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フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~ 作者:埴輪星人

エルフの森編

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第2話

「ねえちゃん、いい飲みっぷりだべな」

「んだんだ。もう一丁いくべ」

「いくらでもかかってきなさい!」

 アルテ・オルテムの大人全員が総出で騒ぐ大宴会。ざっと見ただけでも軽く五百人、多分最低でも千人は超えているであろうエルフがあちらこちらでたき火を囲んで、がばがばと底なしの風情で濁り酒をあおっている。その中に何十人か、明らかにゴブリンやフォレストジャイアントと分かる存在も混ざっているのだから、そのカオスぶりは凄まじい。

 そんな飲兵衛どもに捕まった、と言うよりは喜々として突撃をかけた真琴は、そのウワバミぶりを遺憾なく発揮して次々に酒瓶をあけていく。一杯飲み干すたびにエルフたちのやんやの声援を受け、上機嫌でつまみをかじっては注がれた酒を躊躇なく空にする。

「うわぁ、うわぁ、うわぁ……」

「真琴さん、大丈夫かいな……」

「ありゃあ正真正銘のウワバミだから、大丈夫なんじゃないか?」

 製法のせいかそれとも世界の違いゆえか、意外と度数がきつい濁り酒をちびちびとやりながら呆れを隠さずにコメントする達也。実際、達也が一杯飲み干す間に真琴は三杯はあけているが、呂律も言動もしっかりしたもので、潰れるという状態が全くイメージできない。

「なんだかお恥ずかしいところをお見せしてしまったようで……」

「こっちも大概だから、気にすんな」

 実に恥ずかしそうにして居るアルチェムに、苦笑しながら達也が答える。実際、唐突に誰だか分からない人物に対する謝罪を求める事に比べれば、宴会の口実にされるぐらいは大したことではないだろう。

「それにしても、エルフとゴブリンとフォレストジャイアントが星空の下で宴会してるとか、非常に違和感がある光景だな」

「そうですか?」

「まあ、一般的なイメージだと、ゴブリンとエルフとかドワーフは、大概の場合不倶戴天の天敵みたいな間柄って印象があるしなあ」

「せやなあ。後、フォレストジャイアントは、エルフとはまた違った意味で、あんまり種族間交流とかせえへんイメージがあるし」

「このシチュー美味しい」

 ヒューマン種の街での異種族のイメージをアルチェムに語って聞かせる宏達と、ひたすらマイペースに食事を続ける澪。実際のところ、ヒューマン種の持つ異種族のイメージは、宏たち日本人が持っている物とそれほど大きな差はない。そして、街に出てきている異種族はそれほどそのイメージと離れた振る舞いはしていない。ずれていると言ったところでせいぜいテレスのレベルであるため、エルフ族の実態がこうであるという事は、ここに来るまで想像もしていなかった。

「おめらがチェムさ助けてくれたのか?」

 アルチェムと異種族間交流を進めていると、酒瓶を持ったゴブリンとフォレストジャイアントが声をかけてきた。

「そうなるんかなあ?」

「どっちかってえと、お前木材目当てで突撃かけてたもんなあ……」

「ええやん、木材」

 達也に突っ込まれて開き直る宏。とは言え、最初はアルチェムの救助目当てで走ったのだから、助けたというのも間違いではない。

「テレスさ出ていった後、里にゃチェムしか年頃の娘はおらんでな」

「若い娘らしい幸せも経験せずに命さ散らすかと思うたら、おらたちも流石に慌てただよ」

「ハンターツリーは、初見の人間が単独行動の時に不意打ち食らったら、大概逃げられへんからなあ……」

「そうだべ。しかも、現場にゃ残骸とチェムさ使ってた弓だけ残ってたんだべ? 焦んない方がおかしいべ」

 ゴブリンとフォレストジャイアントの言葉に、周りのエルフたちも頷く。その態度に苦笑しつつ、正体不明の鳥の腿肉にかぶりつく宏。肉もかかっているたれも正体不明だが、ピリ辛の味付けが中々旨い。握り飯と一緒に食べると、どんどんご飯が進む。

 食事兼つまみとして焼かれている肉類は鳥とウサギがメインであるが、シカやイノシシ、クマなどもそれほど大量にという訳ではないが一緒に調理されている。流石に寄生虫が怖いので、これらの生き物は全て、徹底的に火が通される。

「ゴヴェジョンさん、フォレダンさん、ご心配をおかけしました」

「よかよか。無事ならそれでよか」

 アルチェムに頭を下げられたゴブリンとフォレストジャイアントが、目を細めながらそう答える。言わずとも分かるだろうが、ゴヴェジョンがゴブリンで、フォレダンがフォレストジャイアントである。見た目は全く違う三つの種族が、中身に関してはほとんど変わらないところが面白い。

