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フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~ 作者:埴輪星人

フォーレ編

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第14話

 地面から二本の石の槍が伸びて春菜と達也を襲い、派手な金属音を立てて割り込んだ宏の身体を貫こうとする。

「二人とも、大丈夫か!?」

「私は大丈夫、だけど……」

「脇腹にかすった。防具変えてフォートレス練習してなきゃ、お前が間に合っててもヤバかったな」

 槍の一本を腹筋で完全にブロックした宏の問いかけに、カバーが間に合って無傷だった春菜と脇腹に食らって多少のかすり傷を受けた達也が答える。

 達也を襲った槍は、間一髪のところで宏に邪魔をされ、脇腹をかすめるにとどまった。だが、防具がベヒモス革を部分的にヒヒイロカネで補強した現状最強のマジックユーザー用防具でなければ、脇腹をかすめる、ではなく脇腹をえぐる、になっていたのは間違いないだろう。

 なお、補強材がヒヒイロカネなのは、魔法詠唱に対するペナルティが無いからである。

「ヒロ、お前こそ大丈夫なのか?」

「ダメージはあらへん。けど、鎧の腹んところはぶち抜かれたわ」

 もう一度邪魔しに来たバルドを弾き飛ばしながらの宏の言葉を受け、彼の腹部に視線を移す達也と春菜。見ると、確かにフルプレートの腹部が完全に破損し、中に着ている霊布の服が露出している。

 脇腹をかすめた達也の方も無傷ではない。かすり傷程度とはいえ、きっちりダメージは受けている。

「しかし、このバルドほんまに邪魔や」

 何度も何度もめげずに攻撃を仕掛けてくるバルドを弾き飛ばしながら、うんざりした顔をする宏。敵対しているのだから攻撃してくるのは当然なのだが、面倒くさいのは面倒くさいのである。

「ええ加減、邪魔くさい! これでも食らって往生せい!!」

 まとめて三つほどつかんだ特大ポメをバルド達の中心付近に投げ込み、アラウンドガードで爆風を気合を入れて抑え込む。カウンター気味に入ったとはいえ、ファーレーンのバルドが第二形態以降でも大ダメージを避けられなかった一撃だ。第一形態のノーマルバルドが三つも直撃を受けて、耐えきれる代物ではない。正直、感覚的にアラウンドガードの熟練度が最大になっていると確信していなければ、いくら宏といえどもこの状況でこんな至近距離でやろうなどとは考えもしなかっただろう。

 そんな大魔法と大差ない攻撃を行った結果、凄まじい爆音と同時に宏の正面に居たバルドの七割ほどがコアだけを残して消滅する。

「これで、落ち着いて鎧直せるわ」

 再開した春菜の歌に耐えきれず消滅していくバルドを眺め、一つため息をつきながら宏は己の鎧に魔力を注ぎ込む。緊急修復のエンチャントが宏の魔力に反応し、破損していた腹部を元の状態に戻す。達也の方も同様に、裂けた鎧の脇腹を修復する。

「しかし、こいつら何で変身せえへんねん?」

「さあ、な」

 正面はもう十分とみて取り、聖天八極砲を解禁して何体か仕留めつつ、達也が宏の疑問に気のない返事を返す。変身してくる可能性は排除できないため警戒は必要だが、情報不足の現状で何故変身しないかを考えても時間の無駄だろう。

「とにかく、どう転ぶにしてもまずは数を……!!」

「やっぱ、全部が変身せえへんっちゅう訳にはいかんか」

 アバウトな攻撃ゆえに数の利を活かしきれずに次々仕留められていたバルドが、残り二割程度になったあたりでついに変身を開始する。それを見て言いかけた言葉を飲みこんだ達也に変わり、宏が状況に対してコメントする。

「数がトリガー、っちゅうことか」

「案外、全部が変身するには瘴気か何かが足りなかったのかもね」

 宏と真琴の言葉に、全員が頷きながらフォーメーションを変える。今のところ、敵の攻撃が非常にアバウトで連携もなっていないため、先ほどの不意打ち以外ではまったく被害を受けていない。だが、同じアバウトな攻撃といえど、変身後は攻撃力も攻撃範囲も跳ね上がる。

 ここからは今までのようには行かない。ここまでも油断はしていないが、ここからは一層気を引き締めなければいけない。

「終わった奴からかかって来いやあ!!」

 状況の変化に気合を入れ直し、アウトフェースで敵をかき集める宏。黒幕を引きずり出すための戦闘は、新たな局面に移行したのであった。







「……不発、か」

「次の一撃は、無理だな」

 宏に不意打ちを潰され、苦々しさを隠そうともせずに吐き捨てる闇の主達。そのまま宏が巨大ポメを投げて一気にバルドの数を減らしたのを見て、情勢が決した事を悟る。

「ここから巻き返す事はなさそうだな」

「地脈の位置が動いている。こちらからの干渉も不可能だろう」

「もはや手遅れだが、バルドと引き換えにサキュバスもどきか何かを何体か、こちらに用意してもらうべきだったな」

「何度も言うが、東部の連中にも、そこまでの余力はなかった。恐らく、ファーレーンの状況を潰された時点で、西部の流れは決していたのだろう」

 少しでも状況を良く出来たであろう闇の主Aの提案に、力なく首を横に振るB。宏達がフォーレに入る直前ぐらいから、大陸東部地域での策に色々と不安定要素が増えていた。そこをカバーするために、状況が行き詰っていた西部から彼ら二人を除く全員が中部と東部の応援に行ってしまったため、西部地域に対して起こせるアクションが極端に制限されてしまっていた。

