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フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~ 作者:埴輪星人

邪神編

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第11話

「随分と苦戦しているようね」

「五大国が相手だ。これぐらいは織り込み済みよ」

 マルクトとウォルディスが戦端を開いてから三日。早くも膠着状態に陥った戦況を見て言うオルディアに、実に愉快そうに偽ウォルディス王が笑う。

「正直、ガストールの弱兵ぶりには拍子抜けだったからな。あれでは良い聖気は絞りとれぬ」

「確かに、あまり弱すぎてあっさり滅んでも収支は微妙になるけど、かといってあまり苦戦しすぎると、それはそれで連中に調子づかせて聖気が減るわよ?」

「分かっておるよ。分かっておるからこそ、生かさず殺さずの数を切れ目なく投入しておる」

「一般的に、戦力の逐次投入は愚策って言われてるって知ってる?」

「下手に大軍を投入しても、大技一発で殲滅されるだけよ。なれば、常に連中に負荷をかけ、精神を削り取った方が確実。それに、これだけ続けば向こうの雑兵の被害も馬鹿にならんからな」

 オルディアの指摘に動じる様子もなく、淡々と現在の戦術について語る偽王。現在のウォルディスが他国に対して圧倒している要素といえば、使い潰せる兵の数と質である。それをもっとも活かすとなると、昼夜問わず攻め立てて負荷をかける、と言うのが一番確実であろう。

 使える兵がもう少しタフで、英雄クラスの大技を一発耐えきれるのであれば、圧倒的な数で一気に制圧するのだが、残念ながらそこまでではない。

 故に、心理的にプレッシャーを与えることで相手の判断力を鈍らせ、じわじわと被害を増やすことで苛立ちや不安をあおり、彼らにとっての聖気を絞り取るのが最適な手段、となるのだ。

 しかも都合がいい事に、現状の推移ではモンスター兵を生産するコストより発生する瘴気の方が多い。モンスター兵自体、仕留められたときに発生する瘴気と生産に必要な瘴気はほぼ同じ、最近の技術開発により若干生産のコストが下回るところまで来ている。

 残念ながら、モンスター兵が死亡した際発生する瘴気が生産コストを上回るのは、あくまで戦闘で仕留められたときのみ。適当に生産して適当に殺しても生産コストを回収する事は出来ないが、逆に言えば、現状ならばあえて逐次投入を続ければ、微量ではあるが徐々にモンスター兵の数が増えていくのである。

 恐ろしい事に、こいつらが仕留められた時に発生させる瘴気は、録音であれば春菜の歌の浄化を無力化する。生歌や聖属性強化フィールドが展開されている状態なら浄化されてしまうとはいえ、常に春菜本人が歌える訳ではなく、聖属性強化フィールドなど常時発生している訳もない。この特性に関しては、今までさんざん春菜本人が歌いまくったり録音を垂れ流しにしたりした結果、邪神教団側も研究が進んでしまったのが一因である。

 その上で、英雄クラスの連続使用がほぼ不可能な大技を無駄撃ちさせる事ができれば、戦況としてはこの上なく都合がよくなるのだが、さすがに英雄クラスの将の大半は、そこまで間抜けではない。

 また、前線拠点を完全包囲して孤立させる、と言うのも現時点ではいまいち上手く行っていないが、油断すれば包囲されかねない状況と、その状況の終わりが見えない事は、これまたいい感じでプレッシャーになっている。

 なんだかんだ言っても、一定水準を超えさえすれば数もまた力なのだ。

「それで、オルディア殿の方は、連中を仕留めるための策はなりそうなのか?」

「百パーセントとは口が裂けても言えないけど、連中の二つの弱点を突く用意はできたわ。問題は……」

「あの城から、どうやって引っ張り出すか、と言う事か?」

「そうそう。さすがに私達では、半ば違う世界として独立しているあの城に対して、直接手出しする能力はない。この世界のルールに従って発生している異界化とは、次元が違い過ぎるわ。あれに干渉しようとするなら、間違いなく我が主ぐらいの力が必要ね」

 偽王の言葉に頷きながら、最大の難問について問題点を整理するオルディア。

 伊達に神の城などと大層な名前を持っている訳ではないらしく、城の中に引きこもられてしまうと、正直手の出しようがなくなってしまう。

 一見して城壁を砕けば進入できそうに見えるが、あれは単に世界と世界を隔てる壁を視覚的に現しているだけだ。そういう理由なので、上空から進入しようにも見えない壁があって不可能である。見える壁も見えない壁も、この世界の内部で収まる方法では、何をどうやっても破壊できない。

 かといって、侵入しようにも、宏が許可を出さない存在は城壁に触れることすらできない。そして、もっとも強い邪神の眷族といえども、さすがに世界の壁を破壊できるほどの能力は与えられていない。と言うより、それだけの能力があれば、とうの昔にこの世界の壁をすべて破壊して滅ぼしている。

