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フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~ 作者:埴輪星人

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第7話

 装備を一新してから約十日後。

「真琴姉、後ろから不確定名・大ムカデ」

「了解」

「師匠、そろそろ正面から不確定名・骨トカゲが来る」

「はいな」

 宏達は、ようやくダンジョンに潜る事が出来ていた。潜るのが遅れた理由は簡単。

「……やっぱり、慣らしをやっといて正解ね」

 装備の慣らしをしているうちに、宏の手が離せなくなってしまったからだ。

「そないに感覚違う?」

「かなり違うわね」

 特に素材らしい素材のないボーンリザードをスマイトで容赦なく粉砕しながら聞いてきた宏に、ジャイアントセンチピートを一刀両断して仕留めた真琴がしみじみと答える。

「刀の切れ味もかなり違うけど、やっぱり革鎧から金属鎧に変わったのが大きいわ」

「ワイバーンレザーの前はハーフプレートやったやん」

「一体いつの話よ?」

 宏達と合流する前の話を持ち出し、呆れ顔で突っ込みを入れる真琴。ワイバーンレザーに切り替えてから一年は経たないとはいえ、ファーレーン騎士団仕様のハーフプレートで活動していた時期の方が短いのだ。既に金属鎧での動き方など忘れかけている。

「そもそも、ワイバーンレザーの時は装備の慣らしとかやってへんかった記憶あるんやけど?」

「あの時は基本的に防御力が大幅に上がりつつ重量が軽くなってたわけだし、極論すれば達也のオキサイドサークルだけでケリが付く状況だった訳よ」

「でも、全部兄貴が仕留めた訳やなかったんやろ?」

「一部を除いて、ファーレーン騎士団仕様のハーフプレート着てればほぼ怪我しないような連中しか出て来なかったから、むしろ慣らしとしてちょうど良かったのよ」

「なるほどなあ」

 地味に納得できる回答を受け、大きく頷く宏。確かにあの時倒したモンスターの数は多かったが、騎士団仕様のハーフプレートを貫通してダメージを与えてくるようなモンスターは数種類しかおらず、その上のワイバーンレザーアーマー、それも宏仕様の限界まで防御力を高めたものをぶち抜いてダメージを与えてくる可能性があったとすれば、イビルタイガーとヘルハウンドぐらい。その二種にしても、装備を考えれば達也でも七級ポーションが必要になるかどうかという怪我しかしなかっただろう。

 無論、宏が作った装備でなければ、そこまでの防御力は確保できなかったのは言うまでも無い。

「それにしても、このヒヒイロカネの刀、いいわね」

「それが気に入ったん?」

「ええ。オリハルコンもアダマンタイトも悪くはないのよ? ただ、この刀が一番しっくりくる感じってだけで」

「現時点では、性能的に一番悪いんはそいつやねんけどなあ」

「確かにこの刀は切れ味は三振りの中で一番下だけど、他のより使いこんだときに馴染む感じなのよね。あと、生き物だろうが生き物じゃなかろうが、何か斬るたびに生き生きしてくるというか、使われる事を喜んでる感じが伝わってくるというか」

 真琴の一言に、思わず気まずそうに明後日の方向に視線をそらす未成年組。どうやら躾がばっちり成功しているようだが、その結果、刀のくせに妙な性癖に目覚めた可能性を否定できないのが悲しい。

「あ、そうや真琴さん」

「何?」

「そいつ使いこむと成長しおるんは説明したと思うけど、使い方によって成長の仕方が変わりおるからな。クールタイムとか自己修復の時間とかの兼ね合い見て、適当なタイミングでエクストラスキル使ったって」

「了解」

 宏の説明を聞き、一つ頷く真琴。使い方で性能が変わる、自分専用の成長する武器。いろんな意味で美味しい話だ。

「それにしても、春菜はともかく宏がブレストプレートだけにしたのは、ちょっと意外ね」

「春菜さんとか澪にも言うたんやけど、僕がハーフプレートとか着込んだ日には、ダンジョンの探索が一週間やそこらで終わらんなるし」

「ああ、ペナルティの問題か」

「せや。一応慣らしの時にフルプレートモードで動いてみたんやけど、重さはともかく動きにくさが半端やないから、戦闘中はともかく単なる移動中には展開せんほうがええ、っちゅう感じやった」

 宏の言葉に納得する真琴。攻撃を食らうことが前提の宏の立ち位置だと、戦闘中に動きにくくてもスキルである程度カバーできる。注意を引くためのアウトフェースは装備のペナルティなど受けないし、後ろに攻撃が飛んでしまってもカバームーブなどでそれなりにフォローが効く。火力としては元々期待されていないので、攻撃はスマッシュさえ当てられるのであればそれで十分であり、それらの要素を鑑みればフルプレートで動きが大きく鈍ってもどうとでもなる。

