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フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~ 作者:埴輪星人

後日談 春菜ちゃん、がんばる?

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第30話

「むう……」

 四月初頭のある日の放課後。潮見第二中学二年四組では、来週の予定と一日がかりで終えた身体測定の結果を睨みながら、澪がうめいていた。

「澪ちゃん、どうしたの?」

 珍しく一般人にもわかるほど表情を変えている澪に、首をかしげながら凛がそう問いかけた。

「春休み中に測ったばかりだから分かってたけど、縦にも横にも変わってない……」

「あはは」

 澪のうなっていた理由その一を聞き、思わず笑ってしまう凛。いかな成長期と言えど、二週間やそこらで数値に出るほどの変化はそうそうない。

 正確に言えば、無いわけではない。が、身体測定で計測する数値は、いずれも測り方と測るタイミングで結構誤差が出るものだ。特に女子の場合、中二ともなると身長の伸びは大分緩やかになってきているので、二週間程度の成長では普通に誤差に紛れてしまう。

 そして、胸囲などの数値は見る人が見ればわかる程度に育っていたとしても、もともとの数値変動がミリ単位と小さめなので、測り方によっては増えていても結果に出ないこともある。

 いずれにせよ、二週間程度で一気に変動する可能性がある数値は体重ぐらいで、それとてよほどの大病を患うか極端な大食いでもしない限り、そんなに大きくは変わらないものである。

「でも澪ちゃん、転校してきたころと比べれば、ものすごく女の子らしい体つきにはなったよね」

「ん。運動会終わったぐらいから、身長とウエスト回り以外は急に育ち始めた。でも、体格がこれだから、少々育っても小学生と変わんない……」

 145.2センチという無情な数値が書かれた身長の欄をにらみながら、凛に無念を訴える澪。普通の服だと凹凸がほとんどわからない上に、整っているがゆえに幼さがなかなか抜けない顔だちも手伝って、澪は小学校高学年に混ざると普通に区別がつかなくなる。

 今は中学の制服を着ているから問題ないが、私服だといろんな面でアウトである。醸し出す雰囲気は普通の小学生に埋没するようなものではないが、神秘的だったりある種のホラーだったり妙なエロさがあったりはしても、大人にみられる種類のものではない。

 スノーレディの巫女を小学校高学年ぐらいの子供にして、それなりに貞操観念を持たせたうえで思考を耳年増で口だけ番長なエロゲオタにすれば今の澪に近くなる、といった感じである。引っ込み思案で表情筋も含めてコミュニケーションに多大な難を抱えていなければ、妙な変態をホイホイした挙句に言いくるめられて勢いで食い散らかされていてもおかしくない。

 そのあたりの自覚にコンプレックスも手伝って、現在の澪にとってこの半端な背の低さは、比率的には貧乳と呼ばれずに済む程度には、というよりもう一歩で巨乳カテゴリーの端に引っかかるぐらいに育ったバストより、何倍も深刻な問題なのである。

「一応まだ背は伸びるはずだから、あきらめちゃだめ!」

「別にあきらめてはいない。ただ、師匠にアタックするにも、現状のままだといろいろと差し障りが……」

 澪の切実な言葉に、思わず納得する凛。残念ながら彼女自身には好きな人というのはいないが、年頃の乙女にとって恋というのがどれほど大切なものかはよく分かる。

 が、それとは別の問題で、今の澪が意中の相手にアタックするにはいろいろ難があるのも事実だ。

 一番大きな問題は、本気の恋をしている相手が今年大学に進学した男であり、澪の実年齢的にお付き合いに持ち込めてしまうと間違いなくロリコン呼ばわりされてしまうこと。

 この点に関してはもう、時間が解決してくれるのを待つしかない。とりあえず高校を卒業してしまえば、五歳やそこらの年齢差は余りうるさく言われなくなってくるので、それまで持久戦に走るしかない。

 そこで、この年齢差の問題をより深刻にしてしまっているのが、澪の外見が実年齢に輪をかけて幼く見える事だろう。服を脱げば相応に大人の体つきになっているというのに、服を着ているとその大人になってきている体つきが奇麗に覆い隠されて、一見すると妙にエロくて背徳的な雰囲気を持つ小学生にしか見えないのだ。

 正直、今の澪と男女一対一でお出かけなどした日には高確率で職務質問待ったなし、場合によっては問答無用で手が後ろに回りかねない。

「とりあえず、そのあたりは時間が解決してくるのを待つしかない感じだと思うんだ、あたし」

「……ん」

「それよりむしろ、あたし的には来週の体育の時間の体力テストがちょっと憂鬱。あんまり運動神経に自信ないのよね~」

「……ボク的にも、来週のそれはちょっと問題」

「澪ちゃん、ずっと入院してたからね~」

 澪の懸念を自身と同じ種類のものだと思ってか、なんとなく同志を見るような眼で澪を慰める凛。

 実際のところ、澪が心配しているのは加減が分からなくてやりすぎることの方なのは言うまでもない。が、深雪や凛と一緒に行動しているときは澪が激しい動きをする機会などなかったため、長く寝たきりだったというその経歴やずっと体育は見学だった事もあって、凛はすっかり澪が運動できない子供だと思っているのだ。

