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フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~ 作者:埴輪星人

ダール編

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第15話

「到着~」

「おう、ありがとう」

 バルド達が春菜の般若心経ゴスペル(録音)によってのたうちまわっていたその頃、宏達はオクトガルの力を借りて陽炎の塔へと到着していた。

「さて、妾は少しばかり、通行手形としての仕事をしてこよう」

「お願いします」

 唐突に現れた正体不明の集団に対して警戒する兵士を見て、まず最初にやっておく必要がある事をさっさと済ませに行く女王。今の状況を冷静に考えると、仮にメンバー全員が五級以上になっていても、おそらく女王がいなければすんなりと中に入らせてはくれないだろう。

「女王陛下が話通してくれとる間に、この子らに色々食わせたらなあかんな」

「そうだね」

 何かを期待するように地面から見上げてくるオクトガル達に、約束通りロックワームバーガーを振舞って行く宏達。いつの間にか百ぐらいのオクトガルがいるが、一個ずつなら十分数は足りる。

「美味しいの~」

「ありがたいの~」

「三つ星の~、通~」

 一口かじったオクトガル達が、例によって例の如く全身で美味しさを表現する。

「たこ焼きは、あの塔が終わってからや。かまへんな?」

「頑張れ~」

「チェムちゃん待ってる~」

「エルちゃん遊んでる~」

「遺体遺棄~」

「何の遺体を遺棄するねん……」

「バルド~?」

 宏の突っ込みに対して、非常に身も蓋もない回答を返すオクトガル。個人的には、そもそも遺棄する遺体が残るのかどうかが疑問だ、などとは思っても口にしない宏。

「ほんで女王様、もう中には入っても?」

「少々待て。どうやら通行許可の有無に関係なく、今は陽炎の塔には入れんようじゃ」

 宏の問いかけに待ったをかけ、兵士に視線で説明を促す。

「陽炎の塔は、模様替えと呼ばれる現象があってな。最上階以外は、定期的に中の構造が変わる。今朝、丁度その模様替えが始まった。この時期は塔の入り口が閉じられていて、外からは何をやっても開かん」

「扉だけの問題やったら、関係あらしません」

「工房主殿、扉をぶち抜く気かの?」

「いんや、そんなまどろっこしい真似は最初っから考えてませんで」

 そう言って鞄から何やら取り出し、澪に手招きする。

「ここらあたりから異界化しとるけど、中の気配分かるか?」

「問題ない」

「人はおるか?」

「三層目まではいない」

「というか、基本的に今日始まるのが分かってるから、中には誰も残っていないはずだ」

「よっしゃ」

 澪と兵士の返事に頷くと、手に持った道具で塔の外壁をいじり始める。

「えっと、宏君。何をしてるのかな?」

「実はな、陽炎の塔の壁ってな、レンガ抜けんねん」

 春菜の問いかけに応え、素晴らしい手際でレンガを一個、抜いて見せる。宏が作業を始めてからわずか三秒、驚きの早業である。

「宏君、今この状況で素材集めとか、流石にどうかと思うんだけど……」

「素材として美味しく使わせてもらうんは確かやけど、それがメインの目的やあらへんで」

 春菜の非難するような声に平常運転で返事を返し、素人目にはよく分からない基準でレンガを抜いていく宏。三分ほどの作業で外周を一周し、虫食いのような状態になるようにレンガを抜く。その後数箇所につるはしで一撃入れて亀裂を作る。

「ゲームん時は人がようさんおったからやったことないんやけどな……」

 虫食いの配置を確認して頷きながら、何やら春菜に解説しつつヘビーモールを構える。もう一度陽炎の塔の状態を確認し、ポイントを決めて狙いを定め、大きく得物を振りかぶる。

「そおい!!」

 そのまま重量武器をフルスイングで振り抜いたとは思えない精密さで狙った一点を正確に殴りつけ、全力のスマッシュで吹っ飛ばす。次の瞬間……

「えっ?」

「何と……」

「ちょっと待て、おい!!」

 凄まじい震動と轟音を立てて、一階部分が完全に崩れ落ちる陽炎の塔。落ちた衝撃で三階まで砕け散る。

「澪、念のために確認。人間の気配無いんはどこまでや?」

「九階まで問題なし。ただし、モンスターはびっちり」

「ほな、そこまで砕くで」

 取り残されている人間がいたらまずいという配慮で、一応気配を確認しながら塔をだるま落としのように砕いていく宏と澪。そのあまりにあまりな光景に唖然としていた他のメンバーのうち、いち早く立ち直った春菜が一同を代表して質問を口にする。

