くどいようですが、この作品は全くの創作です。
この作品はフィクションであり、この作品に登場する人物・団体は実際のものとは一切関係ありません。
史上最大! CNRアメリカ横断ウルトラクイズ(加筆修正版)
作:ともゆき



決勝・ニューヨーク


 ニューヨーク。東京ドームに集まった25000人を越える挑戦者誰もが夢見た街である。
 そのニューヨークの中心街であるマンハッタン。既に陽は落ちて辺りが夕闇に包まれていた。
 そのマンハッタンを流れる川、イーストリバー。その上に一隻の遊覧船が浮かんでいた。
 その船名を「プリンセス号」と言う。
 そう、CNRウルトラクイズの決勝はマンハッタンの夜景をバックにこの船上で行なわれるのだ。
    *
 マーチングバンドが「When You Wish Upon a Star(星に願いを)」を奏でる中、決勝戦に進んだ服部と新一の二人が甲板に現れた。
 二人とも決勝戦、と言うことだからか服部は詰襟、新一はブレザーというそれぞれ二人が通っている高校の制服姿だった。
 司会のcaviarさんもスーツ姿である。
 服部と新一の二人が早押し台の脇に立ち、caviarさんに一例をし、お互いの相手に向かって一例をすると早押し台に腰掛けた。
 そしてプリンセス号の汽笛が鳴る。

「摩天楼に陽が落ちて、あたりが夕闇に包まれています。二人とも、ちょっと後ろを見ていただけますか?」
 caviarさんの声に後ろを向く二人。二人の目の前にはマンハッタンの夜景が広がっていた。
「きれいな夜景だねえ。この夜景を見ることが出来たのはあなた方二人だけです。そしてこの夜景をモノにすることが出来るのは一人だけです。…服部君」
「はい」
「この夜景を見てどう思いましたか?」
「いやあ、こう実際に自分の目で見るとやはり違いますわ」
「そうですか。ここまでたどり着くことが出来たんですからね」
「はい。これを見て、ようやくニューヨークへやって来たいう実感が湧きましたわ」
「ところで、何で詰襟の制服を着ているんですか?」
「自分にとっては、これが正装だからです」
「そうですか。対戦相手の工藤君をどう思いますか?」
「相手にとって不足は無し。工藤と決勝を争うことが出来るのはこれ以上ない喜びです」
「そうですか。…工藤君」
「はい」
「この景色を見てどう思いました?」
「成田を出発した時から、この夜景を見ることだけしか考えてませんでした」
「そうですか。凄い自信ですね」
「いや。まあ、それは誰もが考えることだと思いますけどね。でも、やっぱり自分の目で見ることが出来てよかったです」
「ところで、対戦相手の服部君をどう思いますか?」
「これ以上ない素晴らしい相手だと思ってます。服部と決勝を戦うことが出来るのは身に余る光栄です」
「そうですか。…では、服部君にお聞きします。クイズ王になるのは誰ですか?」
「誰が何と言おうと、この服部平次です」
「わかりました。工藤君にお聞きします。クイズ王になるのは誰ですか?」
「工藤新一、ボクです」
「わかりました。決勝戦は10ポイント先取の早押しクイズ。お手つき、誤答はマイナス1ポイントとなります。お二人のこの戦いが決勝戦の名にふさわしい素晴らしい戦いであることを期待します。それでは、早押しハットを装着してください」
 二人が早押しハットをかぶった。
「只今よりCNRアメリカ横断ウルトラクイズ、ニューヨーク・決勝戦を始めます。ボタンに手を置いて」
 そして二人が早押しボタンに手を掛ける。

「問題。メジャーリーグ、NBA、NFL、NHL。このうち、ニューヨークを本拠地にしているチームが1球団だけなのは?」
 ポーン!
「服部君」
「NBA」
「正解。服部君1ポイント。問題。尾崎紅葉の『金色夜叉』。貫一が宮を足蹴にしたのは何処の海岸?」
 ポーン!
「工藤君」
「熱海」
「正解。工藤君も1ポイント。問題。2002年ソルトレークシティオリンピックから採用された競技で、橇にうつ伏せに乗って滑り降りる競技とは?」
 ポーン!
「工藤君」
「スケルトン」
「正解。1対2」
 と出だしは新一が快調に滑り出した。
     *
「さあ、得点は2対5で工藤君が3ポイントのリード。問題。ナポリ民謡『フニクリ・フニクラ』で♪行こう 行こう 火の山へ♪と歌われている…」
 ポーン!
「服部君」
「ベスピオ山」
「正解! 『歌われている火の山とは何処?』。正解はベスピオ山。これで3対5。問題。宅配便のキャラクター。黒猫はヤマト運輸。ペリカンは日本通運。では…」
 ポーン!
「服部君」
「…西濃運輸」
「正解! 『では、カンガルーは?』正解は西濃運輸。さあ、これで4対5です。服部君追い上げてきました。それでは行こう、問題。標準的な120分のビデオテープの長さは何メートル?」
 ポーン!
「服部君」
「160メートル」
「正解。さあ、服部君、同点に追いつきました」
 と、ここでcaviarさんは二人に一息入れさせようと思ったか、
「…だいぶビルにも明かりがついてきましたね」
 見ると何時の間にやらあたりはすっかり暗くなり、あちこちのビルに灯りが点っていた。
 そして遊覧船が出発したことにはそれほど明るい、とは思わなかった二人を照らし出しているライトも今では二人を明るく照らし出していた。
 プリンセス号はゆっくりとイーストリバーを下っていく。

