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フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~ 作者:埴輪星人

世界編

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第2話

「騒ぎになってるわね~……」

 遠目に見えるウルスの門を眺めながら、乾いた声で真琴がつぶやく。

「とりあえず、話はちゃんと通った」

「お疲れ様。大丈夫そうだった?」

「とりあえず、何とか騒ぎにならないよう情報コントロールはする、と言ってたな。で、そっちはどうだ?」

「さすがにこれだけのモンスターの解体になると、このあたりの雑魚は血の匂いで逆にビビって逃げ回るみたいなのよね」

「そうか、なら良かった」

 只今目の前でぶら下げられて血抜きが行われている超巨大なモンスターを見上げながら、ため息交じりにお互いの現状を報告する達也と真琴。大方血は抜けたらしく、首を切り落とした先にはぽたぽたと小さな滴が落ちている。先ほどまでは切り落とした頭部も別口で吊られていたのだが、そちらはすぐに血抜きが終わったために、既に倉庫にしまわれている。

 もっとも、小さな滴と言っても身体のサイズや先ほどまで流れ落ちていた血の量から比べれば、であり、現実には一滴で小さめの樽が満タンになる程度の量は滴り落ちているのだが。

 余談ながら、抜かれた血は亜空間タンクと呼ばれる特殊なタンクに蓄えられている。一本で最大十立方キロメートルほどの液体を蓄えることができるタンクだが、中に液体を入れるとき以外、見た目は普通のポリタンクで重量は空の時と変わらない。大量に血液を無駄にしたリヴァイアサンの時の反省を活かし、神力付与のスキルによって作った究極の便利グッズの一つである。

『そろそろ血抜きは十分そうやから、一旦地面に降ろすで』

 パーティチャットで、宏がこの後の行動を連絡してくる。いつまでもぶら下げておく訳にはいかないので、その内容自体は妥当だ。

『ちょっと待て。まだ安全確認が終わってない』

『了解や』

 すぐにでも神の船からぶら下げているそれを地面に降ろしかねない宏を制止し、達也が周囲の安全を確認する。達也の行動にあわせ、今度は真琴がウルスの街門を守る兵士達に声をかけに行く。

『とりあえず、今の段階で人の姿はねえな』

『こっちも、今から降ろすって話はしておいたわ』

『了解。ほな、降ろしていくから誘導頼むわ』

 そう言って、ゆっくり慎重にそれを地面に降ろしていく宏。ぶら下げられてるのは、リヴァイアサンよりは小さいと言っても、全長で一キロはある巨大な鳥だ。慎重にやらねば大惨事になる。

 間違っても、ドスンと落としてはいけない。

『今、首が地面のシートについた。そのままゆっくりいけ』

『おう』

『オーライ! オーライ! オーライ! ストップ! このままいくと、腿のあたりが森の方に落ちる。西の方にちょっと角度変えたほうがいい』

『了解や。……こんなもんか?』

『もうちょい。……よし!』

 達也の指示に従い、位置や向きを微調整しながらゆっくり地面に降ろしていく。いくらとんでもなく重いといっても、いくら風で大きく揺れないように首のあたりからワイヤーで地面に固定しているといっても、そんなにするする荷降ろしが終わるようなサイズではない。

 たっぷり一時間かけて、巨鳥の身体を地面に横たえる。

『よし、もういいぞ。お疲れ』

『兄貴もお疲れさん』

 翼を広げた状態で完全に地面にその身を預けた巨鳥を見て、作業の終わりを宣言する達也。この後まだ解体作業が残っているが、ひとまず一番厄介な作業は終わったと言えよう。

 これで、とりあえず巨大な物体が落下して大災害、などと言う笑えない事態だけは避けられた事になる。

『ほんま、これがウルス直撃のコースで墜落してった時は、本気で焦ったで……』

『まったくだ。よりにもよってそろそろ速度落として着陸態勢に、って時になあ……』

『よく、霊糸ロープが間にあったよね』

『射撃管制の澪の手柄やな』

『えっへん』

『あたし達だから対応できたと見るべきか、あたしたちじゃなきゃそもそもこんな事態になってないと見るべきか、非常に悩むところね……』

 とりあえず作業にひと段落ついた事もあり、解体の準備をしながら事態が起こった時の事を思い出して語りあうアズマ工房一行。もはや、野次馬の事は気にしない方針である。

 神の食肉たる三大モンスターの最後の一角、巨鳥ジズもついに宏達の手によって食材にされるときが来たのであった。







 事の起こりは、神域から帰る所までさかのぼる。

「……ここ、転移魔法は使えねえのか」

『神域だからな。神かその眷族以外は、基本的に出入りのための転移はできん』

「ウルスの時に、邪神側の奴が転移不可の神殿内で影を通って瞬間移動する、って荒技をやっとったんやけど、そういうんはできんの?」

『瘴気由来の移動方法は全て潰されるし、そもそも先の条件に当てはまらん連中は、自分の足以外での出入りはできん。だが、単純な短距離転移であれば、神域の出入りをしようとせん限りは、問題なく使える』

