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フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~ 作者:埴輪星人

世界編

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第9話

「ようやくいろいろ落ち着けるよね……」

「せやなあ……」

 結婚式の二日後。ようやくもろもろから解放された宏達が、アズマ工房・リュージェント支部となる予定の建物で朝からぐったりまったりしていた。

 支部の土地・建物の選定と内部改装は、結婚式の二日前にほぼ終わらせていた。だが、あいさつ回りだのアヴィンやエアリスからの頼まれごとだのであまり城から出られず、結局ここで寝泊まりするのは昨晩が初めてとなった。

「結局、船の登録できてない」

「そうね。役所も物凄く忙しかったみたいで、それどころじゃなかったものね」

 だらけきった姿勢のままそう指摘する澪に、同じく年頃の乙女とは思えない色気もくそも無いだらけた格好の真琴が応じる。

 ここ半月ほど、ファルダニアの船舶新規登録業務は完全に停止していた。いわゆる成婚特需で普段の数倍出入りの量が増えていた上、各国からの祝いの品や人員の受け入れ、各王家の専用船の整備手配など特別な業務が大量に発生し、登録業務に回っている人員まで全て出入港関連の業務に回さねばならないほど人手が足りなかったのだ。

 流石にそろそろ祝いの品の受け入れも落ち着き、他の業務も回り始めたため明日には新規登録の受付を再開できるらしいが、現時点で溜まっている申請の処理が優先されるため、神の船まで回ってくるのに三日ほどかかりそうだとの事である。

 今回の結婚式で得たコネを使えば真っ先に登録してもらうことも可能なのだが、登録したところで船で入港する機会などあまりなさそうな自分達が、漁師や商会などの船を日常的に使う人達を押しのけるのはどうかという意識もあって、素直に待つことにしている。

 なので、今日はこの種の用事も特に片付かない。

「そういや、結局船も芋虫も名前決めてねえよな」

「せやなあ……」

 結局バタバタしてて決め忘れた各々の名前。それに達也が言及したことで、とりあえず今のうちに名前をつけてしまおうという空気になる。

 当の芋虫は、テーブルの上に置かれたリンゴの芯を、一生懸命かじっていた。言うまでも無く、残りものである。

「っちゅうても、芋虫の名前なあ……」

「普通、つけないよね」

「つけんわなあ……」

 どんな名前をつけようか、と考え始めた所で、その問題に行きあたる。

「芋虫に名前つけて面倒見てるって事例自体少ないから、どんな名前が妥当なのか分かんないんだよね。真琴さんと澪ちゃんは、漫画とかでそういうので心当たりはない?」

「なくはないけど、丸パクリは避けたい」

「あたしの守備範囲には、特になかったわねえ……」

 春菜に振られて、正直にコメントする真琴と澪。澪には何か思いつくものがあるようだが、真琴は残念ながらネタがないようだ。

「参考までに、どんな名前?」

「えっと」

 春菜に促され、漫画で出てきた名前を思い出せる限り上げる澪。それを聞いていた一同が、頭を抱える。

「微妙に、共通点がねえんだよな……」

「っちゅうか、何を思ってその名前にしたんかが分からん名前が多いで」

「あと、芋虫に春子とか佳奈美とかつけるのも、物凄いシュールで違和感全開よね」

 そんな風に好き勝手コメントしつつ、じゃあ命名基準が分かりやすくかつ、芋虫の名前にふさわしいものは何かと問われると返事に困る宏達。

 結局名前をつけている漫画などは全く参考にならず、かといってモ○ラとかは固有名詞というより種族名に近いうえ、名前にふさわしく育っても困るのでここでは避けたい。そうなると、結局どうすればいいのかで困ってしまう。

「こらもう、安直に決めた方がええかもしれんなあ」

「安直にって?」

 何か案があるらしい宏に、春菜が小さく首をかしげながら質問する。

「物凄い安直やけど、芋虫って英語でなんやったっけ?」

「キャタピラーとかクロウラーとか、そのへんだけど……」

 春菜の質問に答えず、そんな質問を返す宏。それに答え、それがどうかしたのかと聞きかけて何やら思いつく春菜。

「もしかして、語尾がどっちもラーで終わるから、ラーちゃん、とか……?」

「まあ、そういうノリやな」

「自分で言ってて、あまりの安直さにちょっと悲しくなったんだけど……」

「せやけど、ちょっと変わったペットの名前って、基本こういう感じやん」

「否定はしないけど、もうちょっと何とか……」

「ひよひよの時点で、多分手遅れやで」

 さすがにこの安直さと適当さはどうかと思い若干抵抗した春菜だが、宏にクリティカルな突っ込みを受けて沈黙する。鳥っぽい神獣の名前がひよひよなのだから、正体不明の芋虫がクロウラーのラーちゃんで何が悪いのかと言われると微妙に反論できない。

