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フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~ 作者:埴輪星人

邪神編

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第20話

「とりあえず、今日あたりからマルクトのダンジョンとか秘境とか巡りたいんやけど、どない?」

 いつもの朝食の席。ここ数日の余波か、朝から肉雑炊などというがっつりしたものを食べながら、宏が今後の予定、その希望を口にする。

「いいんじゃないかな?」

「俺らは基本的に、特に用事はないしな」

 宏の希望に、春菜と達也が同意する。一年の終わりも近付いており、いい加減そろそろ動いた方がいいのではと思っていたところである。

「で、具体的にはどこから回るつもり?」

「まずは、マルクトとガストールの国境がほんのちょろっと接しとる、このあたりにあるダンジョンやな」

 真琴の問いかけに、地図上のとある一点を指さしながら答える宏。その地域はマルクト・ウォルディス・ガストールの大国三国に囲まれ、緩衝地帯的に細かい国が多数存在するややこしい地域である。

「へえ、こんなところに神器の素材になるようなものが出るダンジョンがあるんだ」

「宏、アンタよくこんなところのダンジョン知ってたわね?」

「昨日ローリエとかアルチェムの手ぇ借りて世界樹チェックかましてな。正直それやってへんかったら、こんな微妙なところにあるダンジョンなんか、一生存在すら知らんかったやろな」

「確かにそうでしょうね。ってか、それってこの城作ってなきゃ、下手したら永久に分からなかったかもしれないって事?」

「ぶっちゃけ、神衣は作るんあきらめとったやろな」

 あまりに微妙な位置にあるダンジョンに、そんな会話をする宏達。

「それで、ヒロ。このダンジョンがどういうところか、情報はあるのか?」

「世界樹からサルベージした情報やから、最新版やないっちゅう意味でちょっと精度的には怪しいけど、一応ある程度は拾えてんで」

「その世界樹の情報だと、どんな感じだ?」

「採れる素材とかモンスターの性質とかを一言で言うたら、繊維ダンジョンっちゅう感じやな」

 繊維ダンジョン、の一言で、大体のところを察する達也達。ある意味では非常に分かりやすい。

「特殊能力的な意味で厄介なのが多そうな感じね」

「ん。あの手のモンスターがしかける罠は、すごく探知しづらい」

 繊維、と言う単語から真っ先に蜘蛛や芋虫、一部の植物系モンスターを思い浮かべ、どことなくうんざりした表情でそんなコメントをする真琴と澪。

 攻撃力や防御力などのスペック的なものだけを見るなら、はっきり言って虫系や植物系のモンスターは大多数が大したことはない。オルテム村のダンジョンでボスとして戦ったイビルエントのような例外もいるが、基本的に戦い方さえ心得ていれば、一定以上の実力者なら割と簡単に倒せる。

 問題なのは、その手のモンスターは一定以上のランクになると、どいつもこいつも確実に妙な特殊能力を持ち、高確率で弱点属性以外に対して高い耐性を身につけ、挙句の果てに初見で対応するには難しい非常に特殊な動き方をしてくる事だ。

 かつてスペック的には割と楽勝であるはずの蜘蛛型ボス・ピアラノークに春菜がやられかけた事や、オルテム村のダンジョンで宏以外が中ボスにやたら苦労した事などは、そのあたりの虫系や植物系モンスターの厄介さを示す典型的な事例だと言えよう。

「それで、そのダンジョンはどれぐらいの強さのが出てくるんだ?」

「せやなあ。単に食らうダメージだけで判断するんやったら、多分今の装備やとかすり傷一つ食らわんとは思うわ。ただ、ダメージなくても窒息とか餓死とかで死ぬんまでは防ぎきれんからなあ……」

「そこら辺は、どうにもならねえからなあ……」

 防具全般の弱点や限界に言及する宏に、苦笑しながら頷く達也。

 実際のところ、単純な防具の防御力では防げないダメージや死亡原因は意外とある。たとえばダメージで言えば関節技のダメージなどがその典型例で、この手の攻撃に関しては対応する特殊能力がついている防具でない限り、防具の防御力は何の意味も持たない。

 そういったものの大半はエンチャントや特殊機能で対応している宏製の装備ではあるが、酸欠による窒息死や餓死などまでは、さすがに完全に防ぐ手段はない。酸欠は完全に隙間なく土の中にでも埋まらない限りはある程度どうにかなるにしても、餓死に関しては本気でどうにもならない。

 もっともそもそもの話、エンチャントで餓死を防げるのであれば、食糧問題など起こる訳がないので当然ではあるが。

 なお、宏と春菜に関しては、邪神一派の三幹部にリベンジを挑んだ時点で存在的には完全に神として定着しているため、酸素がなかろうが億トン単位の重量をかけられようが一億年ぐらい兵糧攻めをされようが、もはやそんな事で死ぬなどあり得ない。この一点だけで見ても、神に分類される存在とそれ以外の存在の間には、絶望的なまでの差が横たわっている事が分かるだろう。