 西部から応援が行ったために、東部の状況は急速に彼らに有利になってきている。だが、それでもあと何カ月かは今の人員を動かす訳にも、余計な仕事を頼む訳にもいかない。まだまだ油断すると、あっという間にひっくり返りかねない状況なのだ。既に建て直しが出来ないレベルで西部での活動が失敗に終わりつつある以上、リカバリーにもならない事で油断できない状況の東部に負担をかけてはならないのである。

 宏達は確かに脅威だが、彼らを排除するために東部まで足がかりが無くなるほどの失敗をするのは本末転倒だ。現状維持なら二人いればどうにかなる、との目算で一致し、実際にクレストケイブのダンジョンを作ったところまでは、思惑通りにはいかないまでもそれなりの状況で推移していた。

 結局、宏達を甘く見過ぎたのが、彼ら全員の失敗であろう。ダールの時点ではそこまでの分析が出来ていなかったとはいえ、潰せるときに潰しておかなかったのが間違いだった。余裕があるうちに宏の弱点である女性型モンスターを大量に用意しておけば、恐らくここまで追い詰められる事はなかったに違いない。

 だが、今更それを言っても仕方がない。東部に行った連中を呼び戻したところで、おそらく無駄足になる。確かに、自分達には作れない女性型のモンスター、それを用意してもらえば、あの厄介な壁役を排除するのにある程度有効ではあろう。だが、それを活かしたければ、あの肉壁が単独で動いている時でないと厳しい。

 故に、今となっては当って砕けるしかないのだ。

「……そろそろ、用意したバルドが全滅するな」

「……結局、多少消耗させるのが限界だったか」

「しかも、あの小娘の歌のせいで、思ったより聖気が残っていない」

 状況の悪さに、渋い顔をする闇の主達。乾坤一擲、と言うにはほど遠いやり方とはいえ、現在可能な最大限の方法で勝負を仕掛けてこのざまだ。貧すれば鈍するとは言うが、ここまで相手の力量や自分達の状況の悪さを見誤るなど、もはや呪いか何かの領域である。

「……もはや、どう転んでもここから巻き返すのは不可能。恐らく、アズマヒロシを仕留める事はかなうまい」

「……ああ。だが、このままやられっぱなしという訳にはいかん。東部の連中のためにも、せめて一人でも道連れにしなければ」

「……その役は私がやる。お前は、東部に回れ」

「今更何を言う。これ以上出し惜しみをして、連中に力をつけさせてどうするつもりだ?」

「今更、だからだ。一人二人道連れにしたところで、半ば無駄死になのは変わらん。ならば、無駄死には一人で十分だ」

「その結果、誰一人道連れにできずに本当の無駄死にをする、ということにならん保証は?」

 少しでも被害を減らすために、Aを東部に行かせようとするB。そんなBの考え方に異を唱え、少しでも勝率を上げようとするA。

 数秒ほどのにらみ合いの末、折れたのはBであった。

「……そうだな。女神が直接妨害してくる可能性もある。そうなれば、私一人ではどうにもならん」

「ああ。これ以上の戦力の逐次投入は、避けるべきだろう。それに、ここまでして我らが敗北したことを示せば、東部の連中が奴らを侮って返り討ちにあう愚は避けられるはずだ」

 Aの言葉に頷くB。だが、貧すれば鈍するとは本当によく言ったもので、こんな事を言っているAですら、この時点ですでに自分達がいまだに戦力の逐次投入をやらかしている事に気が付いていない。

 そう。折角バルドを百体も用意しておきながら、同時に自分達が攻撃を仕掛けるという発想がなかったため、彼らは結局その戦力を無駄遣いしてしまっていたのである。

「さて、行くか」

「ああ。世界を聖気で満たすために」

「世界を聖気で満たすために」

 一人二人を道連れにするどころか、宏達を全滅させることすら可能であったかもしれない機会。それを逃した事に最後まで気が付かず、二人は最後の戦闘に臨むのであった。







「あと三体」

「結局最後まで、行動パターンは大して変わらなかったわね」

「真琴姉、まだ油断は出来ない」

「そうね」

 順調に数を減らし続けた量産型バルドを前に、そんな感想を漏らしながらラストスパートをかける真琴と澪。結局量産型バルドは一体も第三形態に変身することなく駆逐されていき、とうとうこれと言った被害を与えずに全滅目前となっていた。