 が、探索中にそれらをフォローできるスキルというのはもともとそれほど多くなく、しかも習得も修練もものすごく面倒くさい。それらを極めたからといって布装備と同じように動けるかというと、残念ながら現在発見されているスキルではそこまでの性能はない。なので、壁役でも常時フルプレートでないと命にかかわる上級ダンジョンをメインで活動している戦闘廃人以外、その系統のスキルをマスターしている人間はそれほど多くない。

 このあたりの事情はこの世界の冒険者もあまり変わらないようで、常時フルプレートで冒険しているのは騎士崩れの連中ぐらい。ほとんどの冒険者は金属装備といってもブレストプレート程度に留め、重装備と言えば要所を覆うハーフプレートを指すのが一般的である。

「そうそう、真琴さん」

「何?」

「一応そのハーフプレートにも水中行動のエンチャントはかけてあるけど、僕とか春菜さんのブレストプレートと違うて水には浮かんから、そこは注意してな」

「あ~、そう言えばそういう問題もあったわねえ。というか、ブレストプレートなら浮くの?」

「魔鉄とアダマンタイト除く中級以上の金属で作った、ある程度軽量化もかけた鎧に限るけどな」

 金属防具の最大の欠点、水に浮かない。真琴もゲーム時代は少々苦労した記憶がある。ゲームの時は防具の切り替えは一瞬、とは言わないが切り替え時間は固定で五秒だったため、泳いで渡る必要がある場所などはサブの革鎧などでどうにかしのいでいた。普通の水泳スキルは金属防具の欠点をカバーできず、数少ないエンチャント枠を水中行動なんぞで埋めるのは勿体ないため、必然的にそういう対処方法になるのである。

 だが、こちらの世界はゲームとは違い、装備を切り替えるにはきっちり着替える必要がある。ブレストプレートぐらいなら五秒とは行かなくても割とすぐ外せるが、ハーフプレートともなると装備解除も一苦労で、フルプレートはそもそも一人で着脱すること自体難しい。そうなって来ると、水場がある可能性が高い場所に行く時は、金属鎧を身につけることなど出来ない訳で、この辺も一般的な冒険者が金属鎧を避ける理由の一つになっているのだろう。

「そこらへんの話を考えると、地下遺跡の時はワイバーンレザーがメインでよかったと思うわ」

「せやなあ。特に三層目は元ネタが元ネタだけに、水を使ったアトラクションがやたら多かったしなあ」

「最初の池のアトラクションとか、間違っても金属防具で挑みたい内容じゃなかったわよね」

「まあ、それ以前にそもそも、僕が作った環境耐性ばっちりの鎧やったらともかく、普通の金属鎧で砂漠に狩りに行くとか、自殺行為以外の何物でもあらへんけど」

 遺跡の話を持ち出した途端に宏から更に厳しい突っ込みが入り、思わず遠い目をしてしまう真琴。確かに日差しの強い砂漠で金属鎧など、鎧下に余程断熱効果の高いものを身につけていない限りは、いや、恐らくちゃんとしたものをつけていても一時間経たずに蒸し焼きになるだろう。何かの間違いで素肌にでも触れた日には、即座にやけどすること間違いなしである。夏の日差しに晒された滑り台や金属製の手すりを思い浮かべれば、このあたりの事は想像に難くない。

「なんか、ファンタジーという名の世知辛い現実に反撃を食らってる感じね……」

「ファンタジー系のゲームとか本とか、普通の服と変わらんような防具が結構多いんも、地味に理にかなってるんやなあ思うんよ」

「ここまで身も蓋もない話じゃないとは思うけどね……」

 余計なところで現実の壁、というよりは物理法則の壁にぶち当たった事について、遠い目が元に戻せない感じの真琴。現実は本当に世知辛い。

「なんか考えようによっては、あり得ない露出面積のビキニアーマーの方が下手をすると理にかなってるかもしれない、って事になるのはどうなのかしらね?」

「真琴姉。流石にあれは、フルプレートで冒険する以上にあり得ない」

「というか、真琴さん。そもそもあの格好で街中うろうろする度胸がある女の人って、それはそれでどうかと思わない?」

 流石にビキニアーマーに関しては色々思うところがあるのか、警戒を緩めずに速攻で突っ込みを入れる澪と、そこに追い打ちをかける春菜。言われるまでも無く冗談なので、派手に突っ込まれても特にダメージは受けない。

「そう言えばいつも思うんだが、あの手のビキニアーマーって、何で防御力が高いんだ? 魔法か?」

「ん~? 常識的に考えれば、達也さんが言うみたいに何か特殊な魔法がかかってるって事だと思うんだけど……」

「脱げば脱ぐほど強くなる武術を身につけてる、に一票」

 達也の疑問に対して無難な回答を返そうとした春菜の言葉を、澪が余計なボケを入れて潰す。

「脱げば脱ぐほど強くなるんだったら、ビキニアーマー自体いらないような……」

「羞恥心や世間の常識と戦闘能力との兼ね合い?」

「羞恥心はあるんだ。てか、そもそもそんな武術、あるの?」

「テレポーターで壁の中にいる状態にされる某ダンジョン探索ゲームの、素手でコイン型モンスターとかスライムの首を刎ね飛ばす忍者は、全裸でいるのが一番防御力が高い」

 高レベルの忍者がラスボスすら首を刎ねて一撃死させる某ゲームを引き合いに出し、自説を淡々と主張する澪。実のところ、澪は実際にそういう設定の武術を身につけた女の子が、羞恥心や防御力と攻撃力との兼ね合いで服を脱ぎながら戦うカードバトルタイプのアドベンチャーゲームが存在する事を知っている。