「あの、宏君、澪ちゃん……」

「ん?」

「何、春姉」

「この塔、一応ダンジョンなのに、砕いたりできたの?」

「普通にやったら無理や。大工と土木、両方中級以上があったら能力値次第ではいけるけどな」

「ボクの能力値だと、何処をどう抜けばいいかは分かっても、砕くのは流石に無理だけど」

 作業の手を止めずに春菜の疑問に答え、更に三層粉砕する。大工も土木も、建物の解体・粉砕は重要な仕事の一つなのだ。

「これで十二階まで潰したな」

「エル達の気配を確認。予想通りてっぺんにいる」

「ほな、潰すんはあと二つか。今まで以上に慎重にやらんとな」

 今まで慎重にやっていたのか、と思わず突っ込みたくなる台詞を吐きながら、同じようにレンガを抜いていく。そうでなくても神業的な作業効率だというのに、更に作業が速くなっていく所が洒落になっていない。澪もどこぞの建築物解体業者の社歌を歌いながら、宏に劣るとはいえ十分手際よくレンガを抜いていく。

「行くでえ!」

 モールで壁を殴り、きっちり残り二層だけを砕いて作業を完了する宏。問答無用で塔ごと叩き潰されたモンスターたちの瘴気が、最上階から聞こえてきた歌で浄化されていく。

「助けに来たで!」

 最上階だけに存在する窓を覗きこみ、中にいるエアリス達に声をかける。

「お待ちしておりました、ヒロシ様」

「えらい落ち着いてるやん」

「オクトガルさんが仲間に助けを求めた、と言っていましたので、そんなに時間はかからないと分かっていましたから」

 ゆったりと落ち着いた態度で微笑みを浮かべ、エアリスが立ちあがる。

「皆様、私達のためにありがとうございます。ご心配をおかけして、申し訳ありません」

「エルちゃん、大丈夫だった!?」

「ええ。ヒロシ様が下さったレコーダーと、そこに記録されていたハルナ様の歌のおかげで」

「エルちゃんもあれをそういう風に使ったんだ……」

 歌が聞こえてきた時点で覚悟はしていたが、やはり攻撃兵器として使われるとへこむものだ。

「とりあえず雑談は後にして、バルドを仕留めるぞ!」

「せやな。ついでに、余計なことさせへんように、最上階におるボスも潰してまうか」

 中にいるエアリス達に手を貸して外に引っ張り出しながら、この後の予定をさっくり決める。バルドを放置するという選択肢が無い以上、相手が弱っているうちに仕留めるのが上策である。

「ほな、ちょっくらやってくるわ。女王様、おっちゃん、巫女様方の事はたのんますわ」

「分かっておる」

「わしの本領じゃ、任せておけ」

 全員を安全圏に避難させ終え、後の事を女王とドーガに任せて中に入っていく。中では、いまだにバルドがのたうちまわっていた。







「貴様ら……、どこまでも人を虚仮にして……!」

「いや、別に意図して虚仮にしとる訳やないけど」

 般若心経バラードが流れる中、気合と根性で立ち上がりながら宏達を睨みつける二人のバルド。ここまで虚仮にされて、のたうち回ったまま止めを刺されるのはプライドが許さない。

「ここまで我らを怒らせたのだ!」

「さんざん虚仮にした事を後悔しながら死ね!!」

「っちゅうか、うちらが虚仮にした訳でもないやん」

 命を削る第三形態に躊躇なく変身していくバルドに、微妙に冷静に突っ込みを入れる宏。今回の場合、バルドを虚仮にしたのは主にエアリスで、それとて身を守ることが主な目的であった。バルドをおもちゃにして遊ぶ意図はそれほどなかったはずである。

 もっとも、そういう言い分に聞く耳を持つようでは、バルドとしては不完全なのだが。

「貴様ら相手に余裕を見せてはろくなことにならん!」

「最初から全力で行く!」

 二人がかりだというのに、やけに必死になっているバルド達。時間稼ぎのためか、陽炎の塔の最上階のボスであるイビルイフリートを囮として前面に出し、ヘルインフェルノとアブソリュートバニッシュのチャージに入る。どちらも、発動すれば洒落にならない魔法である。

「兄貴、イフリート何とかできるか!?」

「やってみる!」

 春菜が般若心経シリーズを歌い始めたところで、ある意味一番面倒なイビルイフリートを達也に振る。

「ほな、僕のやる事は一つやな」

 達也が持っている氷結系の高位魔法を多重起動させたのを受け、武器をヘビーモールからポールアックスに持ちかえながら基本の一手に入る。武器を持ちかえたのは、ヘビーモールは塔を崩していく過程で酷使したため、修復のための時間を置きたかったからである。

「来いやあ!!」

 もはや何とかの一つ覚えという感じで、アウトフェースによる威圧をかける。効果が無いときはとことん効果が無いとはいえ、これをやらないと安心して戦闘出来ないのだ。

「そいやあ!!」

 宏の威圧に見事に引っかかって、イビルイフリートが突っ込んでくる。それをバルドに叩きつけるようにスマッシュで弾き飛ばす。アブソリュートバニッシュを詠唱している側のバルドに直撃するが、その程度では揺るぎもしない。順調にチャージを続けていくバルド達。