「そう言えば、アルチェムは何で外に居ったん?」

「西の里のエルフとちょっと打ち合わせがあったんですよ。私、来週初めてレネードに取引に行くんです」

「なるほど。人間の街での交渉について、作法とかそういうんを教わるんやな」

「はい。引き継ぎを受ける前に担当者だったテレス姉さんが外に出てしまったので、私が外に出る許可が下りるまでは、西の里のエルフに頼ってたんですよ」

「他の人は行かんの?」

「外の事を知るのは若者の役目だ、という建前のもと、代々年頃のエルフがこの役目を担っていまして」

 エルフの社会もいろいろあるようだ。それならとっとと許可を出して習うより慣れろ方式でやればいいと思うのだが、それをするにはエルフの感覚ではちょっと若すぎるらしい。因みにテレスも百歳に届かない若いエルフだが、アルチェムはその半分ぐらいの年である。エルフの社会では五十歳未満と言うのは、日本で言うところの中三ぐらいの年齢に当たるようだ。少子高齢化が進んでいるとはいえ、周りの人間もずいぶん過保護である。

「因みに建前はそれですが、本音は年寄りを外に出すと帰ってこないから、だったりします」

「は?」

「迷子にでもなるの?」

 意外としか言いようがない理由を聞き、何じゃそらと言う表情で聞き返してしまう宏と春菜。なんとなく落ちの想像がついたらしく、達也は苦笑しながら酒をちびちびやっている。澪はそんなの関係ねえ、とばかりに川魚の塩焼きに夢中だ。

「迷子ならまだいいんです。ほとんどはですね、都会にあこがれて、村に持って帰らないといけないあれこれをそのまま持ち去って行方不明になるんですよ」

「……それって、むしろ若者がやりそうな事だよね……」

「せやなあ。普通、田舎捨てて飛び出すんは若者の仕事やと思うんやけど……」

「何百年も辺鄙な村に過ごしてると、刺激が欲しくなるらしいんですよ」

 年寄りがそんな冷や水をやらかしていいのかと突っ込みたくなる台詞に、どうにも反応に困る。ゲームの時のエルフがこうでなかったために、余計この辺の突っ込みどころが目に余る気がする。

「別に、それやったら自由に行かせたげてもええんちゃうん?」

「あんまり年寄りさ外にふらふら出るんは感心しねえべ」

「ゴヴェジョンの言うとおりだべ。年寄りは若いもんを指導してやらんといけん」

「それに、年寄りが出ていくと、急速に過疎化が進むんですよ。南西にあったエルフの里は、それが原因で廃村になったんですから」

 ゴヴェジョンとフォレダンの言葉に、アルチェムがそんな微妙な補足を入れる。少子高齢化が進むエルフの里。そこで年寄りが一気に抜けるとどうなるのか。答えは過疎化のスピードが速くなる、である。しかも、エルフの場合は七百歳やそこらでもまだまだ現役で働けるのが普通だ。なので、年寄りに抜けられると生産能力も急激に落ちていき、里を維持できなくなるのである。

 日本の農村と同じ問題を、エルフたちは違う形で抱えているのだ。

「少子高齢化は、どこでも問題になってるんやなあ」

「んだんだ。ゴブリンは寿命がみじけえし、もともと子だくさんだでそういう問題はねえだどもなあ」

「因みに、ゴヴェジョンは百さ越えてるだで。ゴブリンは三十年もすれば大体寿命で死ぬから、こいつは化けモンの部類だでよ」

「化けモンじゃねえべ。おら、アランウェン様のお力で、エルダーゴブリンに進化したでよ」

 この世界のゴブリン事情は、なかなか複雑そうだ。もっとも、ゴブリンがどうであろうと特に興味のない澪は、焼いたピーマンやら人参やらに標的を変えつつ、ひたすら食事に夢中だが。

「そういや、何で皆ファーレーン語で話しとるん?」

「そりゃおめえ、この村にいくつの種族が出入りしてると思ってるだ?」

「たまに来るヒューマンを除いても、全部で四つも異種族が交流しとるでよ。どれかの種族の言葉で統一したら、それ以外の種族が気ぃ悪くすんべ」

「それに、おらたちの口の構造だと、ヒューマンの言葉は喋れても、エルフ語とかゴブリン語は難しいでな」

 宏の質問に、分かるような分からないような回答を返すゴヴェジョンとフォレダン。アルチェム以外の発音だと、どうしてもゴブ造にフォレ太と聞こえてしまうほど訛っているが、意思疎通と言う観点ではそれほど問題はなさそうな風情である。因みにもう一つの種族はフェアリーだが、今日は特に用事が無いらしく、この場には来ていない。

「ちゅうことは、テレスとかアルチェムの発音がえらい綺麗なんは、やっぱり外との交渉役やから?」

「そうですね。やっぱり、交渉するにはちゃんとした発音で話せないと困りますし」

 郷に入りては、郷に従えです。そんな風に澄まし顔で言うアルチェムを、思わず微笑ましい顔で見守ってしまう一同。なお、この期に及んでも燻したチーズに夢中の澪は、どうやら余計な事を聞いてこれ以上イメージを損なわないようにしたいらしい。要は自己防衛反応である。