「どんどん来いやあ!!」

 残り三体といえども、油断は出来ない。間違っても達也に攻撃が行かないように、宏がきっちりアウトフェースで目標を自分に固定する。

 装備の性能にスキルを完全にマスターしたフォートレスの効果、更に春菜がかけてくれる防御強化魔法まで合わせると、もはや宏がバルドからダメージを受ける事はあり得ない。だが、達也はフォートレスを使っていても、バルド第二形態の攻撃を受けると結構なダメージを受ける。そして、攻撃を食らえば当然痛みがあり、魔法の制御にも影響が出てくる。場合によっては、痛みによって手元を狂わせ、味方を誤爆する可能性もある。

 そういった「事故」を防ぐためにも、特に達也には攻撃を通してはいけない。一回二回では死なないと言っても、回復役とメインアタッカーの行動能力が落ちるのはそれこそ全滅に直結しかねないのだ。

「後二体!!」

 真琴が、更に一体斬り捨てる。良く見ると、使っている刀がヒヒイロカネからアダマンタイト製のものに切り替わっているが、恐らく消耗した刀を休ませているのだろう。

 更にもう一体仕留めようとして、目の前で達也の魔法と澪の矢で一体倒したところを目撃する。

「次が最後ね!!」

「ちょい待ち! 何か来おる!!」

 そのままの勢いで最後の一体に斬りかかろうとした真琴を、宏が慌てて制止する。タワーゴーレムなんぞ目では無い瘴気の塊、それがこちらに出現しようとしているのだ。

「……大体予想はつくけど、何が来ると思う?」

「……この状況だ。来るとしたら、バルド達の親玉しかいねえだろうさ」

 春菜の疑問というよりは確認の言葉にそう返事を返し、念のためにマナポーションを飲み干しておく達也。ここまでの戦闘、楽勝ムードではあってもそこまで余裕があった訳ではない。大技も何度か使っており、残り半分を切る程度には魔力を消耗していたのだ。この手のリソースをまったく消費していないのは、恐らくずっと歌を歌っていただけの春菜ぐらいだろう。

 その春菜にしても、それなりに本気で三十分程度、歌を続けていたのだ。スタミナや魔力は確かに消費していないが、春菜の、というよりは世界的歌手・yukinaの娘の性質的に、カロリー消費は下手な戦闘より激しい。ポーション類ではカロリーの補充は出来ないので、考えようによってはこちらの方が厄介かもしれない。

「そろそろ出てくる」

 澪の言葉と同時に最後に残ったバルドがねじれ始め、刹那の時間をおいて二つに引きちぎられる。引きちぎられたバルドが滲み出てきた闇に飲み込まれ、更に周囲に散らばっていた量産型バルドのコアが次々と吸い込まれていく。

「しもたな……」

「何が?」

「バルドのコア、集められるだけ集めとけばよかったわ」

「それって、素材的な意味で? それとも、相手のパワーアップを防ぐ意味で?」

「そら両方に決まっとるがな」

 などと、宏と春菜がどこかずれているようである意味状況的に正しい会話をしているうちに、闇の中から何かが出てきた。

「どうやら、ボスのお出ましのようね」

「っちゅうても、邪神の欠片と比べたら大したプレッシャーやないから、こいつらも単なる手先の類っぽいけどな」

 現れた黒いローブの恐らく男だと思われる二人組を見ながら、真琴と宏がそんなコメントを漏らす。正直言って、思わず引きつりそうになるほどの瘴気を放ってはいるが、絶望的なほどの強さは感じない。

 体格的には宏とどっこいどっこい、フードを目深にかぶっているため顔は見えないが、もしかしたら顔などというものは存在しないかもしれない。着ているものから体格から瘴気の濃さまでまったく同じなので、恐らく場所が入れ替わってしまえばどっちがどっちなのか、まったく識別できなくなるだろう。

「さて、何をやらかしてくるんか……!?」

 宏が軽口を叩こうとする前に、自分達の足元から無数の手が生えてくる。宏以外の四人はとっさに飛びのいて捕まる事を避けたが、フルプレートで軽やかに逃げるような真似が出来ない宏はきっちり拘束されてしまう。されてしまうのだが……。

「何ぼのもんじゃーい!!」

 捕まった瞬間に全身に気合を入れ、大声でアウトフェースを発動する事で自分を捕まえた手を全て蹴散らしてのける宏。どうやらこの手はゴーストなどと同じようなものらしく、アウトフェースのような精神干渉スキルで潰す事が出来るようだ。

「何もコメントなしで先制攻撃とか、問答無用、っちゅう感じやな」

「冥土の土産に教えてやる、とかそういうのも無いあたり、相当殺る気ね」

 ボスらしくない殺気あふれる余裕のない行動に、相手の本気を感じ取って気を引き締め直す宏達。何度も言うように今までも気を抜いていた訳ではないが、流石に無駄口を叩きもせずにおそってくるのは想定外だった。

