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フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~ 作者:埴輪星人

後日談 春菜ちゃん、がんばる?

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第28話

「なんだかお花見も久しぶりねえ」

「向こうじゃ結局、桜は見つけられなかったからなあ」

「さくらんぼはいろいろ見つけたけど、全部お花見に向かない種類だったんだよね」

「半分ぐらいはノンアクティブなモンスターやったしなあ」

 四月一日。新しい年度の始まりで、春菜の誕生日。宏達は、みんな揃ってお花見に来ていた。

 実はこの年、四月一日は月曜日だ。宏達学生組はともかく、達也と詩織が真昼間から花見に来ているのは、普通なら仕事はどうしたと言われる行動であろう。

 だが、現在達也は礼宮商事に出向しており、その礼宮商事は毎年四月一日は入社式の後本社行事としてお花見が入っている。達也と詩織は取引先枠でこの行事に参加する、という建前で、有休を消費せずにここにきているのだ。

 礼宮庭園内の関係者以外立ち入り禁止区域に、必ず四月一日から三日までの間満開になるという都合のいい桜並木が存在しているのも、この伝統行事を定着させてしまう原因となっている。

 礼宮商事の本社自体は、研究所も含めてもせいぜい三百人程度の規模でしかない。こういったもろもろ全てが、この伝統行事を維持するのに寄与してしまっているあたり、第三者が作為的な何かを感じてしまっても仕方がない部分だが、礼宮の人たちと縁が深い神々は、この件については特に何もしていない。

 どれほど不思議であろうが不自然であろうが、この桜はれっきとした自然現象だったりする。

 なお、基本的に私有地なので、礼宮家自体の内輪のお花見も同じ日に行われるのが通例だ。宏達はそっちに招待された形である。春菜などはもはや毎年の事なので、礼宮商事の年配の人たちとはすでに顔なじみである。

「真琴姉の場合、その前から引きこもってたのも久しぶりに感じる理由かも」

「そうねえ。中退したのは三年生の時だけど、引きこもったのは春休み始まって直ぐぐらいだったものねえ」

「ってことは、花見で酒飲むのは、これが初めてって事になるか?」

「……建前上は、そうなるのかしら」

「……まあ、大学生だからなあ……」

「一応あたしの名誉のために言っておくけど、別に自分から進んで飲んだわけでも、同席者に無理やり飲まされたわけでもないからね。単純に、年齢的に飲める人たちが出来上がって、誰が飲める歳か分からなくなってお酒かどうかも確認せずについ出回っちゃってそのままなし崩し、って流れだからね」

「あ~、年配の人がやりがちな奴か」

「そそ。ついでに念のために言っておくけど、大学二年に進学したときのお花見で、だからね」

 真琴のあるある的なネタを聞き、いろいろ納得してしまう達也。酔っ払いというのはそういう部分の制御が効かないから酔っ払いであり、花見というのは宴会の中でも特にそういう酔っ払いを生み出しやすいものである。

「それまではお酒がらみは一応お屠蘇にちょっと口つけるぐらいで、ちゃんと法律は守ってたんだけどね。その時だけはばっちり法律踏み倒しちゃったわ」

「本当にその時だけか?」

「もちろんよ。ちゃんと誕生日まで我慢して、二十歳になってから浴びるほど飲んだわよ」

「浴びるほどは飲んだんだ……」

 真琴のカミングアウトに、思わずあきれたように言う春菜。別に二十歳になってから飲んでいるのだから問題はないが、大酒飲みというのは余り褒められたものではない。

「というか、真琴ちゃん。お酒って結構お金かかるのに、よく浴びるほどの量買えたよね~。まだその頃は株式投資とかしてなかったんでしょ?」

「誕生日の時に関しては、資金源はうちの父さんよ。これから大っぴらに飲めるんだから、いくらでもフォローができる家飲みで一度限界まで飲んどけってね」

「で、どれぐらい飲んだんだ?」

「ん~、確か焼酎の徳用ボトル二本だったかしら。それで特につぶれずに記憶も理性も足取りも呂律もしっかりしてたもんだから、これ以上はいいかって事で結局限界まではいかなかったのよね。まあ、さすがに酔っ払いはしてたけど」

「うわあ……」

 真琴の酒豪伝説に、思わずドン引きする春菜。向こうで散々その酒豪ぶりを見せつけられてはいたものの、ごく普通の日本人だったころからそうだとは思わなかったのだ。

「そういえば、お酒で思い出したんだけど……」

「なになに? 宏がまた新しいお酒仕込んだとか?」

「そういう事じゃないんだけど、ちょっと気になることがあって」

「気になること?」

「うん。……やっぱり。詩織さん、一年ぐらいはお酒控えた方がいいかも。だよね、宏君?」

「えっ? ……ああ、せやなあ。あと、お腹締め付ける服とか厳禁、やな」

 詩織をじっと観察した春菜と宏が、唐突に爆弾を投下する。そのあまりの威力に、その場を沈黙が支配する。

「……ねえ、春姉、師匠。それって……」

「うん。と言っても、まだ断言できないけどね。詩織さん、先月どうだった?」

「言われてみれば、来てないかも……」

「念のために、産婦人科で診察は受けておいた方がいいかな。私達は権能で気配を察知してるだけだから」

 春菜の説明に、反射的におなかに手を当ててうなずく詩織。マナーやデリカシーの問題で誰も話題にしたことはなかったが、なんだかんだ言って詩織は達也の子が欲しかった。

 あまりに唐突にその望みが叶ったかもと告げられ、現在頭の中は大層混乱している。だが、母性本能というやつか、まだ膨らみの兆しも見せていないというのに、その手は実に愛おしそうに優しく我が子が収まっているお腹をなでていた。