 ウルスに帰るための転移魔法、その不発と言う事態を受け、念のために神域の仕様を確認する一同。割と重要な事なので、きっちり確認しておく必要がありそうだ。

「他に、ここでできん事とかある?」

『あまり派手な破壊を伴う技などは使えん。もっとも、そもそもここで戦闘が発生すること自体、ほぼあり得なかろうがな』

「あり得ないってどう言う事かしら? 鎌とか振り回して農作業してたんだから、武器抜いて振り回す事は出来るわよね?」

『根本的な話として、わざわざこんなところまで争いごとを持ちこむ存在が、神域に通じる道を開く事はできん。それに、邪神やその眷族だと、ここまで清浄な土地には、いるだけでその存在が削られていくだろう。大霊窟の中にいる守護者たちは仮に殺されたところで瘴気の類は出さんし、命を失った時点で周囲をさらに浄化する性質があるから、守護者たちを殺して瘴気を増やす、という手口も使えん』

 狼の話に、色々納得するところがある一同。争いを持ちこむ存在がここに出入りできないのは、過去の記録やゲームの時のあれこれで普通に納得できる話だし、邪神サイドの連中がこういう場所を苦手としていることもよく分かる。

 その結果として、まずここで戦闘しようとすること自体がまずあり得なくなる。

「空から出入りする事は可能?」

『うむ。物理的に隔離されている訳ではないからな。もっとも、大霊窟と同じで、条件を満たしていない存在が出入りしようとしたところで、近寄ることもできんが』

 澪の質問に対する狼の回答、それで必要な情報がほぼすべて揃う。

 なお、かなりどうでもいい余談だが、ここまで口を開かなかった春菜は、宏の背中に張り付いている芋虫に神キャベツを与えていた。一応今回は、ちゃんと宏の許可を取っているので、どれだけ食わせてもあまり問題はない。

「師匠、神の船で帰る」

「せやな。わざわざ大霊窟抜けてから転移魔法使うより、その方が早いやろ」

 狼から聞き出した情報をもとに、どうやって帰るかを決める宏と澪。用も無いのに大霊窟を歩いて抜けるのは、どうにも面倒くさく感じる。大霊窟の素材は一日以上たたなければ復活しないと狼から聞いているので、来る途中でほぼ採りつくしている今回は、ただ移動するだけになってしまう。

 もう一度ここに来る必要が出たとして、余程緊急でない限りは大霊窟で材料を集めながら移動するので、来るたびに大霊窟を抜けること自体は特に問題ない。なので、わざわざここに転送陣を設置するより、空を飛んで帰る方が間違いなく手っ取り早い。宏と澪は、そういう思考の流れで同じ結論に到達したようだ。

「っちゅう事で、空飛んで帰るわ」

『そうか。またここと大霊窟で採れるものが必要になったら、いつでも来るがいい』

「そん時はまた頼むで」

 名残惜しげな狼に挨拶し、神の船を呼び出す宏。この時、山を越えた後ちゃんと高度を下げていれば後のトラブルは避けられたのだが……。

「今は高度三万メートルか。面倒やからこのままウルスまでまっすぐ飛ぼか」

「そうだね。あんまり低い所を飛ぶと、高めの山に引っかかりそうになるしね」

 色々横着をしてそのままウルスに向かう事を選択してしまう。

「この高さやと地面は全然見えんし、ちょっとスピード出して早めに帰るで」

 全速力だと制御しきれない、と言う事で、とりあえずウルスとルーフェウスを三十分で移動できるぐらいの速度を出す宏。大霊窟からウルスなら、恐らく十二、三分といったところか。色々と常識外れのスピードなのは間違いない。

 雲などに阻まれて余り地面が見えない高さだと言う事もあり、メンバーも宏の方針に特に文句は言わない。

「この高さだと、どれぐらい早いのかよくわかんないわよねえ……」

「もう少し低いところだと、飛行型モンスターも結構いるんだけどね」

「そっちを警戒して甲板に出ちゃいるが、あまり意味はなさそうだな」

「見える範囲内に生き物の影なし。達兄、多分警戒は無意味」

 いかに地球とは生態系や物理法則に違いがあると言っても、流石に高度三万メートルとなるとそうそうモンスターはいないらしい。出発から十分ほど、非常に平和な時間が流れる。そして

「そろそろウルス着く頃やな。ちょっと速度落とすから、衝撃に気ぃつけてな」

「了解。宏君も気をつけてね」

 ウルスの近郊、とまでは言えないが宏達の感覚では近場に入る、馬車で二日から三日ほどの場所にある都市群の上空。そろそろ速度を落として着陸態勢に、という所で異変が起こる。

「師匠! 周辺空域が異界化!」

「こっちも今察知した! ……こら多分、移動型の空中ダンジョン、それもフィールドタイプの奴や!」

 情報パネルの表示を見て、状況を把握する宏。双方の移動速度が極端に速かったため、半径千キロ以上の探知範囲がある神の船のレーダーですら、探知してからの回避行動が不可能だったのだ。