 更に言えば、あの城壁の内側は一つの独立した世界で、その気になれば衣食住、全てを完全に自給自足出来てしまう。故に、兵糧攻めも無意味だ。得意のハニートラップも、あそこに出入りできる連中はそう簡単に接触できず、できてもやたら精神力が強いため、オルディアをもってしても簡単にたぶらかす事は出来ない。

 難攻不落。まさしくその言葉通りの要塞となってしまっている神の城。それを前に、オルディアはどうにも攻めあぐねているのだ。

「こうまで完全に後方支援に徹されてしまうと、ちょっかいを出すにもねえ……」

「そうよのう。今回の城のように、時間を与えて更に準備を整えられても困る。少しばかり奮発してみるか?」

「奮発?」

「うむ。闇の主ぐらいの強さがあれば、さすがに連中ものほほんとはしていられまい。用意する数じゃが、十五ほどあればいけるか?」

「それなら問題なさそうだけど、そんなに用意できるの?」

「奮発する、と言うたであろう? どちらにせよ、今残っている闇の主にしても、今更裏工作などできんで事実上遊んでおる。この手のリソースは、使うべき時に使わねばな」

 妙に上機嫌に言い放った偽王の言葉に、毒々しい笑顔を浮かべて頷くオルディア。

「それで、いつ仕掛ける?」

「早い方がいいわね。準備ができるのは?」

「その気になれば、二時間もあれば可能だ」

「ならば、もう一度戦況を確認して計画を立てるわ。二時間だとちょっと厳しいかもしれないから、そうね。半日後。日が落ちるタイミングで仕掛けましょう」

「分かった」

 なんだかんだと言って、じりじりとした展開が続く事に飽きていたらしい。オルディアの提案に、非常にいい笑顔で頷く偽王。ついに、邪神一派の本当の意味での反撃が開始されようとしているのであった。







「参ったもんやな」

 オルディア達が悪だくみをしていたその頃。一進一退の展開が続く戦況に、宏達が苦い顔をしていた。

「薬の生産が追い付いてへん」

「傷病兵の治療も追い付いてねえぞ。さすがにこちらに収容された人間に死人は出ていないが、怪我人が増えた分前線を支えられる人間が減ってるのがまずい」

「モンスター兵の癖にやけに頭使ってくれちゃって、どうやっても味方に被害出さずに天地波動砲を叩き込めないのよねえ……」

「巨大化ライトも小型化ライトも、案外効果が薄かったよね」

「春姉の歌も、録音の方に対してはどうにも対策取られちゃってる感じ」

 薬を作る手を止めずにぼやく宏に同調するように、現状の問題をどんどん上げていく一同。戦況は、なかなかピンチであった。

 特に誤算だったのが、一見役に立ちそうだった巨大化ライトと小型化ライトが、案外効果が薄かった事であろう。

 小型化ライトの方は実に単純に、敵の抵抗力が意外と高く、照射した相手のうち七割以上に抵抗されてしまったのだ。照射できた範囲が狭く、しかもすぐに乱戦状態になって有効射程に長居できなかったため、期待したほどの効果は出せなかったのである。

 大型化ライトに関しては、色々と予想していなかった問題が積み重なり、ある程度訓練しなければ使えない事が発覚、現在は一旦使用を中止している。

 大型化ライトの問題で一番致命的だったのが、巨大化した存在が動き回った時の振動や衝撃波に、一般兵が対応しきれなかった事であろう。サイズに合わせて重量が増えるため、人間や馬を巨大化させてしまうとただ歩きまわるだけで大地震が起こってしまい、では空を飛ぶワイバーンならば、と試してみると、今度は風圧による衝撃波が平時よりひどく、しかも普段と違いまったくコントロールが効いていない事が分かり、味方の方が被害が大きくなりかねないと大慌てで元に戻したのだ。

 兵士を一度全て撤退させ、大型化ライトで巨大化させたものだけを前線に出せばいいのでは、と言うアイデアもあったのだが、中途半端に巨大化しても効果が薄く、かといって十分な効果が出るほど巨大化させると隙間が大きすぎてモンスター兵が後方に素通りになってしまう。

 他にも投石などを飛ばした後に巨大化させては、とか、巨大化した兵士に岩でも投げさせれば、とか、三日間で色々試しては見たのだが、どれもこれもそのまま続けるには問題があり、現在軍部の方で運用を検討中となっている。

 幸いにして、各地に派兵された精鋭部隊に関しては、現在のところ軽傷者すら出ていない。それゆえに一般兵にもそれほど死者は出ていないが、精鋭部隊は精鋭だけに数が少ない。普通の戦や対モンスター戦なら一般兵千人より強いエリート部隊といえど、カバーできる戦場の広さまで千人分とはいかないのが難点である。

 そう言ったもろもろに加え、大技で一掃しづらい陣形を維持したまま切れ間無く襲いかかってくるのが、現在のピンチの原因だと言えよう。

「そもそも、数が減ってる気が全然しないよね」

「せやな。あからさまに相手の生産速度の方が上や」

「本気で、せめて天地波動砲が使えればねえ……」

「地形的に、どないしても相性悪いんが難儀やで」

 あの手の大軍を一掃できる、もっとも効率のいい武器が使えない事に、何度も真琴の口から愚痴が漏れる。

 天地波動砲がどうしても使えないのも、結局は巨大化ライトなどと理由は同じである。そもそもあの手の武器は破壊力がありすぎて、もともと地形的には平原か砂漠ぐらいでしか使えない。砂漠で撃った時の惨状を思い出せば、考えるまでもないだろう。