「で、具体的に、ボス以外で一番ヤバそうなのって何が出てくるか、分かってんの?」

「サルベージできた情報で言うたら、いっちゃんヤバいんは多分、アラクネクイーンやと思うわ」

「……それは確かに、二重の意味で厄介ね……」

 真琴に問われて、個人的に一番厄介であろうと思われるモンスターの名を口にする宏。宏の回答を聞き、渋い顔で納得したように頷く真琴。

 真琴が渋い顔をするのも当然で、アラクネクイーンはその名が示す通り、女性型モンスターとしての側面を持つ。具体的な外見としては、ヒューマン種女性と変わらぬ見た目・形状の上半身が、巨大なクモの頭部にあたる位置から生えている。女性は等しく天敵だと公言する宏にとって、たとえ女性を感じるかどうか微妙な外見であったところで、恐ろしくて敵対したくない存在なのは間違いない事実だ。

 また、女性の外見うんぬんを横に置いてモンスターとして純粋に評価した場合でも、その身体構造故に蜘蛛の機動特性と道具を使うという人型のもっとも厄介な機能を同時に発揮してくる、非常に厄介で恐ろしい敵と評価するしかない。

 アズマ工房にとっては、真琴が言うように二重の意味で厄介なモンスターなのだ。

「そう言えば、アラクネって人間系の種族としても普通にいなかったっけ?」

「ああ、確かいるはずだ。ただ、禁書庫で得た知識だと、そっちのアラクネはモンスターとの区別で、アルケニーと呼ばれるようになってたはずだぞ」

「へえ、そうなのね」

「そうらしい。そもそもモンスターとしてのアラクネ系自体、アンデッドのヴァンパイアみたいに大量の瘴気で変異したアルケニーが、そのままモンスターとして繁殖するようになったのが始まりって事だからな。
 ちなみに禁書庫情報だと、結構そういう種族はいるみたいだ」

「元になっちゃった種族の人たちも、大変ねえ……」

 この世界特有の、なんとなくしょっぱい話を語り合う達也と真琴。こういう要素はどうしても種族差別や排斥運動につながってくるのだが、大半は根拠自体は乏しい地球のその手の差別と違い、実際にモンスター化して無視できぬ程度には被害を出しているところが難儀である。

「達兄、真琴姉。そのあたりの情勢的な話は一旦置いといて、ダンジョンの話」

「そうね。工房で積極的に雇うとかぐらいしかできない事は置いといて、まずはダンジョンの話ね」

「アラクネクイーンが一番厄介そうだって事だが、他に女性型のモンスターはいないのか?」

「女の姿した人型モンスターは、あとはマンドレイクの亜種としてそんなんが出てくるだけらしいわ。こいつもはっきりマンドレイクっちゅうとったから、アルラウネとは別もんなんやろうなあ」

「アルラウネは人間系の種族だからな。そりゃ別だろうよ」

 脱線しかかったところを珍しく澪に窘められ、話を軌道修正する一同。再び出てくるモンスターの、それも女性型の奴の話に戻る。

 とはいっても、そういうモンスターはいうほど種類が多くない。そのあたりに関しては、一般的なファンタジー作品ではモンスター扱いされているものの大半が、この世界では人間系種族なのだから仕方がない。せいぜいアラクネやサキュバス、ラミア、ウェアウルフなどのように、過去に一部の部族が大量の瘴気を浴びてモンスター化した種族がいる程度である。

「マンドレイクの亜種としてそういうのがいる、って事は、即死対策が必要か」

「まあ、生存確保の札があるから、出会いがしらに死ぬ、っちゅうんは大丈夫やろ。そもそも、マンドレイクやっちゅうんやったら、もしかしたらひっこ抜くまでは自立歩行とかせえへんかもしれんし」

 達也の疑問に、宏が予想できる範囲で答える。

 実のところ、マンドレイクの特殊能力である死の叫びに関しては、引っこ抜いた瞬間に叫ぶ場合、つまり普通の素材として回収しようとした場合に限り、完璧な対処方法がある。

 それは何かと言うと、辺り一帯に熟練度五十以上の範囲系沈黙魔法・サイレンス、もしくは沈黙の呪歌をかけた上で、中級以上の採取スキルを持つ人間がひっこ抜けば、叫び声を完全に封じるができるのだ。

 この場合の注意点としては、採取に来ている人間も魔法が使えなくなる事と、サイレンスの場合は採取する人間がレジストして効果を打ち消してしまわない事があげられる。

 なお、死の叫びを完全に封じたとしても、マンドレイク自体が中級ぐらいの強さを持つモンスターなので、引っこ抜いてすぐに処理をしないと、魔法が使えない状態で戦闘になってしまう。そのあたりは職人の手際がものをいう要素であろう。