 しかも厄介なことに、この気まぐれなダンジョンは神の船を飲み込んだ時点で移動をやめ、その場に居座ってしまう。結果として、ダンジョンコアとボスの存在する空域が、丁度ウルスの上空に来てしまったのである。

 一瞬にして周囲を大型の飛行モンスターが取り囲む。彼我の速度差の問題で集中砲火を受ける事はまぬがれているが、それは逆に下手に速度を落とせなくなった事も意味する。

「魔導レーザーと魔導ミサイル全砲門展開! 最大出力で一斉発射や!」

 一気に悪化した状況に対応すべく、最初から全力で事に当たる宏。そんな緊迫した空気を無視し、芋虫が左肩から背中へもぞもぞ移動する。

 大量の魔導レーザーと魔導ミサイルが空を埋め尽くし、次々とモンスターたちを撃墜していく。

 神の船の武装は最大出力で発射した場合、艦首と艦尾の高出力レーザーは当たり所がよければガルバレンジアクラスを、バルカンタイプと拡散タイプでも当りどころによってはワイバーンを一撃で叩き落とすだけの火力を持つ。ミサイルも高出力レーザーと似たような攻撃力を持ち、こちらは誘導性能がかなり高い。

 しかもバルカンタイプはその出力で秒間百五十発、拡散タイプでも秒間八十発は弾をばらまけ、高出力レーザーは三十秒程度の持続発射が可能となっている。ミサイルはそこまでの密度では発射できないが、逆に誘導性が高い弾を同時に六十発強発射できる。

 たとえ一体で都市を滅ぼせる実力を持つダンジョンモンスターたちといえど、それだけの威力と密度を持つ攻撃を放たれて、無事でいられる訳がない。

 最初に囲んでいたモンスターは、ある者は瞬時にハチの巣にされ、ある者は頭をミサイルで粉砕され、ある者は艦首のレーザーにより焼きつくされ、一体たりとも神の船に攻撃を届かせることなく瞬時に殲滅される。

「やば! グリードフィールド展開!」

 空中戦になった時、素材が地面に落ちて無駄になると勿体ない、などと言うせせこましい理由で搭載された特殊機能・グリードフィールド。それを慌てて展開して次々に落ちていくモンスターの死体を回収していく。

 機能を搭載した理由は素材目当てだが、今回に限っては素材は関係ない。全長十メートルオーバーの大型モンスターが地面に落ちてしまうと、地表の被害が洒落にならなくなってしまうのだ。高度三万メートルの位置エネルギーとこのダンジョンのモンスターの耐久度を、甘く見てはいけない。

 そんな宏の緊張感など無視し、肩甲骨のあたりまで移動して、一仕事終えたような感じで一休みする芋虫。

「師匠! 特大の瘴気がこっちに突っ込んでくる!」

「こっちでも捕捉した! あかん! 正面衝突コースや!」

 次々に襲いかかってくるワイバーンやレッサードラゴン、各種属性ドラゴンなどを、ほとんど垂れ流しと言っていい攻撃でほぼ自動的に撃墜し、地上のダンジョンにおける壁の役割をしているであろう浮遊岩石を必死になって回避しながらダンジョンを飛び回る事数分。左右に大きく向きを変えることができない場所に誘導された神の船の針路を、巨大な瘴気の塊が塞ぐ。

 異界化の影響により、ほんの数百キロ四方の面積で世界中の空の広さを超える面積を持つにいたった空中ダンジョン。その広さ故にボスの捕捉が遅れた宏達は、ダンジョンの構造にひっかけられて衝突を回避するタイミングを完全に逸してしまった。

「なんだ、あのでかいのは!?」

「ベヒモス、リヴァイアサンって来てるんだから、ジズに決まってるでしょうが!」

「そういう事を言ってんじゃねえ!」

 澪が警告を発し、宏がその存在を補足した直後に、まるで光学迷彩でも解除したかのように唐突に巨大な鳥が出現する。

 そのサイズは、どう小さく見積もっても一キロを超える。それが凄まじいスピードで近付いてきているのだ。少々舵を切ったところで、衝突など避けようがない。

「宏君! ぶつかる!」

「兵装全停止! 余剰エネルギーを全部バリアに! 皆、衝突に備えや!」

 ここに至ってはどうにもならない。色々覚悟を決めた宏は、自身の製造物を信じて速度を上げ、巨鳥の頭に真正面からぶつかって行く。結果……



 当たり負けしたのは、巨鳥の方であった。



「師匠! ボスが墜落!」

「ヤバい! グリードフィールドの性能超えとる! 澪、誘導頼むわ!」

「了解!」

「霊糸ロープ発射!」

 グリードフィールドの吸引力で若干落下速度が緩んだ巨鳥の首に、澪が的確にロープを巻きつける。単に脳震盪を起こして落下していただけの巨鳥は、ロープが巻き付いた事による首への自重のダメージが止めとなり、その生命活動を停止した。