「やば!!」

 右のローブが放った押しつぶすかのような上からの衝撃波をアラウンドガードで潰し、左のローブから飛んできた呪いの塊を気合で吹き消したあたりで、嫌な予感に従ってフルプレートモードを解除し飛びのく宏。飛びのいた次の瞬間、足元が大きく崩れる。

「皆気ぃつけ! 直接魔法とか瘴気をぶつけてけえへんとか、かなり対策取られとる!」

「おう!」

 宏の警告に従い、攻撃よりも相手の行動を見極める方に軸足を移す達也達。今までと違い、宏が確実に潰しきれるとは断言できない以上、ある程度自分の身は自分で守る必要がある。

 宏の警告と同時に、足元に闇が広がる。とっさに宏がマジックブリットを放って牽制し、闇が広がるのをほんの少しだけ遅らせる。そのほんのわずかな時間で、達也が獄炎聖波を発動させて闇を焼き払う。更に一瞬遅れて、今度は地表一センチ程度がぬかるみに変化する。

「春菜さん、あれを起動するんや!」

 親玉っぽい連中の行動パターンを見て、宏が春菜に指示を飛ばす。ここまで温存しておいた切り札。切るなら今しかない。

「了解!」

 宏の指示に従い、春菜が歌を中断して今回の切り札を準備する。エアリスを通してアルフェミナから託されたもの。それを宏が加工して効果を増幅した、非常に豪華な使い捨てアイテム。一定範囲内を一時的に聖域にする、まさに切り札と言っていい一品。

「サンクチュアリ、展開!」

 その起動キーワードを、春菜は高らかに宣言した。







「アルチェム様」

「はい」

 神殿の食堂で午後のお茶を飲んでいたエアリスとアルチェムが、さりげなく目配せをして頷き合う。出された茶菓子は食べ終わっており、お茶も残り三分の一程度。中座するのにちょうどいいといえばちょうどいい。

「すみません。儀式の間をお借りして、よろしいでしょうか?」

 エアリスが上品にお茶を飲み干し、控えていた神官にそう声をかける。

「少々お待ちください」

 エアリスに声をかけられた神官が、一つ頭を下げて神官長に確認を取りに出ていく。それを見送った後、エアリスはドーガに視線を送る。ドーガも心得たもので、すぐにエアリスとアルチェムの荷物を持って二人の傍による。

「現状は、分かる?」

「親玉出てきた~」

「ローブ、ローブ」

「顔なし~、顔なし~」

「瘴気の塊~」

「攻撃ねちっこい~」

「春菜ちゃん、サンクチュアリ起動~」

 アルチェムの問いかけに、お菓子をもらって大人しくしていたオクトガル達が口々に状況を伝える。それを聞いて頷いたエアリスとアルチェムが、ドーガが持ってきた荷物からペンダントを取り出し、その場で即席の儀式を行う。

「これで、一つ目の補強は完了ですね」

 特殊言語での、三行ほどの詩。それを詠い終わった後、ペンダントの状態を見ながらアルチェムが確認する。

「アルチェム様、次が本番です」

「ええ」

 戻ってきた神官を見て、頷き合う巫女二人。諸般の事情で準備だけしていた儀式に必要な宝飾品を手早く身につけると、先導する神官の後に続く。

 大陸西部における邪神一派との抗争。その最初の転換点は、刻一刻と迫っていた。







「小癪な真似を……」

 それまで無言で攻撃を仕掛けていた闇の主が、展開された聖域に苦々しさを隠さずに言う。それが、宏達に対して放った最初の言葉であった。

「恐らく、これで場に干渉する類の手札は切れんなったはずや!」

「認めよう。だが、この程度で打つ手が無くなるほど、我らは無能では無い!!」

 宏の言葉に憎悪の念を隠そうともせず叫び、闇の主の一方がローブの前を開く。開かれたローブの中に蠢いていた闇が広がり、その中から何かが大量に飛び出してくる。

「数で勝負するんやったら、さっき一緒に出てくるんやったな!!」

 飛び出してきた、恐らくバルド第三形態のバリエーションだと思わしき蛇状の何かをスマッシュではね飛ばしながら、アウトフェースを乗せて宏が挑発する。先頭の一体をいい具合に押し返されたため、残りが出てくるときに渋滞して動きが止まる。

 その一撃によって宏が稼いだ数秒、それが更に闇の主達を追い詰める。なぜなら、

「────」

 春菜の般若心経ゴスペルが、何処からともなく発生した伴奏やバックコーラスを従えて高らかに響き渡ったのだ。聖域によって強化され、更に祖霊や英霊が伴奏やコーラスを乗せて力を増幅した神の歌は、即席で作りだされた量産型バルドなどものともせず、一瞬で浄化して消滅させる。

