国内第二次予選・成田空港
東京ドームの予選から3週間が過ぎた9月上旬のある日。
午前6時近いという早朝。成田空港近くにあるホテルのある一室になんとも怪しげな一団が集まっていた。
それぞれスーツケースやらバッグを数多く持っている。
もうお分かりだろう。3週間前の「CNRウルトラクイズ」の第一次予選を突破した100名の挑戦者達が集まっていたのだ。
彼らはこれから1ヶ月に及ぶクイズツアーに備え荷物を持ってきていたのだ。
「おはようございま〜す!」
6時を少し回った頃、caviarさんが現れ、歓声が上がった。
「さあ、いよいよ今日は第二次予選です。ここを通過できたら、飛行機に乗って日本脱出、憧れのグアム行き。さて、第二次予選の方法ですが…。勿論、これに決まってますよね?」
そう言うとcaviarさんはプラカードを取り出した。
そのプラカードには「ジャンケン」と書かれていた。と、
「ちょっと待ったあ!」
と声が聞こえ、阿笠博士が現れた。
「あれ、阿笠博士、どうしたんですか?」
caviarさんが聞く。
「そんなジャンケンなんて、みんなやりたくないじゃろう? ここにいるみんなの本当の希望はこれじゃろ?」
そう言うと阿笠博士は「全員通過」と書かれたプラカードを取り出した。
歓声が起こる場内。
「何を言ってるんですか、博士。やはりここはジャンケンじゃないと皆さん怒りますよ」
caviarさんがそう言うと阿笠博士は、挑戦者に向かって、
「ワシらはジャンケンがだいっ嫌いじゃ!」
「だいっ嫌いだ!」
「だいっ嫌いじゃ!」
「だいっ嫌いだ!」
「ジャンケンなんて子供の遊びはやめろー!」
「やめろー!」
「やめろー!」
「やめろー!」
「第二次予選は全員通過じゃー!」
「全員通過だ!」
「全員通過じゃ!」
「全員通過だ!」
とシュプレッヒコールを浴びせる。
その様子に思わず苦笑いをするcaviarさん。
「…わかりました。では私が今から3問問題を出しましょう。その3問全部正解したら全員通過とします!」
思わず歓声が起こる場内。
「但し! …但しですよ。その間、絶対ジャンケンという言葉を口にしないこと!」
「ちょっと待つのじゃ! それはいくらなんでも…」
「全員通過がかかってるんですから、それくらい当然でしょう?」
「よーしわかった。いいか、みんな決してジャン…、グルジムなんて言っちゃ駄目じゃぞ!」
「大丈夫ですね。それでは行きましょう。問題! フランスの俳優ジャン・ギャバンと日本の俳優、高倉健。この二人のファーストネームをフランス、日本の順で言うと何?」
「うっ…」
思わず答えに詰まる全員。答えはわかってるのだが、それはNGワードなのだから。
…数秒後、
「はい、誰も答えられませんでしたね。それでは第二次予選はジャンケンに決定!」
caviarさんがそう言うとスタッフがジャンケンのポイントが表示される判定機を持ってきて、予定通りのジャンケン大会が始まったのである。
*
「…今度はCNRの作家さん同士の対決ですね。…高明さんと朧月さんの対決です」
「えっ、うそー!」
そう言いながら二人が壇上にあがった。
「…どうしたんですか?」
caviarさんが聞く。
「昨日泊まったホテルの部屋、一緒だったんです」
高明さんが言う。
「そうだったんですか…。でも、『昨日の敵は今日の友』と言うでしょ? ここからは二人は敵同士になりますからね。…それでは行きましょう、せーの、ジャンケン、ホイ!」
結果は3対1で高明さんが勝ち、第二次予選通過となった。
「頑張ってねー!」
朧月さんの声に送られ高明さんが部屋を出て行った。
*
「…えー次の対戦は…、群馬県警の山村刑事と警視庁の高木刑事です」
そう言われて二人が壇上に登る。
「…警察官対決となりましたが、自身はありますか?」
「群馬県警を代表して必ず勝ちます!」
山村刑事が言う。
「…高木刑事は?」
「松本警視に出発する前にここで負けたら減俸だ、って言われました」
思わず笑い声が起こる場内。
「お互いのメンツがかかってますね〜。それでは行きましょう。ジャンケン、ホイ!」