「虚空閃!」

 通れば儲けもの、という考え方でバルド二人を巻き込むように虚空閃を放つ真琴。瘴気による物理防御力がかなり大きく、防御を貫通するために多大なコストを支払う羽目になる。思わず膝をつきそうになるのを必死にこらえ、スタミナポーションを取り出してあおる。中毒を考えるなら、この戦闘中に使えるスタミナポーションは後一個。それ以降は、最低でも一時間はインターバルを置かなければ、ほぼ確実に中毒になる。もっとも、指一本動かせなくなりそうな疲労が一瞬で無くなるのだから、それぐらいのリスクはないとおかしいといわれてしまえば納得せざるを得ないのだが。

 いきなり回復リソースを食いつぶした真琴だが、その甲斐あってアブソリュートバニッシュのチャージは潰せたようだ。与えたダメージは大したことはないが、高威力技を一つでも阻止できた、それだけでも初手からスタミナポーションの使用回数を食いつぶした意味があったというものである。

「フリーザーストーム!」

 真琴の離脱を確認し、そのまま流れるように氷結系の高威力範囲魔法を二重起動する達也。バルドにこそダメージは通らなかったが、イビルイフリートにはそれなりのダメージを与えることに成功する。

 イビルイフリートとて、曲がりなりにも陽炎の塔のボスである。いかに達也の持つ杖が増幅率に優れていようと、いかに弱点属性の高位魔法を二発同時に食らおうと、それだけで落とされるほど弱くはない。真琴の虚空閃と合わせて少なくないダメージを受けているとはいえ、その程度で仕留められるようではボスなどとは名乗れない。

 それぐらいは達也も分かっているため、流れるように次の手を準備している。

「オキサイドサークル!」

 もはや達也の代名詞ともなった特殊攻撃魔法。普通、ダンジョンのボスにはほとんど効果が無い魔法ではあるが、イフリートやフレアスピリットなどの身体が炎で出来ているモンスターや、ダークネスキャンドルなどのように炎を消されるとダメージを受けるモンスターにとっては、普通の攻撃魔法と同じ効果をもたらすのである。

「そおい!!」

 オキサイドサークルで動きが止まったイビルイフリートを放置し、まだしつこくヘルインフェルノの詠唱を続けているバルドをスマッシュで張り飛ばす宏。当然、ダメージなど出てはいないのだが、春菜の歌の影響か瘴気の壁が妙に薄く、吹っ飛ばす効果まではキャンセルできていない。

 結果として、弾き飛ばされたバルドはイフリートともう一人を巻き込む形で壁に叩きつけられ、一秒程度とはいえ詠唱を止められてしまう。

「隙あり」

 壁にひと固まりで叩きつけられて動きが止まったバルド達に、澪が貫通系の射撃技・ピアーシングスナイプを撃ち込む。ピアーシングの名の通り防具の防御力を半分ほど無効化する射撃攻撃で、射線上にいる相手を全て攻撃できる種類の技である。防具の防御力限定でしかも半減でしかないため、バルド達のように防御力の高い相手を殴っても比較的コストは軽い技だ。

 これもバルドにはそれほどのダメージは与えられないものの、イビルイフリートにはきっちり効果がある。そのままの流れで達也からの聖天八極砲が二発着弾し、更にこっそり技の準備をしていた春菜が一足飛びで前線に出ての魔法剣技・アイシクルダンスでイビルイフリートにきっちり止めを刺して離脱する。この間も般若心経バラードを途切れさせないのだから、なかなかのものである。

 詰将棋のように相手に行動を許さずにたたみこんだ宏達だが、流石にいつまでも思い通りに行く訳ではない。さんざん邪魔はしたものの、残念ながら最後までヘルインフェルノをキャンセルする事は出来ず、ついに敵の大技の発動を許してしまう。

「残念だったな! これで終わりだ!!」

 大魔法・ヘルインフェルノ。普通なら絶望的なその魔法は、だがしかし、ただ一人の男の手によって完全に無効化する。

「アラウンドガードや! 残念やったな!!」

 宏が発動した広域防御スキルにより、本来ならこのあたり一帯を灰燼に変えるはずの魔法が完全に対個人用攻撃にまで引きずりおろされてしまう。そして

「ファーレーンの時と同じ威力のヘルインフェルノなんざ、今更効くかい!!」

 宏の気合の声により最下級魔法にすら届かないところまで威力をそぎ落とされたヘルインフェルノは、レザーアーマーの表面を焦がすことすら出来ずに消滅する。

 宏がファーレーンの時のままであれば、もう少しはダメージが通っただろう。だが、農業や土木などの生産スキルが上昇し、更に延々とあれこれ作り続けたことによる地味な精神力の鍛錬効果が加わり、止めにイビルエントにひたすら殴られ続けた結果急上昇したフォートレスの性能もあって、もはやバルド程度からの単なる魔法攻撃では、それがたとえ大魔法であってもダメージになる確率が極端に低くなっているのである。