「こらまたいかついな」

「でも、流石に親玉には効果が薄いわね」

「そらしゃあない。親玉にまで効果が抜群やったら、歴代の姫巫女とかが何とか出来とるやろうし」

 闇の主達の挙動に注視しながら、宏と真琴が状況を確認する。バルドごときは一蹴できると言っても、流石に更にその上の親玉ともなると、そう簡単に話は進まないようだ。まったく効果がない訳ではないにしても、第二形態ぐらいのバルド相手にズ○ドコ節あたりを聴かせた程度の効果しか見られない。徐々に削られていってはいるようだが、間違いなく削り切る前に聖域の時間切れが先に来る。

「何処までも忌々しい連中だ……」

「だが、貴様らの弱点も分かっている」

「貴様らの弱点、それは……」

「アズマヒロシ以外の肉体的な脆さよ!!」

 言わずと知れた事を高らかに叫び、宏がカバーしきれないタイミングで全員に対して個別攻撃を叩きこもうとする闇の主達。戦闘領域全体を底なし沼や闇の領域に変える事は出来なくとも、地面から石の槍を発生させたり、何もない空間にカマイタチを作りだしたりするぐらいの事は可能らしい。並の冒険者なら普通に致命傷を受けそうな威力のそれらが、ランダムに宏達を襲う。

「何ぼのもんじゃい!!」

 自身に飛んできた攻撃を全て受け止め、更にどうにかこうにか春菜と達也のカバーを成功させる宏。半分ぐらいは魔法攻撃だったらしく、彼に当たる直前にかき消される。だが

「あう!」

「がっ!」

 宏のガードをすりぬけたいくつかの攻撃が、達也と春菜に直撃する。流れ弾は百パーセントは防げないというカバームーブの欠点、それを見事に突かれてしまった形だ。

 受けたダメージ自体は致命傷には程遠く、四肢を切り落とされたりするほどの威力でもないが、何発も受ければ命が危ない。

「春菜、達也!!」

「……大丈夫……」

「だが、俺らのフォートレス程度じゃ足りてねえのは間違いねえか……」

 自身に来た攻撃全てを回避し、被弾した二人の無事を確認する真琴。痛みに顔をしかめつつ、即座に回復魔法で傷を癒して健在を主張する春菜と達也。壁役としての宏の弱点の一つである飽和攻撃への対処。今までは致命的な問題になるほどの密度で攻撃が飛んでくる事はなかったが、今回はどうやらそうもいかないようだ。

「防具のおかげでダメージ自体は大したことないけど、確実に貫通してくるって分かってるのがちょっと厄介かな……」

 次の飽和攻撃を何とか防ぎきった宏を見ながら、呼吸を整えた春菜が攻撃の癖を見極めようとしながらぼやく。この攻撃が続くと、歌を歌うのも少々厳しい。

「ヒロの防御力の一割でもこっちにあれば、恐らく余裕なんだがなあ……」

 防御結界を展開し、大技のために魔力を練り上げながら、春菜のぼやきに同調する達也。とは言え、ないものをねだってもしょうがない以上、今できる手札だけでどうにかするしかない。

「真琴さん! 澪! 出来る範囲でええから、こっちのフォロー頼むわ!」

「頑張っては見るけど、あたしも結構ぎりぎりよ!?」

「師匠、流石に限界ってものがある!」

「分かっとる! 一発二発減るだけでも十分や!」

 先ほどすりぬけた攻撃は計四発。二人とも二発ずつ食らってあの程度のダメージなら、流れ弾が多少減ればどうにかはなりそうだ。などという楽観論をあざ笑うかのように、歌が途切れた事によってある程度力が戻った闇の主達からは、先ほどの倍近い数の攻撃が飛んでくる。飽和攻撃と同時にバルドの集団を出すのは不可能らしいが、その事実はあまり救いにはなっていない。

 流石にこれをどうにかする事は難しい。先ほども言ったように、一発一発は正直、大したダメージは受けない。恐らく、ジョンに渡した剣のパッシブバリアがあれば十分防げる。だが、そんなダメージでも、累積すれば命に関わってくる。しかも、直撃を受けて無傷で済まないのは春菜と達也だけではない。

「っ痛!」

「師匠! ボクにも抜けてくる!」

 真琴と澪、二人の防御力すら抜けていたのだ。

 こちらの二人は春菜達と違い、ダメージというのもおこがましい程度のダメージしか受けていない。ゲーム的に言うならば、数万のヒットポイントに大して一発あたり一桁か、せいぜい十数ポイントのダメージといったところだ。恐らく、自然回復頼みで十秒もあれば、跡形もなく消え去る程度の負傷である。

 だが、負傷は負傷だ。わずかにとはいえ自然回復を上回っている以上、いずれ危険領域に入る可能性は高い。何より、被弾することによりわずかにとはいえ動きが止まる。そのため、防御にも攻撃にも回れなくなってくるのだ。結果として、宏以外はじわじわと削り取られてしまうのである。

(やばいな、こら……)