「……とりあえず、春姉達に相談しよう……」

「今から相談して、何とかなるものなの?」

「……むう」

 凛の指摘にうなる澪。低すぎるのを底上げするにしろ高すぎるのをごまかすにしろ、今からでは確かに時間が短すぎる。

「……でも、相談しないよりまし」

「まあ、そうだろうね」

 一見無表情ながらも憂いに満ちた様子に見える澪に苦笑しながら、凛がとりあえず同意する。もはや半年以上も一緒に行動していれば、澪の外見詐欺には引っかからない。

 が、クラス替えの直後だったこともあり、周囲のクラスメイト達は澪のあまりに憂いに満ちた様子に飲まれ、いろいろ心配そうな視線を向けてきている。

「あと、あたし達のサイズだとよっぽど激しく動かない限りはそこまで気にしなくてもいいと思うけど、一応体育の時間はそれ用のブラ用意しておいた方がいいんじゃないかな?」

「……そこらへんも相談する」

「うん。まあ、あたしが気にしなくても、藤堂先輩が注意してくれるとは思うけど」

「下着関連は、深雪姉はあんまりあてにならない。凛だってそのあたりはなんとなく分かってるはず」

「まあね。でも、澪ちゃん。せっかく気を使っていい感じにチープなの用意しても、あんまり意味なかった感じだったよ?」

「言わないで……」

 周囲の男子生徒に聞こえないように、声を潜めて下着関係の話をするCカップ同盟こと凛と澪。デザイン的には味もそっけもない安っぽい、生地だけはちゃんとしたものを使った割と安めのノーブランドの下着を身に着けて、今日の身体測定に挑んだ澪。

 残念ながら容姿や雰囲気が邪魔をして、そんな下着でも高級品に見えてしまったため、一生懸命頑張って無難なものを選んだ努力は全く意味がなかった。

 何より、幼く見えるのに体つきがどこからどう見ても大人の女性のそれになってきていることは、見たものに多大なインパクトを与えてしまっている。シンプルで無難な味もそっけもないブラは、その象徴としてその印象を増幅しまくり、無駄にと言いたくなる次元で同じ場にいた女たちに刻み込んでいる。

 むしろ、素直にエンジェルメロディの下着で身体測定に挑んだ方がコスト的にましだったのではないか、というレベルである。

「……とりあえず、グダグダ言ってても意味ないし、そろそろ帰ろ」

「ん」

 これ以上は話題が危険な方向にずれると判断し、とっとと帰宅する凛と澪。

 まだ新学期が始まったばかりで肌寒い日も多かったため、今日の様子を踏まえるなら今のうちから対策を考えるべきなのは体力テストだけではない、という事に結局最後まで気がつかない凛と澪であった。







「師匠、春姉、体力テスト、どうしよう……」

「あ~、そういえば、そろそろそういう季節だよね~……」

「大学やと健康診断だけやから、すっかり忘れとったなあ……」

 その日の夕方。普段着に着替えてすぐに藤堂家へ向かった澪は、宏達が帰ってくるなりすぐさま相談事を切り出していた。

「ミスったよね。これ、去年のうちから考えておかなきゃダメだったよ……」

「せやなあ。自分らも苦労しとったのに、澪のことに全く気ぃ付いてなかったわ……」

「去年は澪ちゃん、体育は全部見学だったから完全に意識の外だったよね……」

「なんかこう、ものすごい申し訳ない感じやわ……」

 澪の相談事に、心底申し訳なさそうに頭を下げる宏と春菜。その態度に、澪の方が慌ててしまう。

「師匠、春姉。そんな深刻な話じゃないから」

「まあ、身体測定とか健康診断に比べたら、深刻ではないわよね」

「ん。どう加減すればいいかとか、どれぐらい加減すればいいかとかが分かればそれで十分、なはず」

 余りに申し訳なさそうにする宏と春菜に、見かねて澪と真琴が助け舟を出す。その言葉を聞いた宏と春菜が、少々難しそうな顔で考え込む。

「……体育の授業はまだしも、体力テストの場合は単に加減するだけやとあかんと思うわ」

「そうなの?」

「真面目にそれなり以上に本気でやった、っちゅう風に見えんとちょっとまずいやろ」

「ああ、なるほどね」

 単なる加減では無理、という言葉に疑問を持った真琴が、宏の補足説明に納得する。テストなのだから、少なくとも手を抜いているように見えるとまずい。

「ついでに言うと、澪にその辺の演技は無理やと思うんやけど、どう?」

「そもそも、ボクに演技というものを求めないで」

「そうねえ。あんまりこういうこと言っちゃうとあれなんだけど、澪ってまだまだ表情筋死んでるものねえ」

 宏の確認に、当人である澪だけでなく真琴まで同意する。実際問題、普段のコミュニケーションですら難があるのに、大多数をだますために演技をする、となるとまず不可能であろう。