「ん? なんか、あっちが騒がしいな」

「あ、あれは!」

「銘酒ドワーフ殺しだべ!」

 物騒な名前を言いながら、恐ろしく大げさな反応を示すゴヴェジョンとフォレダン。その様子から、多分ものすごく強い酒なのだろうとあたりをつける一同。

「因みに、ドワーフ殺しってのは?」

「ラース麦で造った酒を限界まで蒸留して、とことん度数を高めた酔っぱらうためだけの酒だべ」

「蓋あけて火ぃ近付けるだけで引火するほどきつい酒でな、ドワーフが一瓶飲み干す前に潰れたっちゅう逸話がある、ひたすら強いだけの酒だでよ」

「何その危険物……」

「てか、それを真琴がぐいぐいいってるように見えるんだが……」

 達也の指摘通り、もはや米の酒ではなく単なる液状アルコールなのではないかと言う代物を、真琴と十人程度のエルフが酌み交わしている。エルフたちが二杯も行かずにどんどんつぶれていくのに、真琴の方は既に四杯目だ。それまでに飲んだアルコールの量を考えると、さすがにそろそろストップをかけるべきではなかろうかと心配になってくる。

「ちょっと止めてくる」

「心配しねえでも、あれが出てきたら宴会は終わりだべ」

「んだんだ。だども、瓶一本空けるつわものがいたとは驚きだでよ」

「それも、あんなちっこい姉ちゃんがなあ……」

 何やら恐れ入ったような口調で真琴について語り合うゴヴェジョンとフォレダン。確かに真琴は、ヒューマンの平均から見ても小柄な方に入る。ゴブリンを除けば平均身長が百七十センチ以上の種族しかいないこの場において、彼女は成人している人間としては最も小柄な女性だろう。

 そんな真琴が、ドワーフですら一本飲めなかった酒をガンガンあけていき、そのくせ見た目には思考も呂律もしっかりしているように見えるのだから、引いて当然である。

「焼きトウモロコシは、やっぱり醤油塗った奴の方が好き」

「澪、お前はお前で食いすぎだよ……」

 我関せずと言った感じで焼きトウモロコシをかじっていた澪のコメントに、思わずジト目になって突っ込みを入れる達也。なんだかんだ言って、マイペースな一同であった。







「おはよー……」

 翌朝、微妙に寝ぼけた感じで与えられた部屋から出てきた真琴は、春菜が用意していた朝食に目を見張り、一瞬で眠気を吹き飛ばす。既に揃って食事の開始を待っていた宏達をスルーし、そそくさと自分のお膳の前に座って、米が出てくるのを大人しく待つ。

「おはよう、真琴さん。とりあえずご飯にお味噌汁と海苔、魚の干物と小鉢は用意したけど、卵はどうする? 卵焼き? 目玉焼き? それとも、卵かけご飯?」

「卵かけご飯で!」

 まるで昨日の酒が残っている様子を見せない真琴に、思わず苦笑しながらご飯をよそい、卵と鰹節、醤油の三点セットを渡す春菜。予想通りの反応に、宏達も笑いを隠さない。

「真琴さんは、納豆食べる人?」

「うん。でも、今日はいいわ。卵かけご飯だし」

「そっか、了解」

 真琴の返事に頷き、自分の分のご飯を用意する春菜。皆卵かけご飯なので、自分も同じく卵かけご飯にする。因みに茶碗をはじめとした食器類は、工房に居る時に宏と一緒に作ったマイ食器である。

「おめえら、生で卵さ食うんだべか?」

「ちゃんと消毒したから大丈夫やで」

「そっただ問題じゃねえべ」

 米の上に生卵を落とし、醤油と一緒にかき混ぜ始めた一同を見て、引いたような表情で突っ込みを入れるゴヴェジョンとフォレダン。アルチェムも普通にどん引きしている。

「うちの故郷は、あれこれ生で食べる文化があんねん。どんな処理してどう食べたら安全かっちゅうんは、百年単位の文化の積み重ねで大体のところは確立されとるし」

 きっちり隅々まで醤油と卵を混ぜ込んだ宏が、そんな事を言いながら美味しそうにご飯を一口食べる。

「春姉、おかわり。それと、お昼はオムライス」

「ん、了解」

 二杯目を味付け海苔で堪能しながら、そんなリクエストを宣言する澪。米が手に入る当てが出来たとたんに、遠慮なく大量にバクバクと食べ始める所が分かりやすすぎる。

「あたしもお代り。後、納豆ちょうだい」

「はーい」

「納豆って、あの腐った豆だべか?」

「腐っとるように見えるけど、一応食いもんやで」

 ダシとからし、ネギに醤油を入れてよくかき混ぜ、躊躇なくご飯にのせて食べる真琴を見て、実に嫌そうな顔をするゴヴェジョン。ゴブリンの嫌そうな顔と言うのもかなりレアであろう。