「…問題。1894年、東京以外の場所で国会が開かれたことがありますが、その場所は何処?」
 ポーン!
「工藤君」
「大阪」
 と、不正解のブザーが鳴った。
「残念、正解は広島です。これで工藤君はマイナス1ポイント。初めて服部君がリードしました。問題。メジャーリーグで最初に背番号を採用したのはヤンキースですが…」
 ポーン!
「服部君」
「打順」
「正解! 『その基準となった順番は?』。正解は打順。さあ、これで6対4。服部君2ポイントリードです」

 このあと、二人が1ポイントずつ獲得し、得点は7対5となった。
「問題。夏目漱石の門下生であり、『或阿呆の一生』『蜘蛛の糸』などの…」
 ポーン!
「服部君」
「芥川龍之介」
「正解! 『…などの作品を残した作家と言えば?』。答は芥川龍之介。さあ、8対5となりました。工藤君も頑張って! 問題。かつてハワイ諸島に…」
 ここまで聞いたところで新一が早押しボタンを押した。
「工藤君」
「サンドイッチ諸島」
「…正解! 『かつてハワイ諸島にヨーロッパ人が付けていた名前は?』正解はサンドイッチ諸島。これで8対6。問題。日本海流のことを黒潮と…」
 ポーン!
「工藤君」
「青潮」
「正解! 『…黒潮といいますが、では対馬海流のことを何と言う?』。正解は青潮。さあ、これで8対7となりました。問題。店などで客がまばらなことを…」
 ポーン!
「工藤君」
「カッコウ」
「正解! 『…まばらなことを「閑古鳥が鳴く」といいますが、この「閑古鳥」とは何?』。正解はカッコウ」
 新一がここで打ったバクチが功を奏し、一気に8対8の同点に追いついた。
「さあ、得点は8対8。これでまた勝負の行方がわからなくなってきました。問題。MLBで初の黒人選手となったジャッキー・ロビンソン…」
 二人が同時にボタンを押したが、わずかに服部の方が早かった。
「服部君」
「ブルックリン・ドジャース」
 しかし、不正解のブザーが鳴った。
 それを聞いて二人が思わず「え?」と言う表情をした。どうやら新一も同じ答を考えていたようだ。
「『…ジャッキー・ロビンソンの功績を称え、全球団で永久欠番となった背番号は何番?』。…何番だかわかるね?」
「42番」
「そのとおり。服部君1ポイントマイナス。これで7対8。問題。野球のユニフォーム。Jリーグでは何と呼ぶ?」
 ポーン!
「工藤君」
「キット」
「正解! これで7対9」
 それを聞いてか、マーチングバンドがいつでもファンファーレを鳴らせるように準備を始めた。
「…それでは行くぞ、問題。『カニ』とは言うが、タラバガニは実は何の仲間?」
 二人が同時に押したが、服部の早押しハットの「?」マークが立ち上がった。
「服部君」
「ヤドカリ」
「正解。さあ、これで8対9です。問題。デパートの閉店の音楽にも使われている『蛍の光』は何処の国の民謡?」
 これまた二人が同時にボタンを押したが、わずかの差で新一の「?」マークが立ち上がった。
「工藤君」
 新一は大きく息を吸うと、
「スコットランド!」

ピンポンピンポーン!

「正解! クイズ王けって〜い!」
 マーチングバンドがファンファーレを鳴らした。
 新一は両手で早押しハットを持つとこみ上げてくる喜びをかみしめる。
…そして早押しハットを脱ぐと、両手を突き上げ全身で喜びを現した。
 そんな新一を見て服部が、
「工藤、おめでと」
 そう言って、右手を差し出した。
 新一もそれに応え右手を差し出し、二人が固い握手を交わした。
    *
「おめでとう! コングラッチュレーション!」
 caviarさんの声に新一が早押し台から降りてきた。
「さあ、まずは優勝旗の授与です」
 そして新一が優勝旗を受け取る。
「続いてミス・ニューヨークより花束の贈呈です」
 そして花束が授与された。
「工藤君、本当におめでとう」
「ありがとうございます」
「いやあ、さすが工藤君、見事な勝ちっぷりでしたね」
「いえ、そうでもないですよ。たまたま運がよかっただけです」
「今回の旅は、工藤君にとってどんな旅でしたか?」
「そうですね…、なんていうのかな。いろんな人と知り合えて、いろんな所に行くことが出来て、苦しいながらも楽しい旅でしたね」
「そうですか」
「でも、ようやくホッとしましたよ」
「なんでですか?」
「やっとこれで旅も終わるんだな、って」
「そうですか。…さ、それじゃ周りを見回そう。この夜景は、あなたのものです」
 そう言われて新一が辺りを見回す。
 そんな様子を服部がさっきから解答者席で見ていた。
 二人とも満足げな表情をしていた。
    *
 プリンセス号はゆっくりとリバティ島へ向かっていた。

「おい、工藤」
 服部が何かに気づいたか、新一に話しかけた。
「なんだよ?」
「今気づいたけど、その左手、なんや?」
 そう、新一の左手にはブレスレットがはまっていたのだ。
「ああ、これか…。蘭がアトランタで落ちた時、オレにくれたんだ。何でも『和葉ちゃんがハワイでくれた』とか言ってたな…」
「ずっとしてたんか?」
「ああ、蘭が落ちてからずっとな」
「工藤、一つ言ってええか?」
「何だ?」
「そのブレスレットな、オレが和葉に買ってやったモンやで」
「え…?」
「なんや、結局はオレがお前の優勝サポートしたようなもんやないか。あー、もう気分悪いわ!」
「ははは…」
 そういう二人の顔は笑っていた。

 そしてプリンセス号がリバティ島に立っている自由の女神へと近付いてきた。
 二人はそれをずっと見上げていた。

(エピローグへ続く)






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