 何より問題なのは、安直すぎると反対したところで、他の名前が思い付く訳でもない事であろう。そもそも、名前が思い付いているのであれば、安直に決めようなんて意見は出て来ない。

「っちゅう訳やけど、他に案とかある?」

「あったら最初から言ってるわな」

「そうそう。花子とかよりは芋虫らしくていいんじゃない?」

 春菜の葛藤をよそに、芋虫の名前なんぞこれ以上真剣に考えたくない達也と真琴が安直に賛成する。

 当の芋虫は、自分がどう呼ばれようと知ったこっちゃないとばかりに、リンゴの芯をむしむしと食べ続けている。キャベツが一番の好物なのは変わらないようだが、植物系のものなら割合何でも食べる所が趣深い。

「芋虫はそれでいいとして、次は神の船」

 澪まで安直な名前に賛成するに至り、春菜ががっくり肩を落として抵抗を諦める。こうして、芋虫は安直にラーちゃんという名前で決まる。

「船の命名基準って、女の人の名前が多いんやっけ?」

「ケースバイケースだったと思う。客船だとヴィクトリア号とか結構あった気はするけど、タイタニックとかそういうのもあるから一概には言えないかな」

「あと、日本の場合、軍艦は大体漢字二文字だった気がするな」

「ああ、武蔵とか信濃とかそんな感じだったわねえ」

「ボクが覚えてる限り、漁船は~丸が基本。フェリーだとさ○ふらわあとか?」

 などと候補を出し合っていく。それなりにいろいろ出た所で、例によって澪が危険な発言をぶっ放す。

「とりあえず、艦首に波動砲がついてるからヤ○ト」

「それはいろんな意味でまずいから却下」

「分かってる、言ってみただけ」

 澪の危険な発言に、冷や汗をたらしながら真琴が突っ込みを入れる。流石に洒落にならない事ぐらいは分かっているため、澪もすぐに冗談として撤回する。事前に同じ名前を浮かべていたからか、宏と達也がやっぱり出たか、という顔をしているが、ここでは置いておく。

 余談ながら、艦首に波動砲がある宇宙戦艦は、宏達がリアルタイムで視聴するタイミングで実写もアニメもリメイクされている。それゆえに、今回ばかりは澪が年齢詐称疑惑を受ける事は無い。

「でも、ボク的に正直、今まで出たのはどれもしっくりこない」

「そうだよね。なんとなく、どれも違うって感じ」

「あの船、中二病っぽい感じの名前がしっくりきそう」

 中二病っぽい感じの名前、という澪の発言に、思わず納得する宏達。確かに神の船は、使ってる素材から動力、船としてのスペックに搭載されている武装まで、中二病が喜びそうな要素が満載である。

「ただなあ。いざそういう名前をつけるっちゅうと、気恥ずかしくて案外思い付かんねんなあ、これが」

「師匠、エリシオン号、とかどう?」

「どう、っちゅうても、何がどうやねん、って感じやねんけど……」

「ほどほどに中二っぽくて、それなりに船らしい名前」

 なんとなくいろんな人に謝れと言いたくなりつつも、澪が提案した名前を吟味する宏。元の意味がどんなものだったかを思い出せないが、確かにそれっぽい響きなのは否定できない。

「兄貴らは、他になんか候補ある?」

「ん~、特に思い付かねえなあ……」

「ヤ○トのインパクトがありすぎて、いろいろ吹っ飛んじゃったのよねえ……」

「そもそも、別にエリシオン号でダメな理由も無いんだよね」

 宏に振られるも、これといって案が思い付くでもなくあっさり降参する達也達。真琴の言うように、ヤ○トのインパクトで色々吹っ飛んでしまったようだ。

「ほなまあ、船はエリシオン号で」

「まあ、登録した後は、どうせ神の船としか言わないんだろうけどな」

「そこは言わんといたってや」

 などと言いながら、とりあえず船の名前はそれで決定、再びやることがなくなってだらけモードに移行する宏達。ワンボックスでちょっと遠出、というのも考えなくもないが、土地全体がダンジョンとなっているヴァリアード草原までは、リュージェントからだと日帰りでは厳しい。

 リュージェントの観光も考えたが、式当日ほどではないにしてもまだまだ人出が多く、混雑が激しい。主要な観光スポットは宏が迂闊に近寄れないほどのカップル密度であり、どうにも動く気が殺がれるのだ。

「……とりあえず、許可は貰うてんねんし、転移陣、ウルスとつないどこか……」

「そうだね。行き来できるようにしておけば、向こうの設備が使えるしね」

「そろそろ、向こうももう一段拡張が要りそうやねんけどなあ。主に来客用の会議室兼応接間が」

「ついでに、王家専用の転移の間を作って、そこからダイレクトに会議室の方に行けるようにした方がいいかも。ファムちゃん達はいい加減慣れてきてるからいいんだけど、ジノ君達はいまだに鉢合わせすると硬直してるから、ちょっとかわいそうだよ」