「多分だけど、何らかの形で運動能力そのものを抑えた方がいいよね」

「せやろうなあ」

「でも、普段から押さえちゃうと問題があるから、何か道具を使って事情を知らない人がいる前で運動するときだけ何とかできるようにする感じかな?」

「そんなとこやろうな。澪の場合、普段つけてなくて運動の時だけつけても不自然やないもの、っちゅうと何があるやろ?」

「髪まとめるためのゴムとかどうかな? 私もそうだけど、澪ちゃんぐらい長いと、運動するときは髪まとめとかないと凄く邪魔になるし」

 春菜の提案にうなずき、澪の方に視線を向ける宏。宏の視線を受け、同じようにうなずく澪。話がまとまったところで、具体的な作業に移ることにする。

「ほな、次はどういうやり方で抑えるかと、どの程度抑えるかやけど……」

「やり方って、どんな方法があるの? あと、あんたたちの方も、同じやり方では無理だったの?」

「まず先に、僕とか春菜さんはできんかったんか、っちゅう方を説明すると、や。もうすでに封印とかリミッターとかガチガチにかけて今の状態やから、これ以上はちょっと無理やな」

「なるほどね。で、候補に挙がってる方法は、どんなものがあるの?」

「単純に衰弱系の呪いをかける、リミッターで上限超えんように抑える、エネルギーロスを大きくしてアクセル全開でも空回りするようにしてまう、原理不明のデバフで身体能力を低下させてまう、疑似的な超重力で常に全開でないと動けんようにする、あたりやな」

「とりあえず、呪いと超重力はあり得ないわね。呪いの方はそもそも呪いって時点でアウトだし、超重力は不必要に体鍛えられちゃそうだしね」

 真琴のダメ出しに同調し、必死になってうなずく澪。いくら何でも呪われるのは勘弁願いたいところだし、超重力に至ってはどこの超戦士の特訓方法なのかと小一時間ほど問い詰めたい。

「というか、宏君。最初から本命は決まってるんでしょ?」

「まあなあ」

 苦笑しながらの春菜の突っ込みに、明後日の方向へやや視線をそらしつつ頷く宏。それを聞いて、春菜が話を進める。

「で、本命はどれ?」

「エネルギーロスを大きくする方式やな。リミッターやと体力消耗せんから真面目にやっとるかどうか疑われそうやし、デバフは調整が難しい上に澪が耐性もってしもて無意識にキャンセルしてまいかねへんし」

「あ、確かに」

 宏の本命とその理由を聞き、春菜が納得する。やはり、普段通りにやって誤魔化せるに越したことはない。

「で、具体的にはどうやるの?」

「筋肉に入るエネルギーが一定以上になったら奪って、入力に対する出力を思いっきり絞ったるようにするわ」

「奪ったエネルギーはどうするの?」

「澪の感覚の方を調整するんに使うわ。そっちもいじらんと、ストレスたまりおるし」

 春菜の質問に答え、それでいいかと澪に確認する宏。澪が頷いたところで、道具を作る前にやっておくべきことを言う。

「ほな、道具作る前に、今の澪がどんな感じか確認して、どの程度まで落とすか決めやんとな」

「そうだね。澪ちゃんはどの程度にしたい?」

「どの程度って?」

 宏と春菜に振られ、意図するところを澪が聞き返す。

「普通の人間って言ってもいろいろあるから、学校でもトップレベルにするか、五十メートル走を十二秒オーバーとかそういうレベルまで落としちゃうか、ってところを調整しないとだめなんだよね」

「……平均的なところ、じゃダメ?」

「そうだね。じゃあ、とりあえずそこを狙おう。基準としては握力と五十メートル走、垂直飛びあたりを使えばいいかな?」

「反復横飛びも入れとこか。そのあたりのデータは、厚生労働省か文部科学省のページでも調べれば見つかるか?」

 方針が決まったところで、サクサクとデータを集め始める宏。それを見ながら、この後どうするかを話し合う春菜達。

「とりあえず、髪まとめるゴム、用意しよっか。二中はそんなにうるさくないけど、無難なところで普通に黒でいいかな?」

「そうね。澪の髪はめったにいないぐらい綺麗な黒だし、下手な色だと変に目立ちそうだから、無難にいきましょう」

「ん。特にこだわりとかないから、それでいい」

 意見の一致を見たところで、自分の部屋から髪留め用のゴムを取ってくる春菜。持ってきたゴムは高級品という訳ではないが、それほど安物でもない感じのものだった。

 ちなみに、澪は日本ではこの手の髪型をいじるための小物を一切持っていない。フェアクロ世界のものはうかつに持ち込めず、また去年一年は基本的に必要がなかったため、今の今まで一度も使わずに生活していたのである。

「春姉、別に百均のでも良かったけど……」

「そもそもうちにはあんまり百均の商品がない、っていうのもあるんだけど、百均のに宏君があれこれ手を入れて高機能化するの、なんかいろんな意味で負けたような気分になって……」