 全長一キロオーバーの巨鳥。その重量と落下エネルギーは流石の神の船といえども厳しいらしく、引きずられるように一万メートル近く高度が下がる。

「宏君! 異界化が解けてくよ!」

「急速停止!」

 いつの間にかウルスの東にある平原まで来ていた事に気がつき、慌てて停止をかける宏。船自体に対する衝撃はイナーシャルキャンセラーで完全に無効化されても、流石に吊り下げている巨鳥の身体にまではその効果は及ばない。

 振り子のように大きく振り回される巨鳥。それにあわせて、一枚十数メートルの大きさの羽がそれなりの量飛び散って、次々とグリードフィールドに回収される。

 それを確認して、大きく息を吐き出す宏。一連の緊急事態を、どうにか無事収束させる事ができたようである。他のメンバーも緊張を緩める中、最初から緊張感の欠片も無い芋虫がもぞもぞ這いまわり、宏の右肩まで這い上って落ち着く。大霊窟帰りで鎧を着ているからまだいいが、これが普段着だったらこそばゆくてたまったものではなかっただろう。

「揺れてるなあ……」

「揺れてるわねえ……」

 ぐったりしたままぶらぶらと揺られる巨鳥の身体を見降ろして、何処となく疲れたようにぼやく達也と真琴。船は空中にがっちり固定されてびくともしていないが、それだけ鳥の身体を揺らす運動エネルギーが減衰しないことも意味する。

「なあ、ヒロ、澪。あれ、どうにかならないのか?」

「今、運動エネルギー吸い上げとるから、もうちょい待って」

 ぶらりと振られるたびに凄まじい衝撃波が飛び散るのを見て、かなりまずいと思った達也の言葉に、既に対応中の宏が答える。

「なあ、澪。解体するために頭下にするから、揺れ収まったら足の方にロープかけて来て貰うてええ?」

「了解」

 いきなり無茶を言い出す宏に、あっさり了承の意を告げる澪。飛行魔法が使えるようになったからと、割と気楽な感じである。

「兄貴と真琴さんは、悪いんやけどちょっと下まで飛んで、あっちこっちに話通して来てくれへん?」

「おう、ちょっと行ってくる」

「人手が必要そうなら連絡頂戴。適当にかき集めてくるから」

「せやな。そん時は頼むわ。後、準備出来たら連絡するから、真琴さんは頭落とすんも頼むわ」

「OK」

 宏の割り振った役割分担に、年長者二人もあっさり従う。宏が趣味に走って余計な事をしまくった結果の騒動ならともかく、今回は避けようのない種類の偶発的な接触。仕留めなければ自分達が全滅している上、倒して終わり、とできるような大きさの生き物ではない。

 故に説教をするような事柄でもなく(と言うより、普通の冒険者ならむしろ自慢して回る種類の話だ)、後始末のために動きまわることもやぶさかではない。宏に言われなくとも、ウルスの公的機関をはじめとしたあちらこちらの組織に話を通すのは自分達の仕事だと考えていた。

 正直なところ、ウルス近郊でこんな巨大な生物を解体するのはどんな騒ぎにつながるか分からなくて憂鬱だが、逆にファーレーン国内だとウルス以外に知り合いが多い都市はアドネぐらいしかない。考えようによっては、自分達の顔が売れており、上から下まであちらこちらにスムーズに話が通せるウルスの方が、他の都市で同じ事をやるよりはるかにましかもしれない。

「春菜さんは、念のために周囲警戒しとって。あれこれあって大分高度下がっとるから、モンスターに絡まれるかもしれへん」

「うん、分かってるよ」

 トータルでの対応能力が一番高い春菜を周囲の警戒に回し、役割分担が完了する。その後一時間ほどかけて巨鳥の上下を入れかえ、冒頭の状況に持ちこむ。

 この間、芋虫は最後まで宏の肩から動かないのであった。







「さて、まずは羽根むしるところからやけど……」

「これ、生身でやるの大変そうだよね。リヴァイアサンの時は、鱗とかどうしてたの?」

「リヴァイアサンの時は、鱗ある場所もそんなになかったし、皮にほぼ密着しとったから割と簡単やってんけどなあ……」

「この鳥の羽根、ものによっては人間の胴体より軸が太いよね」

「それが難儀やねんな。引っこ抜くにしても、下手したらロープで固定して馬で引っ張らなあかんし」

「師匠、これ人海戦術の方がいいと思う」

「せやなあ。上の方は僕らでやるとしても、下の方は普通に手伝うてもろた方がええな」

 巨鳥の解体は、のっけから難航する気配が漏れていた。

「日当はどんなもんやろ? 一人百クローネぐらいでええか?」

「それぐらいでも別にいいけど、そんなにいらないんじゃないかな?」

「十クローネにリヴァイアサンのかば焼き串二本あたりで十分だと思う」

「むしろ、リヴァイアサン料理だけでも十分だぞ?」

 腹の上で羽毛をむしりながら支払う日当について話し合っていると、様子を見に来たらしいレイオットが突っ込みを入れてくれる。金銭感覚やものに対する価値観が完全にずれてしまっている宏達の場合、こういう突っ込みがなければ妥当な報酬額など決められない。