「……ねえ、宏君、達也さん」

「なんや?」

「どうした、春菜?」

「ちょっと何かが引っ掛かってるんだけど、そのマンドレイク亜種って、問題になるのは死の叫びだけなのかな?」

「マンドレイク自体は、厄介なんは他には根っことか葉っぱ、周りの植物使ってホールドしに来る特殊攻撃ぐらいやけど……」

「いや、そういう方向じゃなくて、こう、女性型ってところで何か見落としてる気がするんだけど……」

 春菜が、真剣な顔で懸念を伝えてくる。その真剣さを受け、宏と達也がさまざまな角度から見落としていそうな事を検討しようと口を開きかける。

 その言葉が形になる前に、なんと澪が春菜の懸念の答えになりそうな事を言い出した。

「ねえ、師匠、春姉。女性型したマンドレイクなんて男の人がひっこ抜いたら、社会的・精神的な死亡リスクが半端ない」

「……あっ」

 澪の、ある意味盲点を突いた意見に、思わず小さく声を上げる春菜。そのまま少しばかりその情景を想像してみる。

「……ごめん。どう言い訳しても弁明できそうな気がしないぐらい、犯罪くさいビジュアルしか想像できないよ……」

「……安心し。僕自身どう考えても犯罪者にしか見えん図以外想像できん」

 女性型のマンドレイクを引っこ抜いて素材だヒャッハーしている宏の姿を想像し、渋い顔でそう告げる春菜。宏も同じぐらい渋い、そのうえ割と過剰におびえた表情を浮かべて同意する。

 外見を幼女から大人の女性、グラビアアイドル体型からガチの幼児体型、更にはサイズを人間大から手のひらサイズまで色々バリエーションを変えて想像してみたが、どれ一つとして、通報されずに済みそうなビジュアルにはならなかったのだ。

「どうする? 素材としては諦めるか?」

「澪の腕じゃ無理なの? ……って自分で聞こうとしておいてなんだけど、澪の場合もどういう訳か宏がやるのと同じぐらい犯罪くさいビジュアルしか思い浮かばないのよね……」

「ん、ボクもそんな気がしてる」

「いや、あんたは否定しなさいよ……。一応外見だけはすごい美少女なんだからさ……」

 達也の意見に対し代替案を出そうとして、澪がひっこ抜いたところで結局問題が解決しない事に気がついてしまう真琴。澪の全身からにじみ出る、いわく形容しがたいダメ人間オーラのなせる技だろう。

 恐らく将来的には、勝てはしないまでも春菜と勝負できるであろうぐらいには美少女になってきている澪。だというのに日ごろの言動や醸し出すオーラがすべて台無しにしている。

 この無駄になっている外見を活かすには、やはりそういうオーラがまぎれるタイプのコスプレでもさせるしかないか、などとそれかけた思考を力技で戻し、もう一つ確認しておくことにする真琴。

「春菜だと、マンドレイクは無理?」

「多分、まだ無理やろうな」

「うん、無理だと思う」

「そっか。春菜ならビジュアル的にも雰囲気的にも許容範囲だと思ったんだけど……」

 宏と春菜の回答を聞き、実に残念そうにする真琴。同じ事をしても春菜なら大丈夫な気がするあたり、澪のヒロイン的な何かの欠如ぶりは結構深刻である。

「結局、どないしても必要な素材でも取れん限りは、完全スルーが一番無難そうやな」

「そうだね。正直、加工する時も物凄くいかがわしいというか見た目が犯罪者くさくなるというか、そんな風になりそうな気がするし……」

「ん。それに、引っこ抜いた時に痴漢とか変質者とか言われたら、いろんな意味でリカバリー不可能」

 宏としては珍しい、素材を完全スルーするという非常に貴重な判断に、春菜と澪も他に起こりそうな問題を告げて同意する。

「どうしても必要な素材が取れる、って時はどうする?」

「その時は、ボクが抜く。ビジュアル的にもダメージ的にも、男である師匠がやるより、はるかにまし」

「そうか。だったらその方針で、だな。後はどんなモンスターが出てくる?」

「芋虫系とその成虫よろず、っちゅう感じやな。普通に蝶とか蛾とか甲虫とかのデカイ奴や」

 どうにもならない類の話を切り上げ、他のモンスターについて確認を取る達也。その質問に対し、後は問題になりそうなものは出て来ない事を告げる宏。癖があるようなないような、微妙なダンジョンである。

「ねえ、宏。芋虫が一杯いるんだったら、蝶とか蛾とかの胴体部分がヒューマン種の女の子になったようなのは出て来ないの?」

「そういうんはおらんみたいやな。ただ、種類に関係なく一律繭になりおるみたいやから、それ回収しとけば糸は集まるでな」

「なるほどね。だったら、ボスが巨大なアラクネとかマンドレイク亜種とか、もしくは普通サイズだけど色気全開でやたら女の武器使って迫ってくる系とか、その類でない限りは問題なしってわけね」