「でも、そうなると、またしばらく達兄は禁欲生活?」

「多分まだ大丈夫だとは思うけど……」

 おめでたい話が出てきた途端に、速攻で下世話な方向に話を持っていく澪。とはいえ、他の人間もそこはちょっと気になっているからか、誰も澪をたしなめずに話に乗ってしまう。

「そもそも子供できたって自覚もつわりみたいな症状もないのよね?」

「ないよね~。というか、春菜ちゃんに言われるまで、先月来てなかったのにも気が付いてなかったよ」

「って事は、多分だけど結構な回数してる訳よね?」

「真琴さん、その言い方はちょっと……」

「他にどう言えってのよ?」

 あまりにもあからさまな真琴の言い方に、思わず顔を赤くしながらたしなめる春菜。その春菜に対し、開き直ってそう返す真琴。話題が話題だけに、ぼかして言うのも限界があるようだ。

「で、話戻すけど、今日春菜達が気がつくまでやる事やってんだったら、妊婦特有の体調の変化が出るまでは今まで通りで大丈夫なんじゃない?」

「っつってもなあ。そういう話が出てきて、はいそうですかって今まで通りとはなあ……」

 真琴の身も蓋もない言葉に、苦い顔で反論する達也。実際、まともな神経をしていれば、妻が妊娠していると分かってからそういう行為をできるかというと、普通はそれなりにためらうものだろう。

「とりあえず、詩織姉にもお腹の子供にも負担がかからなくて、かつ達兄の欲求不満をある程度解消できる方法がなくもない」

「あんたが言いそうなことぐらい大体予想つくし、それ以前にあんたまだ普通に中学生なんだから、その手の発言禁止ね」

「むう……」

「後、念のために言っとくけど、宏達の権能使って達也に詩織さんのコピーあてがう、とかいうのは無しよ。今ぐらいの会話でも顔色悪いのに、そんな無茶させられないわよ。倫理的な面でもどうかと思うし」

「一応考えたけど、それが無理なことぐらい言われなくても分かってる。というか、ボクだって師匠のこと男性として好きなんだから、いくら達兄のためとはいえ、そういう事のために詩織姉とかの体の用意とかしてほしくない」

 真琴に釘を刺され、真顔で同意する澪。さすがにその手の倫理的な何かに引っかかりそうなことをけしかけない程度には、昔より良識が育っているようだ。

 その澪の返事に、ほっとする達也と宏。やれと言われても全力で拒否するつもりではあったが、最悪の事態だけは避けられた感じである。

 が、それで終わらないのが澪である。というより、こういう話題の時に、そっち方面でアウトな発言をするのが自分のアイデンティティ、などといらぬ使命感を燃やすのが澪だ、というのが正しいか。

 発言禁止と刺された釘を綺麗に無視し、思いついていたアイデアをサクッと口にする。

「別に師匠にコピーを作らせなくても、本物に近い分身を作れるスキルを詩織姉に覚えさせるか、最悪本番無しで手とか口とかだけで達兄を満足させればいい」

「発言禁止って言ったの無視して、思いっきりアウトなこと言ってんじゃないわよ!」

 全力でアウトな発言をする澪に対し、ハリセンを取り出した真琴がフルスイングで後頭部をしばきながら突っ込む。

「でもね、真琴姉。達兄は大丈夫だとは思うけど、妊娠出産を口実に夫の夜の生活を蔑ろにするのは、夫婦関係の破綻と夫の浮気のきっかけの一つ」

「それは当事者が考える問題であって、あんたが口挟むことじゃないわよ!」

「ちなみに、個人的なおすすめは胸で挟む。ボクとか真琴姉だと無理でも、春姉とか詩織姉のサイズだと十分」

「いい加減にしなさい!」

 ハリセンのフルスイングでつんのめりながらも、懲りずにいらぬ事を言い続ける澪。それに対し、止めとばかりに顔面と後頭部に往復でハリセンを叩き込む真琴。

 ビジュアルだけなら可憐で儚げな美少女に対して、まるで容赦のない対応である。

「……ねえ、タッちゃん。頑張って分身とか、覚えた方がいい?」

「……本気にするな。ってか、春菜。えらい顔が赤いぞ」

「……手とか口とか胸とかっていうの、ちょっと想像しちゃって……」

「……襲うなよ?」

「無理無理無理無理! Hな事したいかって言われればしたいけど、宏君に嫌われたり怖がられたりするリスク背負ってまで実行に移す覚悟なんて持ってないよ!」

 達也に言われ、盛大な自爆をかます春菜。

 神化したおかげで、そのあたりは普通の生き物よりはるかに抑制が効くようになっているが、本来春菜も年頃で心身ともに健康で健全な恋する乙女である。

 羞恥心やら慎みやらといった価値観と宏の事情により我慢してはいるものの、詩織と引き離されて向こうの世界に飛ばされた時の達也と大差ない、どころか解決の目途が立っていない分、春菜の欲求不満はもっと深刻なレベルになっている。