 しかも、これまた誰一人気が付いていない事実ではあるが、先ほどの塔の破壊作業では、そのつもりもないのに大量にモンスターを始末しているため、ゲーム的に言うならば恐ろしい量の経験値が入っている。そのため、もともとそれほどレベルが高くなかった宏と春菜、澪の三人は、二桁近いレベル上昇が起こっている。

 結果として、元が強すぎた上に効果が地味すぎて本人には全く自覚はないが、東宏は神ですら即死させられない領域に片足を突っ込みつつあるのだ。今の宏には防御力無効の攻撃でも叩き込まない限りはダメージなど与えられず、ダメージが通る水準まで防御力を削るとなると、元々のバルドのスタミナや魔力では生命力を削り切ったところで少々足りない。

 攻撃力が全然足りていないため倒す事が出来ないだけで、もはや宏にとってはこのままのバルドなど何の脅威にもなっていないのである。

「ほな、止め行くで!!」

「なめるな小僧!!」

 ヘルインフェルノを不発させた方のバルドにポールアックスを振り下ろそうとした宏が、もう一体のバルドのスマッシュに弾き飛ばされる。

「確かに、今のままでは貴様を殺す事は出来ない。それは認めよう」

「だが、伊達に二人一組でここにいる訳ではない!!」

 そう一声吠えると、実体化していた肉体を捨て、瘴気の塊となって交じりあう。

「なんかヤバい気がすんで」

「皆、一旦撤収だ!!」

 なんとなく、ここにいるのはまずい気がする。理由は説明できないが、ここでまごまごしていれば致命的な結果になる。その直感に従い、大慌てで窓から脱出する宏達。そして数秒後。

「マジかい……」

「そりゃねえぞ……」

 目の前でいきなりにょきにょき再生した陽炎の塔が変形し、巨大なゴーレムになる。流石にその光景には唖然とするしかない宏達。変形の最中に塔の最上階も訳のわからない形に変わったところを見ると、あのまま中にいては間違いなく無事では済まなかっただろう。

「工房主殿よ、あれはなんじゃ……?」

「僕に聞かれても困るんやけど、どうも二人おったバルドが合体して、妙な事したみたいですねん」

「それはまた、難儀な状況よのう……」

 本当に難儀な状況に顔を引きつらせている二人の前で、ついに巨大ゴーレムの変形が完了するのであった。







「そおい!!」

 戦闘開始前の予想とは裏腹に、巨大ゴーレムは思ったほどの脅威はなかった。

「予想以上に動きが鈍いわね」

「その代わり、予想以上に固くて頑丈」

 数発攻撃を入れた真琴と澪のコメントが、このバルドゴーレムの特徴の全てであろう。後はせいぜい、巨体から繰り出される攻撃が、宏以外はかすっただけでも大惨事になりそうだという事ぐらいか。

「ヒロ! 何か来るぞ!!」

「了解や!」

 達也の警告から二呼吸ほど置いて、目に当たるところからビームが飛んでくる。どうやら魔法攻撃らしいそれは、宏の体に当たると同時に消滅する。

「どっせい!!」

 ゴーレムのパンチをかいくぐり、ひたすらローキックをする要領で左足首にヘビーモールに持ちかえてのスマッシュを入れ続ける宏。単純に攻撃が届く場所がそこしかない、というだけなのだが、やられる方からすればひどくうっとうしいらしい。大した火力で殴っている訳でもないのに、やたらと宏を狙いに来る。

「あかんなあ……」

「何がだ?」

「どうにも火力が足らん。何発殴ってもダメージ出てる気がせえへん」

「あのサイズだからなあ……」

 ゴーレムの蹴りから大慌てで逃げながらの宏の言葉に、同じように手ごたえを感じていなかった達也が同意する。

「もう一発八極砲行くが、あんまり効いてる感じがしねえんだよなあ……」

 ぼやきつつも聖天八極砲を左足首に叩き込む達也。多少表面のレンガを削り取るも、これといってダメージになっているようには見えない。

「まいったな、何か手はねえか……」

「宏君にオーバーアクセラレートかけたら、少しぐらいはダメージ出るのかな?」

「そりゃまあ出るには出るだろうが、そこまで劇的な効果はなさそうだぞ?」

「だよね……」

 どうしようもない膠着状態に、少しでも効果がありそうな手を提案する春菜だが、言った本人ですらリスクの割に効果が薄い事は認めざるを得ない。宏が鈍器系の大技を持っていればもう少し状況はマシだったのだろうが、残念ながら、その手の技の心得がある知り合いがいない。宏が戦闘スキルの習得に消極的である以上に、むしろそちら側の問題の方が厳しいが故に宏の攻撃周りの改善が一向に進んでいないのである。