 その様子を我関せずといった感じで聞き流していた芋虫が、宏の腰あたりまで降りて来てジズの羽毛をこっそり食べようとし、口にあわずに再び這い上がって行く。

「まあ、リヴァイアサン料理だけでええんやったら、こっちとしても話は早いんやけどなあ」

「食材を一気に消費できるチャンスだもんね」

「一トンは無理でも、百キロぐらいは減らしたい」

「とりあえず一応お金払う準備はしておいて、それとは別にリヴァイアサン食べ放題を用意すればいいかな?」

 万トン単位の食材が全く減る様子を見せないリヴァイアサン。それを一気に減らすチャンスと見て、短時間で大量に作れる料理を検討し始める三人。これを言うと怒られそうだが、いい加減リヴァイアサンとベヒモスのヘビーローテーションはレパートリー的に厳しくなってきているのである。

 もっとも、飽きるほど食っているのはアズマ工房関係者ぐらいで、一般的には普通にいくら金を積んでも食えない幻の食材なのだが。

「……まあ、いい。余り長いことこんなものを放置されても困るから、騎士団からも一個大隊ほど人を出す。今まででこちらが貰い過ぎだから、費用は気にするな」

「そらありがたいんやけど、ほんまにええん?」

「ああ。ただ、食事は用意してくれるとありがたい。その人数となると、準備と運搬の手間とコストもなかなかでな」

「それぐらい問題あらへんで。リヴァイアサンでよかったら、トン単位で食ってくれてええから」

 レイオットのありがたい申し出に、ここぞとばかりにリヴァイアサンの魚肉を減らそうと画策する宏。カロリー消費の激しい騎士たちなら、さぞ大量に食ってくれるだろう。

 その様子に、余程処分に困っているらしいと苦笑するしかないレイオット。

「っちゅうか、今日は流石に料理できんやろうけど、こいつの肉も追加になる訳やん」

「ああ、なるな」

「こいつの素材も、市場に流しても買い手なんざつかん訳やん」

「つかんだろうな」

「しかもな。こいつと衝突事故起こす前に、大量にワイバーンとかレッサードラゴンとか撃ち落としてんねんわ」

 宏の言いたい事を察し、微妙に顔が引きつるレイオット。

「正直な、今一番急いでやらなあかんの、地味に料理人の育成やと思うねん」

 宏のその素敵な指摘は、誰一人として否定できない。

「リヴァイアサンとかジズはまあ、生息場所が生息場所やから、最低でも向こう百年はおかわりはあらへんと思うけどな。ベヒモスはクレストケイブの鉱山ダンジョンでボスやっとる訳やん。大体の罠も僕らが暴いてもうてる訳やし、いずれ討伐してくる連中は絶対出てくるで」

「……そうだな」

「まあ、攻略に本腰入れてるダンジョンでもあらへんし、ベヒモスまでってなったら下手したら十年ぐらい時間あるから、その頃にはうちの工房でもファムら四人はベヒモス素材ぐらい加工できるやろうけど、料理の方がなあ……」

「十年で、ベヒモスを調理できるようになるものなのか?」

「ひたすらモンスター食材の調理が難しい奴ばっかり触っとったら、単純なステーキぐらいは行けると思うで」

 なかなかシビアな事を言ってのける宏に、渋い顔を隠せないレイオット。

 そんな真面目な会話の間も宏の羽毛をむしる手は止まらず、芋虫がもぞもぞ動くのも変わらない。今は宏の抜け毛をもしゃもしゃと食べている。こっちはジズの羽毛と違い、芋虫の口にあっているようだ。

「ジノらがもうちょい手ぇ離れたら、何カ所か食堂作って実地で料理人鍛えるんもありかもな。仕留めたばっかでまだ全然ばらしてへんけど、飛行型のモンスター肉やったらトロール鳥クラスからグレータードラゴンまで、難易度別になおして二十段階ぐらいのんが千トン単位で揃ってしもとるし」

「だったら金は出すから、解体が終わった分を全段階、五トンずつぐらい売ってくれ。城勤めの料理人や騎士団の調理担当者を鍛えるのに使う」

「了解。こいつ終わったら適当にばらして、比較的メニューで使いやすいところ中心に納品しとくわ」

「頼む」

 取引を成立させたところで、視界を埋め尽くすほどの数のオクトガルが出現する。

「手伝いに来たの~」

「羽根むしり~」

「運搬運搬~」

「遺体遺棄~」

「この大きさの遺体を遺棄すると、なかなかの騒ぎになりそうだな」

「いろんな意味で、そんな真似できんやろ」

 いつものように言いたい放題言いながら、十数メートルの大きさに巨大化して羽根をむしり始めるオクトガル。その大きさと腕の数により、ネックとなりそうだった翼の部分が結構な勢いでむしられていく。それを驚きの目で見ながら、援軍で来た騎士団が脚のあたりにある羽根の根もとをロープで固定し、数名がかりで引っ張って抜いていく。