 その欲求不満が、こういう話題の時に顔を出してしまうのだ。

 これがキスとまではいわずとも、せめて日頃から手をつなぐぐらいの事は意識せずできていれば、春菜の性格的にもう少し落ち着くのだが、それすら現在努力中なのが哀れなところである。

「春姉、とりあえずまず深呼吸。それから桜見て一旦落ち着く」

「う、うん。そうだね」

「てか、全部が無駄とか余計とかは言わないけど、あんたがもうちょっと自重してれば春菜もこうはなってなかったのよ?」

 余計な事を考えてより一層欲求不満を悪化させそうな春菜を、必死になって落ち着かせようとする澪。そんな澪に、お前のせいだとジト目を向けつつ春菜の頭のクールダウンを手伝う真琴。

「……このノンアルコールのカクテル、美味いなあ。ゆずとはちみつっちゅう感じか?」

「らしいな。はちみつ使ってる割りに、そんなに甘くないのがいいよな」

「このキッシュも美味いわあ。前菜類全体美味いけど、個人的にはこれが一番好きやな」

「ローストビーフも美味いぞ。流石に向こうで食ったベヒモスとかにゃかなわねえが、逆に言えばそのレベルかお前らが神々の晩餐ゲットして以降の飯ぐらいだな、これより上なのは」

「せやなあ。カルパッチョとかもええ味やし、使われとった技以外、あの一人前二十五万は何やんやっちゅう感じやんなあ」

 女性陣が春菜を落ち着かせるまでの間、自分たちに飛び火してこないように全力で料理に逃避する宏と達也。結局、全員の暗黙の合意により、それ以降は花見が終わるまで子供や夜の生活の話題には触れずにやり過ごした一同であった。







 その日の夜。

「詩織さんの出産が終わるまで、向こうでのダンジョン探索とかそういう無茶はできないわね」

「ん。あまり過剰に気を使うのも駄目だけど、無理させて何かあったら後悔してもしきれない」

「そうだね。しばらくは、行ってもオルテム村とかヘンドリックさんたちの隠れ里とかそのぐらいになるかな?」

 久しぶりに三人で同じ部屋、という澪の要望を受け、今日は礼宮本邸の春菜の部屋に泊まっていくことにした春菜、真琴、澪。夕食も風呂も終えた三人は、ベッドの上でまったりしながらこれからの話に花を咲かせていた。

 実はこの時点で本日分のフェアクロのログイン時間を消化し、グランドクエストも結構進んでいるのはここだけの話である。

 ちなみに、宏と達也、詩織は夕食だけ礼宮家でご馳走になり、そのまま普通に自宅へ帰っている。達也と詩織は夫婦だけで話し合いたかったためで、宏はどうにも居心地の悪い空気になりそうで逃げを打ったのだ。

 なお、春菜の誕生日に関しては、現在リアルではほしいものも必要としている物も特にないという事で、フェアクロ内で春菜が欲しがっていたものを適当に持ち寄ってプレゼントしている。

「生まれた後も育児があるから、しばらくはあんまり動けないよね」

「そうねえ。それしか稼ぐ手段がないってのならともかく、そうじゃないのに乳飲み子ほったらかしにして異世界で冒険者って、親としてあんまり褒められたものじゃないわよね」

「ねえ、真琴姉。それってパチンコにのめり込んで子ども放置してる親と大差ないと思う」

「そこまでかはちょっと分かんないけど、少なくとも達也さんも詩織さんも赤ちゃん放置して向こうに行ったりはしないと思うから、最低でも幼稚園とかに通えるぐらいになるまではどうしても向こうに行く頻度は下がると思うよ」

「というか、そもそも達兄と詩織姉だったら、多分最低でも小学校に上がるまではそういうの控えると思う」

「だよねえ……」

 詩織の妊娠・出産で今後どうなりそうか、という点を思いつく限り上げて、むう、という顔を浮かべる春菜達。

 達也と詩織に子供が生まれるのは喜ばしく、どんな子供が生まれてくるかは楽しみである。それがたとえどんな子供であっても全力でかわいがるつもりだし、子育てに協力できることは何でも協力する心構えはできている。

 が、それとは別問題で、意外と自分たちへの影響が大きく、それに対してどういうスタンスでいるべきかが難しいのだ。

「あと、最終的には私達にも同じ問題が出てきそうなんだけど、達也さんと詩織さんの子供、向こうに連れて行って大丈夫なのかな?」

「春姉、それどういう意味で?」

「私達の立場の隠蔽っていう点と、複数の世界行ったり来たりするのが普通になっちゃって大丈夫なのかなっていう点で、連れて行っちゃって大丈夫なのかな、って」

「「ああ……」」

 春菜の指摘に、納得の様子を見せる澪と真琴。そこは間違いなく気にかけておくべきところである。

「とりあえず、基本的に未就学児に秘密を守らせるのは無理、って考えておかないと駄目よね」

「ん。ライムですら、学校行くまでは時々、ぽろっといろいろ漏らしてた」

「漏らしてたよね。できれば秘密にしてほしいっていうだけで、別に問題ないと言えば問題ない事ばかりだったけど」

 真琴が示した大前提に、ライムの例を口にしながら澪と春菜も同意する。

 幼児が秘密を守れないのは、性格がどうとか頭の良し悪し、約束を守れる守れないといった要素とは全く無関係なところに原因がある。いろんな意味で未成熟で経験が乏しいため、どうしてもそのあたりの判断能力が十分に育っていないのである。