 だが、自分達が生まれるよりはるか昔の、ゲームの供給媒体がフロッピィディスクでOSがDOS、ディスクも何も入れずにパソコンを起動したらROMでBASICが立ち上がる頃の作品など、話したところで絶対通じないと分かっている。なので、まだ新作やリメイクが細々と発売されていて一部設定がそのままになっている某ゲームの方を引き合いに出したのだ。

「いや、あの忍者はいろんな意味で誤解されてるからな?」

「でも、一部のコミック版では忍者は覆面以外全裸が普通だった」

「あれ、そういう設定じゃなかったはずなんだがなあ……」

 色々と設定が誤解されている某ゲームの忍者について、渋い顔をしながら誤解を解こうとする達也。だが、この手の一般に広まってしまった誤解というやつは、そう簡単には解けないものだ。特に、そっちの方が面白いとなると余計にである。

「何にしても、この中でそういう防具を着るとしたら……」

 話を若干戻した澪の言葉に、視線が春菜に集中する。

「え? 何で私が着る流れになってるの?」

「そもそも、ボクや真琴姉がビキニ着ても悲しい事にしかならない」

「いや、それ以前の問題で、そもそも何のためにあんな鎧着る必要が……?」

「サービスサービス?」

「誰に……」

 ひと山いくらの男にそんな鎧でサービスする義理はなく、いくらでもサービスしたい宏に対しては逆効果でしかない。それが分かっている以上は、ただ恥をばらまくだけになるビキニアーマーなど、死んでも着たくはない春菜。

「という訳で師匠」

「作る理由も意味もあらへんから作らんで」

「ケチ……」

 澪に振られて、宏が即座に拒否する。そもそもビキニアーマーなんぞという際どいものが作れるのなら、春菜や澪の下着だって作れるのだ。大雑把に形だけ作ってサイズ自動調整で、というやり方も出来なくはないが、そこまでして作ってわざわざ澪以外の女性陣から白い目で見られる気はない。被虐の趣味など持ち合わせていないのだ。

「じゃあ、春姉。ビキニアーマーと魔法少女とか変身ヒロイン風の衣装とどっちかを着なきゃいけない、ってなったら、どっちがいい?」

「どっちを着ても大惨事になる未来しか見えないけど、その二つだったらまだ変身ヒロイン風の方がマシかな……」

「なるほど」

 何かに納得した様子を見せる澪に、早まったかもしれないと微妙に後悔する春菜。

「あ、真琴姉。正面から不確定名・蛇」

「了解」

 色々アレな感じの会話を切り上げ、探索モードに戻る一行。階層が浅いからか、なんだかんだでまだまだ余裕なのであった。







「足音の感じが変わってきよったな」

「ちょっと注意が必要かも」

 最初の毒ガス地帯を突破し、坑道からガラッと変わって急激に足場が悪くなった道を色々な道具を駆使して踏破したところで、宏と澪が全員に警告するように話しかける。その内容を聞き、軽く地面を蹴って感触を確かめる春菜。

「……確かに、なんか変だよね」

「いきなり崩れたりするかもしれんから、色々警戒せなあかんな」

 実際にあったトラップに言及し、宏が注意を呼び掛ける。それに頷いて慎重に歩を進める一行。十フィート棒で地面をつついていた澪が、珍しく難しい表情を浮かべて振り向く。

「師匠」

「何か引っかかるか?」

「かなり嫌な予感」

「どれ?」

 澪に言われて、受け取った棒で足元を軽くつつく。罠という観点では澪には劣るが、構造物の状態や地質などに関しては宏の方がはるかに詳しい。こういう種類の怪しさに関しては、専門である宏の判断の方が当てになる。

「……えらいでかい空洞があるな」

「落とし穴?」

「いや。感じで言うと地下水脈が枯れた後の穴とか、ワーム類が通った後とか、そういう種類やな。肉厚的に普通に上歩くぐらいでは崩れへん思うけど、ちょっと何とも言えんとこや」

 十フィート棒でつつける範囲を軽くつついて、確認を兼ねた澪の質問に対してその結論で答える。そのままあちらこちら十フィート棒でつつきまわした後に、壁際の足元に杭を深く打ち込んでロープを固定する。

 余談ながらこのロープ、余りに余った霊糸を撚り合わせて作った強化ワイヤー以上に頑丈な代物で、長さも百メートルを余裕で超えるものである。恐らく、元の世界を見てもこれに勝るロープやワイヤーはまずないであろうオーバースペックな品物である。