「せやな。ダンジョンが変化してへんかったら、多分大丈夫そうや」

 とりあえず、世界樹からサルベージできた情報を一通り確認し、そう結論を出す宏と真琴。他のメンバーも異論はなさそうである。

「あっ、そういえば……」

「どうないしたん、春菜さん? 何ぞ気になる事でもあるん?」

「今回の事とは直接関係ないんだけど、タイミングが無くて言い忘れてた事があるんだ」

「言い忘れてた事?」

「うん。ちょうど宏君と真琴さんの話にも出てた、蝶とか蛾とかの胴体がヒューマン種、っていう種族なんだけど……」

 春菜が唐突に口にした、宏の天敵になりうる種族。今回はモンスターとしてのその手の種族に出番はなさそうなのだが、それゆえになぜ春菜が今その事に言及するのかが分からない。

チーム芋虫(ラーちゃん達)の中に繭になった子が結構いるんだけど、そのうちいくつかがそっち方面に進化しそうなんだ」

「はあ!?」

「ちょっと未来を覗いてみた感じだと、多分、生物学的な意味で新しい種族になるんじゃないかな」

 春菜の言葉に、なんとなく渋い顔をしてしまう宏。いずれはこの城をコアとしたこの世界にも独自の生物が生まれ、独自の生態系を形成して発展していくのは間違いないが、そのスタートがチーム芋虫の突然変異なのは非常に微妙な気分になる。

「っちゅうか、いつの間にそんな事に……」

「それ言い出したら、いつの間にあんなに増えたのか、とか、どうやって増えたのか、とかすら謎のままだよ。今後の事もあるから、昨日能力フル活用して増えるところ観察したんだけど、じっと見てたのに気が付いたら数が増えてたし」

「そらまた怖い話やな……」

 新米とはいえ、時空系の女神がその権能をフル活用しても増えるところを認識できなかった。実に恐ろしい話だ。

 もはや、チーム芋虫は芋虫の姿をした別の何かだ、と考えた方が無難であろう。

「そんで、ちょっと思ったんやけどな。春菜さん、大本になったラーちゃんが今どうなっとるか、分かる?」

「ごめん。基本的に私、ここに居る芋虫の個体識別は、大きさぐらいでしかできないの」

 宏の疑問に対し、春菜が明確な理由を持って分からないと答える。普通に考えればある意味当たり前の事なのだが、今回はアルフェミナと似たような権能を持つ春菜の答えだ。そのあたりを踏まえると、チーム芋虫がすごいのか春菜が新米女神としてはポンコツに分類されるのか悩ましくなってくる。

 実際のところは、神の城で増殖中の芋虫達が何度も変異を起こして眷族としての神性を獲得しており、春菜やアルフェミナはおろか、もっと高位の時空系の存在でも、容易にその来歴や個体情報の確認ができなくなっている。

 このあたりは力の強弱ではなく、どちらかといえばシステム的な部分によるものだ。むしろ春菜は新米女神としては相当力が強い方に分類され、その力の使いこなし方も誕生もしくは神化一年未満の神としてはトップクラスである。というより、そうでなければ他人の、それも曲がりなりにも創造神の眷族である芋虫の羽化先など、繭を鑑定しても分からない。

「……まあ、そのあたりの事は置いとこうか。現状を知らんのはまずいっちゅうだけで、知ったからっちゅうて何ができる訳でもあらへんし」

「うん、そうだね。っていっても、ダンジョンの話って、これ以上は特にないんだよね?」

「せやな。神衣の素材っちゅうても核心の素材は例の染料のおかげで必要なくなったから、多分潜るんも一回で済むし」

「そっか」

 追及するといろいろ怖い事実が出てきそうな話題を強引に終え、ダンジョンの話に無理やり戻す宏と春菜。この時の話題が妙なフラグを立てているなど考えもせぬまま、ダンジョン攻略に向けてどんな準備が必要かの相談に移る一同であった。







「……お父様? お兄様?」

「エアリスか」

「考える事は、同じだな」

 ウルス王宮の片隅にある、王侯貴族の罪人が埋葬されている墓地。そのもっとも新しい墓石の前に、ファーレーンで最も高貴な身分である三人が集まっていた。

 巫女であるエアリスはともかく、他の王族は本来、この場に来てはいけない身の上だ。家臣たちも見て見ぬふりをしてはくれるが、それでもあまり堂々とは来られない。

 そのため、供物も当たり障りのない口実で用意し、来る時は抜け出すような形でこっそり来るしかない。そんな事情なので、今回はエレーナとマークは大人しく嫁入りの準備や仕事をしている。

「ようやく、ウォルディスにもけりがつく。国内はまだ時間がかかりそうだが、それでもウルス内部の邪神教団は駆逐した。堕ちるのを止められなかった私が言えることではないが、ようやく姉上の仇打ちに終わりが見えたからな。その報告に来た」