 これに関しては早熟で頭がいい子であっても変わらず、未就学児の年齢だと普通に聞かれても言わない、というところまではできても、誘導尋問の類には無力だ。

 このあたりはそういう失敗を何度も重ねて、何度も叱られたり周囲の人に迷惑をかけたりして育っていく能力なので、そういうものだという前提で対処するしかない。

「後ね、ぽろっと漏らすっていうのにも関わってくるんだけど、多分こっちの社会だと、ものすごく浮くんじゃないかな、って思うんだ。特に学校とかがね」

「ん。ボク程かどうかはともかく、間違いなく浮く」

「浮くだけならいいんだけど、場合によってはいじめに直結するのがねえ」

「潮見の公立は全体的に、いじめとかそのあたりに関してはものすごく対処がきっちりしてるんだけど……」

「達也たちがこっちに引っ越してくるかどうか、っていうのが問題なのよねえ」

「そうだよね。多分時間の問題だとは思うけど、まだ達也さんの身分は元の会社のままで、あの会社は潮見に支社とかないから……」

 向こうと行き来する上で最大の問題となる点について、どうにも歯切れの悪い会話をする羽目になる春菜達。

 学校というのは小学校から大学、専門学校に至るまで、総じて地域差や校風といったものによる違いが大きく出る。これが義務教育ではない高校以上の学校なら、ある程度許容できる部分ではあろう。が、公立の小中学校は選択の余地がない割に、良い意味でも悪い意味でも地域や学校ごとの差が大きい。

 フォローが行き届いている潮見の小学校ですら、異世界との行き来が当たり前という児童をうまく受け入れられるかというと微妙に怪しいのに、まかり間違って事なかれ主義で隠蔽体質の学校に当たってしまったら大惨事だ。

 そういう面でも、迂闊に向こうへ連れていくのはどうかというとかなり悩ましい所である。

「まあ、どっちにしても、子供産まれるまでには引っ越すとは思うけどね。達也たちが住んでるマンション、夫婦二人ならともかく子供が増えるとちょっと手狭だし」

「そうなんだ?」

「そうなのよ。いわゆる新婚夫婦向けの物件ってやつでね。一人目ならまだ何とかなるけど、二人目以降はちょっと無理って感じね」

「なるほどね。となると、詩織さんのお仕事って基本在宅、会社に顔を出すのは週一回でいいって事だから、今のままなら結局は、いずれこっちに引っ越してくることになりそう、かな?」

 達也が現在住んでいる部屋の情報を基に、春菜がそう予測する。春菜の予測に、同意するようにうなずく真琴と澪。

「あ、でも、あくまでも今のままなら、だよ? 達也さんの勤めてる会社が礼宮と取引切って、達也さんを抱え込んで離さない、って選択を取ったら話は別だよ?」

「絶対にない、とまでは言えないけど、礼宮相手にそのガッツを見せられる会社ってどれだけあるのかしらね」

「エースのはずの達兄を出向させっぱにするぐらいだから、多分達兄の会社、礼宮との取引で相当儲けてると思う」

「だよね。礼宮の場合、引き抜きかけるにしても絶対相手に十分以上の利益渡した上で取引は継続、人材的な意味での穴埋めもしてからが普通だし、そうならないにしても多分、達也さんを窓口としてずっと取引は続けるだろうから、遅かれ早かれ潮見に営業所なりなんなりを置くんじゃないかな、って感じだし」

「考えようによってはえぐいやり口よねえ」

 春菜の説明を聞き、何が何でも達也を自分たち側に抱え込もうとしているようにしか見えない礼宮の、あからさまに札束で頬を叩いているとしか思えないやり口に苦笑しながらそうコメントする真琴。

 利益率のいい仕事をもらえ、新たな取引先も開拓してもらい、さらに自社の教育システムだけでは育てられないような優秀な社員を大勢育ててもらっているとなると、思惑が分かっていても批判をしづらいのがえげつない。

「にしても、巨大企業だけあっていろいろ良くない話も聞くけど、礼宮グループって不思議と下請けや取引先の会社から悪い話が出た類のニュースは聞かないのよね」

「まあ、あの規模になると評判も気にしなきゃいけないっていうのもあるけど、元々取引先を絞り上げて利益を出す、みたいな仕事のやり方をしてない、っていうのもあるらしいよ。コストダウンにしても、まず削るのは社内の無駄な出費から、みたいな感じで」

