第10チェックポイント・アトランタ
アメリカ・ジョージア州最大の都市であるアトランタ。
かつて南北戦争の舞台となった地として知られ、それを題材にした映画「風と共に去りぬ」は名作として語り継がれている。
他にもコカ・コーラ社の本社がある場所としても知られているし、1996年には夏季オリンピック大会が開催された所としても有名であろう。
さて、そのアトランタのある広場。6人の挑戦者が早押し台に座っていた。
こうして早押し機に座ってクイズを行なうのは実にロサンゼルス以来のことである。
そんな6人を前にしてcaviarさんが話しかける。
「ここで行ないますクイズは早押しダブルチャンスクイズです。私が問題を出し、わかった人がボタンを押す所までは普通の早押しクイズと同じです。但し、最初に回答権を得た人がお手つきや誤答をした場合、2番目にボタンを押した人が回答権を得ることが出来ます。お手つき、誤答は1回休み、3ポイント先取です。ここで落っこちるのは1名。ここを抜けますと次に行くのはいよいよアメリカ東海岸、マイアミです」
そう、ここを抜けるとようやくアメリカ東海岸、大西洋を見ることが出来るのだ。
「それではクイズを始めましょう」
そして6人が早押しボタンに手をかける。
「それでは行きましょう、問題。ここ、アトランタがあるジョージア州で毎年ゴルフの全米オープンが行われる…」
ポーン!
とーやさんの早押しハットの「?」マークが立ち上がった。
「とーやさん」
「オーガスタ」
「正解! 『…毎年ゴルフの全米オープンが行なわれる都市は何処でしょう?』正解はオーガスタ。とーやさん1ポイントを獲得。それでは行こう、問題。1912年に沈没したタイタニック号の…」
ポーン!
新一の早押しハットの「?」マークが立ち上がった。
「工藤君」
「ブルース・イズメイ」
新一が答えるとブザーが鳴った。
「え?」
「ダブルチャンス!」
ポーン!
今度は服部の早押し台に置いてあるパトライトが回った。
「服部君」
「ホワイト・スター・ライン社」
「正解。『タイタニック号を所持していた会社は?』正解はホワイト・スター・ライン社。工藤君、問題を深読みしすぎたね。それでは行こう、問題。ぎっくり腰のことをヨーロッパでは『何の一撃』と呼ぶ?」
ポーン!
「さばらさん」
「魔女の一撃」
「正解!」
*
と、このようにクイズは進んでいった。
「問題。中国料理の中で漢字で『くもをのむ』と書かれるものは?」
ポーン!
「服部君」
「ワンタン(雲呑)」
「正解! 一抜け〜!」
前回のラスト抜けが嘘のような鮮やかな勝ち抜けをまずは服部が決め、続いてとーやさん、さばらさんの順に勝ち抜けを決めていった。
そんな中、新一はどうしたのか、早押しボタンを一瞬の差で押し負ける、とか折角回答権が回ってきても誤答をして他人に回答権を譲ってしまう、と言う彼らしくないミスを連発して3人が抜けた時点でも未だに1ポイントも取れないでいた。
「問題。富士山のふもとにある富士五湖は何県にある?」
ポーン!
「工藤君」
「静岡県」
ブザーが鳴った。
「ダブルチャンス!」
そして稼頭矢さんのパトライトが回った。
「稼頭矢さん」
「山梨県」
「正解!」
それを聞いた瞬間新一が「しまった…」という表情をした。
「工藤君、わかってたんだね?」
「はい。でも何故か先に静岡の方が頭に来ちゃって」
「次の問題は工藤君は一回休みです。問題。日本のポストの色は赤ですが、ではアメリカの…」
ポーン!
「稼頭矢さん」
「青」
「正解、抜けた〜!」
そして稼頭矢さんが4人目の勝ち抜けを決め、勝者席に向かった。
残るは新一と蘭の二人となった。
「『アメリカのポストの色は何色でしょう?』正解は青。さあ、これで残る席は後一つとなりました。現在のポイントは蘭さんが1ポイント、工藤君がゼロ。それでは問題。国旗で使われている『汎アフリカ色』とは黄色・緑ともう一色は?」
ポーン!