 砂漠で撃った時は余波だけで視界ゼロになるほどの砂嵐が直径十数キロに及び、軽微な影響が二百キロ以上離れていたダールにまで及んでいたのだ。割と近い場所に森と山がある現在地で下手にぶっ放した場合、どんなものが飛んでくるか分かったものではない。

 別に常に最大出力で撃たなければいけない訳ではないが、絞って撃つならもっと便利な魔法や技がいくらでもある。一応照射モードでなぎ払うならもう少し影響はマシになりそうだが、爆発の威力が落ちる代わりに今度は範囲が広がる。今回みたいに最初から乱戦になっていると、どう頑張っても使い勝手が悪いのだ。

 皮肉な話だが、一般兵がいる、という事が一番の足かせになってしまっている。だが、その一般兵がいなければ、戦場を固定する事ができずにモンスター兵の配置が野放図に広がってしまう。いろんな意味で悩ましいところである。

 なお余談ながら、仮に宏が作った人間用大火力砲が天地波動砲ではなく天地開闢砲だった場合、最大出力の照射モードでなぎ払うとダンジョン及び異界化した空間、そしてオルディア達のような一部例外的な存在以外は、何一つ残らず世界が更地になる。生身で撃てる撃てない以前に、天地開闢砲はどれほど出力を絞っても地上でぶっ放せる代物ではないのだ。

「某ロボットものシミュレーションゲームの風属性のメカみたいに、ダメージを与える対象だけを選別できる範囲攻撃があれば話は簡単なのに……」

「ゲームの時はフレンドリィファイアとか無かったから良かったけど、現実だとそんなうまい話はないのよねえ……」

 せっせとポーションを作りながらぼやく澪に、真琴が深々とため息をつきながら同意する。現状に関しては、範囲攻撃のフレンドリィファイアが無ければ、それだけで随分状況が良くなるのだ。

「師匠、そういう武器とか作れない?」

「ちょっと厳しいわ。できん事はないけど、巻き添えの問題は攻撃そのものの効果範囲だけやのうて、巻き込んだ石とか木とかが飛んできて、っちゅうんもあるからなあ。問題回避のために余波とかその手のもんが出えへんように、っちゅうとどないしても威力がなあ」

「無生物には最初から影響が出ないように……、だと問題があるか……」

「その定義やとゴーレムとか魔法生物の類はいけるけど、生物やない扱いのモンスターがすりぬけおるからなあ。精霊系とかゴースト系とか非実体の連中に、後魔法系技術使ってへん純粋にからくりだけで動いとるゴーレムとかパペットの類とかは生物扱いやないし、相手が相手だけにその手のがいつ出てくるかも分かったもんやあれへんしな」

「むう……、難しい……」

 宏の指摘に、ポーション作りの手を止めずに器用にうなだれる澪。余波による礫などの被害が大きいのであれば、最初から他に影響が出ないようにすればと考えたものの、やはりそんな簡単な話でもない。

「後は、エルやエレーナ様に渡した懐剣みたいに、マルチロック方式で広範囲攻撃をする、ってぐらいだろうな」

「せやなあ。それぐらいやろうなあ」

 達也の提案に頷きながら、ようやくポーションを作る手を一旦止める宏。どうやら、何か思いついた事があるらしい。

「何か思いついたの?」

「思い切って、連中をダンジョンに閉じ込めたろうか、思うてな」

 宏の実に思い切った手段に、確認を取った春菜が思わず絶句する。そのまま、恐る恐る考えを確認するために口を開く。

「ダンジョンに閉じ込める、って、どうやって?」

「この城のダンジョン生成機能を応用してな、連中の八割ほどがおる場所をダンジョンにしてまおうか、思ってん」

「……そんなこともできるんだ?」

「ちょっとした道具と、ローリエの協力が必須やけどな。ついでやから、連中の進路に入り口置いて、おかわり全部閉じ込めたろうかってな」

「もしかして、それってフォーレで戦ったバルド達の親玉がやったのと同じ?」

「まあ、そこからの発想なんは否定せえへんで」

 思いついたら即実行、とばかりに必要な道具の製作に入りながら、春菜の問いに答えていく宏。

「と言うか、異界化とかダンジョンとか、大丈夫なの?」

「春菜さんが心配しとるんが瘴気方面やったら、そっちは問題あらへん。一番簡単に異界化するんが瘴気の溜まりすぎやっちゅうだけで、一定範囲の空間を捻じ曲げて法則を書き換えられるんやったら、別段どんなやり方してもかまへん。春菜さんかて、瘴気が絡んでない異界化とかダンジョンとか、いくつか見とるやん」