 いつの間にやら、複数の国が絡む重要な打ち合わせを秘密裏に行う施設となっているアズマ工房・ウルス本部。酷い時には週に三回、三大国家の首脳が集まって何やらやっていると言うのだから、相当である。

 今回のリュージェント支部設立により、下手をすると更にその頻度が上がる訳で、そろそろ和室も会議室も応接間も手狭になりつつある。

「このパターンやと、マルクトもほぼ確定やしなあ……」

「そうだよね。六大国家のうち五つとつながってて、それが事実上の同盟みたいになってるから、マルクトが支部作るのと転移陣つなぐのを拒否する理由が特にないんだよね」

 このフェアクロ世界で六大国家と呼ばれるファーレーン、ダール、フォーレ、ローレン、ファルダニア、ウォルディスの六国のうち、今回の件で五国と転移陣をつなぐこととなったアズマ工房。元々仲が悪い訳ではなかった国々だが、今回のアズマ工房ネットワーク成立により、首脳レベルが緊密に連絡を取り合い、簡単に顔を合わせて直接打ち合わせができるようになったことで、一段と相互のつながりが強固になっている。春菜が指摘するように、そのつながりは既に、事実上の同盟として機能している。

 日に日にきな臭くなっていくウォルディスの事を考えるなら、アズマ工房の支部を設置するだけで自然と加入が成立するこの同盟に参加しない理由が薄い。特にマルクトは、大国と呼ばれるだけの規模こそ備えているが、ウォルディスを相手取るには少々小さく、その癖ウォルディスが事を起こせば六大国家の他の五国より先に攻撃を受ける損な位置にいる。元々どこの国とも友好関係を結んではいるが、距離の壁を越えて打ち合わせを頻繁にできるようになるメリットを捨てられるほど強い結びつきでもない。

 宏達はそのネットワークを何かに利用する気が欠片も無いからこそ、この同盟が成立したのが因果な話である。普通の感性をした商人達からすれば、アズマ工房の欲のなさは噴飯ものであろう。

「まあ、マルクトの話は置いておくとして、これからどうしようか?」

「せやなあ。僕は転移陣つないだ後、ちょっとここに置く設備作っとくわ」

「じゃあ、ボクはそのお手伝い」

 春菜の話題転換に、とりあえず思いついた予定を告げる宏と澪。リュージェントの工房は現状、内装と家具の設置をしただけで、作業台をはじめとした設備周りは何も用意していない。まだ、工房として機能する状態になっていないので、まずは最低限必要な設備を設置するところから始めなければいけない。

 正直な話、最初からウルスの工房と転移陣がつながっているのであれば、別に各支部の設備はなくてもそれほど困らない。だが、一応名目が工房となっているのだから、ちゃんとした設備を用意するのは工房主としては当たり前のことだ。それに、なくても困らないだけで、あればあったで普通に使うのだから、作っておけばそれなりに便利である。

「あたしは、そうねえ……。まだお祭りムードが残ってるし、ちょっと出店冷やかしてこようかしら」

「そうだな。ついでに、面白い噂とか聞けるかもしれないし、俺も一緒に行く」

 まだまだ出店の数も観光客の数も減っていないリュージェント市街。あちらこちらからの噂話に怪しげな名産品と、観光以外で暇を潰すにはもってこいの内容が転がっている。物を作らない達也と真琴は、むしろこういう方向で情報収集をするのがこういう時の仕事だ。

 旨そうな酒や肴があるのではないか、という期待ももちろんある。というより、むしろそっちがメインに近い。が、情報集めは一杯やりながらが一番効率がいいのは、古今東西どんな国でも同じ事である。

「出店かあ……」

「ん? 春菜も興味あるの?」

「まあ、興味もあるんだけど、それより、ね」

 真琴の問いかけに、少しばかり切なそうにそう返事をする春菜。そのまま、妙に色っぽいため息をつき、思った事を正直に口にする。

「最近、屋台やってないな、って」

 変に色気を発散しながら、口にしたのがその言葉。屋台をやってないのがそんなに切ないのか、と、真琴が一瞬小一時間ほど問い詰めたくなったのも仕方がないだろう。

「どうせ船の登録が終わるまでは大したことも出来ねえし、屋台ぐらいはいいんじゃねえか?」

「そっか。だったら、今日は空きスペースあるかどうか確認して、許可取れるんだったら許可取って仕込み、かな?」

 屋台をしてもいい、となった途端に、顔を輝かせててきぱきと段取りに入る春菜。当初は資金調達の手段にすぎなかったはずなのに、いつの間にやら商売そのものが楽しくなっていたらしい。健全といえば健全だが、つくづく冒険者とかそういうジャンルで見れば残念な女である。

「結局、全員やること決まった」

「せやな。まあ、そんなにがっつく事でもあらへんし、のんびりやろか」

 なんだかんだで、暇に耐えられずにやることを決めてしまう一行。そのまま、久しぶりに予定が何も入っていなかったフリーの一日を、平常運転でいつものように過ごすのであった。