「ねえ、春姉。それって一歩間違えると、ギリギリで余裕のない仕事になって、会社こけそうなんだけど」

「無駄と余裕の違いぐらいは把握してるんじゃないかな? 定時までは忙しいとは聞くけど、せわしなくてきついとは聞かないし」

 春菜の説明に、いまいち納得できない感じの表情を浮かべる真琴と澪。

 実際のところ礼宮グループは、研究部門や外部の都合に合わせる必要がある部門を除き、基本的に全力の七割から八割を発揮すれば、ちゃんと労働基準法通りの労働条件で定時に帰ることができる従業員の働かせ方をしている。先に挙げた部門以外での例外は、研修中や昇進したてなど、集中的に鍛えられている最中の人員ぐらいである。

 忙しく感じるのは割と突発的な割り込み仕事が発生する上に、五割以下の能力でも余裕、となるとすぐに仕事が追加されるからである。逆に、繁忙期以外で百パーセントを超えるレベルで能力を振り絞って仕事して、それでも残業が発生しそうなんて状況になっている社員に関しては、必ずどこからともなく手助けが入り、大体七割前後に落ち着くように仕事量が調整される。

 問題があるとすれば、社員全般その過程でとにかく鍛え上げられるため、礼宮の社員の八割は他所の社員の百二十パーセントより上であることが多い、という点であろう。達也が参加させられているような共同プロジェクトだと、他所の会社の社員がそのペースに巻き込まれるため、相手の社内にまで目が行き届かないこともあり無意識に非常にブラックな仕事の進め方を押し付けがちになるのが、礼宮グループの最大の欠点ともいえる。

 達也のようにどんどん仕事量もプロジェクト件数も釣り上げられる人間も結構いて、それに付き合わされる他の社員が急成長しつつ泣きを入れる羽目になるのは、礼宮から仕事をもらっている取引先全般でよくある話である。

 別に法的に問題があるわけでもなければ支払い条件も良く、ちゃんと相談すれば納期やスケジュールも調整してもらえ、何より単独で見た場合に何か一点でも不可能な要素がある仕事は言ってこないのだから、相手の大きさや取引額にビビッてそのあたりを言い出せない、どころか確認を取られてもなかなか素直に口にしない取引先側にも問題が無いわけではないのが悩ましい所であろう。

「ちなみに、新入社員でも東京の地価の高いあたりで普通に暮らしつつ、礼宮製品で生活必需品を全部そろえられる程度のお給料とボーナスはもらってるらしいよ。従業員が自分のところの製品買えないのはおかしい、だって」

「言ってる事は分かるんだけど、それであの業績と利益率ってのがピンと来ないのよねえ」

「ん。どうにもブラック臭が……」

「まあ、結局のところ、安売り競争に走らなくてもいい製品とかサービスが主力で、しかもそれがいくらでも需要があるから成り立ってる、っていうのは間違いなくあるだろうけどね」

 どこまでもブラック扱いしたがる真琴と澪に、苦笑しつつそう答える春菜。

 現実問題として、礼宮グループほど長く続いて規模が大きくなると、分かりやすい種類のブラック企業的なやり方では行き詰ってくる。そもそもの話、安月給でこき使っている社員はいい仕事をしないし、限界以上に値切られた外注先は手を抜いて品質を落とすからだ。

 第一、社員や取引先を使いつぶすやり方をしていると、いつまでたっても能力・技術面の向上は見込めない。疲弊しきった人間など、いくら能力があっても出せる力は一割以下だろうし、どんな安月給だったとしても、まず間違いなく給料分の仕事はできない。外注先にしても同じことである。

 よく考えれば当たり前の話なのだが、中身が同じなら給料も原価も安い方がいいというのも、利幅は大きければ大きいほどいいというのも、それはそれで当たり前の話だ。結果として、分かりやすいほうのあたりまえが幅を利かせすぎ、礼宮のようなもう一つのあたりまえを踏まえた経営をしている会社も胡散臭いものを見る目で見られてしまうのである。

「とりあえず、達也さんたちの話に戻すよ。達也さんたちの子供に関しては、基本天音おばさんや神様関係の人たちに相談するしかないかな、って思うんだ」

「そうね。ってか、そもそも達也と詩織さんの子供って、肉体スペック的な面で普通の日本人と同じなのかしら?」

「分かんない。向こうの世界でスキルで底上げした能力がどの程度影響するかは、生まれてみないとちょっと……」

「でしょうねえ。逆に、あんたたちの場合は神様確定?」

「うん。仮に私が真琴さんや澪ちゃんを妊娠させても、その子供はほぼ確実に神様かな?」

 いきなり恐ろしい事を言い出した春菜に、真琴と澪が固まる。その表情を見て、しまったという顔をする春菜。

「……えっと、春姉。確認いい?」

「うん」

「春姉は、同性を妊娠させたりできるの?」

「同性どころか、男の人を妊娠させることも、魚とかミジンコとかの間に子供作ることもできるよ。実はエッチする必要すらないし」

「……それ、神様だから?」

「うん。ついでに言うと、私が真琴さんや澪ちゃんの子供を妊娠したりもできちゃう。昨日特訓に連れ出されてたのって、私達の制御の甘さをどうにかする、っていうのもあったんだけど、どっちかっていうと、神様系特有のそのあたりについてあれこれ研修と訓練受けてたっていうのがメインだったの」