「……あっ、そっか! 大霊窟とレーフィア様の神域!」

「そういうこっちゃ」

 春菜の不安を取り除くように、実例を思い出させる宏。

 実際のところ、ダンジョンを作る事自体は、五大神クラスの力があればそれほど難しくはない。特に時間と空間が専門分野であるアルフェミナにとって、舞台装置としての制約さえなければ、本来ダンジョンの製作・破壊などは目をつぶっていてもできる事である。

 もっとも、いくらそれほど難しくないといっても、あまり乱造すると世界を不安定化させる要因になるのも事実なので、自然発生してしまったものはともかく、異界化した空間を神が干渉して作ることはめったにない。やってせいぜい、自らの神域を作る程度で、それとて一定以上の力と役割を持つ神か、ダインのように必要に駆られたかのいずれかである。

 逆に、世界を不安定化させ、最終的には破綻・消滅させることが目的の邪神一派の場合、材料となる瘴気が自分達の生存のためのエネルギーでもあるため、あまり気軽にダンジョンを作る事ができない。フォーレの時にしても、収支がプラスになる、もしくは舞台装置(神々)の力を大きく削げると判断したからこそ、多大なコストをかけてダンジョンを作り出したのであって、思われているほどホイホイダンジョンを作っている訳ではない。

「後、多分一般人が迷い込んだりとかも気にするやろうから先言うとくとな、春菜さんの歌でダメージ受けるぐらい瘴気ため込んでる連中しか入れんようにしとくから」

「……そこで私の歌が基準として出てくるのがちょっと悲しいけど、それなら大丈夫そうだよね」

 先回りして懸念材料を潰してきた宏に、少し複雑そうな表情を浮かべながら頷く春菜。基準に自分の歌を使われた以外、特に問題になる事は何もない。

「で、話はまとまったみたいだが、実際にどんなふうにダンジョン化するんだ? 詳しい仕組みはどうでもいいが、どういう手順でどのタイミングでやるかってのはちゃんと話しておかないと、現場が混乱するぞ」

「分かっとる。まずは範囲の確定をしたらんとあかんから、話通す前にさきその準備だけはやっときたいんよ」

「準備ってのは、どんな事するんだ?」

「こいつを配置してこなあかん」

「ああ、作ってたのは範囲確定のための目印だったか」

「せやねん。これで神の城の機能とリンクしたらんとあかんねん。ついでに言えば、僕は神の城とこの世界とのパイプ代わりみたいなもんやから、ローリエに制御振らんと微調整ができん」

 宏の言葉に頷き、用意された目印を手に取る達也。毎度のことながらエンチャントのためにやたら細かい彫刻などが入っており、大した大きさではない割に作るのに手間がかかりそうな見た目をしている。

「それで、どのあたりから閉じ込める予定だ?」

「この辺からこの辺までやな。状況次第で始点はずれるけど、終点はウォルディスの連中の通り道になっとるこの辺っちゅうんは確定や」

 そう言いながら、地図に大雑把に印を書き入れる宏。始点と称した前線側については、現在両軍が競り合っている場所から大雑把に五キロほどウォルディス側へずらした場所を指定しており、大体マルクト東部の平野を真ん中あたりで両断するようなラインを描いている。

 終点側は北東部の山脈の切れ目全域と、南東部の海沿いの街道を覆うように設定されている。どちらもウォルディスのモンスター兵が進軍ルートにしている土地で、一番北の端と南の端は、直線距離だとざっと二千キロ以上は離れている。

 この範囲全てを覆ってダンジョン化するとなると、はっきり言って前代未聞の広さとなる。正直、そんな事をしてしまって大丈夫なのか非常に不安になる範囲だ。

「……なあ、広すぎないか? 本当にできるのか?」

「間にあわせの対策やからな。今うろうろしとる連中を一旦無力化できるだけでも十分や。百パーセントの成功なんざ、最初から期待してへん」

「俺が気にしてるのは、設定が広すぎてまったく変化しない、って可能性なんだが」

「それは大丈夫や。備蓄エネルギー大分食うんがちと痛いぐらいで、広さだけやったら余裕や。っちゅうか、この城のダンジョン、普通に占有面積自体がそれより広いし」

「はあ!?」

「最初の設定アバウトにやりすぎてなあ。この城がつくる世界の地下百メートルほどの深さ全域を占有する形になってもうとって、海作った時点でマルクトよりうちのダンジョンの方が広なっとる」

「それ、誰が攻略するんだよ……」

 あまりにグレートなアバウトさに、思わず震える声で突っ込みを入れる達也。大陸規模とか、長命種でも寿命が尽きる前に探索が終わる気がしない。

 もっとも、実のところ神の城のダンジョン機能は、瘴気の浄化処理システムとしての側面が強い。広ければ広いほどダンジョンの維持に瘴気が持っていかれるため、安全に効率よく瘴気を処理するとなると、最初から世界の地下全体がダンジョンになっている方が都合がいい。

 恐らく、そのあたりの事情が、初期設定を細かくいじらずにダンジョンを設置すると、地上に影響が少ない深さの地下全域になるようになっている理由であろう。

「とりあえず、目印必要な分作ったから、澪と手分けして設置して来てもろてええか? 戦場全域の地形は情報として取り込めとるから、城の転移機能使えばすぐ行き来できるはずや」