 そのロープを腰に何重かに巻きつけ、音が変わったあたりから先を慎重につついて調査して行く宏。出した結論が

「この上で戦闘とかなったらアウトやから、いっそ崩して下に降りた方がええかも」

 だった。

「それ、安全なのか?」

「やってみんとはっきりとは言えんけど、この上で何か涌いた時よりは安全や」

「どうやって崩すんだ?」

「確実なんは真ん中あたりで特大ポメ破裂させる方法やけど、それやると他も崩れかねへんからなあ」

 宏の言葉に、顔を引きつらせながら頷く一同。どうやら、流石の宏もこの状況で特大ポメを使わない程度の自制心や常識は持ち合わせているらしい。

「で、結局どうするのよ?」

「ぎりぎりのところで軽く掘ってみるわ。多分大丈夫やと思うけど、皆はロープ張ったところから向こう、出来たら足音の感じが変わったって話したところより前で待機しとって。後、念のためにロープは巻いといた方がええ」

「了解」

 宏の指示を受け、指定された位置より向こうに移動して、何が起こっても対応できるように身構えながら待機する真琴。真琴より若干前に出て、いつでも補助魔法を発動できるよう準備する春菜と達也。澪は周囲の警戒である。

「ほな、行くで!」

 全員退避したのを確認し、空洞がないであろう場所を慎重に見定めて立ち位置を決める。自分の足場は空洞の上では無く、ツルハシを振り下ろせば空洞の真上に当たる、そんな位置に立ったところで大声でそう宣言してから、ツルハシを振り下ろして的確に地面を掘り砕く。次の瞬間、宏が一撃入れた場所から先の地面に大きく亀裂が走り、数秒置いて一気に崩れおちる。その余波が宏の立っていた場所にまで及び、ロープを固定するために打ちこんだ杭、その手前まで地面が砕けたところで崩落が止まる。

 足元が崩れた以上、宏も当然巻き込まれて下に落ちる。落ちるのだが……。

「フォーリングコントロールなんか、覚えとったんや」

「あると意外と便利だから覚えてたんだ。役に立って良かったよ」

 春菜がとっさに発動した落下速度制御魔法・フォーリングコントロールのおかげで、瓦礫に巻き込まれるような落ち方だけは避けられた宏。そのままゆっくり崩れ落ちた瓦礫の上に着地する。

 なお、この手の魔法に関しては、落ちるのを見てから魔法発動させて間に合うのか、という議論が尽きないものだが、フェアリーテイル・クロニクルのフォーリングコントロールは無詠唱・即発動・クールタイムなしの魔法なので、落ちたと認識した瞬間にパニックを起こさずに起動出来れば、余程浅い穴でない限りは十分に間に合う。逆に、間に合わない深さだと、余程落ち方が悪くない限り致命的な被害は出ない。

「で、まあ、予想通りやった訳やけど」

「あれぐらいでここまで崩れるんだったら、あのまま先に進んでたら大惨事ね」

 余りにも見事に崩れ落ちた通路とその下に広がる空間を見て、背筋を流れる冷や汗が止まらない真琴。宏が落ちた高さは約三十メートルほど。いかに生命力が普通の人間とは比較にならないといっても、無傷で済まないどころか死んでいてもおかしくない高さだ。今までのあれこれを考えた感じ、宏なら落ちただけでは死なないかもしれないが、瓦礫に巻き込まれて無事生き延びられるかと言われると何とも言えないところだ。

 その可能性が低くなかった事が、真琴の冷や汗が止まらない理由だろう。はっきり言って、このメンバーでなければ誰も気が付かずに崩落に巻き込まれ、そのまま全滅している可能性のほうが高かった。オルテム村のダンジョンとはまた別の意味で、やたらと殺意の高いダンジョンである。

「とりあえず、私達もそっちに降りるよ」

「了解。気ぃつけてや」

「ん」

 グダグダ言っていてもはじまらないと踏んで、さっさと宏と合流しようと動く春菜。念のためにロープを腰に巻きつけた上でコストの軽いフォーリングコントロールを使い、安全確実に下に降りる。その後を達也と真琴が続き、最後に飛び道具を構えて警戒しながら澪が飛び降りる。

「さて、どない見るか」

 その気になればちょっとした住宅地が作れそうなほど広大なフロアを見渡しながら、やや難しい顔で宏がメンバーに質問する。鍾乳洞のような環境ではないが、見ればあちらこちらに水が流れていたであろう名残が見られる。

「向こうに上がるのは、ちょっと厳しいよね?」

「せやなあ。誰か飛べる?」

「一応飛べるけど、空中戦は無理」

「俺も同じだな」

 崩れた通路の先を見上げながらの春菜の問いかけに、宏が逆に質問する。その宏の質問に、芳しくない答えを帰す達也と春菜。可能不可能でいうなら可能だが、選択肢として成立しているとはいいがたいようだ。

 幸いにして、戻る方はロープがしっかり固定されている上に割と急とはいえ上り坂になっているため、それほど問題なく崖を登る事は出来る。が、完全に垂直の壁である反対側を登るのは、飛行型モンスターの出現や壁の崩落の危険性を考えると、少々厳しいものがある。

