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フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~ 作者:埴輪星人

エルフの森編後日談・こぼれ話

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後日談 その2

「墨打つから、押さえとって」

「はーい」

 ウルスでは今、アズマ工房拡張工事の真っ最中であった。

「ヒロシ、木材さ足りとるべか?」

「足りんなら、もっとハンターツリーさ伐ってくるだが」

「まあ、なんとかなるやろう」

 測量と墨打ちを終え、ざっと基礎をどうするかの目算を立てながらゴヴェジョンとフォレダンにそう答える。

「それにしても、リフォームして一年もたってないのに、拡張工事が必要になるとは思わなかったよね」

「まあ、しゃあないわな。工房スペースはまだしも、宿舎の部分はフォレストジャイアントが寝泊まりするにゃ、ちょっとどころやなく狭いし」

「すまねえだな」

「ええってええって。工房に男手が足りてへんのは気になっとったし、フォレダンのおっちゃんやったらいろんな意味で信用できるし」

 宏の言葉に頷く他のメンバー。いろいろあれで何な話が広まっているアズマ工房に対しては、元々不埒な事を仕掛けようという人間はそうはいないのだが、それでも男手が全くないというのはやはり不用心である。かといって、女の園になっている上子供が二人もおり、しかもエアリスまで出入りする現在のアズマ工房に、迂闊に信用のおけない男を招き入れる訳にもいかない。そういったもろもろを踏まえると、そもそも異種族に性的な興味がほぼ存在しないフォレストジャイアントは最適と言う事になる。ついでに言えば、年を重ねすぎて性欲が既にほとんど存在しないエルダーゴブリンも。

 実のところ、いわゆる人間に分類される生き物に関しては、どんな組み合わせでもその気になれば普通に交配が可能だ。条件さえ整えれば、フォレストジャイアントとヒューマン種やエルフはおろかフェアリーやピクシーの間にだって子供は作れる。ただし、普通はヒューマン種とエルフやドワーフ、一部獣人などのような見た目や体格、美的感覚が近い組み合わせ以外ではあまりハーフと言うのは生れてこない。性欲を抱くポイントが違うのだから、当然と言えば当然だろう。種族的にメスが居ないミノタウロスなどを除いて、女なら何でもいいという狂った種族は居ないのである。

「とりあえず、この際やからこの建物は男子寮にしてまうつもりやけど、どないやろう?」

「まあ、いいんじゃないか?」

「今後も人数を増やすなら、妥当なところじゃない?」

 宏の提案に、特に問題ないと同意する一同。どうせこの後も、あちらこちらの僻地に転送陣を設置して回り、その土地その土地からいろんな人間を引っ張りこむことになるのだ。それに、工房の規模拡大はあちらこちらからの要望でもある。

「さて、とりあえず基礎工事終わらせてまうから、春菜さんは訓練兼ねてあっちこっち手伝って。澪はファムらの講義頼むわ」

「了解」

「教材は何使ってもOK?」

「好きにやったって」

 宏の了解を得て、適当によさげな材料を集める。今回の講義は七級ポーションとそのランクに相当する各種消耗品の予定らしい。

「ほな、明日には外装が終わるとこまでやってまうで」

「終わるんだべか?」

「この規模やったら余裕や」

 そんな自信たっぷりの宏の言葉通り、その日のうちに異常にしっかりとした基礎が出来上がるのであった。







「七級ポーションはこんな感じだけど、出来る?」

「その反応って、こんな事に使うんだ……」

「見極めが難しいのです……」

「速度を一定にって言うのは大変ですよね……」

 澪の講義を聞き終え、実際に試してみたところで思わず唸り声しか出なくなる三人。まだエンチャントや錬金術を他に応用するようなレベルには至っていないが、それでも八級ですらまだ四苦八苦している職員達には、非常にハードルが高い。

「因みに春姉は最近、これやりながら初歩の初歩レベルの簡易エンチャント乗せられるようになったから」

「……いくら親方やミオさんが一緒だといっても、その進歩は早すぎます……」

「……親方も大概人間かどうか疑わしいのですが、ハルナさんもやっぱり種族を詐称しているとしか思えないのです……」

 テレスとノーラの感想に、思わず吹き出してしまう澪。どちらかと言わずとも表情に乏しい彼女だが、笑ったりしない訳ではない。

 なお、春菜が本格的に生産を始めてから八カ月。採集系とエンチャントを熟練度十五程度まで上げていた事や材料に余裕があった事を考えるなら、そこまで無茶な成長速度でもない。そもそも調味料作りに関しては、料理だけでなく製薬や錬金術のスキル修練にもなる。そのため、カレーパン作りは地味にかなりの濃度のスキル修練になっていたのだ。

 とはいえ、その春菜でもまだまだ初級突破までは遠い。簡易エンチャントを乗せられるようになったといっても、あくまでも多少品質を良くできるとか多少作業がしやすくなるといった程度で、宏や澪のように一段階以上低い素材からポーションを作ったりする事は出来ない。所詮、初級は初級なのだ。