 その日、リュージェントの重要な水源であるフォスタナ河を、とある生き物が遡上していた。

 いかにフォスタナ河が三キロ以上の川幅に場所によっては百メートル近い水深を誇る大河であっても、「それ」の本来の大きさであれば、とても泳ぐことなどできない。だが、幸か不幸か、「それ」は自分の大きさを小動物サイズまで縮小することができた。その能力で、いろんな神の眷族の目を欺いてきたのだ。

 本来なら海の生き物であるはずの「それ」は、だが淡水をものともせずに悠々と、生き物としてはあり得ない速度でフォスタナ河を遡上していく。

 フォスタナ河ほどの大河となると、たかが人間サイズの生き物が泳いでいるのを発見するのは難しい。川魚の中にも普通にそれぐらいのサイズのものが居るのだから、当然だろう。

 結果時間切れで神々の警戒が緩んでいたこともあり、「それ」は誰にも発見されることなく、漁師の網や釣り針を器用に回避してリュージェントまで泳ぎつくのであった。






「カレーパン、完売で~す!」

 ようやく明日には船の登録ができる、というその日。早々にカレーパンの売り切れを告げながら、せっせとトロール鳥の唐揚げや焼き鳥を調理する春菜の姿があった。お祭りムードが残っていると言っても、商品を売り切ってしまった屋台も少なからずあるため、この日は普通に場所が取れたのだ。

 カレーパン三十五チロル、焼き鳥一本二十チロル、唐揚げは五十グラムで三十チロルとなかなかの価格だが、どれもこれも飛ぶように売れていく。お祭りムードで財布のひもが緩んでいるのもあるが、トロール鳥の料理がそんな値段で並んでいることなど普通あり得ないため、懐に余裕がある人間がワッと群がったのだ。

 他にもロックワームバーガー五十チロル、フライドポテト大盛り十五チロル、コロッケ六チロルなど、久しぶりの屋台だからと張り切って、無駄にメニューの種類を増やし、量も沢山仕込んである。売れ残ったらどうするのかという懸念をよそに、それらは全て快調に売り上げを伸ばし、ワンボックスカーの調理機能は開店直後、最初の一人がカレーパンを購入してからずっと、フル回転を続けていた。

 当然、春菜と澪だけでは手が足りないので、真琴にファム、テレス、ノーラ、更にはジノ達まで駆り出して調理と販売にあたっている。何度か自分達だけで作って食べていたからか、ファムやノーラが器用にタコ焼きを焼いていく姿が妙に頼もしい。

 なお、ライムは達也に見守られながら、オクトガルやひよひよと一緒に接客だ。これは調理スペースの問題に加え、調理器具の高さがライムだとかなり厳しいことに起因する。正直なところ、高さだけを言えばファムでも難しいのだが、ファムだとまだ台一つで行けるが、ライムだと台一つではちょっと足りず、かといって台を二つ重ねると危険なので、今回は客引きに回ってもらったのである。

 本来なら正規の手段で入国していない工房職員たちはここにいてはいけないのだが、いろいろ面倒だからと料理の報酬として許可をもらっている。なので、ファムたちが不法入国に問われることはない。

「カレーパン、売り切れなの! でもまだ、ロックワームバーガーも焼き鳥もフィッシュアンドチップスもたくさん残ってるの! どれも美味しいから大丈夫!」

「きゅっ!」

 ライムの可愛らしい呼びかけに、待ち人達も頬が緩む。その合間を縫って、

「コロッケ六個~」

「お待たせ~」

「諸々こみで四十八チロル~」

 手渡しが間にあっていない客に対し、神々から頼まれた仕事の期限が終わり、暇になったため手伝いに来ていたオクトガルが、その八本の足と小回りのきく機動力を活かして商品の配達と代金の回収を行う。その珍しい光景も抜群の客引き効果を生み、できた料理が並ぶ暇も無くはけていく。

 余談ながら、ファルダニアの通貨単位は、ファーレーンのものと同一である。だが、通貨の発行主体が違うためか、貨幣のデザインその他いろいろと違いがあるため、通貨レートも若干違う。そのため、ファルダニアの通貨はファルダニアチロルやファルダニアクローネと呼ばれて区別されている。

 もっとも、レートが違うと言っても百クローネ単位なら影響が出る、というぐらいの差であり、豊作不作などによる物価の変動幅の方がよほど大きい。そのため、屋台のメニューぐらいではいちいち誰も気にしない。