「とりあえず、私は騎士団の方にいる。何かあったら声をかけてくれ」

「了解や。色々助かる」

「こんなもの、いつまでも置いてはおけんからな」

 そう言い置いて、騎士団の指揮に移るレイオット。宏にひっついている芋虫について、話を聞くべきかどうか内心で迷っていたのはここだけの話だ。

 レイオットが転移魔法で騎士団のもとに移動した直後、ほぼ入れ違いのタイミングで足元から誰かが宏を大声で呼ぶ。

「おい、ヒロシ! いるか!?」

「あれ? ハンサムさんやん。どないしたん?」

 宏に声をかけたのは深緑の牙の渉外担当、ハーン・サンドロームであった。その後ろには、五、六十名ほどの冒険者達が。

「どうしたって、冒険者協会で話を聞いて、手伝いに来たんだよ」

「そらありがたいけど、ハンサムさんクラスの冒険者がやる仕事ちゃうで?」

「なに、アズマ工房には色々世話になってるからな。それに、いい飯を食い放題なんだろう? 食うに困り気味の新米のうち、見込みありそうなのを見つくろって連れてきたんだよ。こいつらにも、神話クラスのモンスターを見せてやりたかったしな」

「リヴァイアサン料理でよかったら、たらふく食ってってくれてええで。正直、魚肉が余って余ってしゃあないんよ」

 いつものように常識とか自重をさっくりと捨てた台詞に、苦笑を禁じ得ないハーン。

「十分だ。ってか、そんなもん、こんな機会でもないと食えねえよ。で、どのあたりを手伝えばいい?」

「せやな。右脚は騎士団の皆さんがやってくれはるから、左脚の方で羽根むしってきて。やり方は騎士団の皆さんに聞いてくれればええわ」

「分かった。で、その芋虫はなんだ?」

「大霊窟行った時にな、懐かれてしもてん」

「……相変わらず、訳の分からない事になってるんだな」

 どこかに行っては妙な結果を出してくる宏達に、もはや呆れを通り越して感心する域に至るハーン。こいつらは自分達とは別カテゴリーだと割り切っているため、嫉妬だの羨望だのと言う感情は湧かない。

 本来求められる姿の冒険者をやっていると、襲撃してきた訳でもない神話級のモンスターを仕留めるなんて無意味な事は、一切しないものなのだ。

「後からブラッディローズの連中とランディ達も新米連れてくるから、そいつらにも食わせてやってくれ」

「仕事してから食うてくれる分には、大歓迎やで。なにせ、仕留めた奴のサイズがサイズだけに、何もかもが万トンクラスで残ってんねんわ」

「そりゃまた豪快だな」

「リヴァイアサンはこれよりでかかったからなあ」

「……神話クラスのモンスターってのは、どれも難儀なもんだな」

 宏のカミングアウトを聞いて、思わず遠い目をしてしまうハーン。これよりでかいリヴァイアサンの肉が万トン単位で残っている、と言う事は、この鳥の肉が追加されるとさらに消費が追い付かなくなる訳で……。

「まあ、がんばって食ってくれ」

「一通り味わって料理の開発終わったら、ハンサムさんらにもたらふく食わせるから覚悟しとってや……」

「どう頑張っても何キロも食えんから、諦めろ」

 そう言い置いて、作業に混ざるハーン。

「春菜さん。かなりの人数手伝ってくれるみたいやから、自分ちょっとリヴァイアサン料理の仕込みに入っとった方がええんちゃう?」

「そうだね。もしかしたら、一トンぐらい食べつくせるかも」

「問題は、そんなに調理できるかやけどな」

「使える機材は何でも使うから、どうにかできると思うよ」

 焼け石に水には変わりないながらも今までより大きく消費できる機会とあって、妙に張りきる春菜。まだ解体が済んでいないドラゴンやワイバーン、トロール鳥などの飛行型モンスターが大量にあるとか、この後こいつの肉類が万トン単位で追加されるとか、そのあたりの事情は考えない事にしているらしい。

 その後も次々に現れる手伝いの人員により、難航するかと思われた解体作業は意外とスムーズに進み、どうにか日が落ちる前に全ての作業が終わったのであった。







「やっぱ人手多いとありがたいわ。主に運搬の問題で」

 作業終了後。道具を片づけ必要な後始末をしながら、予定よりはるかにスムーズに終わった解体作業に対してそんな感想を真琴に告げる宏。同感だったのか、片付けを手伝いながら真琴も大きく頷く。

「そうね。てか宏、リヴァイアサンの時はどうやってたのよ?」

「切り方アバウトにして手間減らした、っちゅうんもあるけど、魚は構造簡単やから、ばらすんもそんなに手間かからへんからなあ。鳥とかとちごて、変な所に骨あったりせえへんし」

 宏の説明に、非常に納得する真琴。特に手足の有無は大きいらしい。

「で、思いっきり少なく見積もっても三千人ぐらい手伝いに来てるんだけど、料理足りてるのかしら?」

「船とワンボックスのライン調理機能をフル回転させとったし、何とかするんちゃう?」

 まるで戦場のような配膳所を見て、料理の心配をする真琴。たかが数千人程度で食材が足りなくなる事はないが、食材があれば料理が供給できる訳ではない。食材を食べられるようにするには、下ごしらえと言う作業が絶対に必要なのだ。