「まあ、こればっかりは違う大陸の連中に理解しろっつうのは酷だろうな」

「せやなあ。同じ国の人間でも、僕みたいによう食わんのもおるんやし」

「だよね。と言うか、腐った豆ってたまに関西の人が言うよね」

「関西人が全員、納豆食わん訳でも存在を否定する訳でもあらへんで。僕とおとんは苦手やけど、おかんと姉ちゃんは普通に食べとるし」

 納豆を食べる食べないは、好き嫌いと言うよりはどちらかと言うと文化と言う側面が強い。元々産地が少ない西日本で食べられない人間が結構いるのは仕方がない事だろう。それに、確かに栄養価の面では優れた食べ物ではあるが、食べられないからと言って説教を受けるような食品でもない。

 同じ国の中でもそうなのだ。別の国の、それも根本的に種族そのものが全く違う存在に受け入れられなくても、文句を言う筋合いはない。むしろ、冗談半分で用意した納豆を、普通に平気で食べたエアリスのような人間が例外であろう。

「それにしても澪、お前最近、本気でよく食うよな」

「せやなあ。ファーレーンにおった頃も結構食うとったけど、向こう出てから三割増しぐらいになってへん?」

「遅れてきた成長期」

 達也と宏の突っ込みをそんな言葉でいなし、三杯目のご飯と二枚目の魚の干物をぺろりと平らげる。いまだ百五十センチの大台に乗っていないその小柄な体のどこに入るのか、と言うほどの分量だ。もっとも、最近の活動内容を考えると、その程度食べたくらいでは太ることなどあり得ないだろうが。

「子供がたくさん食うのはいいことだべさ」

「だべだべ」

 気持ちいいほどよく食べる澪の様子に目を細めながら、ゴブリンとフォレストジャイアントが頷く。

「それにしても、この煮物うめえなあ」

「んだんだ。この黒っぽい汁はなんだべ?」

「あ、それはお醤油って言う、私達の故郷の調味料。大豆を麹っていうカビで発酵させて作るんだ」

「大豆だべか」

 春菜の説明を、興味深そうに聞いている三つの種族。どうやら、ずいぶんと気に入ったらしい。

「そっちのスープも、大豆を発酵させて作ってるんだ」

「これもだべか」

「ラースの飯とよくあうで、気になってただよ」

「色々なものがあるんですねえ……」

「何やったら、作り方教えよか?」

 宏のその提案に、顔を輝かせるアルチェム達。材料が自給自足できるのだから、作り方を学べばいくらでも作れる。彼らの顔にはそう書いてある。

「ただ、今回みそ汁と煮物に使ったダシは、海のものから取ってるんだよね。ちょっとこのあたりの作物とかから、いいダシ取れそうなのを見つくろって改良しないと」

「ダシですか……」

「それは確かに難しいべな」

「使う材料で、がらっと味が変わっちまうだよ」

 春菜の言葉を聞き、悩ましそうな顔をする三種族。ダシで通じるあたり、そこらへんの概念はファーレーンより発達しているようだ。その後、このあたりでスープや煮物に使うダシの材料について色々教えてもらっている途中で、気になる事が出てくる。

「そう言えば、昨日普通に塩焼きが出とったんスルーしたけど、この辺って、塩はどないしてるん?」

 その疑問点を、素直に口に出して質問する宏。森の中にこれだけの数の種族が生活していて、普通に塩を使っている事が不思議だったのだ。あたりに岩塩が取れるような洞窟の類があるならまだしも、ざっと見た感じではそういうものもなさそうである。

 街道こそ通ってはいても、近場の街も森の中。ウルスをはじめとした沿岸部の街と比較すると、塩はそれほど安価なものではなく、エルフたちが持ち込むようなものでは、そんなに大量の塩と交換できるとは思えない。そう言った物価の問題や持ち運べる分量を考えると、物々交換で塩を入手しているとも思えない。故に何らかの方法で生産していると考えるのが自然だが、近くの水源が全て淡水なので、生産方法が思い付かない。

「塩は、ソルトツリーの実から取れるだよ」

「ソルトツリーは一年中花が咲く、ほとんどの時期に実をつける種類の植物なんです。なので必要な時に実をもいで、煮詰めて水分を飛ばして作ってますね。一個の実で塩の結晶が、大体百グラムぐらい取れます」

「一本あれば千人分ぐらいは賄えるでな。このあたりの集落では重宝してるだよ」

 流石異世界、妙な植物もあるらしい。因みに、ソルトツリーの塩は単独で舐めると、ちょっとフルーティな感じがする。塩は塩なので、あくまでもそんな気がすると言うレベルではあるが。

「なるほどなあ。つまり、このあたりの集落で足らへんのは、娯楽と刺激、っちゅう訳か」

「んだんだ」

 水も塩も肉も野菜もすべて揃うのであれば、わざわざ外に出ていく理由はあまりない。故に外部との接触が少なくても特に問題にはならないものの、衣食住に困らないと、どうしても娯楽や刺激と言うものが欲しくなるのが人間と言う生き物である。ましてや閉鎖された土地に住んでいて人間関係も閉じているとなると、余計に煮詰まってそういうものを求めてしまうのだ。