 春菜の言い分に、なんとなく納得してしまう澪。確かに、間に合わせでどうにかせざるを得ないときならともかく、そうでなければちゃんとしたものを使いたい、というのはよく分かる。

「まあ、そういう訳だから、私のお古で悪いんだけどこれ使ってもらっていいかな?」

「お古、っていう割には奇麗というか新しい感じよね、これ」

「買ったのが去年の体育祭終わった後だったから、そんなに使ってないのは使ってないよ。あの後の体育って十回はなかったし、一番使ったのは文化祭の準備の時だし」

「それボクが貰っちゃうと、春姉が困らない?」

「二個組の奴の片割れだし、大学は体育は必修じゃないからそんなに使う機会ないし、大丈夫だよ。大したものでもないし、わざわざ今から新しいのを買いに行くのはちょっと忙しいから、遠慮せずに貰っちゃって」

 ほとんど新品と変わらないゴムを、ちょっと遠慮がちに受け取る澪。大した値段ではないのは事実だが、それでもこの手のまだ新しいものをもらうのはちょっと気が引けるのである。

 向こうにいたころはこの手のものの出所がほぼ宏の自作品であり、生計を一にしていたこともあって遠慮の必要は感じなかったのだが、こちらだとどれほど親しくても生活する上では完全に他人だ。

 親元で暮らすようになり、凛のような家も小遣いもごく普通の中学生と一緒に遊ぶ機会も増えたことで、自然と澪もそのあたりの遠慮や慎みを身に着けていたのだ。

「じゃあ、宏君に改造してもらう前に、ちょっと今の時点での澪ちゃんの運動能力を確認しなきゃ、なんだけど……」

「ここのトレーニングルームだと、さすがにちょっと狭いわよね」

「そうだね。やっぱり、礼宮邸の体育館を借りるしかないかなあ……」

「ねえ、春姉。神の城じゃ駄目なの?」

「条件を揃える必要があるから、地球上でテストしたほうが無難だと思うの。そもそも、神の城の場合、あそこの環境が澪ちゃんの体にどういう影響があるかよく分かんないし」

 春菜の説明に、いろいろ納得する澪。実際、少なくとも魔力周りは大幅に条件が違うのだから、他に違う点があってもおかしくない。

 澪が納得したところで、春菜が礼宮邸に電話をかける。

「もしもし、春菜です。……はい、いつもお世話になってます。お世話になりっぱなしで恐縮なんですが、少しお願いがありまして。ちょっと澪ちゃんの体力テストしたいので、体育館をお借りできないかな、と思いまして。……あ、そうですか。ありがとうございます。それでは、今からそちらに向かいますね」

 礼宮邸に電話をかけ、あっさり使用許可を取る春菜。いつもの事ではあるが、礼宮邸の使用人たちは本家に出入りする人たちの要求に甘い。

 ちなみに礼宮邸の体育館は、週に一回の使用人たちの合同朝礼のほか、業務時間外の部活や催し物などにも使われている。女子バスケなどは隠れた強豪として密かに名前が売れていたりするのはここだけの話である。

 が、基本的に業務時間外なので、春菜達が借りようとするような時間は、大会前でもない限りまず使う予定がない。

「今週は使う予定がないから好きなだけ使っていいって。まだ時間あるし、この後特に予定もないから、今から向こう行ってテストしよう」

「了解。ついでに、あたし達もちょっと体力テストやっとく?」

「真琴さんはやっておいた方がいいかも。私と宏君は、研修のたびにいろいろやってるからいいかな」

「じゃあ、ちょっとジャージ取ってくるわ。澪は着替え、持ってきてる?」

「持ってきてない。取りに寄ってもらっていい?」

「オッケー」

 持つべきものは偉大なコネ、とばかりに、またしても礼宮の力を借りて問題解決を図る春菜達。もはや本家の人たちに完全に目をつけられていることもあり、当初の遠慮や逃げの姿勢など完全に捨て去っている一同であった。







「よっ。やってるな」

「あれ? 達也さん?」

 四十分後。礼宮邸の体育館。機材を設置し、着替えと準備運動を終え、まずは垂直飛びから始めようと澪が所定の位置についたところで、体育館にそこそこ大きな紙袋を持った達也が顔を出してきた。