「どんな事情があれど反乱を起こした事実は変えられぬ故、表立っての慰霊はできぬが、せめてこう言った節目にぐらいはな」

 そう言いながら、持参した花束とカタリナの好物を墓前に供えるファーレーン王とレイオット。それに倣い、花束をそっと供え、祈りの言葉を口にするエアリス。

 日ごろ表に出してはいないが、彼らがカタリナの事を忘れた日は一日もない。ただ、嘆きを表に出しても許されるであろう時期は国や神殿の立て直しに忙しく、反乱の首謀者というある意味最悪の理由で家族を失った事を嘆き悲しんでいる余裕などなかった。

 そして、その怒涛のような日々を乗り越えた頃には、国の中枢を担う者として故人に対する悲しみに溺れる事が許される時期など、とっくに過ぎ去っていた。

 結局、良くも悪くも王族である彼らは、嘆く暇も悲しみを見せる猶予も与えられず、表立っては反乱を起こした娘を忘れ、なかった事として振舞わざるを得なかったのだ。

「被害者の手前、口にはできんがな。今でも時々、どうにもできなかったのかと思う事がある」

「父上、私とてそれは同じだ。恐らく、今はこの国の人間ではないアヴィン兄上やマグダレナ姉上、マリア姉上なども同じだろう」

 エアリスの祈りの言葉を聞きながら、いまだに小さなトゲのごとく残る後悔を語り合う王とレイオット。

 カタリナを斬った事、反逆者として処理した事に悔いはない。原因がどうであれ、カタリナは多数の人間を殺し、ファーレーンという国の滅亡を願って行動していた。それをなあなあで済ませることなど、国を預かる者として決してやってはいけない事だ。

 だが、そうならぬようにカタリナ本人を導く事ができなかったのは、まぎれもなくファーレーン王家の失敗であり罪である。更に言えば、その大きな原因の一つとなったバルドの排除すら、自分達の力だけでは不可能だったのも不甲斐ない。そのあたりの情けなさは、忘れたように振舞っていても常に心のどこかでくすぶっている。

 悲しみなんてものはとうに乗り越えているが、そのあたりの事はこの場に居る三人だけではなく、エレーナやマークも同じぐらい情けない思いを抱えているのだ。

 とはいえ、カタリナが死んでから、もう一年以上たつ。折に触れてはその経験を反省点として思い出し、間を見ては墓参りに訪れてはいるが、その事にこだわりすぎて楽しみを持たないようにしたり、楽しむべき時に楽しまないようにしたりといった無粋で無意味な履き違えはしていない。

 国のトップがいつまでも過去の事にとらわれ、暗い顔でむしむしと自罰的に仕事だけを続けるなど、百害あって一利なしである。

「しかし、節目と言いつつ、結局我々は邪神教団に対してもウォルディスに対しても、何もできなんだな……」

「ああ、まったくだ……」

 エアリスの祈りの言葉が終わり、三人で黙祷をささげた後で自嘲気味に言う国王とレイオット。謙遜でも何でもなく、何一つ実のある行動を起こす事ができず、ほぼ全て宏達に丸投げしてしまった。そんな自覚があるだけに、報告と言っても胸を張っては出来ない。

 国際関係や立場と言うものもあり、迂闊な事ができなかったのは事実だ。それに、ファーレーンとウォルディスの位置関係は、丁度この星の表裏。お互い謀略をしかける事は出来ても、直接的な行動をするには距離がありすぎる。

 そう言った事を考えてもなお、ファーレーン王家が娘の仇打ちにこれといった事はできなかったという事実は、国王とレイオットの胸に重くのしかかっている。

「お父様、お兄様。余りご自分を卑下なさらないでください」

「だがな、エアリス……」

「所詮政治は専門外の巫女ゆえ難しい事は分かりませんが、それでもファーレーンが健在で好調である事が、アズマ工房の皆様が行動する上で大きな助けとなっていた事は事実だと思います。そして、そのファーレーンの好調を維持するためにお父様とお兄様が身を粉にして働いていた事は、この国では誰もが認める功績です」

 年が明けてようやく十二になる娘に、予想外の内容で諭されてしまうファーレーン王。表面にこそ出してはいなかったが、今までが今までだけに現在の自身の治世にまったく自信を持っていなかった事を見抜かれていたと知り、思わず小さく苦笑する。

 ローレンの現王ほどではないが、ファーレーン王の自己評価は低い。娘の教育に失敗し、売国奴どもにいいようにあしらわれ、外部の手を借りた上でわざと反乱を誘発するという乱暴に過ぎるやり方でしか内憂を解決できなかったのだから、自己評価が高くなろうはずがない。

 だが、姫巫女として諸国に顔を出し、宏たちともさまざまな事を成し遂げてきたエアリスからすれば、アズマ同盟の舵取りをはじめファーレーン王が世界の安定やアズマ工房のバックアップに果たしてきた役割は決して軽くない。