 春菜の説明を、ドン引きしながら聞く澪と真琴。何が引くかと言って、そのあたりを平気で言うようになったところが引く。

「私もね、初詣の時に神様の宴会でその話聞かされたときは、普通にドン引きしたよ。ただ、特訓でいろいろやってるうちに、なんとなく当たり前になっちゃったというか……」

「いったい何させられたのよ……」

「ん~、色々……」

 真琴の問いかけに、思わず遠い目をしながらそう答える春菜。特訓内容に関しては、SAN値的な意味で描写できない感じである。

「ただ、私はせいぜい練習でミジンコとかに子供作らせた程度だけど、創造神だけあって宏君はもっといろいろさせられてたよ」

「ミジンコに子供作らせる、って何よ……」

「言葉の通り。あれで完全にそのあたり吹っ切れたというか、当たり前になっちゃったというか。ただ、遺伝子とかその他もろもろ私の特徴を受け継いでるっていう感覚はあったけど、正直私の子供だって感覚は一切なかったかな。元からそのつもりだったけど、寿命の問題であっさり死んじゃったしね」

 完全に人間とは違う感性になったことをにおわせる春菜に、言葉を失う真琴と澪。しばし、その場を沈黙が覆う。

「……ねえ、春姉」

「なに?」

「念のために確認。今この場で、ボク達を妊娠させたりとかできちゃう?」

「今は無理。そのあたりを万一にも暴走させないよう、お願いして自分じゃ解けないように封印かけてもらったし」

「そっか。もう一つ確認。それって、合意は必要?」

「残念ながら私が完全に上位だから、私の一存で自由にできちゃう。だから、封印してもらった訳だし」

 春菜の説明を聞き、なるほどとうなずく澪。何か思うところがあるのか、先ほどまでのドン引きした様子はない。

「後、最後に一つ。師匠と春姉の場合、どうなるの?」

「権能の種類の問題で、基本的に宏君が上位かな。ただ、私と真琴さんや澪ちゃんの場合と違って、強引にやろうと思えばできるってだけで、合意の上で作ったほうが楽なんだけどね」

「それつまり、師匠が子供欲しいと思ったら、ほぼ確実に作れるって事でFA?」

「そうなる、かな? 私と同じで権能を封印してるから、思っただけでで何もせずにできちゃうことはないけど」

「それ、エッチした場合は?」

「あ~、うん。普通の生き物相手なら多分、宏君が欲しいなら子供ができちゃって、そうでなければ百パーセント避妊、どっちでもいいなら普通の確率、なんじゃないかな、多分」

 権能がほぼ完全に封じられた状態で神が子作りを行った事例が少ないため、澪の質問には推測でしか答えようがない春菜。とはいえ、普通に考えれば恐らくそれほど間違ってはいないだろう。

 この時、春菜が普通の生き物などと口走っている点については、真琴も澪もきっちりスルーして聞かなかったことにしている。

「とりあえず、春姉からいろいろ今後に影響してくる感じの話聞いたことだし、ちょうどいい機会だからボクの方も一つ」

「……なんだかすごく嫌な予感がするんだけど、どんなこと?」

「先週ね、教授にこっちの技術で合法的にもうちょっと身長伸ばせないかって相談したときにはっきり言われたんだけど、ボクの体、寿命のリミッターが外れちゃってる上に普通の人間とだと子供作れないようになっちゃってるって」

「「……えー!?」」

「で、その関係で、普通の怪我や病気の治療ぐらいならともかく、ホルモン剤や外科手術で身長伸ばしたり、胸を大きくしたりっていうのはできなくなっちゃってる、らしい」

 なかなか衝撃的な澪の告白に、愕然とした表情でお互いの顔を見合わせ、どうしようと視線で語り合う春菜と真琴。寿命自体は可能性として想定していたが、よもや妊娠や医療関係にまで影響が出ているとは思わなかったのだ。

「……ねえ、澪。あんたの体がそうなっちゃった理由って、分かってるの?」

「一番大きいのは向こうにいるときに、成長期の体で神の食材を神々の晩餐スキルで料理した食事を食べすぎたことだって。その上で普通なら即死しててもおかしくないほど体を損傷して、それを女神の力で元に戻したから……」

「あ~……、普通の生き物の理から、外れちゃったんだね……」

「ん。特に下半身が丸々無くなっちゃったのが響いてるみたい。で、そのままこっちに帰ってきて魂に全部定着させちゃった結果、春姉の眷属とか巫女とかに近い存在になった、っぽい」

 澪の説明に、あちゃ~という感じで顔を押さえる春菜。澪の下半身が丸々食いちぎられたことも含めて、一から十まで完全に自分のミスなので言い訳もできない。

 なお、春菜が自分の事なのに今の今までこの事実に気がついていなかった理由は単純で、例の雑なフィルターのかけ方により、澪とのリンクを把握できなかったからだ。

 その後権能の大部分を封印したことで一時的にとはいえリンクが途切れ、澪が春菜の巫女的存在になったことに気付く機会は失われてしまったのである。

 春菜たちの指導教官や天音が言わなかったのは、即座に影響が出てくることでもなければ最終的にどうせ問題にならなくなるだろうとの予測も立っていたため、訓練を優先して余計なことに気を取られないよう、自分で気が付くか当事者の口から聞かされるまでは言わない方針だったからだ。