「一応話は通してあるから、今度からオルテム村近辺でも材料集めすること。あのあたりなら、七級の材料が結構手に入りやすいし」

「分かりました」

「七級の材料、あたし達でも採れる?」

「素材取るのは、八級までの材料と大差ない」

 そう言って、各々の材料の特徴をざっと解説する澪。それを真剣な顔で聞き、しっかりメモをとる三人。いつの間にやらファムも、そしてこの場にはいないがライムもきっちり読み書きができるようになっており、少々難しい内容でも講義できるようになってきたのは好材料であろう。

 なお、ゲームのときも素材の収集自体は八級以下と七級でそれほどの差はない。素材や完成品のランクごとの採取難易度が大きく変わるようになってくるのは、五級を超えたぐらいからである。六級ぐらいまではどちらかと言うと、群生地が初心者が行くには厄介な場所に偏っており、数集めるのが大変だという事が障害になる。

 また、初級を乗り越える障害は材料だけではなく、熟練度が伸びる条件にもある。中級以上は失敗でも熟練度が伸びるのだが、初級の間は失敗からは何も学べないらしく、どんなおしい失敗でも熟練度は上がらない。その上、スタミナの消費が作業何秒ごとに最大値の1%などという中級以上と比べて格段に多い仕様となれば、なおのことだろう。しかも、スタミナが一定ラインを割り込めば疲労ペナルティで成功率も下がる。テレス達三人もずいぶんマシになってきたとはいえ、スタミナ消費の罠はいまだに厳しく、生産量や技能の向上に対する大きな壁となって立ちはだかっている。

「後、そろそろ道具作る方法も覚えた方がいいから、明日ぐらいからそっちも」

「道具も自分で作るのですか?」

「当然」

 いきなりの発言に面食らったノーラの質問に、秒殺で切り返す澪。自分で使う道具ぐらい自分で作れないと、この先いろいろと困ることになる。特に、宏が使っている鍛冶用ハンマーのように、特殊素材をベースにガチガチにエンチャントをかけて作り上げなければならない道具など、金を出せば手に入るようなものではない。そもそも、産業が高度化し極限まで細分化される以前は、日本でも高レベルの職人は道具作りのプロでもあった。この世界もそういう傾向がある以上、手に職を持ちたいのであれば道具や設備ぐらいは自作出来ないと話にならない。

 宏や澪、春菜などの認識はそんな感じではあるが、まだまだひよこにすらなっていない職員達の場合、自分達で道具を作る必要があるなどと言う事は、残念ながら想像すらしていなかった。もっとも、今現在やっている程度の作業は冒険者協会などで手に入る器材で十分である上、それ以外のあるとちょっと便利な小物類も大体揃っていたのだから、作るという発想に行かないのも仕方が無い部分はあるだろう。第一、宏達は作業のための道具を作っているところを、一度も見せてはいない。

「市販の道具じゃ駄目なの?」

「師匠が使ってるハンマーみたいなのが、市販されてるとでも?」

「うっ」

「それに、調味料と七級までのポーションで満足するならともかく、それ以上になると市販の道具じゃ性能が悪すぎる」

 致命的な実例を出され、その上向上心があるなら引けないコメントまでいただいてしまい、完全に沈黙してしまう三人。

「いきなりそんな難しいものは作らないから、大丈夫」

「あまり信用できません……」

「と言うか、三人の力量じゃ、作れてすりこぎがいいところ」

 地味に摩耗する必須道具を上げられ、非常に納得してしまうテレス。確かに、形を言わなければテレス達三人でも作れるうえ、今のペースで使いこめば一年とは言わないが結構早くに摩耗しきりそうな道具である。

「とりあえず、明日は道具類の材料調達先として、多少鉱石が取れるところに案内するから、まずはそこで採掘訓練」

「肉体労働ばかりなのです……」

「薬作るのも、地味に腕力勝負ですよね……」

「職人って、体も頭もかなりいるよね……」

 スパルタ式にハードな日程を組まれ、まだ日も高いのに疲れ切った表情を浮かべる三人。彼女達は知らない。自分達はまだ、長い職人坂を登り始めてすらいないという事を。







「大分上達したんやなあ。僕が謎植物つくっとる間に、大分練習した?」

「ん~、とりあえず二日ぐらい、ずっと糸紡いでたからそのせいかも」

「なるほどなあ」

 何処からともなく調達してきた羊毛を糸にしている春菜を見て、感心したように頷く宏。冬場の猛練習の成果も出てか、ファンタジー的な意味で特に癖のない素材なら、問題なく布まで加工できるようになっている。ちょっと集中力を欠いているからか、たまに失敗して糸を千切ったりしているが、紡いだからと言って使い道もあまりないので、大した問題ではないだろう。