 その下ごしらえも現状、春菜と澪以外が手を出せる領分ではなく、調理補助に入っているアズマ工房の職員達も、やっている事は二人の指示に従って、下ごしらえが終わったものを調理ラインに供給するか、ラインから出てきた物を皿に盛り付けているかのどちらかである。

 人数とおかわりの頻度からいちいち一人一人に手渡しなどできないため、料理のジャンルごとにセルフサービス式で山盛り置いてあるが、それでもちょっと目を離すとすぐに食べつくされてしまう。そのため、調理班は片時たりとも手を止める事ができずに動き回らざるを得ないようだ。

 神の船に組み込んだ調理ライン機能が船外に展開できる仕様でなければ、とうの昔に破綻しているだろう。それだけの人数が、手伝いに来ていたのだ。

「僕もそろそろ、着替えて向こう入った方がよさそうやな」

「そうね。それにしても、こんなに手伝いに来てくれるとは思わなかったわね」

「せやな。特に漁港と屋台仲間が予想外やったわ」

 鎧を外し、上着を脱ぎながら真琴の感想に同意する宏。当初の予定では騎士団からの一個大隊とオルテム村からの援軍、それから適当に雇った冒険者達で、合わせて千五百人ぐらいのつもりだったのだ。

 それが蓋を開けてみると、アズマ工房が居を構えている職人街から百人ぐらい、旧スラム地区の住人が二百人ぐらい、メリザ商会がその伝手を使って集めてきた人員が二百人ぐらい、という感じで、関わりのある組織や団体からどんどん人が集まってきたのである。

 特に大きかったのが、アルフェミナ神殿から総出で手伝いに来た人たちだろう。日々の修業で鍛えられた彼らは下手な人足より運搬関係で頼りになり、またさまざまな階層の人間が入り混じる事によるトラブルを、上手い具合に解決してくれたのだ。道具も含めると漁港の三百人とメリザ商会の二百人も、かなり助けになっていた。

 結果的に、街の一つや二つ、余裕で作れるだけの人員が動いた事になるが、解体するものの大きさと総重量を考えれば、本来ならむしろまったく足りないぐらいである。現時点でのアズマ工房の影響力がどれほどのものか、よく分かるだろう。

 なんだかんだと言いながら、ウルスは彼らがもっとも長く過ごした都市で、今でも本拠地となっている場所だ。知り合いが多いのも影響力が大きいのも、当然ではある。

「ほな、ちょっと料理してくるから、そいつ預かっといて」

「了解。キャベツ食べさせとくわ」

 上半身だけとはいえ新しい清潔な服装に着替え、現在戦争中の厨房に飛び込んで行く宏。宏の参戦で処理能力が上がり、一気に優勢に傾き始める夕食戦線。結局誰一人として日当を受け取らなかったため、せめて料理を切らせてはいけない。全員満腹にして帰らせる。そんなある種の気迫を持って、どんどん新たな料理を作り上げていく調理チーム。

 その様子を眺めながら、珍しく大人しく宏の背中から降りた芋虫に、神キャベツの虫食いがある葉っぱを食べさせる真琴。芋虫と言うのは基本そういうものではあるが、こいつも実によく食べる。

「あたしもそろそろ、フライか何か貰ってこようかしら」

「空腹だろうと思って、お前の分も貰っておいた」

「あら、リーナじゃない。久しぶり」

「直接顔を合わせるのは、久しぶりだな。で、そろそろ私は偽名を使う必要はないと思うのだが?」

「あ~、なんとなくそれで定着しちゃった感じなのよねえ……」

「分からないではないが……」

 まだアツアツの白身魚フライを受け取りながらの真琴の言葉に、小さく苦笑するレイナ。もはやあだ名のようなものなので、別にそれはそれでかまわないのだが、なんとなく本名を忘れられていそうな気がして少々悲しい。

「それで、どうしたのよ? 旧交を温めに来ただけって感じじゃないみたいだけど」

「少々、居心地が悪くなってな……」

 そう言って、もはや宴会場になりつつある広場に視線を向けるレイナ。その視線を追いかけて、色々納得する真琴。

「あ~、まるでお見合い会場みたいになってるわね」

「あちらこちらでカップルが成立していてな。とにかく居心地が悪い」

「リア充爆発しろ、って感じ?」

「そこまでは言わないが……」

 からかうような真琴の言葉に、非常に渋い顔をするレイナ。カタリナの乱での経験で、かつてのように男と見れば反発する事はなくなったレイナだが、それでも男性相手に身構える部分がない訳ではない。

 あの事件で粛清された連中が特殊だったとはいえ、一応同僚に当る男達から言われた内容はまだまだ尾を引いているようで、任務以外で積極的に男との交流を持とうとは思えないのだ。

 結果として、今回のような状況になるとどうしてもあぶれてしまいがちなレイナ。同じように過去の出来事から今は男を求めておらず、しかもお見合いパーティなどで孤立する事を苦としない真琴は、避難場所にするにはもってこいなのである。