 マイナーヒールを連発し、春菜と達也の傷を治療しながら危機感を募らせる宏。春菜達の負傷度合いもさることながら、まったく攻撃に移れない状況もまずい。何よりまずいのが、このままだと何もできずに聖域の効果が切れ、連中の戦闘能力が跳ね上がる可能性がある事だ。

 達也の防御結界も、相手の手数の多さからほとんど機能していない。アブソーブと違い、防御結界は防御力が関係ない。そのため、これだけ流れ弾が多いと、すぐに許容量を超えてしまうのだ。かといって、アブソーブやその系統のスキルで凌ぐにも、クールタイムの問題で常時展開は出来ない。

 はっきり言ってかなり状況は悪い。どうにかしなければいけないのだが、宏の今の手札では、出来ることなど限られる。やるとすれば、どうにかトンネルの入り口まで戻り、飛んでくる攻撃の方向を限定する。もしくはいろいろ割り切って春菜に覆いかぶさり、地面以外からの攻撃が春菜に当たらないようにした上で無理にでも歌を続けてもらうか。

 言うまでも無く、後者は駄目だ。いくら春菜相手と言っても、長時間密着できるほど女性恐怖症は克服できていないし、何より達也を見捨てることになる。だが、前者も厳しい。下がるにしても後ろからの攻撃もかなりの密度だし、下がりながら傷の治療をするのも厳しい。それ以前に、恐らく後退しようとすれば、そちらからの攻撃を増やしてくるのは目に見えている。

 とにかく目先の状況を少しでも良くしなければいけない。そのために必死になって体を動かしながら、一発でも確実にガードできるように力の流れを読む。思ったより近くに地脈の力を感じるが、今回は正直あまり関係ない。

(……ん?)

 攻撃を先読みするために、魔力だけでなく全ての力の流れを観察しているうちに、自身の表面にある、恐らく生命力の類だと思われる力を動かせる事に気が付く。薄く広く引き延ばしてみると、引き延ばしたその力に触れた攻撃が、極端に威力を落とすのが分かる。それも、物理扱いのものも魔法扱いのものも関係なく、である。

(もしかして!!)

 相変わらず達也と春菜への攻撃を潰せるだけ潰し、その合間にマイナーヒールをかけ続けながら、宏はその力を二人を覆うように広げていく。その分、宏自身を覆う力は薄くなるが、元々過剰なほどの防御力を持っているのだ。少々減ったところでまったく影響はない。

「あれ?」

「直撃したのに、痛くねえぞ?」

「よっしゃ、思った通りや!!」

 春菜と達也に直撃した攻撃が宏から広がった力場に干渉されて減衰、二人の防御を貫く事なく弾かれたのだ。

「え? え?」

「ヒロ、何かしたのか?」

「詳しい説明は後でする! ここでガード続けるから、まずは攻撃や!」

 状況が分からず戸惑いの声を上げる春菜と達也に今やるべき事を告げ、力を広げられる広さを確認しながら相手の攻撃を観察し続ける。

(効果範囲は半径五メートル、っちゅう所か)

 自分から攻撃を仕掛けに行くには少々狭い。更に、限界いっぱいまで範囲を拡大すると、結構スタミナを使う。もっとも、このあたりの性能は、恐らく訓練や実戦での使用で改善できそうな項目ではあるが。

(後は、どの程度僕自身の防御力が落ちとるか、やけど……)

 春菜に飛んだ、威力が大きめのカマイタチを正面から受け止めて潰し、達也にあたりそうな石の槍をポールアックスで砕きつつ、スキルの検証を続ける。これまでも含めてもはや散々やりつくした行動ゆえに、春菜と達也に飛んでいく攻撃を潰すのはほぼ無意識に行っている。先ほどまでと違い、当るとまずそうなものだけカバーすればいいのだから、そちらに思考を割く必要はほぼない。なので宏は、状況が変わるまではスキルの仕様確認を優先させているのだ。

 スキル使用による防御力の低下、それ自体は確実に起こっている。問題なのは、今飛んでくる攻撃では、その度合いがどの程度なのかが判別できない事である。

 今現在は問題ないとはいえ、相手の攻撃によっては力場を広げるのをやめ、自身の防御に専念しなければいけないケースも出てくるだろう。そのラインの見極めのために、ある程度感覚的に把握できていないとまずい。ゲームの時とは違い、ダメージの数字が目に見える訳ではないので、正確な低下量は分からないだろう。それでも、明確なデメリットがあるスキルの、そのデメリットの大きさを検証しないで使うのは自殺行為だ。

「宏、大技が来るわよ!」

「了解や!」

 見ると、闇の主のうち一方が、何やら大量に瘴気をためて攻撃に移ろうとしている。間違いなく、大技の類だ。それを阻止するように、達也から聖天八極砲が三発飛ぶが、ダメージこそ発生するも、技の準備を中断させるには至らない。