「後は精錬と鍛冶と船造り覚えて採掘と一緒に練習したら、そろそろメイキングマスタリーいけるかもなあ」

「本当に?」

「まあ、習得ペース考えても、各々一カ月から二カ月ぐらいは必死なって練習せんと無理やとは思うけどな」

「最短でも半年かかるのかあ……」

 宏の言葉を聞き、微妙に遠い目をしてしまう春菜。実のところ、あと半年でそこまでの技能を身につけるのは、本来不可能とは言わないが相当の運が絡む。ゲームだった頃と比べて実作業時間が長い事を考えても、それ以外の時間も結構長いのだからそんなに技量の上昇が速くなる訳ではない。

「戦闘と違って職人技は回数が勝負やからなあ」

「やっぱりそういうもの?」

「そういうもんや」

 一回の実戦が百の訓練に勝るといわれる戦闘と違って、生産関係はどのレベルのものをどれだけ作ったかがすべてだ。同じものを一から何十個、何百個と作ることにより、徐々に徐々に腕が上がっていくものである。頭の良し悪しもある程度習得速度に影響するとはいえ、そこに近道はない。究極的には戦闘も回数勝負ではあるが、訓練と実戦の境界線があいまいな職人芸とは比べ物にならないだろう。

「それにしても……」

「ん?」

「いくら生産系スキルが能力補正大き目っていっても、やっぱり初級は初級だよね」

「何ぞ、思うところでもあるん?」

「何というか、私がオーバーアクセラレート習得した時みたいな自覚できるほどの差とか、宏君とか澪ちゃんがエクストラとった時みたいな傍で見てて劇的に見えるほどの変化はないなあ、って。」

 春菜の言い分に、思わず首をかしげる。正直なところ、タイタニックロアを身につける前と後で、宏本人には劇的な変化の実感はない。澪にしても、もともと高い能力のものががさらに延びた部分が大きいため、ぱっと見た感じでそれほど大きな違いを感じない。

「そんなに変わっとるかなあ?」

「大違いだよ。だって、手斧使った時の攻撃力が明らかに見て分かるレベル上がってたし」

 春菜の主張の根拠は、実に簡単だった。因みに、手斧を使った時の攻撃力を比較する相手としては、伐採に行った時に遭遇した灰色熊を持ってきている。以前の宏は二発かかって瀕死どまりだったこの熊を、タイタニックロア習得以降は一撃で仕留めていたのだ。当りどころの差と言うのはない。なぜなら、同じ場所に同じように攻撃を食らわせていたのだから。

「まあ、初級は初級、っちゅうのはあるやろうけど、それだけでもあらへんのちゃう?」

「と、言うと?」

「春菜さんのオーバーアクセラレートとかうちらのエクストラみたいにいきなりスペックが変化したんやなくて、修練でちょっとずつじわじわ上がっていっとる訳やし、少なくともそう簡単に自覚できるほどの差は出えへんと思うで」

 宏の実に説得力のある台詞に、思わず納得してしまう春菜。成長期の身長やバスト、足のサイズの変化などのように、ふと気がつくといつの間にか大きく変わっているのが、スキル修練による能力と言うものだ。たまに会う親戚のような立場でもない限り、はっきりと認識するのは難しいのかもしれない。

「まあ、それはそれとして、や」

「うん」

「澪が春菜さんにマント作れ、みたいなこと主張しとるんやけど、どうする?」

「あ~……」

 いまだに澪がこだわっている事を知り、困ったような笑顔を浮かべて軽く小首をかしげて見せる春菜。正直なところ、あまり趣味性の高い装備構成にはしたくないのが本音である。

「宏君は、どう思う?」

「見た目がどうとかそういうんを置いとくんやったら、ありはありやと思ってんで」

「そうなの?」

「春菜さん、左手空いとるやろ?」

「空いてるけど、それが?」

「絶対やないんやけど、本来レイピアとかその手の武器で戦う、いわゆるフェンサーっちゅうやつは、左手に盾代わりのマインゴーシュとかその手のもんを持つんやわ。まあ、春菜さんの場合は両利きやから、相手かく乱するためにスイッチするって観点で左手空けとくとかもありやし、実際にその種のフェイントもやっとるし」

 宏の解説に、糸紡ぎの手を止めて、思わずあーなどと声を上げる。実際、ゲームで細剣系をメインにすると決めた時に、フェンシング関係の動画を片っ端から見た事がある。その中には、宏が説明したように受け流しに特化した短剣を持ったスタイルのものもあった。

「でまあ、その辺のスイッチの事まで考えると、や。盾代わりのマント、っちゅうのも有りやないかな、ってな」

「マントって、盾代わりになるの?」

「そら、ドーガのおっちゃんとか騎士連中が使うとるような盾と同じにゃならんで」

「まあ、そうだよね」

「ただ、いわゆるバックラー的な使い方は腕が伴えば出来るし、ブラインドに使うてかく乱するんは古典のフェンサーの常套手段やったりもするんよ。それに、澪が言うたみたいに、裾で斬ったりとかの武器として使えるマントも出来ん訳やないし」