 しかもこのあたりの集落、それも特にエルフたちの場合、普通そう言う時に保守的になるはずの年寄りが、むしろ刺激に飢えて外に出ていきたがるのだ。村全体での刺激に対する飢えと言うのがどれほどのものか、想像するに余りある。

「そう言えば、出ていきたがるのって、年寄りが多いのよね?」

「んだんだ」

「じゃあ、何でテレスはウルスに来てたの?」

「少し前に、って言っても二年は経ってるんですけど、アランウェン様からの神託がありまして、若者を一人、ウルスに向かわせる事になりまして。誰に行かせても揉めそうだからくじ引きで決めたら、テレス姉さんの役目に決まったんです」

 アランウェンの神託、と言うものにあれこれ心当たりがある一同。ここまで来ると、神様たちの作為というものをはっきりと感じざるを得ない。

「あの、昨日聞きそびれたんですけど、皆さんとテレス姉さんとの関係は?」

「雇い主と見習いだよな?」

「せやなあ。そこに至るまではいろいろあったけど、今の関係はそんなとこや」

「雇い主、ですか?」

「せやで。指導したんは三カ月ほどやけど、とりあえずカレー粉と八級の各種ポーションとか毒消し、あとちょっとした調味料は作れるように仕込んできたから、今頃せっせとその手のもんを作っとるはずや」

 ポーション、という言葉に微妙に反応するゴヴェジョンとフォレダン。因みに、エルフの村でも、各種ポーションの呼び方はファーレーン準拠だ。理由は簡単で、この村の薬師は建国当時のファーレーンで修業を積んで帰ってきたエルフの後継者だからである。とは言え、修行を積んできた当人でも四級はやや手に余るレベルで、その技を今の薬師が全て引き継ぐ前に寿命で逝っている。そのため、この村で問題なく生産されているポーションは六級が上限である。

「ポーション作りさ仕込んだか?」

「おう。仕込んだのはこいつ、と言うよりはその弟子の澪だがな」

「澪でも、五級作るぐらいまでは普通に指導できるからなあ」

「五級だべか……」

 出てきた単語に対し、胡散臭そうな顔を見せるゴヴェジョン。どう見ても宏も澪も、そんな高度な薬を作れるほど修行を積んだ薬師には見えない。

「まあ、テレスが今何やっとるかはおいとこうや」

「そうだね。まずは、現状把握から」

 宏達がどのレベルの薬を作れるかなど、今は全く関係ない。今重要なのは、アランウェンの神殿に行くための話である。

「神殿への道って、どういう状況になってるの?」

「正面からの道は肉食の草が蔓延ってて、とても通れねえだ」

「裏道はハンターツリーとブラッドウルフがちょこちょこ居るだで、素人にはお勧めできねえべ」

「だども、裏道の方がまだ通れるだ」

「んだんだ」

 なかなかろくでもない情報が漏れてくる。正面通りの肉食の草については昨日の時点で多少は聞いていたからまだいいが、裏道の難易度の高さもなかなかのものだ。

 宏が三発で切り倒したハンターツリーだが、正面からだと蔦と枝の飽和攻撃がなかなかに厄介だ。本体はその場に根を張って動かないが、それゆえに実に巧妙に擬態し、的確に不意を突いてくる厄介な樹木である。他の属性に比べれば炎に弱いが、乾燥していない樹木がそう簡単に燃え上がらないように、斧刃に比べれば致命的な弱点と言う訳ではない。そして、それ以外に弱点と呼べるような部位も属性も存在せず、樹木ゆえにやたらとタフで防御力が高い、実に面倒な相手なのだ。少なくとも、弓矢で倒すとなると相性は最悪である。

 ブラッドウルフはその名の通り、血のように赤い毛皮を持つ巨狼だ。狼のくせにネコ科のように木々を利用した三次元攻撃を得意とし、その素早い動きと鋭い牙は並の冒険者を五秒と経たずに餌食にする。ポイズンウルフと比較すると数段上の戦闘能力を持つにもかかわらず、最低でも十匹以上、場合によっては二十を超える群れで行動する危険生物で、今回の場合何より面倒なのは、ハンターツリーと共闘する事があることだろう。

 ハンターツリーは肉食性で肉や内臓も食べるが、その主な栄養源は獲物の魔力と体力、ついで血液である。一方、ブラッドウルフは言うまでもなく肉を食べる生き物であり、血液に対してはそれほど執着しない。更に言えば、ブラッドウルフとハンターツリーが正面から戦った場合、数の暴力で大体ブラッドウルフが勝つ。それ以前に、ブラッドウルフクラスのモンスターにハンターツリーの奇襲はそう簡単には通じない。奇襲をかけた時点で、大抵ブラッドウルフの群れは射程範囲外に逃げている。