「了解。任せてくれ」

「ポイントの中には、敵の進軍ルートすぐ傍とか逃げるん難しい場所とかもあるから、気ぃつけてな」

「分かってる」

 宏の言葉に頷き、地図を受け取ってざっと分担を決めて転移する達也と澪。それを見届けた後、春菜と真琴の方に視線を向ける。

「春菜さん、真琴さん、大まかなタイミングは通信で連絡するから、ちょっと根回しして来て。決行の時は城の鐘鳴らして教えるから」

「分かった。ちょっと話してくるよ」

「話が通ったら連絡するから、ちゃんとタイミングを教えなさいよ」

「ローリエ、ダンジョン転換の準備や。一気にけりつけるで」

「既に大まかな設定は済ませてあります」

 春菜に指示を出し、既に準備に入っていたローリエに頷いて、神の城とのリンクを強化する宏。リンクが強化された事で、城を起点に広がっている世界に居る存在の細かい挙動や出入りの様子が手に取るように分かる。

 そのうち、達也と澪の出入りに意識を集中し、設置状況を追跡する。頭の片隅で出入りの回数をカウントし、目印の数をチェックし、タイミングをはかる。

 そして三十分後。

『宏君、こちら北方部隊。総司令官との打ち合わせ、及び伝令完了。いつでもいけるから、大まかなタイミングを教えて』

『こちら南方部隊。こっちも打ち合わせと伝令が終わったわ。』

『こちら神の城。後五分ぐらいで目印の設置完了やから、それぐらいに作戦開始や』

『こちら北方部隊、五分後了解』

『こちら南方部隊、五分後了解』

 春菜と真琴からいつでもOKの連絡が来た頃合いに、目印の設置が残り一カ所まで終了する。五分後と聞いた伝令兵がすぐさま動き、前線を構築している兵士たちに大急ぎで伝令を済ませる。

 そして、

「今や! 異神の魔窟、展開!」

 達也が最後の一カ所を設置し、戻ってくるのとほぼ同時に、宏がトリガーを引く。トリガーと同時に戦場全域に鐘の音が鳴り響き、兵士達がウォルディス軍の展開を阻止するように動き始める。

「合図発動。……伝達の確認を完了。異神の魔窟、起動確認。システム調整開始。……最適化完了。……異界化確認。……反動発生、キャンセル開始。……キャンセル成功」

 兵士達の動きにあわせてタイミングを微調整し、一気にウォルディス軍を取り込み、ダンジョンに閉じ込めるローリエ。展開していたウォルディス軍の八割を取り込み、異神の魔窟は無事に起動した。

「エネルギー消費はどないなもんや?」

「事前予想のおよそ一割未満です。神の城の維持運営、及び強化にはまったく影響ありません」

「そうか。せやったらええわ」

 ローリエの報告を聞き、宏が安堵のため息をつく。面積が広いだけにかなり多めに必要エネルギーを算出してあったが、どうやら心配し過ぎていたらしい。

「その様子だとうまく行ったようだが、そんなに少ない消費で大丈夫だったのか?」

「実質的にただの転移と変わらない条件設定でしたので、あの空間全てを異界化せずとも可能だと判断、それに合わせて手段を構築しました。恐らく、当初の計画通りにやるより、ダンジョン自体の強度も上でしょう」

「なるほどな。てか、ヒロはそのもっと効率的な手段、とやらは思いつかなかったのか?」

「この城の機能に限って言えば、ローリエの方がよう知っとるからなあ。正直、僕は何ができて何ができんのか、完全には把握できとらへんで」

 割と情けない事を言い出す宏に、思わず達也が呆れたような視線を向ける。その視線に小さく苦笑し、あえて何も言わずに次の作業に移る。

「とりあえず、連中に瘴気回収させへん形で、閉じ込めたモンスター兵処分しとかんとな」

「師匠、誤魔化した」

「そこは突っ込まへんのが武士の情けやで。それに、結果オーライで終わった事を深く追求しても利益あらへんし」

「そこを突っ込むのもお約束」

 わざわざ突っ込んでくる澪に対して、宏がジトっとした目を向ける。その視線をきっちりスルーし、勝手な事を言う澪。

「それで、連中をどないして殲滅するか、やな」

 そのまま言い合いをしても不毛だと感じたか、さっさと宏が話を進める。宏の議題に対し、ローリエがさっさと解決策を提示する。

「そのまま内部に天地波動砲か天地開闢砲を発射していただければ、発生した瘴気はこの城に回収できます」

「この城に回収するんはええとして、その瘴気どないするん?」

「地下ダンジョンの成長に流用します」

「なるほどな。せやったら、とっとと吹っ飛ばしてまおか。準備は頼むわ」

「分かりました。発射権限があるのはマスターだけですので、トリガーはマスターがお願いします」

 ローリエの言葉に、宏が頷く。宏が同意したのを見て、ローリエが準備を始める。

「天地開闢砲三番砲塔、アクティブ。異神の魔窟内に砲門解放。空間状態確認開始、……完了。強度、安定性ともに問題なし」

 淡々と天地開闢砲の発射シークエンスを始めるローリエ。その落ち着いた声で読み上げられるシークエンスに、妙にテンションが上がってくる宏と達也。わくわくしている表情を隠す気もない澪。最近は、実に表情豊かだ。