 仮に春菜か達也がリスクを犯して反対側の通路までたどり着いたとしても、宏達が登っていく時間を考えると、やはり選択肢としては成立しないと考えてよさそうだ。

「モンスター発見。不確定名・夜行性の鳥」

「オーラバード!」

「ウィンドカッター!」

 多分危険だろうと予測した直後に現れたモンスター。春菜と達也の遠距離攻撃で即座に沈黙させられたとはいえ、これを見てロープなしで壁を登ろう、という考えを持つのは流石に無理だ。

「本気でどないする?」

「この場合、瘴気が濃いのはどっちかで決めるのはどうだ?」

「せやな」

 達也の提案を聞き、感じ取った瘴気の濃さを元に進路を決める。かなり広い空間だが、横穴自体はたくさんあるのだ。

「……ちょっと気になる事が出てきたから、さっきのとこまでいっぺん戻ってええ?」

 瘴気の濃さで選んだ道を覗いた瞬間、宏がそんな事を言い出す。

「構わねえが、どうしたんだ?」

「大した話やないんやけど、ロープ残しとくより、ハシゴかなんかで手早く登れるように細工しといたほうがええかも、っちゅう気がするんよ」

「なるほどな。どれぐらいかかる?」

「まあ、三十分、ちゅうとこやわ」

 宏の宣告を聞き、それぐらいならと引きかえす事にした一行。結局、宏が苦心して用意した非常階段は使わなかったのだが、ついでにロープを回収した事自体は大正解だった。なぜなら

「師匠、水の音がする」

「嫌な予感がするな。皆、ちょっと動きにくなるけど、ロープ腰に巻いて固定しとこか」

「了解」

 ちょっと進んだ先で聞こえた水音が、ロープなしでは大惨事に直結したのだから。

「師匠、地底湖と川が」

「このパターン、次来るんは……」

「鉄砲水?」

「やろうな。しかも、位置関係的に逃げる場所あらへん」

 微妙に顔を引きつらせながらの澪の言葉に、同じく顔を引きつらせながら答える宏。良く見ると、地底湖に流れ込む川の水かさが徐々に増え、自分達の足元まで濡らし始めている。

「皆、ロープしっかり固定してるか!?」

「大丈夫!」

「ほな、しっかり踏ん張ってや! アーマー、フルオープン! 軽量化解除! ヘヴィウェイト!!」

 宏が重石代わりにポールアックスとヘビーモールを取り出し、フルプレートを展開して軽量化を解除、重量を最大増幅させたところで猛烈な勢いの鉄砲水が一行を襲う。

 ブーツに仕込んだスパイクを限界まで伸ばしてがっちり地面に食い込ませ、腰を落として水の勢いに逆らう宏。水中行動のエンチャントがあるので呼吸は問題ないが、それでも流されてくる砂利が仲間に当たらないようにアラウンドガードで受け止めつつ、完全に激流に身体を持って行かれた四人の体重を支えるのはなかなか骨だ。

 スキルや装備のエンチャントあれこれによる重量増加も含めて、百トンの大台に乗った重量。たかが身長百七十一センチの宏の体格でそれだけの重量があれば、密度は相当なものになる。流石の鉄砲水といえどもそれだけの重量を押し流す事は出来なかったようで、結局宏は十秒ほど続いた激流を耐え抜いた。

「皆、無事か?」

「とりあえず大丈夫……」

「死ぬかと思ったが、まあ無事だ……」

「今回の場合、鎧が金属かどうかとか全然関係ないわよね……」

「師匠がいなきゃ全滅パターン、その二……」

 どうにもこうにも一応全員無事だった事を確認し、一息ついて鎧をブレストプレートに戻す宏。むしろ良く地面が砕けなかったと思いつつ、辺りの状態を確認する。

「まだまだ殺意が高い展開は続いとるなあ……」

「鉄砲水を何とかしのいでも、その後に水陸両用型のモンスターが出てくるのか……」

 目の前の、伏せた状態でも高さ三メートルはあろうかという巨大なワニにうんざりしたように呟き、そのまま臨戦態勢に入る宏と達也。他のメンバーも巻きつけたロープを外し、即座に戦闘態勢を整える。

「さて、ワニ革のハンドバッグを作らんとな」

「ワニの唐揚げ」

「えっと、オーストラリアだったら丸焼きにするんだっけ?」

「たまには素材と食材から離れろよ……」

 などと、いつものペースを崩さずに対応する一行。結局巨大ワニは、真琴のエクストラスキルの練習も兼ねて、疾風斬・地によって一瞬でいい感じに解体されるのであった。







 その後もなんだかんだと右往左往しながらダンジョンを進み、そろそろ野営を考えるべきか、というころ合いになったあたりで、宏達はついにボスがいそうな場所を発見した。

「瘴気の濃さから言うて、おそらくあそこにボスがおるな」

「間違いなくいるね」

 天然っぽく偽装された通路の突きあたりを曲がって二百メートルほど先の広場。周囲の暗さと瘴気の濃さゆえに、様子をはっきりと確認するにはもう少し近寄る必要があるが、明らかに尋常でない何かが待ち構えているのがはっきり分かる。

