚えつつ、表面上は平静を装い一つ頷くレイオット。こいつらの非常識にいちいち驚いていては身が持たないし、知られざる大陸からの客人にこういう部分での常識を求めても無意味だ。

「分かった。値段の方はどうなる?」

「正直、装備品にちゃんとした値段つけたことあらへんからなあ。確か、冒険者協会で売っとった一番ええ武器が一万クローネやったから、大体その十倍ぐらいが妥当か?」

「……安すぎないか?」

「安いん?」

「今の技術レベルだとな、オリハルコン製のしかも特殊機能が付いた武器なぞ、その十倍でも買えんが?」

「……その値段やと、国家予算クラスやん……」

 ひきつった顔で呻く宏に、深々とため息をつくレイオット。もっとも、相場なんてものが存在するのはせいぜい魔鉄製品までなので、宏がオリハルコンやベヒモス革の装備の値段を理解していなくても無理は無いのだが。

 とは言え、部下一人に渡す装備品の値段としては高すぎるのも事実である。普通なら、余程功績がある人間に下賜する実用品で三万クローネ程度。一つ十万クローネなんてあり得ない値段だ。

 レイニーが仲良くなったフォーレの重鎮が、金に糸目はつけないからいい装備を、などと言いだしていなければ、最初から却下する値段なのは間違いない。流石にレイオットは、そこまでレイニーに情が移っていない。

「まあ、金一杯もらってもしゃあないし知り合いが使うもんやから、一個二万クローネぐらいにしとくわ。移動手段の方は、ゴーレム馬車の半額ぐらいが妥当やな。せやから、防具と服と武器一本に移動用ゴーレムで、しめて十万クローネでええで」

「分かった。厚意に甘えよう。金は明日にでも用意する」

 宏の提示した値段に頷き、工房を立ち去るレイオット。それを見送って、さっさと作業に入ることにする。

「ちょっと優先順位変更になったんやけど、兄貴、真琴さん、バイクの免許とか持ってるか?」

 作業に入る前に、和室でくつろいでいた達也と真琴に声をかける宏。二人とも昨日暴れたので、今日はのんびりすることにしていたらしい。一人で部屋に引きこもっていても暇だからと、昼間っから軽い酒とちょっとしたつまみを嗜みながら将棋を指していた。

「あたしは二輪の方は持ってないわね」

「一応大型免許を持ってるが、何でだ?」

「レイニーに移動手段作ってくれって頼まれてな。折角やからバイク作ったるか、って思ってん」

「なるほど。で、テスト走行を俺にしろ、と」

「そう言う事や」

 宏の言葉に納得する達也と真琴。諜報員とバイクの組み合わせは、ある意味でお約束である。

「でも、あんたの事だから、どうせ単なるバイクで終わらせるつもりはないんでしょ?」

「まあ、色々ギミックは仕込むつもりやけどな。最低限、カプセル収納と使用者認証はつけとかんとあかんやろうし」

「確かにそれは必要だけど、あんたの場合それで済むとは思えないのが不安なのよねえ」

「まあ、今の時点ではせいぜい、ライダーむき出しやのに強化パーツつけたら宇宙とか水中とか平気で走れるようにするぐらいやろうけどな」

「あ~、いろんな作品のロボットが集合して強大な敵と戦う某シミュレーションゲームだと、確かにそう言う理不尽は普通にあるわよねえ」

 宏にしては穏当な仕様に、微妙に呆れつつ頷く真琴。そのシミュレーションゲーム、宇宙空間なのにコクピットのハッチを開いて宇宙服も着ていない女がライフルで敵のロボを狙撃したり、宇宙服も着ていない女が乗ったバイクが宇宙を走り回った揚句にメジャーやベーゴマで攻撃したり、挙句の果てにチンピラが宇宙に革ジャン姿で来て釘バットで敵のロボットを集団暴行したりするのだ。

 普通にメジャーな方に分類されるゲームなので、宏がそれを知ってて再現しようとしたところでまったく不思議ではない。

「正直あたし、宏だったらパワードスーツかロボに変形するぐらいのギミックは仕込むと思ってたんだけど……」

「いやん、ばれた!?」

「……あんたにしては穏当だと思ったあたしが甘かったか」

 宏の自白に、ジト目を向けてしまう真琴。本当に、いろんな意味で甘かった。

「まあ、その辺の機能も合わせて兄貴にはチェックしてもらうから」

「そりゃかまわんが、流石に水中とか宇宙とかは勘弁してくれよ」

「分かっとる。変形機能と空中走行だけテストしたらええやろう」

 達也に釘を刺され、若干穏便な要素だけに絞る宏。穏便な要素でそれなのが、かなり頭が痛い。

「ねえ、宏。今思ったんだけどさ」

「何や?」

「バイクが空飛べるんだったら、ワンボックスも飛べるように出来ないの?」

「できん事はあらへんけど、うちらの飛行関係はちょっと別口で考えとってな。それに、飛行機能後付けしよう思うたら材料の準備が無茶苦茶手間やから、ローレン行くまではこのままでええかと思うんよ。別口の方も、この分やといずれ作る必要になるから、ワンボックス飛ばすんが無駄になるかもしれへんし」