「いっそ、今回だけでいいからヒロがあれを使えりゃあなあ……」

 聖天八極砲のクールタイム完了を待ちながら、ぼやくように最適とも言える解決策を呟く達也。タイタニックロア。宏が持つ、チーム最大の破壊力を誇る近接物理攻撃。重量武器であれば鈍器でも撃てるという、ゴーレム相手にならおそらく最も効果が大きいであろう必殺技。ファーレーンでバルド相手に一回使ったきりで、いまだにどうやれば発動するのかが分からないその技が、これほど恋しくなる時が来るとは思わなかった。

「そういえば澪ちゃん、アランウェン様からエクストラスキル貰ってたよね?」

「コアの位置が分からないと、ゴーレム相手には効果が薄いと思う」

「効くには効くのか?」

「効くには効くはず」

 春菜と達也の問いかけに応えながら、観測射撃を続ける澪。貫通系の技ならばとりあえず突き刺さるぐらいの威力は出せるらしく、刺さり方の差を見て少しでも脆い場所を探しているのだ。

「ヒロ、心当たりはあるか?」

「残念ながら、断言できるほどの心当たりはあらへん」

 踏まれそうになりながらも果敢にゴーレムの足に挑みながら、宏が答える。さっきからどうにか攻撃をかいくぐってはいるが、先ほどからちょっとずつ動きがよくなってくるゴーレムに、正直冷や汗が止まらない。

「ただまあ、やるんやったら胸のあたり撃ち抜いたらええんちゃうかな?」

「根拠は?」

「コアがあるかどうかはともかく、脚一本吹っ飛ばすだけっちゅうんは勿体ないやろ?」

「なるほどな」

 宏のコメントに納得し、クールタイムが終わったところで聖天八極砲を撃とうとしたその時、突然ゴーレムがジャンプする。

「なんだ!?」

「こらやばい!!」

 ゴーレムの意図を察した宏が離脱をはかるも、所詮軽くジャンプしただけゆえに着地までそれほどの時間はない。

 十五階建ての塔と同じサイズ、同じ重量のものが、戦闘可能な距離で三メートルほどジャンプすればどうなるか。着地の衝撃で、立っていられないほど地面が揺れるのである。

「があ!!」

 転倒しながらもゴーレムの踏みつけはどうにか転がってよけた宏だが、その後間髪いれずに振り抜かれた蹴りの直撃を受け、春菜達のいるところまで吹っ飛ばされてしまう。

「宏君!!」

「大丈夫や、一応……」

 悲鳴を上げる春菜に健在を主張し、痛む背中をこらえてどうにか立ち上がる。恐らく春菜か達也が受けたらミンチになっていたであろう一撃は、流石の宏でもまったくの無傷では済まなかった。サイズが大きいというのは、やはりそれだけで脅威になるのである。

 正直、女王がオクトガルを使ってエアリス達を避難させてくれたことに感謝するしかない。はっきり言って、彼女達を気にしながら戦える相手ではない。

「澪、多分もう猶予はねえ!」

「了解!」

 達也の号令を受け、澪がついにエクストラスキルの準備に入る。巨竜落としという名のその技は、莫大なエネルギーの乗った矢を撃ち出す事で、相性による減衰を完全に無視して射線上にいる相手を貫き、その衝撃で内部からズタズタにする必殺技だ。

 名前の由来はアランウェンの加護を受けたある狩人が、城ほどもある邪悪な竜を一矢で撃ち殺した事から名付けられたものである。名前とは裏腹に別段ドラゴン系のモンスターに特別な効果がある訳ではないが、その威力は特別な効果などなくてもまったく問題の無いものだ。

「撃つ!」

 澪にしては珍しく、気合の声とともに矢を放つ。弓がきしむほどのエネルギーを乗せて放たれた矢は、放物線を描くことなく真っ直ぐにゴーレムの胸部を撃ち貫く。穿たれた穴から胴体全体に亀裂が広がるも、ゴーレムを完全に砕くには至らない。

「もう一発は……」

「流石に弓が持たない」

 澪の言葉に視線を向けると、確かに先ほどの一撃で弓がかなりひずんでいた。恐らく今ならまだ修理も出来るのだろうが、もう一発撃ってしまえば完全に砕け散りかねない。

「さすがエクストラスキル。練習が足りないと武器がいくつあっても足りない……」

 澪のぼやきに内心で頷きながら、それだけのダメージを受けてまだ健在を主張するゴーレムに視線を向ける一同。自己修復の可能性を考えるなら、弓を壊してでももう一撃入れるべきなのだろう。だが、澪の弓の状態を見る限り、二発目のエクストラスキルを発射できるかどうか、それ自体が大博打になりそうだ。

「あれだけ亀裂が入ってるんだったら、あたしの切り札も通じるかも」

「真琴?」

「今まで黙ってたんだけど、あたしも持ってるのよね、エクストラスキル」

 唐突な真琴のカミングアウトに声を上げそうになり、その正体と黙っていた理由に思い当って驚きの声をどうにかを飲み込む。どうにか口を突いて出たのは、言わずもがなな確認であった。