「さて、ちょっくら偵察に……」

「いや、この場合は全員で行った方がいい」

「どうせ不意打ちとか無理だろうし、もし分断されたらかなりまずいわ。多分あそこから出てきたりはしないと思うから、ちゃんと休憩して準備してから突入ね」

 ボスの姿を確認しようとした宏に待ったをかけて、全員で行く事を主張する達也と真琴。今までの天然の事故を装った性質の悪いトラップの数々を考えると、単独での偵察は不安要素が大きすぎる。

「ほなまあ、飯は終わってからにするとして、軽くフランクフルトでも齧るか?」

「流石にそれぐらいは、お腹に入れておいた方がいいかな。真琴さんはどう思う?」

「ちょっとは食べておいた方がいいわね、確かに」

 その提案に頷いた年長者を見て、串に刺したフランクフルトを火であぶって焼き色をつけ、全員に配る宏。それを受け取って齧りながら、色々と確認を取る真琴。

「まず聞いておきたいんだけど、瘴気の濃さと感じる気配はどんな感じ?」

「瘴気はイビルエント以上、タワーゴーレム未満、っちゅう所やな」

「数に関しては、気配から言って単体。大きさは誤差の範囲をちょっとはみ出るぐらいだけど、タワーゴーレムよりは小さい」

「微妙なところね」

 宏と澪の回答に、かなり難しい表情になる真琴。イビルエントは宏が事実上単独で倒しているため強さが測り辛いが、少なくとも火力は自分達が即死しかねない水準だった事は分かっている。

 恐らくタワーゴーレムより弱いのは確実だが、どのぐらい弱いのか、というのが測り辛い。それに、弱いといっても方向性があり、単に攻撃力は劣るが防御力は同水準かもっと上、などという条件だと、手札は多いが火力面にやや難がある自分達の場合は、下手をすればタワーゴーレムよりも苦労する。

「状況的に、特大ポメとかは使えないのよねえ……」

「流石に、こんな崩れやすい洞窟の中でそんなもん使ったらな……」

「同じ理由で、タイタニックロアもアウトやな。まあ、こっちは使用条件がいまだにはっきりせえへんねんけど」

「ボクの巨竜落としは使い方次第」

「私のエレメンタルダンスは、火力と呼べるかどうかは微妙なラインだと思う」

 一定以上の火力を持つ大技、それを並べ立てて唸る一行。相手を見ないと何とも言えないとはいえ、色々と心もとない話だ。

「そう言えば達也さん、イグレオス様からのご褒美でヘルインフェルノ使えるようになったんだっけ?」

「使えるのは使えるが、ここで使えるような魔法じゃねえぞ」

「範囲を絞ったりとかは出来ないの?」

「現時点では無理だな。もっと練習して、制御の勘をつかめればいけるかもしれないが」

 ある意味当然といえる達也の回答を聞き、そんなにうまい話はないかとため息をつく春菜。そもそも練習といっても、効果範囲が広すぎるので下手な場所では行えないのが厳しい。

「春菜の歌とか、達也のオキサイドサークルとかはどう?」

「陽炎の塔の時、イビルイフリートにはそんなに効果が出てなかった気がする」

「ダンジョンモンスターとかダンジョンボスは大概酸欠耐性も酸素中毒耐性も持ってるから、恐らく効率の悪い捕縛魔法以上の効果はないな」

「なんか、微妙に八方ふさがりね……」

 予想はしていたが、はっきり否定する言葉に苦い表情が浮かんでしまう真琴。フランクフルトの残りの一口を咥えて串から引っこ抜いて咀嚼し、飲み込みながらいろいろ思案する。

「とりあえず結論としては、相手見てみんと何とも言えん、っちゅうことでええと思うんやけど?」

「そりゃそうなんだがな……」

「まあ、気休め程度でええんやったら、ステアップアイテムの在庫もあるにはあるで」

「どんな感じだ?」

「フルパワーポーションの五級やな。一時間ほど、基礎能力を全部二十ぐらい上昇させるポーションや」

 二十、と聞いて目を見張る達也と真琴。レベルが低いうちは確かに気休めだが、数字が増えるほど一ポイントの価値が上がるフェアリーテイル・クロニクルのシステムだと、宏の耐久や春菜の敏捷、真琴の筋力などはかなり洒落にならない差が出てくる。

「そういうのを何で今まで出さなかったのよ?」

「五級はフォーレに入ってから材料揃ったし、それまでは七級ぐらいで単独の能力を上げる奴しか作れんかったんよ。それに、ちょっとやけど普通のポーションの中毒が発生しやすうなるから、気休めのためにゃちょっとリスクが大きすぎるか、思ってん」

「なるほどね。確かに五級ぐらいからでないと、ちょっと使いづらいわね……」

「やろう? で、どないする?」

「一応飲んどいた方がいいわね。他には?」

「後は一回だけダメージを三割カットとか、十秒間だけ攻撃力を五割増しにするとか、そんな感じのが色々あんで。全部エクストラスキルほどやないけど一分単位の長いクールタイムがあるから、使いどころは上手い事見極めなあかんけど」