「そっちは歩いてる時に自分の足とか切りそうだから保留として、防具として使えるんだったら考えてもいいかな。正直、森のダンジョンで防御力と防御手段の不足は痛感させられてたし」

 まだ半月も経っていない出来事を思い出し、思わず苦い顔をする春菜。専門分野の問題とはいえ、はっきり分かっている弱点をいつまでも放置しておくのは怖い。

「ほな、今晩にでも作っとくわ」

「頼める?」

「任しといて。丁度ええ素材は山ほどあるしな」

「丁度いい素材って、たとえば?」

「まずは一般的なところでワイバーン。ケルベロスでもなかなかのんができる。後、ガルバレンジアもありやな。何やったら、そのうち鱗系やない種類のドラゴン狩ってくるんも選択肢やで」

 見事に食いついてきた春菜ににやりと笑い、いくつか候補を上げていく宏。どれもこれも普通はマントの素材になどしないものばかりである。

「最後のはパスとして、なんだかものすごく贅沢なラインナップだよね……」

「全部在庫がようさん余っとるから、どんな贅沢な使い方でも出来んで。何やったらワニ革のハンドバッグと称してワイバーンの革でブランド物のパチモン作ってもええで」

「やな偽物……」

「偽モンやあらへん。パチモンや」

「私にはその違いが分からないよ……」

 関西人以外にはいまいち通じにくいネタを言ってのける宏に、何とも言えない困った顔をするしかない春菜。

 なお、パチモンもしくはパチモノとは、ニュアンス的には性質の悪い無認可非公式のパロディ商品と言うのが近い。イメージとしては、物真似芸人が無許可でやっている物真似みたいなものだろうか。本物とは似ても似つかないのに、特徴だけはむやみやたらとよくとらえているあたりがそっくりである。もっと正確に言えば、便乗商品と言うのが本質に近いであろう。

 全体に共通する特徴としては、やたらと胡散臭く、どう見ても本気で騙す気はゼロだというのがあげられる。ほとんどの人が一目で偽物と分かりつつ、どこまで本物に近づけられるか、そしてその上で笑いがとれるかがパチモノ作りの真骨頂と言ってもいい。騙されるのが偽物ならば、分かっていて一発ネタのために買うのがパチモノと言う感じだろう。分かっていて買うのだから、早まったという後悔はあっても、騙されたとかよく見ておけばよかったという種類の後悔はしないのがパチモノなのだ。

「いや、そんな事を力説されても……」

 そんな感じの説明を力説する宏に、本気で呆れた顔をしてしまう春菜。性質の悪いパロディだろうが本気で騙すつもりの類似商品だろうが、本物ではないという一点では全く同じである。公式のジョークグッズならともかく、そんな限りなく黒に近いグレーな、と言うより普通に黒であろう商品を買う気は起こらない。

「まあ、パチモンについては置いとこか。マント以外にももう一つ、確認しときたい事があんねんわ」

「何?」

「レイピア、グレードアップするか?」

 これまた急に意外な事を聞かれ、とっさに応えに窮する春菜。今でも性能的にはやや過剰気味なのに、まだグレードアップするというのだ。春菜が答えをためらうのも当然であろう。

「えっと、また唐突だよね?」

「まあ、春菜さんにゃ唐突に聞こえるやろうなあ」

「それを聞いてくるって事は、他にも武器を新調するんだよね?」

「真琴さんのをな。アランウェン様の話もあったし、こっちで勝手に刀と大剣作っとこうか、思うてんねん」

「それで、ついでにって事?」

「せやねん。兄貴のロッドも作るし、澪の弓に至っては素材的に魔鉄合金製よりツーランクぐらい上のイビルエント製になりおるし、春菜さんのだけ普通の鉄製のままになってまうから、ついでに作った方がええやろう、思うてな」

 納得できると言えば納得できるその言葉に、少し考え込む春菜。正直なところ、今のところ攻撃力不足の類は特に感じない。バルドの時はそもそも接近戦を挑む隙間など無かったし、巨大マンイーターの蔦を切るのに苦労したのは根本的に武器の相性の問題だ。どちらも新調したところでそれほど差が出るものでもない。

 だが、新調出来る時に新調しておかないと、いざという時に武器の性能が悪くて足を引っ張りました、などと言う洒落にならない事態を引き起こしかねない。宏に負担をかけることになるのが難点ではあるが、やはりここは作っておいて貰った方がいいのだろう。