「チャージ開始。……80%、……90%、……マキシマムレベル確認。マスター、トリガーをどうぞ」

「おう! 天地開闢砲、発射や!!」

 まるで何かを狙っているかのように、目の前に浮かび上がった大きな赤いボタン。それを思いっきり右ストレートで殴り飛ばす宏。

 がちっと大きな音を立ててボタンが押しこまれ、天地開闢砲が唸りを上げてモンスター兵を飲み込んで行く。

 作った宏本人が、宇宙空間で邪神相手にぶっ放す以外、恐らく使う機会はないのではと思っていた天地開闢砲。その破壊力は絶大なものであった。

「……こら、ダンジョン内でなかったら地上では絶対撃てんで」

「つうか、こんなもん城の主砲にしてどうするつもりだよ……」

「ポイントが豪快に余っとったから、一番値段高いやつ選択したんやけど、さすがにここまでとは思わんかってなあ……」

 画面内の、天地開闢砲が暴れまわった後の状況を見て、どこか遠い目をしながら感想を言い合う宏と達也。指定した範囲のマルクトの地形をそのままコピーした異神の魔窟内が、今の一撃で底が見えないほど深い穴になってしまっていたのだから、遠い目をしたくなるのもしょうがないだろう。

 しかもその気持ちに追い打ちをかけるように、モニターの片隅に穴の深さが約六千キロと表示されているのだからたまらない。今回に関しては異界化した空間の広さの問題で深さ六千キロで止まったようだが、下手をすれば惑星の中心まで届いている、どころか貫通していてもおかしくない。

「……なあ、ローリエさんや」

「どうかなさいましたか、マスター?」

「これ、天地開闢砲フルチャージで撃つ必要まったくなかったんちゃう?」

「その疑問の答えに関しましては、肯定であり、否定でもあります」

 宏の疑問に、大真面目な声と口調でローリエが言い切る。その言葉に首をかしげている宏達に対し、そのまま解説を続ける。

「確かに、威力という観点だけで見れば、天地波動砲のフルチャージを数発撃ちこめば十分だったでしょう。数発、と言うのも相手の数と範囲だけの問題であり、数がもっと少なくて配置が密集していれば一発で殲滅できます。
 ですが、最大出力で発射した天地開闢砲の威力についてはカタログスペック以上の事は、私も含めて誰一人として知りません。ですので、リスクが少ない今の段階で、とりあえず一度使って確認しておくべきだと判断しました」

「その結果があれ、っちゅう事か……」

「はい。正直、私も最大出力がこれほどとは思っていませんでしたので、一発試射して正解だったと考えています。とりあえず現状では、恐らくダンジョンの外では使えない、と認識しておけば間違いないかと思います」

「せやな。あれはさすがに、宇宙でぶっ放す場合でも色々注意せんとまずい」

 ローリエの言葉に、しみじみと頷く宏。はっきり言って、カタログスペックだけでは数字が大きすぎて、実際の威力が今までまったくピンとこなかったのだ。せいぜい分かっていた事は、カタログスペック的には天地波動砲の数十倍の威力がある、と言うだけである。

 そのため、宏はなんとなくアバウトに、天地波動砲が半径二キロぐらいだったから天地開闢砲だと半径百キロぐらいか、程度の認識しかしていなかった。

 よく錯覚しがちな事ではあるが、威力とかエネルギー量が十倍になったとしても、実のところ発生する影響が単純に十倍になるとは限らない。たとえば壁を壊そうとしている場合だと、壁が完全に耐えられる威力で何発殴っても壊れる事はないが、威力が十倍になれば一撃で耐久力を超える事はありうる。

 更に、カタログスペックと言う奴は往々にして当てにならない。大抵はカタログスペック未満の性能しかないものだが、時折安全マージンを多く取って実際の数値よりかなり小さく記載されている事がある。また、使い方次第では安全マージンを更に余分に取ってなお、カタログスペックをはるかに超える性能を発揮したりもする。

 止めに、この世界はスキルなどが最終的な効果にダイレクトに影響するため、天地開闢砲クラスになるとその差もかなり洒落にならなくなる。この場合、神の城の影響や製作時の宏自身のスキル、森羅結晶による補正に加え、天地開闢砲と天地波動砲との威力以外の性質の違いもかなり大きく影響しており、もはやカタログスペックなど何の意味もない状態になっている。

 そう言った目に見えない誤差や補正、勘違いの積み重ねが、今回の一件につながっているのだ。ローリエが宏の認識の甘さを察し、念のために実際はどうなのかを確認させたのは実に正しかったと言えよう。

 もっとも、甘い認識をしていたスペックでさえ、地上で撃つのは無理であることはちゃんと理解していたので、恐らく追い詰められて破れかぶれで発射する、なんてことにはならなかったであろうが。