 今まで影が薄かった消耗品に関して、実にいろんなものが出てくる。今までその手のものを持ち出さなかったのは、これまた素材の集まりの問題で効果が微妙過ぎて、いまいち使う気が起こらない物が多かったからとの事である。

 過去に作ったものというのが、数分に一度、五秒間だけ攻撃力を五%増強とかそういうレベルなので、今まで相手をしてきたモンスターを考えると、確かにほとんど当てにはならない。被弾ダメージカットも、たかが三%だの五%だのでは、宏以外はほぼ即死の攻撃には価値が薄い。正直、保険どころか気休めにもならない。

「常時効果がある、やったら五%とかでも十分価値あるんやけどなあ……」

「そうねえ。確かにいちいちアイテムを使う手間とかタイムラグとか考えたら、攻撃力増強ならせめて二割は欲しいわよねえ。実際、あたしもゲームの時は市販のその手のアイテム、まったく使わなかった記憶があるし」

「やろうと思うわ。しかも同じ効果やったら五%も三十%もバフ枠とクールタイム同じやから、重ねて使うんもできんし」

 更に使えない情報を聞き、宏が持ち出さなかった理由を心底納得してしまう。恐らく、渡されたところで面倒くさがって使わなかっただろう。

「とりあえずダメージカットの方は気休めになるから、一応使うといた方がええとは思うで」

「そうね」

 宏の言葉に頷き、受け取った黄色い玉を使う一同。それを見たところで、宏が更に最後の虎の子を取り出す。

「これは虎の子やけど、三十秒間、使うたスキルとかアイテムのクールタイムを全部一括でチャラにするアイテムや。使うた時点で残っとるクールタイムを全部チャラにするから、これ使う前に色々発動させとっても問題あらへん。材料の都合で三つしかあらへんけど、とりあえず真琴さん持っとって」

「……また、剛毅なものを作ってるわね。材料の都合って、何が足りないの?」

「ガルバレンジアの喉仏とタワーゴーレムのパーツやな。タワーゴーレムのんは代用品あるけど、まだこっちでは発見してへん素材やからやっぱりすぐには作れんで」

「……了解。疾風斬がもっと必要だと思ったら、ためらわずに使わせてもらうわ」

「頼むわ。後、言うまでも無いけど、流石にポーション中毒まではチャラに出来へんから、そのつもりで」

「分かってるって」

 かなりの貴重品を受け取り、すぐに取り出せる位置に落とさないように慎重に納める真琴。スタミナの都合でそこまでうまくは行かないが、必殺技使い放題というのはかなりありがたい。

「出来る準備はこんなところやな。で、他の準備はもうええか?」

「そうね。行きましょっか」

 宏に聞かれて頷くと、三振りの刀をすぐに入れ替えて抜けるように準備しながらGOをかける真琴。それを聞いて、不意打ち防止のために先頭に立つ宏。何かあった時のために回復魔法をいつでも発動できるよう部分詠唱を始める春菜と、新しい杖に追加された新たな機能を利用して防御結界をストックしておく達也。

 万全の態勢でボスルームをのぞきこんだ次の瞬間、年長者組の顔にわずかな絶望が浮かび、それとは裏腹に学生組の表情が目に見えて明るくなる。

「ベヒモスかよ……」

「ベヒモスね……」

「ベヒモスやな!!」

「ベヒモスだよね!!」

「ベヒモス……!!」

 そう。ボスルームに鎮座し、侵入者を今か今かと待ち構えていたのは、大地の魔獣の王として有名な、作品によってはドラゴンとしても扱われる有名な大ボス、ベヒモスであった。フェアリーテイルクロニクルの場合、牛とクマのハーフみたいな体をベースに、イヌ科やネコ科、イノシシなどの特徴がバランスよく配分された、とてつもなく貫禄のある生き物である。

 全高はタワーゴーレムの半分ほどだが、全長はどっちもどっちぐらいの超大型モンスターであり、三級程度の冒険者では手も足も出ないほどの戦闘能力を持つ、普通なら絶望的な存在、なのだが……。