「ハルナさん、お好み焼きのタネがそろそろ心許ないです!」

「宏君が追加用意してくれてるから、食糧庫から出して!」

「分かりました!」

 お好み焼きを焼いていたテレスの叫びに、春菜が的確に指示を出す。その間も二人とも調理の手を止めず、出来あがった料理をどんどんオクトガルが運び出す。

「焼きそばパン三つ~、六番~」

「ワームバーガー四つ~、八番~」

 忙しさを助長するように、オクトガルが整理券番号とセットで注文内容を書いたメモを貼り付けていく。こうでもしないと行列が酷い事になっているので仕方がないが、屋台初経験のジノなど、既にパニック状態である。

「ロックワームバーガー、今の分で在庫終了」

「了解~」

「連絡してくる~」

 オクトガルが貼った何枚目かの注文票で、ついに二品目の売り切れが発生。澪が品切れを告げながら、代替え品としてとりあえず仕込みがすぐ終わるホットドッグをメニューに並べる。

 その後ろで、仕上がったたこ焼きやお好み焼き串にソースとマヨネーズを塗り、鰹節と青のりを振り続けるジノ。料理技能が未熟な彼は、真琴の補助で鯛焼きの管理をしながら、粉もの系の最後の仕上げを振られているのだ。

 他にも焼きそばをパンにはさんだり、ロックワームバーガーを仕上げたりといった、誰でもできる作業は全てジノの担当だ。そんな雑用でもそれなりに手早さと正確さを求められるためか、ちょっとずつ料理の腕が上がっているのが趣深い。

 なお、他の新米達は宏の指導のもと、ウルスの厨房でひたすらキャベツを切ったりたこ焼きやお好み焼きの生地を練ったりといった作業を続けている。メインがどんどんはけていく都合上、せめてこのあたりの粉ものだけでも切らさぬようにとの判断である。

 ウルスの彼らも地味に料理や製薬が鍛えられているのだが、料理はともかく製薬は微々たるものなので、ジノに追いつくほどではない。

「鯛焼き、チョコクリーム終わり!」

「アメリカンドッグ、終了」

 その後も、昼食を食べる暇も無く次々に入る注文を必死にさばきつつ、次々に品切れを宣言し続ける調理チーム。夕方まで続けるという目標もむなしく、二時半ごろには

「ごめんなさい! 今注文受けた人で終わりです!」

 あえなく仕込みが尽きて白旗を上げることになる。その春菜の品切れ宣言を聞き、整理券を持っていない客ががっくりと肩を落としながら散っていく。

「やっと終わった……」

「お疲れ様なのです」

「ジノは初めてなのに、よく頑張ったよ」

 担当する作業がすべて終わり、半ば力尽きたように作業台に手をつくジノ。そんなジノをねぎらいながら、昼食の賄いをどうするかに半ば意識を持っていかれているファムとノーラ。後は春菜と澪で十分に間にあう作業量なので、それ以外のメンバーは撤収なのだ。

 昼食を食べる暇などなかった調理チームだが、例外的にファムは売り物にならない切れ端や達也が調達してきた軽食などを合間を縫って食べさせてもらっており、ライムは普通に休憩をもらって食事を済ませている。年齢一桁の年少組には、ちゃんとそのあたりの配慮はしているのである。

「しかし、予想以上に売れたな」

「トロール鳥、十羽分も仕込んだのに……」

 ようやく全ての客に料理を提供し終え、ため息交じりに屋台の結果を達也と語り合う春菜。普通の飲食店であれば、トロール鳥十羽分の唐揚げや焼き鳥は十分な物量だが、回転の速い屋台の場合、必ずしもそれで十分だとは限らなかったようだ。

 これが仮に普段のリュージェントなら、十羽も仕込めば一日持ったかもしれない。だが、今日は結婚パレードの余波でまだまだお祭り気分が残っており、市街地は何処も人で一杯だった。必然的に屋台に並ぶ人数も増えるため、仕込みが十分でも店じまいが早くなるのである。

「まあ、トロール鳥もトン単位で消費できたし、そこは良しとするよ」

「そうだな。後は、売上ちゃんと使わねえとだが」

「そうだね。あ、税金納めて来ないと」

 駄弁りながらも手早く売り上げを数えあげた春菜が、納める税額である売り上げの五パーセントを取り分ける。一般の業者は月の利益の二割が税金だが、市民登録をしていない流れの商売人がやっている屋台は、その日の売り上げの五パーセントとなっている。一見して一般の業者の方が負担が大きそうに見えるが、売り上げにかかる上に毎日申請が必要で、申請の時にもかなりの金額を取られるため、売れ行きが悪いと申請代金分が大赤字となることも珍しくない。

 とは言え、例によって春菜の屋台は仕入れ代金が極端に安く、それ以外の必要経費も無いも同然であるため、利益となる金額は極端に高い。普通の商いだと売り上げの半分近くになることも珍しくない申請代金も、この日の売り上げだと税額にも届かないため、結局は大もうけしたことに変わりはない。

 因みに、売り上げをどうやって監視しているかというと、申請を出した時の許可証にその機能が存在する。庶民のために税率を下げようにも商人の脱税が多くて税収が少なく、下げるに下げられなかったことに業を煮やしたとある領主が、ルーフェウス学院に頭を下げて、安く手軽に税額を把握できる方法を作ってもらったのが始まりだ。