「あんた、仕事はどうしたのよ?」

「エンジェルメロディの関連だから、こっちに来る必要があったんだよ。エンジェルメロディの本社の方に行ったら、こっちにたらい回しされてちっと慌てたぞ」

「こっちの方が、機密とか誤魔化しやすいもんね」

「そういう事らしいな。で、澪にって預かってきたものがあるんだが、後にした方がいいな」

「そうだね。で、何を預かってきたの?」

「知らん。嫌な予感がしたから聞いてない」

 達也がこの場にいる理由を聞き、いろいろ察したところでとりあえず話を終える真琴と春菜。話が終わったと判断し、垂直飛びを始めようとする澪。

 そこに達也が待ったをかける。

「なあ、澪。服の裾、入れておいた方がいいんじゃないか?」

「そうしたいけど、割と長いから入りきらない」

「そうか」

 服の裾を短パンの中に押し込んでいない澪に嫌な予感を覚えた達也に対し、物理的に厳しい事を告げる澪。

 儚い希望になりつつはあるが、澪の制服や体操服は成長を見越して大きめのものになっている。そのため、短パンがほぼ全て隠れる程度には裾が余っているのだ。

 ついでに言えば、胸と尻以外の部分はかなり細い澪の場合、身長に合わせたサイズでも体操服の隙間は結構大きい。

 現在着ている服がワンサイズ大きいと言っても、襟首や袖口が絞られ気味な構造上外から肌が見える訳ではないが、だぶつき具合から明らかに体に合っていないのが見て取れてしまうのである。

「……あの体操服がちょうどよくなる日って、来るのかね?」

「……多分、中学の間にっていうのは厳しいんじゃないかなあ」

「案外、胸だけはピッタリ、とかになるかもしれないわよ。今だって、ひそかに意外と胸があるのだけは多少分かるわけだし」

 短パンに入らない程度にはサイズが大きい体操服を着ている澪の姿を見て、そんな話をする達也、春菜、真琴の三人。その間に記録ボードの位置調整を終え、今にもジャンプを始めようとする澪。

 ちなみに宏は、澪の体内でエネルギーがどう動くかを観察するため、記録係兼務で比較的近い場所に立っている。

 その結果、色々と予測が甘かった宏に悲劇が襲い掛かる。

「ていっ」

 気の抜けそうな気合の声と同時に、澪が思いっきり飛び上がる。約二秒後、潮見第二中学の体育館より高い位置にある、というより市営の総合体育館並みに高い天井に、軽々と澪の手が届いてしまう。

 大量のスキルと神の食材をふんだんに使った料理により強化されつくした肉体は、約四十キロ(服その他を含む)の体重を軽々と天井まで持ち上げていたのだ。

 二秒かかったのは無意識に加減していたからだろう。むしろ、本気でやっていたら間違いなく天井に衝突していた。

 が、問題はここからだ。天井に手をついてしまった、という事は、後は重力に引かれ物理法則に忠実に落ちていくしかない。

 落下自体は問題ない。この程度の高さ、フェアクロ世界では何度も飛び降りている。問題は、短パンに押し込まれていない服の裾である。

 今回ほどの隙間があると、受ける空気抵抗も相当なものだ。モーションの都合で両腕を上に上げてしまっていたのも災いし、運動エネルギーと空気抵抗をもろに受けた体操服は、宏が観察している前で、なすすべもなく全力でわきの下ぐらいまで一気にめくれ上がってしまったのだ。

「わわっ!?」

 いきなり視界がふさがれ、珍しく可愛らしい声を上げて慌てる澪。焦って反射的に振り払おうとした結果、何の偶然か宏の視線の先に正面が来るように体が回転してしまう。

「ひぃ!?」

 想定していなかったタイミングで澪の下着、それも空気抵抗により押し上げられ微妙にずれかかっているブラという状況的には最悪に近いものを目撃する羽目になった宏が、反射的に悲鳴を上げて頭を抱えてうずくまる。

 悪い時には悪い事が重なるもので、現在澪が身に着けているブラは、サイズこそあってはいるがフィットしているとはいいがたい、しかも乳房を固定するという面では機能が弱めのものである。

 さらに、安物なのに生地だけはいいものを使っているしわ寄せか、それとも澪の付け方がいい加減だったか、ホックが半分外れた状態になっていたのも、状況の悪化に拍車をかけている。

「し、師匠!?」

 宏の悲鳴を聞いた澪が、自身の状態を把握して焦る。直後に着地し、大慌てで身づくろいをする。

 どうにも胸が育ち始めてから、まるでアルチェムでも乗り移ったかのように宏に対してエロトラブルを発生させる澪。もはや、完全に地球でのエロ系サービス担当になってしまっている。

 見られることは気にしないどころか、宏に問題がないのであればむしろ見せつけて触れさせ揉みしだかせてでも迫る覚悟を決めているとはいえ、こういう形でばかり見られたり押し当てたりする羽目になるのは流石に泣きたくなってくる。

 第一、見せるにしてもちゃんと準備してから最高の状態で見せたい。せめて、勝負下着ぐらいはちゃんとつけている時に見てもらいたい。

 パニックになった思考でそんな益体もない事を考えつつ、宏に気取られぬようホックを付け直し、おかしなずれ方をしたブラをごそごそと修正する。春菜のように固定していなければ派手に揺れる、というようなことはないにしても、市販故にそこまできっちりフィットしていない下着では普通に揺れてずれてしまうようだ。