「悪いけど、お願いしていいかな?」

「了解や。エンチャントはこっちで勝手に決めてええな?」

「うん。どんなものが出来るか分からないし、お任せするよ」

 宏の確認に了解の返事を返し、基本全てを丸投げにする春菜。彼女の力量では、正直口を挟めるところがなにも無いのだ。

「ほな、レイピアとマント、っちゅう事で」

「あっ、やっぱりマントも作るんだ」

「作って無駄にはならんしな。流石にマスカレードと羽根帽子までは作る気ないけど」

「作られても困るよ……」

 宏の冗談に心底困ったような顔で突っ込みを入れ、完全に止まっていた紡績作業に戻る。猫が見れば転がして遊びそうな毛糸の玉が既に三つ目に差し掛かっているが、この工房に猫はいないので問題はない。

「そう言えば、その毛糸なんかに使うん?」

「秘密」

「さよか。まあ、使う予定あるんやったらええわ。霊糸みたいに不良在庫になったらたまらんからなあ」

 春菜の言葉に用途があると判断した宏が、使い道に関しては特に突っ込むことなくコメントを残す。深く突っ込みを入れられなかった事に、思わずホッとする春菜。真琴や澪との話し合いの結果、この毛糸でパンツを編むことが決まっているなどとは、流石に何重もの意味で宏には告げられない春菜であった。







「また、ものすごい量の鉱石ですね」

「まあ、いろいろ作るからなあ」

 春菜に最終確認を取った二日後。大量に運び込まれた魔鉄とミスリルの鉱石を見て、微妙に驚きの声を出すアルチェム。そんなアルチェムにいつものことと言わんばかりの台詞を残し、精製の前に鉱石の質を確認する宏。

「こんなに鉱石買って、大丈夫なの?」

「それは金銭的な意味か? それともコネ的な意味か?」

「両方だけど、主に金銭的な方かな?」

「金に関しては問題あらへん。魔鉄とかミスリルは、製品になってもうたらものごっつう高いんやけど、鉱石段階やとだぶついとるみたいで安いねん」

 需要と供給の関係を表すかのようなその説明に、納得するやら寂しいものを感じるやらでコメントに困る一同。鉱石段階だと安いのは当然、精製できる職人が少ないからである。現在の職人の平均レベルだと、このあたりの素材は精製して加工できるだけで超一流扱いされてしまうのだ。

「ちょっと待って」

「ん?」

「だぶついてるって事は、鉱石を掘れる人は結構いるの?」

「そうなんちゃうか? 含有量の多い、いわゆる質のええ鉱石掘るんは結構な腕と勘がいるんやけど、鉱脈さえ見つけとったら単に掘るだけやったらそこらの人足でも行けるし」

 ランクの高い素材の意外な事情に、これまた微妙に絶句する春菜。実のところ神鉄以外は、ゲームでも掘るだけなら初級の熟練度七十もあれば掘れるのだ。ただし、鉱石の品質が非常に悪くなる上、掘ったところで精錬の腕が追い付かないため、レベルが上がるまで間違いなく不良在庫としてだぶついてしまうのである。

 そこらへんの事情はこちらの世界でも同じらしく、絞り気味の生産量でも鉱石自体は割りとだぶついているのだ。

「なあ、ヒロ」

「なんや?」

「コネの方は、そこまで使い倒して問題ないのか?」

「鉱石ぐらいは問題あらへんやろう。そもそもこんなスピードで入ってきたんも、向こうがだぶつき気味の鉱石をこっそり買いたたいて確保してあったかららしいしな」

「何やってんだよ、ファーレーン王家は……」

 ファーレーン王家の予想外にもほどがある行動に、思わず頭を抱える達也。宏が注文を出さなければ、そのだぶついた鉱石をいつまでも抱えることになる、と言う事は考えなかったのだろうか?

「多分やけど、向こうはそのうち鍛冶も仕込むやろうって睨んどったんやと思うで」

「あ~、なるほどな……」

「実際、いつになるかはともかく、いずれはこの辺の素材使ってあれこれやる訳やしな。それに、材料持ち込みやったら値段の方は勉強する事なるし」

「厄介な話だよな、それも……」

 色々と過大な期待をされている節のあるアズマ工房。実際、春菜の成長率ほど異常ではないにしても、テレス達三人ですらすでに製薬と錬金術に関しては、世界全体の平均を超えているのだ。しかも、現状作り方を広めてすらここでしか作れない物も結構ある。それ以上に、コンスタントに結構な分量の火炎石などの低レベル消耗品や八級程度の毒消しを生産し納品しているというのは、実績としてはこの上ないポイントとなる。

 アズマ工房、と言うよりはそこで働く三人の職員に関しては、王宮や冒険者協会、メリザ商会なども驚きをもって見ている。超越した技量をもつ指導者がいるかどうかでどれほど変わるのかと言うのをはからずも証明してしまった形になっているため、色々な組織が水面下で息のかかった者をアズマ工房に弟子入りさせられないかと画策している。もっとも、当の指導者達となかなか接触を取れないため、最初から考えもしていない王宮以外は計画が頓挫しかかって微妙に頭を抱えていたりする。