 根本的な話として、邪神教団の幹部クラスで人間がまともに戦える相手などほとんどいない。フォーレで宏達が倒した闇の主ですら、一歩間違えれば精鋭部隊に壊滅的な被害が出るのだ。それを考えれば、むしろ余計な事をせず戦える力を持つ宏達が動きやすい環境を整えることこそ、対邪神教団においてもっとも重要な支援だったのは間違いない。

 それにそもそもの話、自己評価が限りなく低くなる原因となったカタリナの教育に関しては、王家の努力だけではどうにもならなかった部分も大きい。硬軟取り混ぜ思いつく限りありとあらゆる手を尽くして、カタリナの致命的な短所を少しでも良くしようと頑張ったファーレーン王家ではあるが、当のカタリナが幼いころから、どんな些細な表現であったところで自身に対する否定的な言葉を聞き入れようとしなかったのだから、どうにもならない。

 同調意見か褒め言葉しか聞こうとせず、否定的な言葉には逆恨みを募らせ楽な方に流れようとする人間をまともに教育するとなると、どうしても限界がある。恐らくカタリナに関して言えば、バルドの事が無くともいずれは何らかの致命的な問題を引き起こしていたであろう。

「お父様、お兄様。今回の邪神教団に関しては、結局政治や軍事の枠組みではこれ以上の事はできなかったと思います。そもそも、相手は何千年も歴史の裏側に潜んでは色々画策してきた集団です。むしろ、私達の代で終わらせる事ができた、と考えるべきではないでしょうか」

「……そうかもしれん。だが、それを言い訳に反省もせず、再び同じような事を起こしてはあまりにも姉上が浮かばれん。まずはレドリックとエリーゼ、ゆくゆくは我々の子において、同じ過ちを繰り返さぬ教育体制を作り上げねばならん。それと並行して、自国を破滅させたがるような思想の持ち主を中枢から確実に排除できる仕組み作りだな。邪神教団のような狂った連中が王族の教育に関わり王に対して好き放題言う、それ自体本来あってはならない事だ」

「あと、余を含めここ三代ほどはファーレーン自体の権力構造にも大きな問題があった。我が国やローレンを見れば分かる通り、王権が強すぎるのも弱すぎるのもいかんし、特定の部門や集団が力を持ちすぎても碌な事にならぬ。余の代で終わることではなかろうが、王家、司法、貴族、民衆、それぞれの力が最も調和する政治構造を作り上げねば、祖父や余、ローレン王の繰り返しになる」

 エアリスの言い分をある程度認めつつも、だからこそ理想を追求する姿勢は変えない事を断言する国王とレイオット。その様子に小さく苦笑し、エアリスがもう一度釘をさす。

「お父様もお兄様も、理想を追うのもほどほどに。人間だれしも、変化に対応できる範囲と速度と言うものを各々で持っているのです。それを無視して前のめりになりすぎると、むしろ目指す姿からは遠ざかっていきますよ」

「分かっておるさ。父の過ちを繰り返さぬためにも、じっくり話し合いながら腰を据えて、楽しみながら現実的な範囲で進めていく」

「私とて、これから足場を固めていかねばならんのだ。妥協の十や二十はせんと、誰も味方などしてくれんだろうさ」

 エアリスに釘を刺され思わず苦笑する国王とレイオット。エアリスには、自分達の肩に力が入りすぎているように見えたのだろう。その事を察してしまったのだ。

 理想に前のめりになりすぎて、周囲の事を考えずに強引に推し進める。それはカタリナが犯した過ちと同じ事だ。エアリスが何度も自分達を窘めようとしたのも、内心での反省が行き過ぎていると本能的に察した部分があったのではないか。遅まきながら、国王とレイオットがその事に思い至る。

 過ぎたるは及ばざるがごとし。宏などからも度々言われ、最近は無意識にある程度ブレーキをかけられるようになっていたが、どうやらカタリナの墓前に来た事で、そのあたりの意識が逆戻りしていたようだ。

「さて。とりあえず、現時点で何を言ったところで変わらぬ話は終わりにするとして、だ。エアリスよ、今回の戦没者について、慰霊式典が行われる事は知っているな?」

「はい。年明けの来月第二週、と伺っております」

「その時は、頼むぞ」

「お任せください」

 頭を冷やすために、やや強引に話題を切り替える国王。慰霊式典と言っても、最も激しい戦場となったマルクト東部のアドレーム平原で浄化と鎮魂の儀式を行うだけなのだが、それゆえに現在この世界で一番高い能力と権威を持つエアリスの存在が欠かせないのである。

 この慰霊式典と終戦協定の調印式を行って、ようやく今回の戦争に区切りがつく。ウォルディスそのものについてはそれこそ十年二十年でどうにかなるような状況ではないが、さすがにそこまで終わりを待っている余裕はない。