 そんな澪の様子を見ていた真琴が、自分の平たい胸をペタペタと触って、遠い目をしながらため息をついていたのは触れてはいけない事実である。

「……とりあえず、先に三分の一ぐらいまで抑えてもらってからテストしたほうがいいかもしれないね」

「ん。後、春姉……」

「あ~、うん。でも、今日は厳しいかな?」

 何やら言いずらそうに口をはさんできた澪の言いたいことを察し、ちょっと困ったように春菜が答える。今までは自作だったりオーダーメイドだったりだったこともあり、ちゃんと固定するのが大前提となっていたので、この手の問題は一切出てなかったのだ。

「……てか、未来さんいたのよね?」

「おう。さっきまで打ち合わせしてたぞ?」

「……なんかさ、このタイミングで届け物って、ピンとくるものがあるんだけど……」

「俺は何も気がついてない、気がついてないぞ……」

 真琴の言わんとしていることを察し、早い段階で逃げを打つ達也。

 赤子の頃から知っている従妹なので、いくら妙な色気とエロスを無駄に振りまくようになったといった所で、今更むらむらしたりといったことはない。しないが、むしろだからこそ、その手の性的なことに関してはどうしても、普通より気を使わざるを得ないのだ。

 達也自身に一切責任のない話ではあっても、デリカシーという面では気づかなかったふりをして全力で逃げるのが、変態とつかない正しい意味での紳士というものだろう。

「えっと、そういう訳だから宏君、先に髪ゴムの改造、お願いしていい?」

「せ、せやな……」

 いろいろ困り果てた感じで頼んでくる春菜に、上ずった声で了承を告げる宏。不可抗力もいいところではあるが、宏の精神ダメージに関しては何ら違いはない。

「ちょっと更衣室の方でどうにかできないか考えてくるから、その間に真琴さんの体力テストを進めてもらっていいかな?」

「そうね。にしても、さすがにいろいろ不安になってきたわ……」

「こりゃ、俺もやっといた方がいいな……」

 春菜に言われ、ちゃんと運動能力を確認することを決める真琴と達也。とりあえず軽く垂直飛びを行い、結果を確認する。

「……こりゃやべえな……」

「……あたしは予想がついてたけど、達也でもあれってのはちょっと危険よね……」

 予想通り澪同様かなり加減してのジャンプで軽々天井に手が届いてしまった真琴と、全力でジャンプすれば天井に手が届いてかなり勢いが余るぐらいの達也。その結果に思わず遠い目をする宏、達也、真琴の三人。

 特に、後衛で肉体能力に補正がかかるスキルが少なく、向こうではその絡みの鍛錬もほとんどしていない達也がオリンピックを荒らしまわれそうな身体能力を得ている点がやばい。

「兄貴と真琴さんも、なんか考えた方がええか?」

「微妙なところだな。正直、リミッターかかってなきゃヤバい、って状況になるかっていうと……」

「そうよねえ。実際、今まで困ってなかったし」

「あるとすれば、ブレーキとアクセル間違えた車が突っ込んできたとか、工事中の機材が崩れたとか、渡ってる最中に老朽化した橋が落ちたとか、その類だろうしなあ」

「その類、大部分がリミッター関係ないわよね」

「あとは、道路に飛び出して轢かれそうになった子供を救助する、とかだが、そもそもそういう状況でとっさに体が動くか、っていうとなあ……」

 宏に問われ、難しい顔で考え込んでそう答える達也と真琴。基本的に治安が良く銃撃戦などに巻き込まれる可能性が低い日本で暮らしていると、スポーツでもしない限り運動神経や反射神経が問われる状況などこの程度しかないのだ。

「まあ、澪みたいにしょっちゅう人前で体を動かす羽目になるわけでもないし、ある程度の限界だけ把握しとけばいいんじゃねえか?」

「そうね」

 よくよく考えれば今更の話だ、という事もあり、達也の意見に賛成する真琴。そもそもの話、澪の事と同じでこちらに帰ってきてすぐにやっておくべき種類の確認であり、対策なのだ。

「にしても、宏も春菜も、よくもまあボロ出さなかったわよね」

「高三にもなると体育の授業は割と形だけやから、よっぽどストレスため込んどるとかでない限りみんなほどほどに手ぇ抜いとるからなあ。それに、去年はストーカー先輩のあれこれとかで、体育の授業自体少なかったし」

「あ~、受験生だから、で通じる訳ね……」

「そんな感じやな。二年まではともかく三年になってからは、あからさまにサボってへん限りは、先生もうるさい事言わんかったし。体育祭も、僕出た競技はパン食い競争やからそんなゼエゼエ言うほどがっつり走る種目でもなかったし」

「春菜はリレーのアンカーだっけ?」

「そうそう。ちなみに春菜さんの場合、外部に魔力が漏れん程度にスロー系の魔法かけて調整しとったわ。あのあたりの運動周りに関するエネルギー運用の器用さは、僕にゃちょっと真似できんなあ」