 元の世界に帰るため、ふらふらとあちらこちらへ出歩いているのが妙なところで功を奏する形になっているようだ。もちろん、当人達は何一つ深い事は考えていない。

「流石に邪魔やし、当事者になる真琴さんと兄貴、後春菜さん以外はちょっと出とってくれるか?」

「分かりました」

「仕事してくるのです」

「親方、後でいろいろ教えてね」

 宏に促され、素直に調味料作りのために出て行く三人。澪も自分の弓を作るために工作室の方へ向かう。現状特にやるべき事もないため、どうしようかと少し考え込むアルチェム。もっとも

「あ、じゃあ私は、ちょっと村の方に戻って醤油蔵と味噌蔵の進捗度合いを見てきますね」

 すぐに自分でもできることを思い付き、用事を済ませるために出て行くのだが。なお、ゴヴェジョンとフォレダンがここにいない理由は単純で、宏の図面をもとに醤油蔵と味噌蔵を作りに行っているからである。味噌も醤油もあの一帯の貴重な外貨獲得手段になりうるという事で、村中総出で作業をしている。すぐに安定して量産と言うのは難しそうだが、それでも最初の試作品が現時点で問題なく発酵が進んでいるため、日本酒と並んで新たな特産品としての期待は強い。気が早い暇人達は、すでに大豆の増産のために新しく畑を作る計画すら立てており、既に切り開いても問題のない老いた一帯を見つけていたりする。

 因みに、何故あの一帯の連中が外貨を欲しがっているかと言うのは簡単な話で、外貨が無ければダシに使える海産物やカレー粉を購入する事が出来ないからである。流石にいくらなんでも、この一帯の四種族全員の口を満足させうるだけの調味料や海産物となると、アズマ工房が無料で提供するという訳にはいかない。だが、地味に和風の舌を持っているこの地域の連中は、宏達が持ち込んだ煮干しやカツオ、昆布などでダシをとった煮物をたいそう気にいってしまい、安定して手に入るのなら何としても手に入れたいと考えている。故に自分達も使いたいという事もあり、非常に真剣に醤油造りに取り組んでいる。

「ほな、まずは材料少なあていける、春菜さんのレイピアから行こか」

「ん、お願い」

「まあ、ちゅうたかて、材料はまとめて一気に作るんやけど」

 そんなとぼけた台詞を吐きながら、溶鉱炉にどんどん材料を投入していく。レイオットに無理を言って集めさせた、流通に乗るぎりぎりのレベルの砂を使ったレンガの、世界でもここにしかない高性能溶鉱炉である。もっとも、宏的にはつなぎ程度の、大した性能とは言えないレベルの設備ではあるが。

 因みに、レイオットが無理を言われたのは、真琴からの苦情を受けて宏に魔鉄製の自分の武器を作らせようとしたのが原因である。言ってしまえば、自業自得だ。

「んじゃまあ、本番行くで~」

 気の抜ける口調で完成した合金を引っ張り出し、その口調とは裏腹の真剣な表情で熱した鉱石にハンマーを入れる。例によって例の如く、作業中は触れれば切れるのではないか、と思わせるほどの鋭いまなざしで、真摯に丁寧に、大胆に繊細に作業を進めていく。

 ほどなくして最初の一品、春菜の新しい相棒となるであろうレイピアが完成する。

「完成や。ちょっと振ってみて」

「ん、了解」

 宏に促され、初めて武器を作ってきたときのことを思い出しながら軽く型をなぞってみる。あの時と違い、今回は何一つ調整しなくてもまったく狂いがない。狂いがないどころか、びっくりするほど手になじみ、今まで以上に扱いやすくてしっくり来る。しかも、これまでとは比較にならない性能を持っていることが、ただの素振りでもはっきり分かる。

「すごい、完璧……」

「そらもう、長い付き合いやし、戦闘シーンも覚えるほど見とるからな。今更バランス崩したりとかはせえへんよ」

 一発で特に修正する必要もなくきっちりバランスをとってのけた宏に、思わず感動するようなまなざしを向ける。宏がチームにいてよかったと思うことはいくらでもあるが、こういうときは特にそう思ってしまう。

「まあ、特殊機能は後で説明するとして、次は兄貴の行ってみよか」

「おう、頼むわ」

「ほな、行くで~」

 例によって例のごとくばかげた量の魔力を注ぎ込みながら、ロッドを音高く槌音を響かせて成形していく。魔力の増幅と制御補助に気を使って導通ラインを設計し、いくつかのポイントに魔力結晶をはめ込むためのくぼみを作る。補助材料を組み込んでデザインラインから魔法の効果を大きくする形状に変え、最後に冷却と同時に強力なエンチャントを施す。