「今まで黙ってたのは、刀の技だったからか?」

「そ。とはいっても、ゲームの時でも使った事はなかったんだけどね」

「……そうか、武器か……」

 色々納得できる理由。それを聞いてしまえば、ここまで隠していた事に文句を言う気が完全に失せる。もっとも、そもそも達也達が文句を言う筋合いもないので、最初からそれほど何かを言おうとは思っていなかったのだが。

「宏、もう一振り打てる?」

「全員分の武器作りなおすぐらいの在庫は残ってんで」

「だったら、もう一度よろしく」

 そう言って刀を鞘におさめて軽く手を上げると、何の気負いも無くゴーレムと対峙する。そのままでは亀裂にそって斬るには射程が足りないので、相手がパンチを空振りするのを待つ。踏みつけ、蹴り、と来て三発目の攻撃。待ちに待ったパンチ。それをやや余裕を持った距離で回避して腕に飛び乗り、そのまま一気に駆け上がる。

「奥義の入り口って奴を、見せてあげるわ!!」

 抜刀術の構えのまま胴体に攻撃が届く距離まで駆け抜け、蓄えに蓄えたエネルギーを一気に解放、己の速度を限界を超えたところまで加速する。

「疾風斬・地!」

 いくつかの型に派生する奥義。そのもっとも基本とも呼べる型を解き放つ真琴。ただただひたすら速く、何度も切りつける。口にするならただそれだけの奥義。だが、その速さが一秒間に二十を超える斬撃を放つに至れば、ただ速いだけなどとは口が裂けても言えなくなる。

 一方向に突き抜けるほど特化したシンプルな技というのは、難しい事をするよりはるかに強くなるのである。もっとも、

「やっぱ、足りないか……」

 これで仕留めきれない事は、放った瞬間に真琴自身がはっきり理解していたのだが。

「あれでも足りねえのかよ……」

「せめて、ゲーム時代から宏と知り合いだったら、今ので終わらせられた自信はあったんだけどね」

 最後の一閃を放ち終えると同時に折れた刀を見せながら、苦笑交じりに応える真琴。彼女の言う通り、仮に宏とゲーム時代に知り合いであったら神鋼製の刀を使う事が出来ていたはずであり、その刀で修練が出来る分、奥義の熟練度ももっと高かっただろう。結果として刀が折れる事も無く、同じ技でもさらに高威力、高精度で放つ事が出来、ゴーレムをきっちり粉砕出来たはずなのだ。実際、足りないと言っても、あと一割か二割技の威力が高ければ、それだけで勝負が決まっていた。

 もう一つもしもを言うのであれば、真琴が使っていた刀が魔鉄とミスリルの合金ではなく、オリハルコンかアダマンタイトを使ったものであれば、もう一段威力が高い型を使えたであろうから、やはり今ので終わっていただろう。

 だが、そのたらればは言うだけ無駄な話だ。それに、発動できるかどうかはともかく、彼らにはもう一発、エクストラスキルによる攻撃が残っている。相手の防御力が防御力ゆえに残りHPが数ドットといえども普通の大技では削り切れないが、エクストラスキルさえ使えれば普通にオーバーキル出来る。

「まあ、そう言う訳だから、後はあんたの出番よ」

「しっかり決めて来い、ヒーロー」

「っちゅうても、発動できる気せえへんねんけど」

「ぶっ放せるまで暴れて来い!」

 いまいち消極的な宏に発破をかけて送り出す年長組。実際、宏がタイタニックロアを使えなければ、ここから逆転される可能性すらある。特大ポメという手が無い訳ではないが、残念ながら一番大きなポメを使っても威力的にはエクストラスキルには届かず、その上破壊力が拡散する傾向があるため仕留めきれるかどうかに不安が残る。

 結局、宏がヒーローにならなければ終わらないのである。

「まあ、やるだけはやってみるわ」

 そう答え、ヘビーモールを頭の上で振り回しながら突撃する。その宏を迎え撃とうとするように見えたゴーレムが、唐突におかしな挙動を見せる。

「何だ?」

「あたし、ものすごくやばいんじゃないか、って予感がしてるんだけど」

「というか、腕を自分でもぐとか、この後の展開は一つしかない」

 澪の言葉に青ざめながら頷き、大慌てで散開しようとする真琴達四人。だが、無情にも相手の行動の方がはるかに速く、達也達が逃げ終わる前に、ゴーレムが全力で左腕を投げつけてくる。

「させるかい!!」

 物凄い勢いで放り投げられたゴーレムの左腕。それを必死になって迎撃する宏。洒落にならない質量の直撃でこれまでにないほどのダメージを受けるも、どうにか後ろの四人が完全に巻き込まれる事だけは防ぐ。だが、アラウンドガードの限界を超えたその一撃は、本体を受け止めきっても全ての攻撃力を無かった事にまでは出来ず……