山村刑事1ポイント獲得。
「用意、ジャンケン、ホイ!」
山村刑事2ポイント目獲得。
「高木刑事、2ポイント取られちゃいましたね。…このままじゃ減俸になっちゃいますよ」
「いやいや、これからですよ」
こういう高木刑事だったが目は笑っていなかった。
この後ジャンケンは高木刑事が2連勝し、2対2となった。
「さあ、2対2です。果たしてグアム行きのチケットを手にするのはどっちか? せーの、ジャンケン、ホイ!」
二人ともパーを出し、アイコとなった。間髪入れずcaviarさんが、
「ジャンケン、ホイ!」
またまた二人ともチョキを出し、アイコとなった。
「用意、ジャンケン、ホイ!」
山村刑事がグー、高木刑事がパーを出し、高木刑事が逆転勝ちをした。
「おめでとう、高木刑事の勝ち〜!」
思わずガッツポーズをする高木刑事。
「…山村刑事、何か一言」
「減俸しないで下さいね」
*
この後もジャンケン大会は続き、最終的に50人の勝者と50人の敗者が決定した。
50人の勝者は荷物を抱えると搭乗手続きをするために空港へと向かっていった。
一方こちらは敗者となった50名の控室。
「みんなご苦労じゃった」
阿笠博士がやってきた。
「しかしのお…。あんなジャンケンなんて子供の遊びなんぞに負けてグアムに行けない、なんて悔しいと思わんか? そうじゃろう?」
50人は無言で頷く。
「実はな、ワシもそう思って、スタッフに何とかならんか、と交渉し取ったんじゃ。そしたらの、座席のキャンセルが入ったという情報が入ったんじゃ」
それを聞いた挑戦者達の間でざわめきが起こった。
「…もうわかったな? いまから敗者復活じゃ!」
それを聞き、歓声を上げる挑戦者。
するとスタッフからヘアバンドのような早押し機が50人に配られた。
「敗者復活の方法はきわめて簡単じゃ。ワシが問題を出すのでわかった時点で頭の上のボタンを押して答える早押しクイズじゃ。正解した者3名を敗者復活させる。それでは問題!」
50人が頭の上のボタンに手をかける。
「飛行機と同じ速度で飛んでいるカラスといったら?」
ポーン。
「はい、ジェーンさん」
「窓ガラス」
ジェーンさんが答える。
「正解! 敗者復活じゃ!」
それを聞いたジェーンさんは「敗者復活」の襷をもらってそれを肩に掛け、荷物を抱えると部屋を出て行った。
「…もうお分かりじゃな。敗者復活の問題は全部なぞなぞじゃ。みんなも柔軟な発想で答えるんじゃぞ。それでは次の問題。『サシスセソ』の服と言ったら何?」
ポーン。
「はい、タナトキシさん」
「作業服(サ行服)」
「正解! 敗者復活!」
そしてタナトキシさんが部屋を出て行く。
「さあ、あと一人じゃぞ。それでは問題。宇宙飛行士が宇宙へ出ると食欲がなくなるそうじゃが、それは何故?」
ポーン。
「はい、朧月さん」
「空気(食う気)がなくなるから」
「正解! 敗者復活じゃ〜!」
こうしてジェーンさん、タナトキシさん、朧月さんの3人が敗者復活をし、今飛び立とうとしている飛行機に乗り込んでいった。
*
今まさに飛行機がグアムに向けて飛び立とうとしている。
そんな空港ビルの屋上。阿笠博士とジャンケン&敗者復活で敗れた47名がいた。
「シュプレッヒコール!」
阿笠博士が言うと、
「おー!」
47名がそれに答える。
「国辱ツアー、帰れー!」
「帰れー!」
「アメリカへ行くお前たちはもう日本人ではないぞー!」
「日本人ではないぞー!」
「もうお前たちのことは忘れちまったぞー!」
「忘れちまったぞー!」
「それでも、気をつけて行ってらっしゃい!」
「行ってらっしゃい!」
47人のシュプレッヒコールに送られて飛行機が離陸し、あっという間にはるか彼方、グアムの方角へと飛んで行った。
「頑張れよー!」
誰かが飛行機の見えなくなった空に向かって叫んだ。
9月○日 国内第二次予選通過者・53名グアムに向けて出発!
(第1チェックポイント・機内へと続く)
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