 売り上げをどうやって識別しているのか、とかそのあたりは、開発者にも良く分かっていないので突っ込んではいけないらしい。理屈は不明だが、数千回の実験において一度も金額を間違えなかったのだから、信用してもいいのだろうと誰も気にしなくなっている。

「そういやさ、トロール鳥の内臓、焼き鳥に使わなかった分はどうするの?」

「モツ煮にして、スティレンあたりで売るかクレストケイブに差し入れするかのどっちかにする予定。今日売っても良かったんだけど、メニューをこれ以上カオスにするのはどうかと思ったんだよね」

「なるほどね。あたし達も食べたいから、一度ご飯に出してよ」

「了解。モツ煮だけだと食べられない人もいるから、レッサードラゴンもそろそろちょっと触ってみるよ」

 一般家庭なら、ウルスやリュージェントのような大都会でも数年はちょっとぜいたくな生活ができる金額の税金を袋に詰め、申請用紙とともに提出できるようにしながら、真琴のリクエストを受け付ける春菜。食事を用意する身としては、リクエストがあるのはありがたい。

「じゃあ、ちょっと商業ギルド行ってくるから、後お願いね」

「行ってらっしゃい」

 屋台終了の手続きに行く春菜を見送り、売り上げの入った袋に手を伸ばす真琴。そのまま適当に中身を取り出し、五十クローネほど数えて別の袋に小分けする。五十クローネ入りの袋をいくつか作ったところで、

「じゃあ、今日は御苦労さんって事で、これお駄賃ね」

 ジノにそう声をかけて、袋を一つ渡す。

「えっ? えっ?」

「まだまだ時間あるし、そのお金でリュージェントで遊んできたらいいわ」

「えっ? でも……」

「てかね、稼いでおいて何だけど、あたしたちじゃあ使い切れないのよ……」

 そう言いながら、無理やり袋を押し付ける真琴に、戸惑うしかないジノ。七級ぐらいの冒険者や真琴達のような存在からすれば五十クローネははした金でも、一般人からすれば決して少ない金ではない。少なくとも、お駄賃なんて名目でポンと渡されるような金額ではあり得ない。

「ウルスの子たちもこっちに来るから、四人で遊んでくるといいわ」

「ああ、四人分ですか」

「何言ってんのよ、一人分よ一人分。合流したら、他の子たちにも渡しといて」

 そう言って、更に三つの小袋を押し付けてくる真琴。受け取りを拒否しようにも、一流の戦士としての腕を無駄に使いこなしてくるため、ジノごときの実力ではどうにもならない。

「テレスとノーラはどうする? お小遣いならいくらでもあげるけど?」

「大して興味があるものが無いので、今回はパスなのです」

「この人ゴミはちょっと」

 真琴に聞かれて、すげなくそう答えるテレスとノーラ。お祭りムードが残っていて人が山盛りいる街など、進んで歩きまわりたくないらしい。

「アタシも、疲れたから帰って昼寝したい」

「って事は、ライムも自動的にお昼寝かしら」

「てか、もうライムなら」

 ファムに示されて視線を移すと、ひよひよを抱き枕に、オクトガルハンモックで完全に寝落ちているライムの姿が。

「こりゃ、早く撤収した方がいいわね」

「真琴姉、撤収準備は終わってる」

「そう。だったら、ジェクト達がこっち来たら、さっさと撤収しますか」

 そう言いつつも、チロル硬貨とクローネ硬貨で百クローネ入りの袋を作り、代表でテレスに渡す真琴。素直に受け取りながら、怪訝な顔をするテレス。

「撤収前に、とりあえずそこらの屋台とかで適当に食べるもの買ってきて。オクトガル達にも報酬あげないとだし、達也が調達してきた程度じゃ、あんた達も全然足りないでしょ?」

「分かりました」

「行ってくるのです」

 真琴に言われ、食料調達に動くテレスとノーラ。二人が帰ってくると同時に、遊んで来いと工房を追い出されたジェクト達が合流する。

「そういえば、真琴姉はどうするの?」

「ん? あたしはまた、適当にあっちこっち冷やかしながら噂でも集めるつもりだけど?」

「今日はボクも行く」

「いいけど、お酒は駄目だからね」

「分かってる」

 どうやら、リュージェントの街やお祭りの様子などに興味があったらしい。珍しく澪が、同行を申し出る。

「じゃあ、俺はライム連れて帰るわ」

「おねがいね」

 とりあえず帰宅組と観光組に分かれた所で、さっさと決めた通りに行動する。この時、とある存在がこの一連のやり取りを観察し、そのまま帰宅組の後をこっそりつけていたのだが、視線に害意が一切無かったために祭りの喧騒にまぎれ、最後までオクトガルを除く誰一人気がつかなかった。