「その程度の防御幕では、この技は防げまい!!」

 どうやら、宏が行っていた何かを見抜いていたらしい闇の主が、巨大な闇を作りだしていた。

「食らい尽くせ、ヘルズディナー!!」

 闇の主の言葉と同時に、巨大な闇が宏達を飲み込もうと大きく口を開く。このまま何もしなければ、三人とも同時に飲みこまれてしまう。しまうのだが、どれほどエフェクトが派手であろうと、どれほど火力が高かろうと、範囲攻撃は範囲攻撃である。

「残念やったな、アラウンドガードや!!」

 宏のアラウンドガードによって空間を捻じ曲げられ、闇の顎は達也と春菜を捕らえる事は出来ない。範囲攻撃の弱点がはっきりと表れる瞬間である。

 その上、この手の瘴気の塊を利用した技は、大抵魔法攻撃と変わらない欠点を持つ。すなわち、相手の魔法抵抗によって威力や範囲が減衰してしまうのだ。その分、単体攻撃も含めて大半の攻撃は非常に回避が難しい上に同ランクの物理攻撃より威力があり、また魔法防御や魔法抵抗は物理防御に比べるとかなり上がりにくいのだが。

「やっぱ、流石に無傷とはいかんか」

 ヘルズディナーを気合で吹き散らし、自身の状況を確認してぼやく宏。丁度いいからと検証も兼ねて先ほどの防御力場を展開中だったことにより、防御力が下がった結果としてダメージを受けた感じだ。受けたダメージは大したことがないので、恐らく防御力場を展開していなければ無傷だっただろう。

 ヘルズディナーはドレインタイプの技だったようで、宏は何かが吸い取られる感触を覚え、先ほど達也が与えたダメージが、わずかに回復している。とは言え、宏が受けたダメージ自体があってなきがごとしなので、回復しているというほど回復してはいないのだが。

「これが切り札やったら、お前らの勝ち目は消えたで」

 その言葉とほぼ同時に、エアリスとアルチェムが儀式によってアルフェミナとアランウェンから借り受けた力、それが地脈を通って聖域に注ぎ込まれる。

 宏達の圧倒的優位が、この瞬間確定したのであった。







「どうやら、無事に一つ目の技を得たようですね……」

 いつでも介入できるように身構えていたエルザが、宏達が難局を乗り越えた事を確認して安堵のため息をつく。

 聖域も展開され、女神自身が介入する条件はほぼ整っている。このまま直接介入してもいいのだが、闇の主があの二人だけではない上に、更にその上司に当たる連中はまったく消耗していないどころか、表に出て来てすらいない。今の時点で軽々しく自分が介入するのは、悪手とまでは言わないが、決していい手とは言えない。

 闇の主ごときが何百人いた所で、エルザ達にとっては物の数ではない。その上司程度でも手こずりはするが処理は出来る。だからこそ、神の直接降臨には色々な制約がかかっている。巫女という媒体無しで事を起こすには、ルールを守るか世界そのものに喧嘩を売るしかない。邪神本体が相手でもない限りいちいち世界に喧嘩を売ってられないし、ルールを守ると一回出ていくにもかなりの時間と労力がかかる。

 なので、宏が大地系のエクストラスキル・ガーディアンフィールドを身につける事が出来ず、展開した聖域が時間切れになりそうになるという最悪の状況になるまで、あの場に降臨するのを控えていたのだ。

 決められた聖域以外で巫女の呼びかけという手順を無視して降臨するには、かなり厳しいルールに従う必要がある。その上、一度降臨すると、同じ条件で同じ神が降臨できるようになるまでかなりの時間がかかる。こんな事で宏達を失う訳にはいかない以上、それだけのリスクを背負って出ていくつもりはあった。あったのだが、後々直接降臨して介入する必要が出てくることがはっきりしている以上、この一回を温存するためにも、自力で何とかできそうならば手出しを控えたい、とエルザが考えるのも仕方がないことだろう。

「アルフェミナ、アランウェン、助かりました」

「こちらは巫女の儀式を通しての介入だからな。アルチェムやエアリスの資質ならば、この程度の介入には何一つリスクは生じんよ」

「ですが、二人とも現地にはいない以上、私達がこれ以上の介入をするのは難しいでしょう」

「ええ、分かっています。後は、リスクなしで許される範囲でどうにかします」

 離れた場所からこちらの様子をうかがっていたアルフェミナとアランウェンに礼を告げ、現状で更にできそうな事を確認する。

「……地脈に力を多めに流し込んで、聖域を更に補強するぐらいですか」

 状況を分析し、そう結論を出す。折角条件が整っているのに、迂闊な事をして降臨できなくなってはただの愚か者だ。自身の余力を残しておくためにも、介入内容は小幅に抑えておく。

「……どうやら、何とかなりそうですね」

 聖域の中では、状況を動かすために真琴が闇の主の一方に躍りかかっていた。







 闇の主達は、焦っていた。

(ヘルズディナーすら、通じんだと!?)