 つまり、ハンターツリーから見れば、ブラッドウルフは獲物としては非常に効率が悪いのだ。故に、彼らの狩りを手伝って、そのおこぼれを回収した方が賢い選択になるのである。

「よくそんなのがうろうろしてて、この一帯の村が大丈夫だよな」

「そら、結界ぐらい張ってあるべ」

「んだんだ。それに、数と数の勝負になればおらたちゴブリンはそう負けねえだし、フォレストジャイアントはハンターツリーにとっては天敵だべ。向こうもわざわざ喧嘩さふっかけてくるほど馬鹿じゃねえだ」

「なるほどなあ」

 ハンターツリーにとっては、重量があって頑丈かつ、斧の扱いに長けたドワーフやフォレストジャイアントは相手にしたくない生き物のトップであろう。何しろ連中ときたら、がんじがらめにしても気にせず幹まで突破し、強引かつ豪快に切り倒しにかかるのだ。ハンターツリーに限らず樹木系モンスターにとって、重量級の木こりほど怖い相手はいない。

「まあ、とりあえず裏道については考えへんとして。正面の道をちっと確認した方がええやろう」

「裏道を考えないのは、どうしてですか?」

「俺達が行くだけなら別にかまわないんだろうけど、ここら一帯にとっちゃ何の解決にもならねえからだ」

「えっ?」

「正面からの正規ルートが通れた方が、自分らも便利ええやろ?」

 予想外の言葉に驚き、目を見開いて宏達の顔を見つめる。

「そないに驚く事やあらへん。米ようさん貰って帰るんやし、ファーレーンの農業指導にも行ってもらわなあかんねんから、これぐらいの仕事はするで」

「逆に、それだとちょっともらい過ぎなのでは……」

「ええってええって。ただ、ちょっと時間かかるかもやから、その間無駄飯ぐらいが増えるんはかんべんな」

「気にせんでもええだよ。ここ三年ほどは豊作だでな。ここもおらたちの村も、十人や二十人増えたところで飢えることはねえべ」

 そんな気のいい会話のやり取りをしながら、とりあえず正面の道を通れるようにする事で方針が決まる。

「とりあえず朝ごはんも終わったし、ちょっと正面ルートの様子見にいこか」

「そうだね。話を聞いただけじゃ、いまいち状況がつかめてないし」

「師匠、除草剤は?」

「それも確認してからや。それに、そんぐらいはここの人らも試しとるやろうし」

 そんな事を言いあいながら、朝食の片付けを済ませて冒険の準備をする。何をするにも、まずは現場を知ることから。そんなプロジェクトの基本に従い、状況確認に繰り出す日本人であった。







「ちぇい! ちぇい!」

「真琴、後ろだ!」

「ああもう、鬱陶しい!!」

「師匠、春姉、火矢撃つから下がって」

 アランウェン神殿への正面ルートは、実に大変なことになっていた。

「流石にこれは増えすぎやろう!!」

 愚痴とも苦情とも付かない言葉と同時にアウトフェースを再度発動し、敵の注意をかき集める。伸びてきた蔦を左手のナイフで切り払い、ずんずん本体に近寄っては鎌で一閃。すぱすぱと小気味よく刈り取られていく不確定名肉食の草、正式名称マンイーターだが、刈り取っても刈り取ってもきりがない。

 マンイーターはその名のとおり、人間を主食とした肉食植物で、その蔦で全身を絡めとって体温を奪い、抵抗力が落ちたところで幹にある袋で丸呑みすると言ういろいろといけない妄想を抱かせそうな捕食の仕方をする。主食は人間だがその実何でも食べる蔦植物でもある。

 マンイーターの最大の弱点は、一定以上の切れ味を持つ鎌だと一撃で刈り取られてしまうことだ。マンイーターに限らず樹木系に分類されない植物系モンスターは、大抵の場合鎌が弱点である。特に蔓植物は鎌に弱く、根元をスパッと引っ掛けるだけで簡単に仕留めることができる。

「なんかっ! 今後ほとんど使わないはずのっ! 鎌の熟練度がっ! どんどん上がってるっ! 気がするよっ!」

 宏を囮にしてどんどんさくさくとマンイーターを刈り取りながら、そんな愚痴をこぼす春菜。レイピアだと相性が悪いため、宏たちが持っている予備の予備を借り受けたのだ。真琴も同じく草刈鎌で作業している。

「そろそろ焼くから、一旦下がれ!」

 達也の号令に従って宏がまとめてマンイーターを吹っ飛ばし、巻き込まれないように一気に離脱する。巻き込まれたところでダメージなど受けないが、達也の魔法が不発するのは困るのだ。

「グランドナパーム!」

 極太の業火の帯が、正確に道幅いっぱいに広がってマンイーターを焼き払う。延焼すらも起こらないほどの熱量で一気にまとめて燃やされ、五十メートルほどのマンイーターが一瞬で制圧される。魔法の性質上、進路上にいない対象には一切の影響を与えないので、こういう作業にはもってこいの魔法である。