 気がついていたはずのオクトガルが何も言わなかった理由は、その方が面白そうだからである。オクトガルの意図的なスルーにより、何者かは無事に帰宅組を尾行することができてしまったのであった。







「船の登録手順って、どないやったっけ?」

 翌日。ウルスの食堂で朝食をとりながら、今日の船舶登録について、宏が確認を始める。

「まず、私達の場合はリュージェントの港湾管理局本部に登録用紙を提出して、その後どこかの港で実物の検査と確認をしてもらうんだ」

「実物の検査は、どんぐらいかかるんやろうな?」

「大きさによりけりだけど、漁船だと三十分ぐらいで大型の客船や貨物船は丸一日かかることもあるって聞いてるよ」

「うちらのは、微妙なラインやなあ……」

 春菜の説明を聞き、そんな感想を漏らす宏。エリシオン号は漁船ほど小さくはないが、大抵の貨物船や客船と比較すれば小さい。丸一日という事はないだろうが、少なくとも船室と積み荷のスペースはきっちり検査するとなると、三十分で終わるとも考えづらい。

「明らかに何か隠すつもりのスペースとかが無いならすぐ終わるらしいから、二時間ぐらいじゃないかな?」

「まあ、そんなもんやろうな。で、港っちゅうんは何処でやるんやろうな?」

「フォスタナ河を無理なく航行できるサイズだったら、リュージェントでもできるみたい。川幅が三キロぐらいで、水深も一番深い場所で百メートルはないから、全長が百メートルを超えるような船は駄目らしいけど」

「その基準やったら、うちらの船は問題なさそうやな」

「うん。多分、リュージェントでできると思う」

 どうやら、港湾局で申請した後、リュージェントの川港で確認を受けることになりそうだ。登録申請の時は無料で港町との転移陣を使わせてもらえるとはいえ、一つの街で全て終わるならその方が面倒が無くていい。

「受付は何時からやっけ?」

「九時」

「ほな、片付けしたら丁度ええぐらいの時間か」

「うん」

 などと、打てば響くような会話を続けながら、さっさと朝食の片付けに入る宏と春菜。

 実のところ、神の船の登録は王家の方から余力ができたなら最優先でと命令があり、また、アズマ工房の場合は複数の理由から船のチェックをしても無駄なため、簡易検査で時間短縮するようにとの通達もある。なので、いつ行ってもすぐに申請が受理され、登録も外観と船室の数をチェックするだけ、三十分もあればすぐ終わるので、こんなに急がなくても大して差はない。

 だが、あえて誰もその事を告げておらず、春菜も港湾管理局の人間から今日以降なら問題ないとしか聞いていないため、早く行かないと先に予約が入り、待ち時間がかかると思っている。故に、

「さ、そろそろ出発しないと、検査が詰まっちゃうかも」

「そうだな」

 まだ八時になっていないと言うのに、その気になれば三十分かからない港湾管理局へ行く準備を全員が終わらせる。

 そのまま素直に出発できればよかったのだが、外には昨日の夕方ごろからずっと宏達が出てくるのを待っていた、気の長い生き物が隠れていたのだ。

「ダーリン! 会いたかった!」

 「それ」は一行が工房から出てくるのを見た瞬間、目をキラキラ輝かせて進路をふさぎ、そのままいつぞやのレイニーを彷彿とさせる、無駄に洗練された無駄のない動きで宏に飛びかかろうとしていた。

「ひぃ!?」

 どう見ても人間の少女、それもかなりの美少女にしか見えない姿をした「それ」の突撃を、悲鳴を上げながら回避する宏。宏と入れ替わるように立ちふさがった真琴が、大きくハリセンを振りかぶって「それ」を叩き落とす。

「へぎょっ!?」

「なんか、感触がおかしいわね」

 見た目にそぐわぬ悲鳴を上げて地面に叩きつけられた「それ」を冷ややかな目で見ながら、どうにも人間をしばいたとは思えぬ感触に首をかしげる真琴。なんとなく、オクトガルをハリセンで叩いた感触に近い気がするのだ。

「で、こいつは何者だ?」

「明らかに師匠をロックオンしてたけど……」

「ヒロが単独で工房から出て行動してたことなんて、ほとんど無かったが……」

 見たことも無い少女の存在に、不審を隠そうともしない達也と澪。見た感じ宏が知っている様子はなく、他のメンバーも見覚えが無いのは明らかだ。

 そもそも、宏が単独で工房を出て行動する機会があったのは、せいぜいダールに居る時まで。フォーレの時は他のメンバーと別行動であっても、移動をほとんど転移で行っているので全く知らない人間と顔を合わせる機会はほぼない。ローレンの時も基本的に同様だし、そもそもローレンはルーフェウス学院での行動が単独行動のメインなので、そこでひっかけていたとしてもこんな行動はしないだろう。