「ベヒカツに照り焼き、かば焼きもええなあ」

「師匠、ここはまず、ローストベヒモスから」

「ベヒモスシチューにベヒモストロガノフとかも美味しそう」

 普通に絶望的なはずの相手を見て、宏達未成年組が見せた反応は、食欲一直線であった。

「なあ、ヒロ……」

「なんや?」

「食うのかよ……」

「ごっつ美味いねん!!」

 ポールアックスを握り締め、ベヒモスを睨み付けながら高らかに宣言する宏。その瞳は食欲で埋め尽くされている。

「それに兄貴はどうか知らんけど、真琴さんはベヒモスごとき、普通にしばき倒した経験あるやろ?」

「いや、無いとはいわないけど……」

「あんなんただでかいだけで、タワーゴーレムとかと比べたら雑魚やん」

「比較対象がおかしいけど、雑魚ってわけじゃないからね!?」

 食欲に負けておかしなことを言いまくる宏に冷や汗をかきつつ、必死になって突っ込みを入れる真琴。楽勝呼ばわりして無茶な戦闘をさせられては、たまったものではない。

「大丈夫、プレッシャー的にも瘴気的にも、今やったら普通に勝てる相手や!」

「安心できない!」

「どうせ僕のやることは変わらんし、あれからは一級ポーションとかいろいろあれで何な感じの奴に使う素材が取れるんや。ごちゃごちゃ言うてんと、とっとと仕留めんで!」

「ああ、もう! 分かったわよ! どうせ選択肢はほかに無いし!」

「ほなやるで! こっち来いやあ、食材!!」

 気合の声とともに、いつもの初手であるアウトフェースを発動し、プレッシャーをかける。いつも以上に余計な気合が入ったその威圧は、たかが人間からのプレッシャーなど物ともしないはずのベヒモスを明確に怯えさせ、あからさまな恐慌状態に追い込む。どうやら、本気で食料的な意味で自分を食おうとしていることを理解し、しかもそれを実現可能な戦闘能力を持っていることを悟ってしまったらしい。

「ベヒモスが怯えてるよ……」

「もういいわよ!! こうなったらさっさと仕留めてたっぷり食うわ!!」

 色々突っ込みどころが多すぎて突っ込み切れなくなった事態に切れた真琴が、唖然としている達也に喝を入れて自分も突っ込んで行く。結果、怯えて初手から出した大技を宏に潰されて棒立ちにさせられたベヒモスは、そのままいいところを見せる暇も無く自棄を起こした真琴の豪快なエクストラスキル三連発であっさり首を切り落とされ、そのまま美味しく頂かれてしまうのであった。







「クレストケイブのダンジョン、ベヒモスがやられた……」

「本当か?」

「ああ」

「いくら成長過程のダンジョンで本来の強さはなかったといっても、早すぎるのではないか? 」

「だが、倒されてしまったものは仕方がない。幸いにして、ダンジョンの定着そのものは終わっている。今回はたまたま手ごわい奴が奥にたどり着いたようだが、次はそうはいかんはずだ」

 クレストケイブの鉱山がダンジョン化してから約一カ月。これほどの早期に最初の攻略者が出るとは思わなかったらしい闇の主。そもそも、天然の洞窟を模したトラップの数々は普通のシーフが発見するには分が悪いものが多く、奥の方となると情報を持ちかえって来るだけでも年単位の時間がかかるはずだったのだ。

 だが、初見殺しのトラップの数々は、たとえ情報があったところでそう簡単に突破できない種類のものばかりだ。むしろ、下手に情報があるからこそ、この後死人が増えるのではないかと予想できる以上、最初の攻略者が予定より大幅に早く出たのも悪い事ばかりではない。

「ベヒモスの再生に大量に聖気を持って行かれる以上、当面ダンジョンの成長に回せる聖気は極端に減るだろうが、情報が出回って無謀なものが現れれば、すぐに取り戻せる程度だろう」

「そうだな。ダンジョンさえ成長すれば、クレストケイブで鉱石を掘ることなど不可能になる。そうすれば、フォーレの屋台骨を揺るがす事も出来ようぞ」

「懸念があるとすれば、短期間で何度もベヒモスを仕留められてしまう事だが、流石にあり得んはずだ」

「うむ。いくら本来の強さではないといって、あれを相手にして余裕を持つことなど不可能だろうからな」

 などと楽観的な会話を続ける闇の主だが、この会話をしている最中に討伐者達が

「どうせ他の人とかけえへんやろうし、ここでリポップ待ちして後二回ぐらいやってまわへん?」

「あのねえ……。いくらなんでもここでそんな長時間待てる訳ないでしょうが」

「ボスのリポップ、平均八時間やったと思うから、ちょっと前の広場で結界張って一泊したら丁度復活してる、思うんやけど」

「てか、後二回って、全部使い切るつもり? もう作れないんでしょ?」

「いんや。ベヒモスから胆石取れたから、ガルバレンジア狩ってきてくれたらまた作れんで。元々タワーゴーレムのんが代用品やし」

 などという会話を繰り広げていたと知ったら、流石に考えを即座に改めたであろう。結局、

「……帰還ゲートを無視した挙句に復活を待って即座に仕留めるとは、相当な化け物がたどり着いたようだな……」

「……普通、ボスを連戦で仕留めようとするなどと誰が思うものか……」

「……しかも、どんなベテランの冒険者かと思えば客人どもか……」

「……やはり、フォーレに来た時点でさっさと始末するべきだったな……」

 廃人の行動原理に忠実に従った宏達の行動を読み切れず、二日で三体というハイペースでベヒモスを狩られてしまい、ダンジョン全体を大幅に弱体化する事を強いられた闇の主達であった。
G○NAX的にはおそらく間違いなく黒歴史になっていそうな○神活殺拳。微妙なラインをついてみたが反応やいかに。
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