くどいようですが、この作品は全くの創作です。
この作品はフィクションであり、この作品に登場する人物・団体は実際のものとは一切関係ありません。

史上最大! CNRアメリカ横断ウルトラクイズ(加筆修正版)
作:ともゆき



準決勝・ワシントンDC


 前のチェックポイント・マイアミからアメリカを一気に北上し、ワシントンDCへとやって来た。
 マイアミは10月でも半袖で過ごせたのだが、さすがにワシントン市街の風景はすっかり秋で、長袖でないと過ごせなかった。
 それはそうだろう。日本で言うならほぼ同緯度の沖縄から岩手県まで一気に北上したのだから。

 さて、ワシントンといったら言うまでもなくアメリカ合衆国の首都である。
 そのワシントンの象徴、とでも言うべき国会議事堂の近くにある広場に4台の早押し席が並べられており、左から服部、とーやさん、新一、稼頭矢さんの順で座っていた。
 東京ドームには25000人以上が集まり、成田を出発した時は53人、アメリカ本土に上陸した時は13人だった挑戦者も今やこの4人だけとなっていた。

 caviarさんが4人を前にして話しかけた。
「真夏の東京ドームに25000人を超える挑戦者が集まりました。そして、その中から幾多の難関を乗り越えて、現在残っているのはあなた方4人だけです。…服部君」
「はい」
「ここまで来てどうですか?」
「ようやく来ることが出来た、そんな感じですね」
「ここを突破したらニューヨークですが、自信はありますか?」
「勿論。ここまで来たからには絶対行かなアカン、そう思うとります」
「たいした自信だね。…とーやさん」
「はい」
「ここまで来ちゃいましたね」
「いや、本当にここまで来れたのが信じられません。運だけでここまで来たようなものですから」
「前にも言ったと思うけど、ツキも実力のうちだよ。でも、ここまで来たからにはやはりニューヨークに行きたいだろ?」
「勿論です」
「そうでしょうね。…工藤君」
「はい」
「ここまで君は安定した戦いぶりを見せてるけど」
「いや、思った以上にみんなが強敵で正直言って苦戦の連続ですよ。でも、決勝まで後一つですから、絶対勝ち抜いてみせます」
「わかりました。…稼頭矢さん」
「はい」
「これだけのメンバーの中でかなりの健闘を見せてますね」
「でも本当にここまで来れるまで思いませんでした。でもやはり、ここまで来たからにはニューヨークに行きたいです」
「…わかりました。さて、ここで行ないますクイズは準決勝といったらコレしかありません、『激戦! 通せんぼクイズ』。まず早押しクイズを行ないます。お手つき・誤答はマイナス1ポイント。3ポイント取ったらA、Bどちらかの問題を選んでこの通過席に来てください」
 そう言うcaviarさんの傍らにはもう一台の早押し台が置かれていた。
「…通過問題に正解すれば勝ち抜けですがお手つき・誤答をしたり、解答者席の他の人に答えられたりしたらポイントがゼロとなり、解答者席に戻ってもらいます。ここを通過できるのは2名。次はいよいよ決勝のニューヨークです!」
 そう、いよいよここを通過できれば誰もが夢見たニューヨーク行きとなるのだ。

「それでは行きましょう、問題。ここ、ワシントンDCの『DC』とはどういう意味?」
 ポーン!
「服部君」
「コロンビア特別区」
「正解! 服部君1ポイント獲得。問題。日本が2011年ワールドカップの招致を計画しているスポーツと言えば?」
 ポーン!
「工藤君」
「ラグビー」
「正解! 工藤君も1ポイント」
    *
 そして準決勝の名に恥じない早押しバトルが展開されていった。