「……師匠、一割未満ぐらいまで絞れば、某メイオウなマシンの設定画しか存在しない強化型が使う必殺技、とかその程度まで威力を落とせない?」

「あれ、確か爆風が大気圏外まで突き抜けとった記憶あるから、どっちにしても使いもんにならんやろ」

「むう。さすがに某ロボットシミュレーションRPGみたいにはいかないか……」

「あのゲームは基本、単なる演出やっちゅうても普通に地球貫通したり何回も衛星粉砕したりしても平気な世界の話やからなあ。そんなうまい話は普通あらへんで」

 どうにかして地上でぶっ放せないかと検討する澪に対し、宏が駄目出しをする。天地波動砲ですら迂闊に使えないのに、威力を絞った程度で使えるようになる訳が無いのだ。

「まあとにかく、とりあえずまずは敵の残りがどういう状態かと、増援がちゃんとダンジョンに誘い込まれてるかどうかの確認だな」

「せやな。ローリエ、どないや?」

「現時点で増援は三組約千五百を確認、全てダンジョンに誘いこまれています。数が少ないのは恐らく、異変を察知しての様子見かと思われます。
 また、最前線での戦闘は、数が急激に減ったことにより積極的に攻勢に出られるようになったため、そろそろ収束しそうな気配になっています」

「そらよかった。ほな、しばらくポーション作ったら、その後は他の事できそうやな」

 ローリエからの報告を聞き、安堵のため息をついて肩の力を抜く宏。これまでずっと、ピリピリした状況でひたすらポーションを作り続けていたこともあり、気分的に少々疲れが出てきていたようだ。いくら精神力が強かろうと、元々性格的にも性質的にも常在戦場というタイプではないのだから、仕方が無い部分ではあろう。

 もっとも、この時点では宏達は知る由もない事だが、裏で邪神一派の幹部・オルディアが着々と準備を整えており、気を抜くのは少々早すぎた。その事をすぐに思い知ることになるのだが、残念ながらそもそもオルディアの存在そのものを知らぬ彼らが、それを警戒するのは不可能である。

 目の前の対処が上手く行きすぎた結果、宏達は油断とも言えないレベルではあるが油断して、気を緩めすぎてしまうのであった。







「やはり、いつまでも気がつかれずに済む、とはいかんかったようだな。聖気を回収できんやり方で潰されてしもうた」

「随分やられたようだけど、損失は?」

「何、この戦が始まってからの蓄積分は超えておらんよ。痛くないといえば嘘になるが、のう」

 そこまで言って、何かを問いたそうにオルディアを見る偽王。その視線を受けて、小さく頷くオルディア。

「計画は、予定通り日没に。さっきの偵察のおかげで連中が何をしたかは分かったから、準備も兼ねて潰しておくわ」

「うむ、助かる」

「闇の主が引っ掛からないかどうか、少し不安なのよね、あれ。不安要素は排除しておかないと」

「連中に見つからぬよう、慎重にな」

「ええ」

 偽王の言葉に一つ頷き、気を引き締めるオルディア。一時的にとはいえ、ウォルディス軍がほぼ一掃されてしまっている現状は、ある意味において最大のチャンスだ。

 さすがにアズマ工房が油断しているとまでは思っていないが、多少なりとも最前線から意識がそれる事は期待できる。マルクト軍とウォルディス軍は、三日間ずっと片時も休まず戦い続けていたのだ。結構な数の負傷者や死者が出ている以上、目先の戦闘が終わった最前線に彼らがずっと意識を割くのは難しいだろう。

 三日間の激戦の疲労を癒すには短く、だが、先の戦闘の興奮や緊張を維持するには少々長い。そんな日没までの時間も、プラスに働きそうだ。

 懸念事項は、三時間あればどんなものを作ってもおかしくない事だが、そもそもアズマ工房に何カ月も時間を与えている時点で今更だろう。

 ここまで来たら幸運を祈りつつ、できる事を全力で行うだけだ。

「オクトゥム、ザーバルド、そろそろ最後の準備に入るわよ。打ち合わせは覚えているわよね?」

「うむ」

『問題ない』

「ならいいけど。って、オクトゥム、あなたいつの間にそんなものを捕獲したのよ?」

 今回の戦におけるある意味最大の作戦。それを前に気合を入れながら呼びかけに応じて現れた同僚に視線を向け、思わず呆れた声を出してしまうオルディア。

 なぜなら、オクトゥムと呼ばれた不定型の魔物は、マルクト兵を三人、生きたままかじっていたのだから。

『先ほどの戦闘にまぎれて捕まえた。なかなか活きがいい』

「大事な作戦の前に、そういう危なっかしい真似をしないの」

『腹が減っては戦は出来ぬ』

「お腹が減っているのは分かるけど、捕まえるなら連中を仕留めた後にして欲しかったわね、正直。もし見つかってたら、下手をすれば今回の作戦はやる前から失敗していたかもしれないのよ?」