「後は魔力結晶をはめ込んで……」

 変形の五芒星を描くように配置された魔力結晶が、その身に輝きを灯す。そのエネルギーの流れを微調整した後、仕上げのエンチャントを施して完成。軽く起動して問題がないことを確認すると、達也にそのまま渡す。

「ちっと確認して」

「何か、ものすごく手の込んだロッドだな。前のとは大違いだ」

「そら、材料の充実度合いも違うし。同じ間に合わせっちゅうても、前のときに使える材料やと作れるもんも気合の入り方もやっぱちゃうで」

 分かるような分からないような宏の宣言に苦笑しつつ、ロッドを起動していくつかの魔法を軽く発動してみる。すさまじくコントロールがやりやすくなっている反面、増幅率が高すぎるため手加減は逆に難しくなりそうな感じだ。そんなことを考えつつ短縮詠唱でいくつかの魔法を起動し、即座にキャンセルする。

「……なあ」

「何?」

「今、裏技使わなくても二重起動に成功したんだが?」

「そら、多重起動の機能組み込んであるんやから、当然やで。っちゅうか、裏技ってなんや?」

「詠唱中にタイミング合わせてノーディレイで詠唱なし、クールなしの魔法起動すると、コストが激増する代わりに同時に二発魔法が発動するんだよ」

「ほう。そら知らんかった」

 宏が作った杖には、多重詠唱の機能が組み込まれている。初級レベルなら五種、中級で三種、聖天八極砲レベルでも二種同時に詠唱可能な極悪な杖だ。当然コストは普通に起動した数だけ消費するのだが、そこはそれ、宏がそんな問題を何の手当てもなしに放置するわけがない。

「後、もう一つ気になってたんだが、妙に発動コストが軽くないか?」

「あ、達也さんも?」

「なんや、もうばれたんか」

 刀の材料にするための玉鋼を作りながら、達也の質問にしれっと答える宏。

「で、何をやったんだ?」

「兄貴らがガルバレンジア狩って来てくれたから、イビルエントの葉脈と組み合わせてええ触媒が作れてなあ」

「何か、聞くのが怖くなってきたんだけど、何のエンチャントをつけたの?」

「魔法発動コスト75%カットと戦闘スキル発動コスト75%カットを武器段階で焼き付けといてん」

「はあっ!?」

 宏のとんでもない台詞に、この場にいた三人が思わず絶叫する。

「なんや、そないに驚かんでもええやん」

 いつの間にか大剣を打つ準備をしながら、顔をしかめつつそんな文句を言う。だが、そんな宏の文句など、誰一人聞く耳を持つわけもなく……

「あんた、それがどれだけとんでもないか分かってて言ってんの!?」

「とんでもないもなんも、上級エンチャントとしては割と一般的なしろもんやで」

「そんなもんが付いた装備なんて、煉獄の中層でも出てこないわよ!」

「その代わり、煉獄産の武器って魔道具とかエンチャントで再現できへん種類の特殊機能は結構あるで。それに消費軽減のほうは、向こう居った時兄貴の杖には付けとったやん」

「あんな物騒な杖、やばすぎて普段使いできねえからそこまで見てねえよ!」

 宏の言い訳をあっさり聞き流し、吊るし上げを続けようとする真琴達。ちなみに、煉獄産装備固有の特殊機能というのは、半分以上が癖が強すぎて使い手を選ぶものであり、残りの半分はせいぜい優秀なおまけ程度のものだったりする。後、宏は誤解しているが、煉獄中層の固有機能程度ならば、すべての生産エクストラを習得した上で同じ階層で入手可能な素材を集めれば再現可能である。もっとも職人達が引きこもっている上にハードルが高すぎて、誰も確認していないため開発者か神様ぐらいしか知らない情報ではあるが。

「ついでに言うたら単なるエンチャントやから、どんな武器にでもつけれんで」

「……ごめん、ちょっとめまいが……」

「ほんまのところは95%カットのほうつけたかったんやけど、素材が大霊窟まで行かんと揃わん上に、生産量がごっつ少ないからなあ」

「これ以上怖い事言わないで、いいわね?」

「別に怖くはないやん」

 真琴にすごまれ、ぶつくさ言いながら鉄の塊を大剣の形に鍛え始める。最初は微妙にふてくされた表情だったものが、作業を始めるとすぐさま引き締まったものに変わる。ハンマーを振り下ろす一撃一撃が鉄塊に魂をこめ、現在世界に二つと無い強力な武器へと変貌させていく。

「まずは一つ目。バランス見るから、軽く振ってみて」

「はいはい」

 どうせバランスなんぞ確認しなくても、今までの戦闘を見ていれば余裕で正確な重心を取ってのけるに決まっている。そんな気分で春菜に習って軽く型をなぞる。予想通り、真琴にとって最適な重心バランスと寸分狂わず一致している。軽く振った感じ、基礎スペックでは煉獄で手に入るレア装備よりは三枚ほど落ちる印象だが、むしろ割と気軽に作って三枚程度で済んでいる事がおかしいので、そこは気にしない事にする。