 もはや戦う能力どころか国家としての体裁すら維持できないが、幸いにしてリーファと言う旧ウォルディス地域に存在した王族の血を引く唯一の生き残りがファーレーンによって保護されている。茶番のようなやり方だが、リーファにウォルディスの代表として終戦協定と条約の調印を任せることは、生き残った勢力全てから合意を得ている。

 邪神勢力も駆逐され、聖職者系ポメの爆撃によって徹底的に浄化された事で、恐らく今後ウォルディスのような圧制と覇権主義を国是とするような国家が誕生する確率は、格段に下がるだろう。それは、数千年に及ぶ因縁と負の連鎖が終わったことを意味する。

 その事を考えれば、エアリスの言う通り大したことができなかったと嘆くより、自分達の代で古くから続く因縁に終止符を打てたと喜ぶべきであろう。

 ウォルディスの立て直しとまともな国家体制の構築はファーレーンが主となって行う仕事で、恐らくそれだけでも不足気味の人材と睡眠時間が枯渇するのは目に見えているが、とりあえず国王としては今はそこから目を背けておきたい。と言うか、直視したら恐らく鬱から立ち直れなくなる。

「さて、エアリスはまた、神の城に帰るのか?」

 墓地を出て、城と神殿の分かれ道に差し掛かったところで、レイオットがエアリスに問いかける。オクトガルの空爆が終わってからこっち、頻繁にアルフェミナ神殿に戻ってきているのは知っているが、いつまで神の城で寝泊りをするのかは、立場上知っておかねばならないのだ。

「はい。まだ向こうでも色々やる事がありますし、ちょっとウルスの神殿に常駐しづらい問題が出ていますし」

「ふむ。ヒロシと誰ぞが子供でも作ったか?」

「妊娠出産を経ての形で子供が生まれた訳ではありませんが、私達とヒロシ様の子供とでもいうべき存在が生まれたのは事実です。詳しく説明するには、恐らく本人を見ていただかないと無理かと思います」

 レイオットに問われるままに、神の城で現在起こっている出来事をかいつまんで説明するエアリス。まだ冬華の扱いに関しては何も決まっていないが、エアリスの保護者であるファーレーン王やレイオットにその存在を知らせておくこと自体は、宏達の間でも合意している。

 とはいえ、いきなりそんな事を聞かされた国王やレイオットはたまったものではない。目を白黒させながら、先ほどとは違う意味で先走った方向に思考が向かう。

「妊娠出産を経る形ではないとはいえ、子をなしたというのは事実なのだろう? つまり、エアリスはヒロシと子を作れるような関係になったという事か?」

「いえ、そういう訳ではありません。と言うより、恐らくヒロシ様はまだ、恋愛だの結婚だのを考える段階には至っていません。今回の一連の事件で、かなりのところまで女性恐怖症を克服なされた様子ではありますが、女性恐怖症ではなくなったからといって、即座に恋愛感情を抱いたり誰かと結婚する事を受け入れられるようになったりする訳ではありませんし」

「だが、逆に言えば、女に必要以上に怯えなくはなった、というのは事実か」

「はい。ですが、随分長く苦しんでおられたため、どうしても条件反射として染みついたものはあるようですし、男女間の話となると身構えてしまうのはもはや癖になってしまっているようですし」

 まだまだ前途多難である事を告げるエアリスに、先走っていた気持ちが落ち着く国王とレイオット。あの宏が、そう簡単に女性に陥落する訳がない、と言われれば頷かざるを得ないのだ。

「ヒロシのそのあたりの事情も考えると、アルフェミナ神殿に戻ってくるのはもうしばらく先になるか」

「そうだな。ハルナを蹴落とせ、とはとても言えんが、この状況で政治的に多少都合がよくなる程度でエアリスを呼び戻すのは、いくらなんでも、な」

「お父様、お兄様。ご配慮いただけるのは大変ありがたいのですが、デリカシーというものももう少しは考慮くださいませ」

「ヒロシ相手には気を使うべきであろうが、お前自身に対してはあまりそこを気にしていられる状況でもあるまい?」

「もう、お父様ったら……」

 あまりに露骨すぎる応援に思わずすねるエアリスを、苦笑しながら慈愛のこもった目で見守る男達。カタリナに関しては苦い失敗を繰り返したが、だからこそエアリスが健やかに育つためには全力を惜しまない事を誓う国王とレイオットであった。







「ふむふむ。やはりそう動きおったか」

 亜空間にある、神々の集会所。そこに集った神々が地上の様子を見守る中、ダルジャンがそう口を開く。

「あの城の中は我々ですら見通せぬが故、どう動くかは何とも言えなんだが、神が一柱から二柱に増えたところで、やはり気質まで変わる訳ではないかの」

「そうでしょうね。それに、先の決戦の様子から察するに、あの敗北は苦い経験として刻み込まれているようです。この期に及んで、できる準備を行わずに先に進むなどあり得ないでしょう」