(まずいな……)

 防がれると分かって放ったヘルズディナー。宏を仕留めることなど出来ない事は予想していた。だが、自身の防御力を削って仲間を守る力場を展開してなお、かすり傷にもならないダメージしか与えられなかったのは誤算もいいところである。

「それで終わりなら、こっちから行くわよ!」

 澪からマイナーヒールでの治療を受け、蓄積していたダメージをきれいさっぱり消し去った真琴が高らかに宣言する。それを聞き、タイミングを合わせてカウンターを取るため、そのタイプの技を準備する。だが、

『春菜、オーバーアクセラレート頂戴!』

『了解!』

『澪、どうせ碌でもない事を考えてるだろうから、適当に一撃入れて邪魔してあげなさい!』

『ん、分かった』

 パーティチャットでこっそり連絡を取り、相手を出し抜くためのあれこれを相談するアタッカー・バックアップ勢。

「本邦初公開! エクストラスキル・イグニッションソウル!」

 ここから先、一気に畳み込むために、イグレオスから授けられた自己増幅系スキルの最高峰、イグニッションソウルを発動する真琴。エクストラスキルだけありとにかくコストが重いスキルだが、発動中は現在の宏の耐久・精神と春菜の敏捷、更に真琴の筋力、それらを大きく上回るほど能力が上昇する。ただし、HPやMP、スタミナなどは増えず、知力や感覚、器用なども変化しないのだが。

 強力なだけに発動コストだけでなく維持コストも重く、今の真琴では頑張って五秒強が限界だ。だが、このチームには、その五秒を有効活用するための手段が存在する。

「オーバーアクセラレート!」

 そう。超加速魔法・オーバーアクセラレートの存在である。胡散臭い話だが、アイテムやスキルの持続時間は通常の時間軸に合わせて経過する。維持コストを払い続ける魔法なども同じで、たとえばイグニッションソウルの場合、オーバーアクセラレートにより真琴が超加速したとするなら、百秒分行動して初めて一秒分のコストを支払うことになる。

 この組み合わせにより、ほんの一瞬ではあるが熟練度の低い疾風斬より強力な攻撃力を得る事が出来るのだ。

「無駄なあがきだと教えてくれる!」

 わざわざ歌をやめてまで何かを発動させた春菜をあざ笑うように、彼女達の術の発動に合わせて全周囲にカウンター用の暗黒の霧を発生させる闇の主。それと同時に、一本の矢が飛んできて闇の主の頭に突き刺さりかかり、そのまま霧に飲みこまれてゆく。

 どんな小細工が仕掛けてあったのか、矢を飲みこんだ霧がどう言う訳か一気に晴れる。驚愕する闇の主に対して追い打ちをかけるようにもう一本の矢が刺さり、更にワンテンポ遅れて全身がズタズタに切り裂かれる。

「あんた達のやりそうな事ぐらい、想像はついてるわ!」

「エルとアルチェムが直々に清めたお酒は、流石によく効く」

 そう。恐らく相手を取り込む類の何かでカウンターを取ろうとしてくると予想した澪は、聖域化により聖属性の攻撃が強化される事に目をつけて、矢をお神酒に浸して即席の破魔矢にして放ったのである。

 流石に単なるお神酒では、ここまで劇的な効果はなかっただろう。宏が神の酒スキルでとことんまで品質を追求した酒を、エアリスとアルチェムがそれぞれの神をその身に降臨させて清め、祝福した究極の一品だったからこそこれだけの効果を得られたのだ。

 無論、ここまでの品であれば、直接相手に振りかけても十分なダメージは与えられるだろう。だが、ものがものだけに三本程度しかなく、火炎瓶代わりに使うには少々数が足りない。故に、簡易的な聖属性エンチャントの代わりに使ったのである。

「……貴様ら!」

 相方が既に実体を保てなくなりつつあるのを見て、無事だった方の闇の主が激高する。その様子を見た崩れゆく方の闇の主が、どうにか声を絞り出す。

「……使え……」

「……いいのか?」

「……このまま消えるよりは……はるかにましだ……」

「……分かった。存分に使わせてもらおう」

 謎の会話を終え、無傷の主が消えゆく相方の胸を貫き、コアをえぐり出す。

「師匠、あれってもしかして……」

「多分、そうやろうな」

 大きな傷の入ったコアを取り込んだ闇の主を見て、乾いた声を絞り出す宏。

「バルドのコアも取り込んだんやから、相方のコアで同じ事が出来ん訳無いわな」

 宏の言葉に反応するように、コアを取り込んだ闇の主が一気に巨大化するのであった。
実は、前衛として頑張り続けた結果、防御関係のエクストラスキル習得フラグが立っていたわけですが。

なお、こいつは絶対条件は簡単でもそれ以外の条件を満たすのが難しいタイプのスキルなので、発見されそうで発見されてません。
選択条件の能力値が絶望的だったり、それ回避するためのクエストが発生条件が無茶苦茶複雑でトリガーが分からなかったりと、絶対開発が狙ってる感じの奴。
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