 現在宏と春菜が受けている権能の制御訓練は、そのあたりの直近では問題にもならないようなことに気を取られていてこなせるほど生易しいものではないのである。

「別に、このこと自体は問題ない。師匠や春姉とずっと一緒に居られるって事だから。でも、春姉には申し訳ないんだけど、ボクもう恋愛感情とか無しでも師匠と春姉のそばでしか生きられそうにないし、いずれは子供産みたいからやっぱり師匠とそういう関係になりたい。だから……」

「あ~、うん。ごめん、澪ちゃん。そのあたり、もうちょっと時間頂戴。神様特訓の関係で昔ほど一夫一妻にはこだわってないんだけど、完全に受け入れるにはもうちょっと時間が必要というか、そもそも今はそれ以前の問題というか……」

「ん、分かってる。ボクの方も、いろんな意味でもっと努力が必要だし。具体的には、ロリ枠からの脱却とか」

 ぐっとこぶしを握りながら、平坦なくせに気合が入っているのが分かる口調で、実にらしいことを言う澪。その一言に、肩の力を抜いて軽く吹き出す春菜。真琴もつられて笑い声を漏らす。

「でも、老化の止まるタイミング次第では、ちょっと厳しいんじゃないの、それ?」

「ん、多分春姉と同じく二十歳ぐらいで止まるっぽい。で、普通より若干長く体が育つ可能性があるから、そこに賭けて目指せ身長百五十センチ」

「そういうのって、気合入れたら逆効果になるのが法則ってものだから、ほどほどになさいよ。頑張りすぎてまた胸に吸われたりした日には、完全に奇形ルート一直線なんだから」

「真琴姉、そういうフラグ立てるのやめて……」

 澪の決意にあえて水を差す真琴。そのやり取りに明るい声で笑う春菜。澪の身を削った話題転換により、パジャマパーティの空気は和やかなものに戻るのであった。







「それでは、シオリ様にお子様が?」

「うん。産婦人科で検査してもらって、確定だって」

 二日後。宏達学生組(真琴含む)は、詩織の妊娠を報告するためにウルスへ来ていた。

 なお、宏と春菜は早朝の畑仕事はともかく、工場でのアルバイトは休ませてもらっている。アルバイトという形はとっているが本質的には家のお手伝いであり、学業との兼ね合いもあって元々がいないのが標準なので、そのあたりは割と柔軟に対応してもらえるのだ。

 達也と詩織は普通に仕事である。さすがに、年度初めともなるとそうそうは休めないのだ。

「ただ、エルちゃんは知ってると思うけど、向こうだと魔法とか転移とかは普通の事じゃないから、ある程度大きくなって向こうでの常識が定着してからじゃないと、ちょっと危なっかしいんだよね」

「せやから、兄貴らの子供こっちに連れてくるんは、早くてもジェクトぐらいの歳になってからやな」

「……そうですね。アルフェミナ様も、その方がいいとおっしゃっております」

 春菜と宏の話に、アルフェミナから告げられたことを補足するエアリス。そもそもが違う世界を自由に行き来すること自体、本来は神の御業なのだ。物心つく前の子供にあまり軽々しく行ってはいけない事なのは間違いない。

「そっか、赤ちゃん見れないんだ……」

「残念なの……」

 達也と詩織の子供を連れてこない、と聞かされ、がっかりした様子を見せるファムとライム。特にライムの場合、ご近所も含めて未だに最年少であるため、弟もしくは妹的な存在ができるのが楽しみだったのだ。

「あ~、でも、ちょっと思ったんだけどさ」

「なに、真琴さん?」

「別に生後三カ月ぐらいにお披露目のために一度だけこっちに、っていうのは別にいいんじゃない? その時期だったらまだ常識も何もないだろうし、深層意識はともかく表面的な記憶には残らないでしょうし」

 真琴の提案に、赤ちゃんが見られるかもしれないと目を輝かせるファムとライム。そこに、澪が待ったをかける。

「ねえ、真琴姉。免疫的な理由で、未知の病原菌とかが怖い」

「あ~、そうねえ。宏、春菜、そういうのガードしたりは?」

「出来ん事はないわな」

「うん。どちらかと言えば、かなり簡単な部類かな」

 澪の心配事を聞き、宏と春菜に対処可能かを確認する真琴。真琴の期待に応えるように、それ自体は大したことはないとあっさり言い切る宏と春菜。

 それを聞いていた澪が、もう一つの心配事を口にする。

「あと、オクトガルがちょっかい出しに来ない?」

「そりゃ来るでしょうね。あいつら、結構あっちこっちで赤ん坊の世話とかしてるみたいだし」

「その悪影響は? 例えば遺体遺棄が伝染るとか」

「……否定できないわね」

 オクトガルの子守り、その致命的な問題を澪に指摘され、一瞬言葉に詰まった後思わずうめいてしまう真琴。

「「呼んだ~?」」

「呼んでない、呼んでない」

 自分の名前が出たからか、唐突に二体ほど転移してくるオクトガル。そんな余計なところでもフットワークの軽さを見せる謎生物を、とりあえず軽くあしらっておく真琴。

「私達、子守り上手~」

「あやすの得意~」

「高い高いが得意技~」

「分離合体遺体遺棄~」

「それが不安だって言ってるのよ……」

 どうにも不安をそそるオクトガルの言動に、力なく突っ込みを入れる真琴。その様子を苦笑しながら見守るエアリス。

 オクトガルの子守りは、便利ではあっても問題が多いのは否定しようのない事実だ。実際にエアリスの弟妹であるレドリックとエリーゼが、すでに舌足らずな言葉で遺体遺棄と言い出しているという問題も発生している。