「なるほどね」

 真琴の素朴な疑問に対する宏の答え、それに質問した真琴だけでなく達也も納得する。魔導技術に地球の常識をあてはめても無意味ではあるが、普通に考えて個人用のバイクと七人乗りのワンボックスでは、飛ばすために必要なエネルギーや難易度も大違いだろう。

 他に飛行手段の予定があるなら、現状困っていない物をわざわざ改造する必要もない。

「で、バイクだったら練習しないと乗りこなせないと思うんだが、肝心のレイニーは今何処に居るんだ?」

「そう言えば聞いてへんかったなあ。オクトガルに確認してもらうか」

 宏の言葉に頷き、部屋からタコつぼを取ってくる達也。見た目を気にしなければ、地味に凄まじく便利なアイテムである。

「ちょっと聞いてくる~」

 おつまみをもらって宏達から事情を聞き、さっくり確認に行くオクトガル。数秒後、

「レイニーちゃんはウルスで調整中~」

「スティレン危険~」

「リバース、リバース」

 オクトガルが口々に状況報告する。要は、スティレンに置いておくと宴会に巻き込まれてさばききれないため、ウルスに一時帰還して体調を整えつつ、緩んだ体を引き締め直しているらしい。大地の民の運動施設なども利用し、短期間でかなり体重を絞ることに成功したとのことである。

「なるほどなあ」

「レイニーちゃん、ダイエット~」

「成長期~」

「胸だけ戻らない~」

「そう言う余計な情報はええから……」

 感心している宏に対して、余計な情報を追加して無駄にダメージを与えるオクトガル達。元々胸がサイズの割に目立つ体型だったのだが、それが更に顕著になったようだ。

「まあ、とりあえずそれやったら、明日ぐらいまではまだおるやろうし、さっさ作ってまうわ。時間考えたら、エルとアルチェムの装備は後回しやな」

「だな。まあ、どうせ今日は俺の出番は無いんだろう?」

「せやな。流石に、テストは明日の朝からになるわ」

 そう言って、作業場に移動する宏。そのまま春菜達に予定変更を告げ、まずは必要な素材の精製から入る。

「師匠、どんなデザイン?」

「もしかして、原付?」

 興味津々の澪と春菜ににやりと笑って完成までの楽しみだと告げ、真っ先にフレームの部品を作り上げていく。そのまま、バイクに必要なパーツとは思えないものをどんどん作り上げていき、ついでにオリハルコン製の隠しギミックたっぷりの短剣を作り上げる。並行で、エアリス用の懐剣を荒加工だけ済ませておく。

「後は組み立てやけど、春菜さんはそろそろ飯の準備に入った方がええんちゃう?」

「あっ、そうかも」

「別にひっついてへんでもバイクは逃げへんから、先そっちやってもうて」

「は~い」

 宏にたしなめられ、夕食の仕込みに行く春菜。なんとなく自分だけひっついて先に見るのもずるい気がして、春菜を手伝う澪。そんなこんなで一人作業を続けていた宏は、夕飯前にバイクを完成させる。

「宏君、ご飯出来たよ」

「了解や。バイクもできたから、飯の前に軽くお披露目やな」

「あ、うん。皆を呼んでくるよ。ファムちゃん達はどうしようか?」

「あのへんに見せてもネタも構造も分からんやろうし、説明しても理解も再現もできへんやろうと思う」

「了解。じゃあ、達也さんと真琴さんと澪ちゃんだけ呼んでくるよ」

 宏に言われ、仲間を呼びに行く春菜。全員揃ったところでシートを取っ払ったバイクを見て、春菜が

「お~、格好いい!!」

 と歓声を上げる。が、他のメンバーの印象はと言うと……。

「師匠、もしかしてガー○ンド?」

 という澪の一言がすべてであった。

「人型に変形するっちゅうたらまずはそれやろう?」

「まあ、そうなんだけど、あたしや達也ですら名前とバイクの外見ぐらいしか知らないのに、あんたはどこでこういう情報を仕入れてきたのよ?」

「そらもう、某ロボットシミュレーションゲームやで」

 どうやら、昼間ネタにしたゲームを思いっきりネタにしてきたようだ。昨今は割と新しい作品をメインに据える傾向はあるが、それでも油断すると六十年代から八十年代の、それもテレビではなくOVAだけで展開されていたようなマイナーな作品がしれっと参戦するため、宏のような未成年でも産まれる前のロボットアニメに造詣が深くなる事が多々ある。

「とりあえず、これで移動手段の方は完成や。飯食ったら後は服と革鎧作ってレイニーの装備は終わりやな。」

「こんなもん、こっちの連中に乗りこなせるのかね?」

 達也の懸念に反し、翌日の昼に呼び出されたレイニーはあっという間に全ての機能を使いこなし

「ハニーの愛を感じる……」

 などと愛車や自分の装備品をクンカクンカペロペロするシーンを目撃する羽目になる。スティレンでは非常に大人しかったために油断していた宏と達也は、そのシーンを見せつけられて余計な精神ダメージを受ける羽目になるのであった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