「さあ、工藤君、服部君、とーやさんの3人が2ポイントで並びました。それでは行こう、問題。1970年の大阪万博を記念して…」
 ポーン!
「工藤君」
「タイムカプセル」
 しかし不正解を告げるブザーが鳴った。一瞬「え?」と言う表情をする新一。
「…大阪万博を記念してタイムカプセルが埋められたのは何処?」
 caviarさんが言うと、
「あ、大阪城か…」
「その通り。工藤君、勝負を焦ったね。これで工藤君の得点は1ポイントになります。それでは行こう、問題。ラグビーのトライは成功すると5点入りますが、アメリカンフットボールのタッチダウンは何点?」
 ポーン!
「とーやさん」
「6点」
「正解! とーやさん3ポイント獲得。さあいらっしゃい!」
 とーやさんが立ち上がると「B」の袋を持って通過席にやって来て、caviarさんに封筒を渡した。
 そして早押しハットをかぶる。
「さあ、とーやさん、決めることが出来るか? 問題。黒澤明監督の映画『用心棒』が原作のブルース・ウィリス主演の映画といえば?」
 とーやさんも早押しボタンを押したが、一瞬服部の方が早かった。
「服部君」
「ラストマン・スタンディング」
「正解! とーやさん、ポイントがゼロになりました」
 そしてとーやさんが早押しハットを脱ぐと解答者席に戻った。
「…そして今度は服部君が3ポイント獲得し、通過席に来ました」
 caviarさんがそう言っている間に服部が「A」の封筒を持って通過席に来た。
 服部が早押しハットをかぶるのを見てから、
「問題。偽り隠していたものが現れ、化けの皮がはがれることを『何を表す』と言う?」
 そこにいた4人がほぼ同時にボタンを押したが、今度はとーやさんが早かった。
「とーやさん」
「馬脚」
「正解! 服部君、阻止した相手に今度は阻止されてしまいました」
 そして服部が自分の席に戻った。
    *
「問題。車のナンバープレートに使われない文字は全部で4文字。それはへ、し…」
 ポーン!
「工藤君」
「お」
「正解。『…へ、し、んとあと一文字は?』。正解は『お』。さあ、工藤君3ポイント獲得」
 そして新一が「A」の封筒を持って通過席にやって来て、早押しハットをかぶり、早押しボタンに手を掛けた。
 それをcaviarさんが見届けると、
「行くぞ、問題。太平洋を“pacific ocean”と名づけた冒険家と言ったら?」
 4人がほぼ同時に早押しボタンを押したが、早押しハットの「?」マークが立ち上がったのは通過席にいる新一だった。
「工藤君」
「マゼラン」
 一瞬の静寂の後、正解を告げるチャイムが鳴った。
「おめでとう! 決勝進出〜!」
 caviarさんが叫んだ。
「よーし!」
 そして例によって小さくガッツポーズをすると、勝利者席に向かっていった。
 その様子を見ている残された3人。
「さあ、工藤君が決勝進出を決めました。残る席はあと一つです」

「問題。カルタ、タコ、コマ。童謡『お正月』に出てこない遊びと言えば?」
 ポーン!
「稼頭矢さん」
「カルタ」
「正解! さあ、稼頭矢さん3ポイント獲得です」
 そして稼頭矢さんが「B」の封筒を持って通過席にやって来た。
 例によって早押しハットをかぶるのをcaviarさんが見届けてから、
「問題。京都府にある地名で漢字で『一口』と書くのは何処?」
 それを聞いた稼頭矢さんは早押しボタンに手が行かず、代わりに服部の早押しハットの「?」マークが上がった。
「服部君」
「いもあらい」
「正解! やはりこの問題は関西人が有利だったか? 稼頭矢さん、ポイントがゼロに戻ります」
 そして稼頭矢さんが解答者席に戻った。

「問題。ボクシングのトレーニングにも用いられ、英語でロープスキップ…」
 ポーン!
「服部君」
「縄跳び」
「正解! 『英語でロープスキップといわれるのは何?』。正解は縄跳び。服部君、これで3ポイント獲得です」
 そして服部が「A」の封筒を持って2回目の通過席にやって来て、早押しハットをかぶった。
「問題。太陽系の惑星で地球の次に大きな星は何?」
 そして服部が早押しボタンを押した。
「服部君」
「火星」
 一瞬の静寂の後、不正解を告げるブザーが鳴った。
 その瞬間「え?」と言う表情をする服部。
「残念、正解は金星。服部君、ポイントがゼロに戻ります」
 そして服部は早押しハットを脱ぐと解答者席に戻った。

 その後クイズは進み、3人の攻防が続いた。
「…さあ、3人が1ポイントで並びました。それでは行きましょう、問題。夏目漱石の小説『坊っちゃん』。主人公と同じ東京出身の画学の教師と言えば?」
 ポーン!
「服部君」
「野だいこ」
「正解。服部君2ポイント獲得。問題。76年に一度地球に接近するハレー彗星。次に地球に接近するのは西暦何年?」
 ポーン!
「服部君」
「2062年」
「正解。さあいらっしゃい!」
 そして服部は今度は「B」の封筒を持ってやって来た。
 これまで2回通過席にやってきたが、いずれも通過に失敗したからか、服部は早押しハットをかぶると、己に気合を入れるかのように一回深呼吸をしてから早押しボタンに手を掛けた。
「さあ、服部君3回目の通過席です。それでは行こう、問題。CD1枚の最大演奏時間を決める際、基準となったクラシック音楽は?」
 3人がほぼ同時に早押しボタンを押したが、服部の早押しハットの「?」マークが立ち上がった。
「服部君」
「ベートーベンの第九」
 一瞬の静寂。そして正解を告げるチャイム。
「正解! 決勝進出だ〜!」
「よっしゃあ!」
 それを聞いてとーやさんと稼頭矢さんの二人がうなだれてしまう。