 宏から教えられた春菜のひどく器用なやり方に、色々感心する達也と真琴。そのレベルになると、達也や真琴にはまねができない。

「とりあえず、とっとと確認済ませてまおや。今回の事で、ウルスにおる連中の事もちょっと気になってもうたし、その事も相談したいし」

「了解。記録お願いね」

 宏に促され、体力測定に戻る真琴と達也。室内で問題にならないぎりぎりまで全力を絞り、とても世の中には出せない記録の数々を打ち立てたところで、体にフィットしたスポーツブラとちょうどいいサイズの体操服に着替えた澪が春菜と一緒に戻ってくる。

「……一応予想はつくけど、その体操服とか、出所は?」

「ん、未来さんのお届け物の中身」

「なんかもう、いろいろ見透かされてた感じだよ……」

「ああ、やっぱりね……」

「ちなみに、袋にメモが入っててね。この後夕食ご馳走になって、私と澪ちゃんはそのまま未来さんのお仕事のお手伝いが確定だよ。後、宏君も作業服とか作務衣とか試着して感想が欲しいって言ってたよ」

 ある程度予想した通りの答えの後、春菜が告げてきた伝言に宏が顔をしかめる。

「宏君に関しては、本当にただただ着た感じの感想が聞きたいだけみたいだよ。一応資料用に写真は撮影するみたいだけど、カタログに載せたりはしないって」

「……まあ、ロハで場所借りて飯もご馳走になるんやから、それぐらいは協力せなしゃあないか」

「ごめんね」

「タダより高い物はない、っちゅうこっちゃな。まあ、どっちにしても、場所の問題は誰かに世話にならんとあかんかったから、その程度のコストで済んでよかったっちゅうことにしとくわ」

 他の事も含めて色々な事で相当世話になっている自覚もあるため、どうにも断るという選択を取れない宏。地球で生活していると、神の権能など大して役に立たないことが身にしみてわかる。

 これでは、信仰心を糧にしているタイプの神々が、どんどん力を失うのも仕方がない。

「ほな、作業服は覚悟しとくとして、澪の測定、続きやろか。ゴムの改造しといたから、それつけて垂直飛びからやな」

「ん」

 宏からゴムを受け取りながら、一つうなずく澪。手早く髪をポニーテールにまとめると、垂直飛びに再挑戦する。

「てい」

「……半分やと全然絞り足らんなあ。とりあえず、ざっとあと半分ぐらいか?」

 先ほどと違い、かなり全力に近いジャンプで天井に手を届かせる澪。今度は服がちゃんと体にフィットしており、胸もきっちり固定されているので、めくり上がったり無駄に派手に揺れたりといったトラブルは起こらない。

「……本当に、安物買いの銭失いとはよく言ったものね……」

「……まあ、体操服に関しては、成長を見越しすぎたってのが原因ではあるが……」

 地道に調整してはテストを繰り返す宏と澪を見ながら、そんな感想を漏らす達也と真琴。今回に関しては成長期の子供の服、それも第二次性徴が急激に進んでいる女の子のものという、判断が難しくてコストもかかるものだったのである程度仕方がないとはいえ、まさしく諺のとおりになってしまった感じである。

「で、さっきヒロたちとも話してたんだが、ウルスにいるチビ達も、いっぺんこのあたりのテストはしといた方がいいんじゃねえか?」

「あ~、そうだね。ついでにエルちゃんたち巫女さんチームも、キチンと体力関係は確認しておいた方がいいよね」

「エルに関しては、神社の石段上がり切る前にダウンしてた、って話だから、澪とは逆の意味でちゃんと把握しといた方がいいわよね」

「一応エルちゃんの名誉のために言っておくと、大潮神社の石段でばててた原因は、大部分があの日履いてた靴と石段自体の構造の問題だからね。治療が必要じゃない程度とはいっても、途中で足首とふくらはぎのあたり痛めてたから、そのせいで余分に体力消費してた感じだし」

 エアリスの体力について、春菜が一応のフォローをしておく。

 実際のところ、エアリスは別段、エピソードの端々から感じるほど極端に体力で劣るわけではない。ただただ単純に絶望的なレベルで運動音痴であり、農作業と神事及びその修行関連以外では、とかくスタミナの浪費が激しいだけなのだ。

 内容的には逆ではあるが、長年農家をやってきている老人が平気で行うような農作業を、一流のアスリートが最後までやる前に途中で根を上げる事が多々あるのと同じ話である。

 もっとも、エアリスの場合、そのあたりやたら極端なことになっていることについては、否定の余地は一切ないが。

「何にしても、今年はウルスで運動会的なイベントやる事になりそうだし、企画段階から巻き込まれるの分かってる以上はうちの工房とその周りの子供たちの体力テストはしとかなきゃだよね、実際」