 それでも大層助けられているのも確かなので、あまり表だって文句も言いづらいのである。

「新しい赤ちゃん一杯~」

「プレセアちゃんにも生まれたの~」

「そうなんや、いつの間に」

「プレセアお義姉さまは、エレーナお姉さまの結婚式の少し前に出産なさったそうです。ただ、当日は少々バタバタしておりましたし、王族の子供は半年ほどは誕生を隠すのが通例ですので、今日まで皆様にお伝えする機会がありませんでした」

「あ~、そういえば、文化祭とか受験とかでバタバタしてたから、エレーナ様の結婚式終わってからほとんどこっちに来てなかったよね」

 プレセアの子供について、生まれたタイミングに比べて宏達の耳に入るまでが遅かった理由をそんな風に告げるエアリス。そのあたりのあれこれに縛られない達也と詩織はともかく、真琴を含む学生組は十一月ごろからずっと、月に一度か良くて二度顔を出す程度しか訪れていないのだ。

 ちなみにオクトガル達は誕生の公表解禁を律儀に待っていたので、今日まで顔は出してもそのあたりを口にはしていない。そして前回宏達が来た時はまだ解禁前だったので、妊娠出産関連の話題がなかったのをいいことにあえて黙っていたのである。

「後、エレーナちゃんもおめでた~」

「そろそろ四か月~」

「……本当に?」

「「本当なの~」」

 エレーナの妊娠という情報に、思わず真顔で聞き返してしまう澪。その澪にオクトガルが太鼓判を押し、エアリスが嬉しそうにうなずく。

「そっか。エレ姉も、ちゃんと子供できたんだ……」

「ほんま、よかったわ……」

「うん……。達也さんやアヴィン殿下には申し訳ないけど、エレーナ様に子供ができたのが一番うれしいよ……」

「本人が一番気にしてたものね……」

 エレーナの妊娠という大ニュースに、嬉しそうに、だがしんみりと語り合う日本人一同。春菜と澪に至っては、目じりに小さな涙が浮かんでいる。

 エレーナの闘病生活を知っているだけに、出産こそまだなれど無事に授かることはできたというニュースは、他のおめでたとは比較にならないほどの喜びがあったのだ。

「せやけど、エレ姉さんやとちょっと、体力的な部分で不安があるでなあ……」

「そうだよね。健康体になった、って言っても、長い事後遺症を引きずってたから、結婚式の時点でもまだちょっと線が細かったよね」

「安産祈願のお守り、用意しといた方がよさそうやな」

「作ってくれたら届けるの~」

「よし。ほなすぐ作ってまうわ。折角やから、アヴィン殿下の方にも出産祝いをなんぞ用意したほうがええか?」

「そうだね。……おむつとかそのあたりのはどう? ああいうのは、身分関係なくいくつあってもいいから」

「せやな」

 春菜の提案を受け、エレーナのための安産祈願のお守りとは別に、ものすごいスピードで高性能おむつを作り上げていく宏。ついでに、今後も使えそうな産着も用意しておく。

「なんか、この春はおめでたいニュースがいっぱいね」

「ん。師匠の中学時代の問題も片付いたっぽいし、お祝い事がいっぱいなのはすごくうれしい」

 日本では新たな年度の始まりである四月。宏達の周りでは、関わりのある人たちが何人も新たな命を授かり、次の世代の芽生えを迎えていたのであった。
というわけで、ついに達兄と詩織さんにも子供ができました。と言っても、生まれるのはどう計算しても作中時間で次の年明けになるわけですが。

おかげでエロ関係の話題にも飛び火する飛び火する(言い訳するな

なお、達兄と詩織さんの子供に関しては、無事に生まれること以外はまだ何も決めていません。とりあえず、別に男の子だろうが女の子だろうが双子だろうがどうだろうがあまり影響してこないので、これはもう子供は授かりものってことでサイコロの神様にお告げをもらうべきだと考えております。
今判定しても忘れそうなので、作中時間で夏休みごろの話を書く時に判定する予定。

現在悩んでいるのは、生まれてくる子供が双子以上の可能性あり、になった時に、どうやって人数を決めるか。
作者の中では6面サイコロ1個を素直に振ってその出目の人数にする案と、バトルテックのミサイル命中本数判定表の短距離6連装ミサイル(通称SRM6)を使って、0本が出たら振り直しで決める案とで迷っているところ。

あと、双子以上、それも特に三つ子以上に決まったら、活動報告で名前を募集するかもです。
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