「さあ、いよいよ決勝に進出する二人が決定いたしました。服部君」
「はい」
「対戦相手の工藤君をどう思いますか?」
「いやあ、一番来て欲しくない相手が来たわ」
「ハハハ、そうかい?」
「でも、相手にとって不足はなし。ええ戦いができると思います」
「工藤君」
「はい」
「対戦相手の服部君をどう思いますか?」
「そうですね。やっぱり来たか、って感じです」
「やはりそう思いましたか」
「でもね、これ以上ない素晴らしい相手だと思います」
「そうですか。決勝戦は服部平次VS工藤新一、宿命のライバルと言うべきこの二人の組み合わせで行なわれます。それでは決勝地・ニューヨークに向かってバンザイ!」
 そして服部と新一がバンザイをした。

 決勝進出2名決定!
    *
「…とーやさん」
 caviarさんがとーやさんに話しかける。
「はい」
「…あと一歩だったね…」
「でもホント、ここまで来ることが出来ただけで満足です」
「しょっちゅう言ってましたよね? 『ここまで勝ち残れたのは運だけだ』って」
「…はい」
「でも、運だけじゃここまで勝ち残ることはできなかったと思いますよ。それだけの実力が備わっている、と言うことなんだから、自信を持って」
「はい」
「…稼頭矢さん」
 今度は稼頭矢さんに話しかけた。
「はい」
「ここまで勝ち残ることが出来たのは立派だと思いますよ」
「いや、本当に運だけで勝ち残ってきたようなものですよ。それに…」
「それに?」
「悔しくない、って言ったら嘘ですけど、こんなに楽しかったのは初めてです」
「そうだろうね。君たちは準決勝の名にふさわしい戦いを繰り広げたんだから」
「はい。ですから胸を張って帰りたいと思います」
「そうだね。今回の経験はあなたにとっていい思い出になると思いますよ」

〈罰ゲーム〉

 とーやさんと稼頭矢さんの二人はワシントンを流れるポトマック川に連れてこられた。
「えー、突然ですが、二人ともちょっとジャンケンをしていただけますか?」
「え?」
 そして二人がジャンケンをした。稼頭矢さんが勝ち、とーやさんが負けた。
「それではとーやさんはこれを、稼頭矢さんはこれを持って下さい」
 とーやさんにはオールが、稼頭矢さんには釣竿が渡された。
「…なんですか、これは?」
「あなた方への罰ゲームは、ボートでポトマック川を下って帰ってもらいます」
 それを聞いた二人が思わず苦笑いを浮かべる。

 そして二人と荷物を積んだボートがゆっくりと川岸を離れた。
「それじゃ気を付けて帰ってくださいよ。稼頭矢さん」
「はい!」
「わかってると思うけど、その釣竿で魚を釣れば食料には困りませんからね!」
「はーい!」
 そしてとーやさんの漕ぐ「東京直行」の垂れ幕が掛かったボートはゆっくりとポトマック川を下っていった。
 caviarさんがそれを見送る。
「随分とゆっくりですね…。これじゃ日本につくまでどのくらい掛かるやら…」

10月¥日 準決勝失格 とーや、稼頭矢 帰国

(決勝・ニューヨークへ続く)


日売テレビスタジオ。
工藤優作「さあ、いよいよ決勝戦に進出する二人が残りました! …それにしても自分の息子が決勝に残るとは思いませんでした」
工藤有希子「いやいや、でも対戦相手の服部君も新ちゃんに優るとも劣らない素晴らしい相手だと思いますよ」
優「そうですね。これ以上ない素晴らしい相手に恵まれてアイツも幸せ物かもしれませんね」
有「でも、稼頭矢さんもとーやさんもよくここまで来ることが出来たと思いますよ。私はこの二人の健闘も称えたいですね」
優「そうですね。お二人には心から拍手を贈りたいと思います。さあ、いよいよ最後の戦いが始まります!」
有「果たしてCNRクイズ王の座に付くのはどちらか?」
優「ニューヨーク・決勝戦です!」





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