 繊維ダンジョンと呼ばれるダンジョンに突入する宏達を見て、ダルジャンとアルフェミナがそう語り合う。

 多数の神々がこの場にわざわざ集っているのは、宏達の動向を確認するためだった。

 というのも、もはや邪神に関しては地上での問題は全て片付き、後は邪神本体と直接対決するだけ、となっている。この期に及んで宏達だけに丸投げするつもりはないが、何をするにしても宏達の行動は無視できない影響がある。

 それゆえに、神々は自分達の動きを決めるため、宏達の行動を見守っていたのだ。

「それにしても、まずは女神の血肉で染めた衣、その真の力を引き出すところから始めるか。今度は違う方向で邪神にかかずりあう余裕などなくなりかねんな」

 宏達がマント代わりに羽織っている例の染料で染めた布を見て、アランウェンがぼそりと呟く。繊維は大半が彼の領分であり、染料もかなりの割合で関わりがある。それゆえに、宏が春菜の血反吐から作った染料や、それで染め上げられた霊布がどんな代物なのか、一目で正確に認識してしまったのだ。

「恐らく春菜殿が達也殿と真琴殿を復活させた際の反動、それによって大量に発生した肉塊その他を処理するために宏殿が加工したのでしょうが、厄介なものを作ってくれた、としか言いようがありません」

「あなたがそこまで言うなんて、珍しいですね。私の眼には、神の領域に存在する美しさと性能を持っているとはいえ、逆に言うとそれだけのものにしか見えません」

「セリアンティーナの権能なら、増幅される事はあっても阻害される事はないでしょうからその感想も当然でしょうね」

 技芸神セリアンティーナの疑問と感想に、思わずアルフェミナの口からため息が漏れる。

「あれがあると、私の因果律に関わる権能にかなりの影響が出ます。正直、現在では春菜殿が関わるだけでも正確な未来が何一つ確認できなくなるというのに、あれがあるとその地域全体の因果律が派手に乱れます。大半は乱れたところで影響はありませんが、中にはとんでもない破滅を引き起こしかねない物もあるのが困りものです……」

 春菜自身の存在とその血肉に染まった霊布がまき散らす因果律の乱れ。その中でも致命的なものを選りすぐって握りつぶしながら、アルフェミナがぼやく。

「恐らく現在は生み出された世界から切り離された上持っている力が全て引き出されてはおらず、単なる防御力強化にとどまっていろんなものが無駄遣いされているが故の因果律の乱れだとは思いますが、春菜殿自身が凶悪なまでの運命かく乱因子を持っています。その血肉で作った染料で染めた神衣が持つ真の力なんて、正直考えたくもありません……」

 ノミでも取るかのようにプチプチと因果律の乱れを潰しながら、アルフェミナが大いにぼやく。そのぼやきたくなる理由が実に切実であるが故に、セリアンティーナをはじめとした神々にはかける言葉も見つからない。

 そもそもの話、持っている権能がかぶっていることもあり、春菜とアルフェミナの神々としての性質は、決して相性がいいとは言えない。しかも、神になるどころかその片鱗すら見せぬころから、アルフェミナは春菜の体質に振り回されてきた。

 実のところ、アルフェミナの多忙の原因の半分以上に、程度の差はあれ春菜の体質が絡んでいる。それが大幅にパワーアップしたのだ。アルフェミナが先の事を考えたくないとぼやくのも無理なからぬ話である。

 なお余談ながら、春菜のかく乱体質は、春菜の予知系の権能にもばっちり影響が及んでいる。チーム芋虫の羽化先ぐらいなら神の城の機能もあってそれほど誤差なく確認できるが、将来の事となると自身が関わっていなくてもまともに予知できない。

 そんな偶然が重なるなんてあり得ない、というような未来すら確率を無視して発生してしまうのが、今の春菜の体質である。これがある程度制御できるようにならない限り、アルフェミナも春菜も予知系の権能はまともに使えないだろう。

「そんな体質の持ち主であるのに、お約束は外さんところが興味深いのである!」

「何、それこそが奴らの宿命じゃ」

 アルフェミナがぼやいているうちに、繊維ダンジョンをクリアしていた宏達。装備が充実しすぎていることもあり、一時間もかからぬ早業である。

「……やはり、女性関係はまだまだ前途多難そうですね……」

 繊維ダンジョンのボスルームを抜けた先。そこにある隠れ里の住人によるいたずら心たっぷりの歓迎。それに反射的に悲鳴を上げる宏を見て、因果律の乱れを潰しながら深々とため息をつくアルフェミナであった。
アルフェミナ様たちも大変なんですよ。

あと、ヘタレと女性恐怖症は別の問題なので、女性恐怖症が完治したところで今度はハイスペック過ぎる女性陣が言い寄ってきているという現実を信じられるかどうかというハードルが……。
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