「兄貴、魔法のクールダウンが終わったら、もう一発頼むわ」

「分かってる。邪魔が入らねえように、藪に隠れてるやつを駆除しといてくれ」

「任せといて」

 達也の指示に従い、藪の中に隠れているマンイータをさくさく刈り取っていく宏達。焼き払われた灰は、澪がせっせと回収中である。

「とは言えど、もう三回同じ作業をやっても四分の一ぐらいしか進まねえんだよなあ……」

「しかも、根っこが残っとるから、雨でも降ったら一瞬やしなあ」

「……不毛よね」

「これは、抜本的な対策を考えんとあかんレベルや」

 真琴の言葉に同意しつつ、それでもやらないよりはマシだと必死になって駆除を進める。何というか、町内会なんかでやる草引き、あれと同じ種類の不毛さを感じる。やらなければ話が進まないが、やってもやっても終わらない。終わったはしから元通りになる事も珍しくないとなると、その不毛さは筆舌に尽くしがたい。

 しかも、町内会の草引きなら少々大雑把でも特に問題はないが、こっちは一本でも残っていたら大惨事だ。根っこが残っていたから復活しました、では話にならない。

「とりあえず、後三回ナパーム撃ったら、あれこれ回収していったん引き揚げようか」

「そうね。これは多分、今日明日でどうにかなる問題じゃないし」

「それに、ちょっと気になる事があるから、付近一帯を調べたいんだ。そっちにもちょっと付き合ってもらっていい?」

「了解や。何にしてもまずは、目先の作業を進めようや」

 宏の言葉に頷き、同じ作業を続ける一同。三度目のグランドナパーム発射が終わり、後片付けを済ませた時には、太陽はすでに中天を過ぎ西へ傾き始めていた。

「春姉、気になる事って?」

 作業を一旦切りあげた帰り道、村に入ったあたりで澪がそんな質問を発する。

「周辺一帯の地脈とか瘴気の関係を調べたいんだ。長い事神殿にまともにお参りしてないんだったら、なんかすごい事になってそうな気がするんだ」

「そうだな。そこらも要調査だな」

 春菜の言葉に頷く一同。こういう事象には、大概その手の要素が噛んでいる。

「そう言えば、あれだけマンイーターがいて、栄養とか足りてるのかな?」

「あいつら、普通に光合成もしおるからなあ」

「……何その面倒くさい話……」

 肉食の植物系モンスターの面倒くささはそこだろう。餌が無ければ地面から養分を吸収すればいいじゃない、と言う感じでそもそもなぜ肉を食うと言いたくなるやり方をするのだ。なので、兵糧攻めも割と難しい。何とも言えない空気のまま、仮住まいとして借りた拠点に帰りつく。

「で、結局どうするんだ?」

「やっぱり除草剤?」

「その類で下手な事は出来へんからなあ」

 仮住まいとして用意された家で、昼食の準備をしながら再び今後の方針に話題が移る。

「師匠、やっぱり除草剤は駄目っぽい?」

「あれに効くようなん下手にまいたら、あのへん一帯不毛の地になりかねんで」

「うわぁ……」

 流石は正体不明の肉食植物、無駄に生命力や抵抗力が強い。宏の言葉に、真琴と達也がうんざりしたように声を上げる。

「最悪なんは、あいつらだけ耐性持って、他の草を一掃してまうケースやろうなあ」

「ケミカル的な方法は難しいか……」

「ちょっと無理がありそうやで」

 宏の言葉に、どことなくぐったりした様子を見せる達也。こうなってくると、最悪の場合全部焼いた後、土を掘り返して根っこを可能な限り除去するという更に不毛な作業を強いられかねない。

「で、何か考えはあるの?」

 とりあえず、オムライスのサイドメニューとして出すスープを火にかけ、それ以外の下ごしらえを終えたところで春菜が会話に混ざる。スープとは言っているが、どちらかと言うとシチューに近い代物なので少し時間がかかるのだ。

「とりあえず、一番ええんは植物の始末は植物にやらせる事ちゃうか、と思うんやわ」

「それはそれでやばくないか?」

「最善は、あいつらと相打ちになって両方枯らすか、駆逐したところで生存できんなって自滅する種類の草やな」

「やってる最中に変異を起こしたりとかは……」

「言いだしたらきりあらへん」

 無駄に力強く断言する宏に、反論の糸口を見つけられずに黙りこむ一同。そこに追い打ちをかけるように発言を続ける宏。

「そもそも生態系の話するんやったら、ハンターツリーはまだしもマンイーターは明らかに外来種や。あれがおる時点でこの辺の生態系なんざとうに狂うてる」

「……それはそうかもしれないけど……」

 どうにも釈然としない、と言う様子を見せる春菜に微妙に同意する一同。だが、ではどうするのかと言うと他に特に案がある訳でもない。植物、特に蔓草などは根っこがほんの少しでも残っているとあっさり復活する事が多い。土を取り除くのも効果的とは言い難いのだ。