「いまさらあんたが作る武器がバランス狂うはず無いわよね」

「分からんで。次作るんは、真琴さん使っとるところ見たことないし」

「へっ? ……まさか!」

 真琴の言葉に耳を貸さず、熱した玉鋼を厚さ五ミリ程度に打ち延ばす。延ばし終わった鋼を二センチ程度の破片に割っていき、慎重に質のよいものを数キロ選定していく。小割りにされた材料を熱して沸かし、一つの塊にしてから打ち延ばす。平たく延ばしては折りたたみ、何度も何度もたたいては折りたたむ。

 二十回ほど折りたたみ終えたところで満足いく品質になったのか、もう一つの鉄の棒を作り始める。残りの塊を精製しなおして組成をいじり、それなりの硬度を持ちながらも粘り強い鉄を作り上げる。それを最低限の整形をしたところで、最初に鍛え上げた鋼で今作った鉄をくるむ。

「そっちの鉄と最初の鉄は、何か違うのか?」

「最初の鉄だけやと衝撃で折れたり砕けたりしおるから、軟らかくて粘り強い奴で衝撃逃がせるようにしたらんとあかん」

 達也の質問に答えながら、二つの鉄を熱して打ち合わせそれぞれの性質をそのままに一体化させ、小槌で日本刀の形に成形していく。小槌とやすりで形を整えた後、土らしいものを表面にコーティングし、再び熱して焼入れ。焼きが終わったものの曲がりや反りを修正した後研ぎあげて状態を確認。やすり仕立てをしてから銘を刻み、脇差と太刀の中間程度の長さを持つ、見事な波紋が美しい日本刀を完成させる。ここまでの工程で時折正体不明の粉を振りかけながらぶつぶつ何かを唱えているのは、おそらくエンチャントを施しているのだろう。

 本来の刀鍛冶が見ればおかしな作業もいくつかあるが、そもそも素材が違う上に魔法という現実には存在しない工程も挟まるのだ。ベースとなる大まかな流れは同じでも、割りと重要な細部が一致しないのは当然といえば当然である。魔鉄ならばまだその程度の差ですむが、更に上の素材では教科書どおりの鍛造方法では、その方法についてどれほどの腕を持っていてもまともな武器にはなりえない。この世界の素材は、上に行けば行くほど訳の分からない特性を持っているのである。

「まあ、妖刀っちゅうほどの代物にゃなってへんけど、十分実用範囲にはなっとるはずやで」

「……」

「日本刀ってのも、手間がかかる代物なんだな」

「せやなあ。伊達に世界最強の美術品っちゅう訳やあらへんしなあ」

 そんな宏達の会話を聞き流し、何かに魅入られたかのように完成した刀を手に取る真琴。ギャラリーや設備から十分に距離をとり、長らく使わなかった技を確かめるかのように恐る恐る振るう。真琴のその動きに応え、寸分の狂いも無くイメージどおりの軌跡をなぞってみせる刀。その瞬間に、いや、その刀を手に取ったときから、真琴は自分の中の普段は意識しない欠けたところが埋まったような感覚を覚えていた。

「バランスとか、どない?」

 宏の質問を完全に無視し、何度も何度も取り付かれたように刀を振るう。理想どおりのバランス。理想どおりの長さ。そして、今までは望むべくも無かった、妖刀となりうる片鱗を見せる切れ味と強靭さ。材質こそ本来の意味での玉鋼ではないが、そんなことは関係ない。これは紛れも無く日本刀だ。真琴がかつてゲームの中で半身として選び技を磨き上げ、高みに上り詰め、そして手足の延長たる相方に出会えずに挫折した、その道を再び歩かせてくれるであろう存在だ。

(もしかしたら、今度こそ、今度こそあの技が……)

 かつて、ゲームの中で出会ったNPC。その男に師事し、極意を叩き込まれ、皆伝の証として受け継いだ一連の技。それに耐えうるだけの刀を得ることができずに、結局一度もまともに振るったことの無い奥義。もはや刀使いとしては錆び付いてしまっている現在の真琴では、技を発動させることはおろかその準備段階にも至れないだろう。やはり煉獄産の装備には及ばない事を考えれば、この刀ではまだ足りないのかもしれない。それでも

「うん。覚悟は出来たわ」

 再び、一振りの刀にすべてをかける覚悟は固まった。

「何の覚悟かは分からへんけど、そらよかった」

「宏、またいろいろ注文つけることになるかもしれないけど、とことんまで付き合ってもらうわよ」

「職人としては、顧客のわがままは望むところやで」

 こうして、真琴はようやく、ゲームでとは言え本来目指した道に戻ってくるのであった。
パチモノについては、作者の、というより登場人物の勝手な言い分です。
言うまでもなく無許可のパチモノは普通に違法ですので、絶対に買わないでくださいね。
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