「春菜!?」

「春姉!!」

 宏が受け止めた時に砕けた腕、その破片があろうことか春菜に直撃する。宏というクッションで勢いをそがれ、更に地面に当たって跳ね返る事でほとんどのエネルギーが失われてはいるが、それでも春菜本人と大差ない大きさの破片である。直撃を受けた春菜は、悲鳴を上げることすらできずに下敷きになってしまう。

「春菜さん!」

 流石に放置しておくことができず、ボスを無視して瓦礫をどけに行こうとした宏を挑発するように、ゴーレムが大きく飛び上がる。それを見た瞬間、宏の中で何かが切り替わった。

「邪魔……、すんなや!!」

 ゴーレムの着地地点にダッシュで突っ込み、着地のタイミングに合わせて全身を使ったスマッシュを叩きこむ。そのまま着地させてしまえば宏と春菜は共倒れになっていたであろうことを考えると、無茶を通り越して無謀としか言いようがないその行動は、だが見事にゴーレムを遠くに弾き飛ばして転倒させることに成功する。

 無茶をした代償で、先ほど受けた傷から結構な量の血が噴き出すが、今の宏にはそんな事、まったく知った事ではなかった。

「素材とかどうでもええ! 往生、せいやあ!!」

 弾き飛ばされた時に足がもげ、立ち上がれずにもがいていたゴーレムに持てる最強の技を容赦なく叩き込む。今まで何度試しても発動しなかったエクストラスキルが、何事も無かったかのように普通に最大の威力を発揮し、ゴーレムとヘビーモールを粉々に粉砕する。当然、宏本人にもノックバックは来るが、それでどうなるほどやわな身体はしていない。

 辛うじて残った柄を使ってコアらしきものを叩き割ると、宏は何もかも放置して春菜の方に駆け寄った。

「春菜さん、大丈夫か!?」

「流石に……、大丈夫とは……、言えない、かな……」

 春菜に直撃した瓦礫は、宏以外の三人が全力で持ち上げようとしても動かないほどの重さであった。その瓦礫を何事も無かったかのようにあっさりと持ち上げて、宏は心配そうに春菜の様子を確認する。真琴の倍近い筋力値は伊達ではないらしい。

「とりあえず……、リターンヒール……」

 瓦礫が直撃する前の状態に戻すやり方で傷を治療し、ふらつきながらも立ち上がる春菜。ついでに、地味になかなかの重傷を負っている宏を、女神の癒しと加速系回復エクストラスキル・ハイスピードリジェネイトで完治させる。

「多分だけど、このカッターシャツを着てなかったら危なかったかもしれない」

「後、そのブローチとかも?」

「そうかも」

 真琴の指摘に、ちょっと嬉しそうに頷く春菜。好きになった男に、何重もの形で守って貰えたのだ。嬉しくない訳が無い。

「それにしても、ヒロがあそこまで切れるとは予想外だったぞ」

「そら、いくら僕がヘタレやっちゅうても、仲間殺されかけて切れんですむほど冷血漢やないつもりやで」

 仲間、という言葉に微妙に持っていた期待を完全に叩き潰されて、思わず内心で苦笑するしかない春菜。宏の性格上、たとえ先ほどの攻撃で死にかけたのが達也や真琴であっても、本気で切れてゴーレムを叩き潰しただろう。そういう意味では、このメンバーの中で自分が特別ではない事ぐらいよく知っている。

 だが、それでも、自分のために素材すら放り出してくれた事は、春菜にとっては人生でも五本の指に入るほど嬉しい事である。素材の事を考えずにゴーレムを粉砕する程度には、宏にとって春菜は重要な位置にいるという事なのだから。

「春菜さん、すまんかった……」

「何が?」

「あの時、ちゃんと防いどったら、あんな事にはならんかった。申し訳ない……」

「あれはしょうがないよ。砕けた破片まで完全にコントロールするなんて、多分ドルおじさんとかでも無理じゃないかな」

「せやけど、僕はタンクや。タンクがあんなでかい攻撃後ろに通したらあかんやん」

 春菜が死にかけた、その事が随分ショックだったらしい。へこんでいるという表現では足りないぐらいにしおれる宏。

「タンクが全部攻撃防げるんだったら、そもそもあたし達が防具にこだわる理由ないじゃない」

「師匠、壁一枚でどうにかなるほど、この世界のモンスターは甘くない」

 真琴と澪が、厳然たる事実を持って宏をなだめに入る。正直、今まで宏がいた時の戦闘が安定しすぎだったのだ。普通は、壁役以外の人間もそれなりの頻度で攻撃を受けるものである。ゲーム時代など、バックアタックで後衛に大技を叩き込まれて全滅した事など、枚挙に暇がない。