「納得はいかないが、それにこだわってても話が進まねえから置いておく。草には草を、ってやり方をするのは分かったが、じゃあどんな草を使うんだ?」

「それをこれから作ろうと思うんよ」

「これからかよ。ってか、作るってなんだよ?」

「錬金術と農業のノウハウを合わせれば、種の一つや二つは余裕で作れんで」

 やっぱりこのパターンからは逃れられないらしい。エルフの里にいるというのに、結局やる事はいつもと変わらない。

「ただ、促成栽培とかその辺の技の粋をつくしても、やっぱり完成まで一週間ぐらいはかかると思うし、まず植木鉢用意せんとあかんから、その間適当にいろいろ調べといてくれへん?」

「了解。っと、そろそろ出来たかな?」

 宏の言葉に了解の返事を返し、台所に戻る春菜。丁度いい具合に火が通った根菜類に思わず笑みをこぼし、オムライスに使うチキンライスを作り始める。

「旨そうな匂いがしてるだな」

「お昼の用意をしに来たんですけど、ちょっと遅かったみたいですね」

 完成して配膳、と言うあたりでアルチェムとチェットが食材を山ほど持って顔を出す。

「こっちの飯の事は、そんなに気にしなくてもいいぞ。食材は山ほど確保してあるし、優秀な料理人もいるからな」

「確かに、ハルナさんもヒロシさんも、それにミオさんもお料理は上手ですよね」

「職人のたしなみやからな」

 思わず小一時間ほど問い詰めたくなるような理由を告げる宏に、そういうものなのかと非常に疑わしそうな視線を向けるエルフたち。普通なら職人は必ずしも料理が出来ないのだが、フェアリーテイル・クロニクルの職人プレイヤーは、皆最低でも五十以上の熟練度は持っている。たしなみと言う言葉も嘘ではない。

 なお、何故アルチェムが宏達も料理ができる事を知っているかと言うと、朝食の時に料理を手伝っていたからである。因みに小鉢は春菜の、みそ汁は澪の担当で、干物をあぶったのとゴヴェジョン達に出した卵焼きを作ったのが宏だ。

「それで、そいつはなんだべ?」

「オムライスって言う、私の国の料理だよ」

 春菜の言葉に、珍しそうにしげしげと料理を眺めるエルフ二人。洋食の代表格ともいえる料理の一つ、オムライス。実のところ、発祥は日本だ。考えてみれば当然と言えば当然で、洋食のベースとなっているヨーロッパの方の食文化では、米料理はそれほど沢山は存在しない。それに、他所の国の料理をこういう形で魔改造するのは、大抵日本人である。

 なお、今回春菜が作ったオムライスは、ライスの上にふわふわのオムレツをのせてナイフで切るタイプのものではなく、チキンライスを薄焼き卵でくるむ、一般家庭でよく作られているオムライスの原点ともいえる種類のものだ。どうにも春菜は、こちらで日本の料理を作る場合は、店で出されるような洗練されたスタイルのものよりご家庭で作られる素朴な風情のものを好む傾向がある。

「お昼まだだったら、二人の分も用意するけど?」

「物凄く魅力的なお言葉ですが、残念ながらもう済ませてしまいまして……」

「こっただ珍しくて旨そうなもんが出てくるなら、もっと我慢しとけばよかったべ」

「だよね……」

 何処となくしょんぼりした感じのエルフ二人。尖った耳が微妙に下がっているところが更にその印象を強める。

「なんだったら、作り方を教えるけど?」

「本当ですか!?」

「この里で手に入るもんで作れるんだべか!?」

「大丈夫だよ。ケチャップは私じゃなくて宏君か澪ちゃんの担当なんだけど……」

「醤油と一緒に、作り方教えるわ。っちゅうか、醤油と違うてこの村にも似たような調味料あるから、そんなに難しくはないと思うで」

 宏の言葉に、同時に顔を輝かせるアルチェムとチェット。エルフといえども食欲の前には無力らしい。

「とりあえず、早く食おうぜ」

「不毛な単純作業でおなか減ってるんだから、これ以上待たされると暴れるわよ」

「っちゅうことやから、悪いけどちょっと呼ばれてくるわ」

 そう言って、エルフたちの目の前でオムライスに舌鼓を打つ宏達。その様子を、実に恨めしそうに見つめるエルフ二人。空腹感はないと言っても、珍しいものを旨そうに食べているのを見れば、やはり食べたくなってしまうのが人間と言うものである。

「アルチェム。おらちょっと思っただが、一人前を作ってもらって、半分こすればよかったんでねえか?」

「私も今、ちょっとだけ思った……」

 そんな後悔も後の祭り。この後夕食のときに春菜に作り方を教わったアルチェムは、昼食の時の仇を取りつつ他のエルフに見せつけることに成功するのであった。
登場人物の方言は超適当です。
もっと訛らせようかと思ったけど、オリジナルの単語作ったりその解説入れたりとかまで手が回らなかった……。
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