「てかさ、粉かけてくる男とかはいないの?」

「いると思うか? この女性らしい柔らかさの欠片も無い筋肉の塊に」

「別に、体つきだけで決まる訳じゃないと思うんだけど?」

 そう言って視線を走らせた先には、すでにいき遅れ扱いされる歳になってしまっている女性騎士。レイナに負けず劣らずマッシブで凹凸の乏しい身体をしていながら、年下のなかなかに魅力的な男性と実にいい雰囲気になっている。

「あの人が大丈夫なんだから、リーナだってそのうちいい男が現れるわよ」

「そうは言うが……」

 どうにも色々と薬が効き過ぎ、完全に委縮してしまっているレイナ。こういう事で無理強いしてもいい事は何もないので、とりあえずここは話を変えることにする。

「そういや、最近どんな感じ? 確か、宏を再起不能一歩手前まで追い詰めた罰で、見習いに戻されたってのは聞いてるんだけど」

「まだ見習いをやっている。そうそう昇格できるものではないしな」

「そっか。まあ、すぐに昇格するようじゃ、罰にならないものね」

「そういうことだろうな。もっとも、教官をはじめとして、周りが妙にやりにくそうなのが申し訳ないが」

 レイナの近況報告に、思わず「あ~」と呟いてしまう真琴。レイナは本来、精神面の未熟さに目をつぶれば、正騎士、それも王族直属を務めさせられるだけの実力を持っている。その精神の未熟さも宏達との共同生活やカタリナの乱を経て改善され始めている今、見習いの中に置いておくのは非常にミスマッチな状況になっているのだ。

 そもそも、その精神の未熟さにしたところで、宏と春菜に拾われた直後のようなケース以外では、上司や周囲がしっかりしていれば十分にコントロールがきく範囲だった。思いこみでエアリスの命令を完全に無視したのはかばいようがないが、その結果引き起こした事態をちゃんと反省し自分から進んで針のむしろに座りに行った事で、事件終了後には宏が用意した道具がなくてもそれなりに改善がみられていた。

 平の騎士、それも経験年数の短い人間の中には、レイナより精神面で未熟なものもそれなりにいる。近衛のような重要な立場に昇格するにはまだまだ危なっかしいが、そろそろ正騎士までは戻してもいいのではないか。その程度には成長を見せているのだ。

「それにしても、その芋虫はなんだ?」

「大霊窟で宏が拾ってきたのよ。随分あいつに懐いてるのよね」

「相変わらず、予想できないものを惹きつけるな」

「惹きつけるって言うか、引き寄せるって言うか。ダルジャン様によると、あり得ない確率の出来事を引き寄せるのは春菜のせいらしいんだけど、実際には宏も怪しいところだとは思うのよね」

「敵対しない特殊な存在の担当がヒロシなのではないか?」

「そうかもね」

 芋虫に神キャベツの葉を与えながら、宏の事について盛り上がる。その間もひたすらもしゃもしゃとキャベツの葉を食べ続ける芋虫。

 そんな芋虫に苦笑しつつ、なんとなく春菜がずっとキャベツを与え続けてしまう気持ちを理解する真琴。ただひたすら芋虫がキャベツを食べているだけなのに、その姿に妙に癒されるのだ。

「それにしても、やっぱりやっつけ仕事ねえ。いつも食べてるのより味が落ちるわ」

「そうなのか?」

「ええ。リヴァイアサンの白身フライは、時間経ってももっと美味しいわよ」

「私には、これでも今まで食べた事がないほど美味いのだが……」

「贅沢を覚えちゃうと駄目ねえ……」

 正直に感想を述べる真琴に、少しばかり恐ろしいものを感じるレイナ。恐らくこの白身フライですら、貴族階級でも食べた事がない代物だ。それ以上を常日頃から食べているとなると、想像するだけでも恐ろしい事になる。

 なお、貴族階級に限定したのは、王族は宏達と頻繁に会っているため、割と普通に最高の美味を味わっているからである。

「手抜きになっちゃっても割と味変わらないのは、多分ブイヤベースあたりね」

「そうか。だったらもらってこよう」

「お願い。っとそうだ、そろそろ一杯やろうかと思うんだけど、あんたも飲む?」

「一応これでも任務中だからな。ここは遠慮しておこう」

 真琴の誘いを断り、二人分のブイヤベースをもらいに行くレイナ。途中、宏が解体ショーなどとほざいて目の前で調理をしているところを目撃したりと色々ありはしたが、それでも無事に色々な料理を確保することに成功する。

 ほとんどの人間に数日分の料理をつめた腐敗防止パックを押し付けたこともあり、なんだかんだで二トンほどのリヴァイアサン肉を消費することに成功するのであった。
地味に、アズマ工房がウルスでどういう立場にいるかとか
これまで築いてきた人脈とかがもろに出てきた気がする。

なお、ジズが当たり負けしたのは、単純に出力の問題です。
旧型のレイズナーがザカールに当たり負けして一方的にやられたような感じ。
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