「あのね、宏君。タンクが後ろに攻撃を通さないのが仕事だとしたら、タンク以外の人間は不測の事態でも即死しないようにするのが義務なんだよ」

「そう言うこった。反省会は終わりにして、素材漁るぞ」

 そもそもあのサイズのゴーレムを相手にして、最終的に全員致命的な負傷をせずに終わらせられたこと自体、誇っていい事なのだ。そんな思いを込めて、宏が無視した素材を回収するよう話を振る達也。春菜が死にかけたのは、宏だけでなく本人を含めた全員の反省事項だ。宏一人が過剰に背負う必要はない。

「師匠、コアの辺りの瓦礫、上手く精製したらオリハルコン採れるかも」

「ほんまか? ……せやな。上手い事やったら、真琴さんの刀ぐらいはどうにかできるかもしれへん」

「宏君。このコア、何かに使える?」

「使い道はいろいろあるけど、今んところは保留やな」

 などと話し合いながら、建材として使える大きさを保った石材を相当量確保し、それ以外にも無事だったレンガを含めてあれこれ回収して行く。石材やレンガ、砂などが中心ではあるが、そう簡単に手に入らないランクの素材を多数手に入れ、思わずほくほくした顔になる宏。

「そういや、思ったんだが」

「ん? なんや?」

「これ、もしかして調理したら食えるのか?」

「多分食えると思うで」

「やっぱり食えるのかよ……」

 回収している時にふと思い出した事を確認し、げんなりした顔になる達也。機材が足りないと言っていたから、恐らくこれを食う事になる日は来ないだろう。だが、それを絶対とは言えない事も良く知っている。ゲテモノはミミズぐらいまでにして欲しいというのが、日本の都会に住んでいた男の切実なる願いだ。

「そういえば、陽炎の塔ってこの後どうなるのかな?」

「この辺異界化したまんまやし、また生えてくるんちゃう?」

「生えてくるって……」

 素っ頓狂な事を言い出す宏に苦笑しつつ、なんとなく陽炎の塔が立っていたあたりに視線を向け、思わず絶句する春菜。もっとも、誰でもその光景を見れば、絶句するしかないだろう。

「本当に、生えてきた……」

「冗談で言うたんやけど、本気で生えてくるとは奥が深いなあ」

 なぜなら、ちょうど春菜が視線を向けたタイミングを見計らったかのように、まるでタケノコか何かを彷彿とさせる形で陽炎の塔が生えて来たのだから。擬音をつけるなら、にょきにょき以外ない。そんな感じである。

「何がトリガーで生えてきたんやら」

「ラスボスのドロップアイテム回収で、中の状態がリセットされたんじゃねえか?」

「ああ、なるほど」

 達也が持ち出してきた、大抵のダンジョンに共通する仕様。それを聞いてひどく納得する宏達。陽炎の塔はインスタンスダンジョン、いわゆるパーティごとに中が生成されるタイプのダンジョンではない。だがそれでも、誰かがフロアごとにいるボスを倒せば、そのフロアのモンスターや宝箱がリセットされるという仕様は存在していた。今回はそれのもっと極端な形なのだろうと言われれば、それなりに納得は出来る。

 因みに陽炎の塔の各フロアのボスは、一度倒されたあと三十分から八時間の間でランダムに決定されたインターバルを置くか、十五階のイビルイフリートを倒す事で再度復活する。イビルイフリートの復活時間はランダムで、他のフロアのボスと違って時間経過以外で復活する事はない。これは、一つのグループがボスを占有する事を避ける目的のほかに、ボスを乱獲する事でフロアを何度もリセットして荒稼ぎする、というやり方を防ぐ目的もある。ボスが倒されてから再生するまでの時間が毎回違うため、一つのフロアに粘着している暇があったら、他のインスタントダンジョンにでも入った方が効率がいいのである。

「どうやら、無事に終わったようじゃの」

 陽炎の塔が生えて来たのを確認したのか、女王が宏達のもとへ歩いてくる。

「そっちは、怪我人とかはどないです?」

「それなりにスムーズに避難が終わったからのう。大して問題は起こってはおらんよ」

「そらよかった」

 そう言うと、再生した陽炎の塔へと近寄り、壁をぺたぺた触って何やら確認を始める宏。

「何をしておるのじゃ?」

「全部終わった事やし、もうちょっとレンガパチって行こうかなあ、思いまして」

「崩れそうじゃから、出来ればやめてほしいが」

「大丈夫です。崩れるほどパチらんし、たぶん八時間ぐらいでパチったところも復活した思うし」

「まあ、駄目とは言わんが、ほどほどにのう」

 最終的にはやはり素材に執着する宏を見て、思わず呆れのこもった笑みを浮かべる女王。結局、宏はどこまで行っても宏であった。
流石にゲームのときはプレイヤーがいない時間帯がなかったので
レンガパチる方はともかく粉砕するのは実行不能だったとさ。

あと、実は作者すらバルドが20k持たないかもしれないと危惧していたのはここだけの話。
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