「そうだな。まあ、そのあたりの段取りは任せるわ。決まったら俺も手伝うから呼んでくれ」

「了解。っと、そろそろ澪ちゃんの調整終わるみたいだし、記録取る手伝いしてくるよ」

「おう」

 何度目かの垂直飛びで宏と澪がうなずいたのを見て、体力テストの手伝いに移る春菜。

 春菜の手伝いもあり、どんどんと進んでいく澪の体力テスト。

「……女子中学生の平均って、こんなにどんくさいのかしら?」

「最近の事は分かんねえが、元々こんなもんなんじゃねえのか?」

「そうなのかしらねえ……」

 常日頃と比べると非常につつましい澪のデータに、思わずそんな感想が漏れる真琴と達也。二人がそんな感想を持ってしまうぐらいには、平均的な運動能力で動く澪は大人しく見えるのだ。

「……ねえ、師匠。もうちょっとよくしてもいいかも」

 真琴と達也の感想に関しては、本人も同様の事を感じていたようで、若干不満げにそんな要望を口にする澪。それを聞いた宏が、眉をひそめながら正直な意見を言う。

「別にその程度の調整はいくらでもできるけどなあ……。難病から立ち直ったっちゅう建前考えたら、これでも体力ありすぎちゃうかとか言われかねんで?」

「そうなんだけど、どうせボクの場合、バトミントンとかですごいポンコツなことになるの目に見えてるから、誤差の範囲だと思う」

「確かに澪ちゃん、ボール投げる以上のレベルで器具使う運動は苦手だもんね」

 春菜の言葉に、何度も首を縦に振る澪。歩けるようになってすぐの頃、乗れないと不便だからと必死の思いで自転車の練習をした時の事を思い出すと、バレーボールだのテニスだのバトミントンだのがまともにできるとは到底思えない。

 それを踏まえると、若干運動神経を盛るぐらいは許されるのではないか、などと考えてしまうのだ。

 そもそも、盛ると言うと聞こえは悪いが、その実態は本来持っている運動能力を抑え込んでいるのだから、ずるをしている訳でもない。

「春菜さんは、どない思う?」

「別にいいんじゃないかな。裏でまだリハビリ続けてた、とか、言い訳はいくらでもできるわけだし」

「せやなあ。ほな、ちょっと運動が得意、ぐらいに合わせるか」

 春菜の意見を聞き、澪の願いをかなえることにする宏。精密ドライバーを使って百分の一度ボリュームを動かす、という感じの非常に微妙で繊細な調整をする。

「ほな、体力回復したらもっぺんテストやな。多分、全体的に一割ぐらい記録伸びるはずや」

 宏の言葉にうなずき、再度各種項目をチェックする澪。今回の道具では体力の回復速度までは抑えられないので、記録を見て相談するぐらいの時間で大よそ疲労が抜けてしまうのだ。

 次々にチェックし、おおよそ宏が言った通りの結果が出て何となく満足する澪。本来の能力からすれば誤差の範囲だが、それでも平均以上はあると言い切れるのは微妙に嬉しいようだ。

「落ち着くところに落ち着いたみたいだし、俺はそろそろ帰るわ」

「あ、うん。お疲れさま。というか、こんなに長くここで足止めされちゃって大丈夫?」

「未来さんの指示、って事になってるからな。実態がどうであれ、誰も文句は言わないさ」

 春菜の心配事を笑い飛ばす達也。礼宮の創業家と付き合う人材に関しては、創業家のわがままに振り回されるのも仕事のうちだという扱いが普通である。

 そもそも、綾乃や未来が気に入るような人材は、こういう状況で三十分や一時間サボっても、サボったうちに入らないほどの仕事をこなしている。その実績があるだけに、割と強気だ。

「とりあえず、向こうで体力テストやる日程が決まったら連絡するよ」

「おう」

 そう言って、体育館を出ていく達也。今日の夕食に関しては達也も誘われはしたが、届け物を預かった際にちゃんと断っているので問題ない。

「……で、今思ったんだけどさ。今回の問題、澪の場合その髪ゴムだけじゃ足りないんじゃないかしら?」

「……どうして?」

「プール、どうするの?」

「……ああ!」

 真琴に指摘され、思わず声を上げる春菜。身体能力がダイレクトに噛み、しかも水泳スキルが効果を発揮してしまう、という点において、普通の体育より大問題だ。

「とりあえず、今日これ以上なんかするんは勘弁してや……」

「そうだね。というか、水着もプールも準備できてないから、もうしばらくしてからになるかな?」

「ん。そもそも、学校指定のスクール水着、去年の夏休み終わりに買ったまま、まだ梱包も解いてない」

 真琴の気づきに対し、準備不足を理由に対処を先送りにする宏達。先送りにした結果、宏がえらい目に合うことなるのだが、この時点ではさすがに予測できない一同であった。
ちょうど澪が肉体的にそういう変化が続く時期に入ってしまったため、しばらくこの手の胸のサイズが増えた服が合わなくなったとかそのたぐいのエロネタおよびすれすれのネタが続きます。

あと、その絡みで、どうにも春菜さんじゃなくて澪が本人もそのつもりもないのに明後日の方向で頑張っちゃう感じが続きそうな感じです。

というか、予想はしてたけど、澪の体、胸のサイズだけが順調に育ちすぎてて……
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