『そんなへまはしない。見つからないようにするために、三つだけで我慢した。それに、作戦決行後に食える保証が無い』

 暖簾に腕押しのオクトゥムに呆れ、ため息をつくオルディア。正直、気づかれていないとは思えないのだが、既に終わった事だ。気付かれて警戒されている前提で事を進め、無理そうだったらきっぱりあきらめて手を引くしかないだろう。

 頭の中でどうにかそう割り切ったものの、それでも気持ちの整理が完全についている訳ではない。呑気にバリバリとマルクト兵をかじっているオクトゥムに、思わず恨みがましい目を向けてしまうのは仕方があるまい。

 とはいえ、生きたままかじられ、痛みと恐怖にのたうちながらも狂うことも死ぬこともできぬマルクト兵と、それをうまそうに時間をかけてかじっているオクトゥムを見ていると、なんとなくほのぼのと気持ちが落ち着いてきて、別にいいか、という気分になるのだから、自分も案外単純だとオルディアが自嘲するのも仕方があるまい。

「作戦決行は日没。上手く行っても私達が無事に戻ってこれる保証はない。だから、後の事はお願いね」

「そちらの作戦にあわせての動きに関しては任されたが、後の事までは聞けんなあ。余はあくまでもウォルディス王ゆえに、我らが主の眷族まで面倒は見切れん」

「……そうね。弱気な事を言ったわ、ごめんなさい。必ず帰るから、それまでよろしく」

「承った」

 邪神の眷族と言うまがまがしいはずの存在とは思えない、妙に穏やかなやりとり。その裏に悲壮感すら漂う決意を見せながら、オルディアは決戦に向けて準備を進めていくのであった。







「……!?」

 日没直前。神の城にてその日の世界樹の世話を終え、一番太い枝の上で修業を兼ねた瞑想をしていたアルチェムが、何かに弾かれたように目を見開く。

「今のイメージは……!」

 惨劇。そうとしか表現できぬイメージに、アルチェムの表情がこわばる。誰かに話さねばならない。そう思うのに、誰にどう話せばいいのかが頭の中でまとまらない。

 そんなアルチェムの耳に、聞きなれた声が届く。

「アルチェムさん!」

「エアリス様!」

 アルチェム同様、表情がこわばっているエアリス。それを見て、エアリスも同じイメージ、もしくは情報を得たと確信するアルチェム。

「エアリス様も、あれを!?」

「ええ! ですので、アルチェムさんもヒロシ様のもとへ!」

 いつになく焦るエアリス。その切羽詰まった様子に、アルチェムもあのイメージが現実になる可能性が高いことを悟る。

「ヒロシさん達は、今どこに!?」

「それを、アルチェムさんに確認していただきたいのです!」

「えっ!?」

 エアリスの意外な申し出に、アルチェムが固まる。いつもなら、アルフェミナの神託により最初から宏達の居場所ぐらい把握しているエアリス。そのエアリスが、わざわざアルチェムにそれを確認するというのが、いろんな意味で腑に落ちない。

「さすがのアルフェミナ様も、この城の中に居るヒロシ様達の位置把握はできないそうです! それで、居そうな場所を大急ぎで探したのですが……!」

「何処を探しても見つからないから、私に世界樹から聞き出して欲しい、と言う事ですね! 分かりました!」

「お願いします!」

 本気で切羽詰まった様子でアルチェムに懇願するエアリス。こういう余裕のない様子を見せる事が滅多にないエアリスが、態度を取り繕うともせずに頼みこむのだ。アルチェムが知らぬ、もっと詳しい情報を得ているに違いない。

 これはいよいよ急がねば、と、世界樹に手を当てようとしたところで、ラーちゃんそっくりの芋虫の群れが世界樹を這いあがってくる。

「ぴぎゅ!」

 芋虫とは思えない速度で這ってきた芋虫達が一声鳴くと、唐突にエアリスとアルチェムの腰に糸を巻きつけ固定し、背中にしがみついて世界樹に向かって糸を吐き出す。

 そして、世界樹の枝にきっちり糸を巻きつけたところで、恐ろしい力で二人を吊り上げ、糸の長さを制御することで振り子のように揺らし、一気に勢いをつける。

「えっ? ええっ!?」

「ちょっとまってちょっとまって!!」

 いきなりの芋虫達の動きについていけず、素っ頓狂な声を上げるエアリス。芋虫達の狙いを悟り、大慌てで待ったをかけるアルチェム。

 そんな二人の態度を完全にスルーし、振り子運動で思いっきりよく勢いをつけて

「えええええええええええっ!?」

「やっぱり~!!」

 次々に世界樹の枝から飛びおりる(アイキャンフライする)芋虫達であった。
ラーちゃん大増殖は、皆様の予想通りさいころの神様のお告げです。
ちなみに選択肢は
1:そのまま脱皮を繰り返して巨大化
2:甲虫類に羽化
3:妖精に羽化
4:巨大な蝶に羽化
5:巨大な蛾に羽化
6:大増殖

なお、増殖の方法は不明。さいころの神様いわく「なぜか気がつくと増えている」そうです
+注意+
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