 可能性としては一目惚れなども考えられるが、宏の魅力は付き合いを深めてこそ分かるものだ。サーシャのような特殊例も存在するが、基本的にそうそうありうることではない。

 それ以前に、宏はリュージェントに来てから、まともに街を出歩いていない。リュージェントの工房を選定するときにちょっと動き回った程度で、その後は一度も直接街に出ていないのだから、一目惚れされたとしてもここを特定するのはほぼ不可能である。

 そこから考えられる要素として、アズマ工房サイドは目の前の何者かを知らないが、「それ」はアズマ工房のメンバーのうち、少なくとも日本人メンバーの顔は知っている、という事が挙げられる。

 そこまで考えた所で、立ち直った「それ」が新たな行動を起こす。

「ダーリン! 私を愛して! 私の足を切り落として~!!」

 起き上った「それ」が、身体のあちらこちらからイカの足や触腕を生やし、物騒な事を言いながら宏ににじり寄り始めたのだ。水色の髪に紫の瞳、どことなく神秘的な面差しの美少女、それもぎりぎり幼女を脱したぐらいの歳に見える少女からそれらが生えている姿は何とも言えず冒涜的で、SAN値がピンチになりそうだ。

 なんとなくにじり寄るというより這い寄ると表現したくなるそんな冒涜的な姿に、大抵の相手には怯まなくなった真琴ですら、思わずじりじりと後ずさる。その美しい顔に、やけに色っぽい表情を浮かべて期待に瞳を輝かせながら先ほどの言葉を発しているのだから、女性恐怖症の宏でなくても引くし、怖い。仮にイカの足が生えていなくても、間違いなくビビって逃げ腰になっていたと真琴は自覚している。

 この状況で、身長百四十センチないのにどう見てもEカップ以上ある、だとか、触腕の生えたロリ巨乳ってものすごくエロい、だとか考えている澪は、SANチェックに成功しているのかそもそもSAN値が手遅れなのかが微妙なところであろう。

 そうやってじわじわと追い詰められ、宏の背中が工房の扉に接触し、色々観念するしかないかと思ったところで、「それ」に対して空から派手に雷が落ちる。

「ぎょべば!?」

 先ほどから一転、「それ」は色気も何もない叫びをあげて地面に叩きつけられ、黒焦げになりながらぷすぷすと煙を上げてダウンする。今の一撃で擬態が解けたか、地面に転がっているのはこんがり焼けた大きなイカであった。

「イカって事は、もしかして……」

「私の巫女が、重ね重ね無礼を働いてしまい、申し訳ありません……」

 目の前に転がっている見事に焦げながらまだ息があるイカを見て、何かを思い出した様子の春菜。その春菜に答えるように、空から誰かが謝罪しながら降りてきた。

「本当に、本当に申し訳ありません!」

 降りて来てそうそう、すぐに土下座を始めた水色の髪の女性に、どうしたものかと戸惑うしかない一行。イカを指して私の巫女と言っているので、とりあえず正体の推測はできる。できるのだが、そんな存在に土下座をされても、どうすればいいのか分からない。

「えっと、あの、頭を上げていただけますか?」

「は、はい、申し訳ありません!」

 色々困惑しつつ、おずおずと声をかけた春菜に過剰反応する女性。

「一応確認ですが、レーフィア様でよろしいでしょうか?」

「はい。このたびは、私の巫女が色々とご迷惑をおかけしました……」

 まだ息がある、どころか普通に再生を始めたイカをぐりぐりと踏みにじりながら、深々と頭を下げるレーフィア。色気のある優しげな美女なのに、その行動で色々と台無しである。

「皆様はこれから船の登録に向かわれると聞いております。本当ならすぐにちゃんとした謝罪と賠償をすべきなのですが、それで皆様の予定を狂わせ、更にご迷惑をおかけするのは本末転倒です。ですので、船の登録を終えた後、経過の説明とその事に対する償いをさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

「えっと、まあ、私達はそれで問題ありませんけど、神様がそんなに腰が低くていいんですか?」

「今回ばかりは、神だからと傲慢な事はできません。従うべきルールを大きく破っていますし、そもそも現状で最低限同格、下手をすれば格上の相手に無礼を働いて傲慢な真似など、どれほど愚かなのかという話になります」

「……だって、宏君」

「勘弁してえや……」

 レーフィアの言葉に、うんざりした様子を見せる宏。とは言え、ここで押し問答を続けていてもはじまらない。本当はスルーしたくないのだが、とりあえず今はスルーしておくことにする。

「ほな、とりあえず船の登録済ませてから、やな」

「そうだね。という訳で、ちょっと行ってきます」

「はい」

 色々思う所はあるが、まずは目先の登録作業。そう考えて、さっさと港湾管理局に移動する。この日までに、急ぎの船舶登録は大方終わっていたこともあり、結局特別扱いなどなくてもすぐに登録が終わるのであった。
一応、オクトガルは神様には報告してます。
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