「蘭さん」
「赤」
「正解。さあ、蘭さんリーチが掛かった。問題。日本ではビールを飲んでいいのは20歳からですが、ドイツでは何歳からOK?」
ポーン!
蘭の早押しハットの「?」マークが立ち上がった。
その瞬間、新一が苦虫を噛み潰したような顔をした。
「蘭さん」
「18歳」
不正解のブザーが鳴った。
それを聞いた瞬間「え?」と言う表情をする新一。
「ダブルチャンス!」
そして新一が早押しボタンを押す。
「工藤君」
「16歳」
「正解! さあ、工藤君ようやく1ポイント。次の問題は蘭さんは1回お休み、工藤君だけに出ます。問題。16歳の誕生日に眠りに落ち、100年後に王子様のキスで目覚める姫と言ったら?」
ポーン!
「工藤君」
「眠り姫」
「正解。工藤君もリーチが掛かった。次で決まるか? 問題。イエス・キリストと聖徳太子の誕生物語。共通する建物は?」
二人がほぼ同時にボタンを押したが一瞬の差で新一の早押しハットの「?」マークが立ち上がった。
「工藤君」
「馬小屋」
「正解。抜けた〜!」
2対0から一気に3ポイント連取して勝ち抜けを決めるほどの苦戦、そしてその相手が蘭だった、と言うこともあったのだろうか、それを聞いた瞬間、初めてと言っていいだろう、新一が安堵の表情を浮かべた。
そして新一が4人のいる勝者席に向かおうとした時だった。
「あ、そうだ、新一」
蘭が呼び止めた。
「…なんだ、蘭?」
「ここでお別れだね」
「ああ。そうだな」
「それでさ…、これ新一にあげる」
そう言うと蘭は左手にしていたブレスレットを外して新一に渡した。
「これは…?」
「ハワイで和葉ちゃんに貰ったの。もう私がしたって意味ないしね」
「蘭…」
「新一、頑張ってニューヨークに行ってね」
「ああ、わかった。お前のためにも行ってやるよ」
「ありがと。じゃ、頑張ってね」
そして新一はブレスレットを嵌めながら勝者席に向かった。
そんな様子を蘭が解答者席から見ていた。
「さあ、それじゃマイアミに向かってバンザイ!」
そして5人がバンザイをする。
マイアミ行き5名決定!
*
勝者5人がバスに乗り込もうとしていた。
「みんな〜、頑張ってね〜!」
回答者席の蘭がバスに向かって両手を振った。
そして5人は蘭に向かって手を振ると次々とバスに乗り込んだ。
そしてバスが蘭の元を去っていく。
…そして蘭はそっとあふれる涙をぬぐった。
「…蘭さん。最後の女性としてよくここまで頑張って来れましたね」
「ええ。でもみんな実力がある人ばかりなんで、私がここまで来れるなんて信じられませんでした」
「今回の旅はどうでした?」
「なんて言うのかな…。今まで自分が経験したことのないことばっかりで…。私自身にとってもとても有意義なものだったと思います」
「うん。これからもこの経験を生かしてくださいね」
「はい」
〈罰ゲーム〉
蘭がcaviarさんに連れて行かれたのはアトランタ郊外にある野球場だった。
「実はですね、蘭さん。今日ここで地元の野球の大会があるそうなんですが」
「私に何をやれ、と言うんですか?」
「あなたへの罰ゲームはここで売り子さんのアルバイトをしてもらいます」
それを聞いた瞬間蘭は思わず苦笑いを浮かべた。
更衣室でポロシャツにGパン、そしてサンバイザーという売り子のスタイルに着替えた蘭が出て来た。
そしてピーナッツ袋が入った箱が渡された。
その後蘭は指導を受けいよいよ本番となった。
*
会場は3割程度の入りだろうか。それでもバックネット周辺はかなりの人で埋まっていた。
「(勿論英語で)ピーナッツいかがですか〜? ピーナッツいかがですか〜?」
蘭が観客席を行ったり来たりしながら売り歩く姿がそこにあった。
9月$日 第10チェックポイント失格 毛利蘭 帰国
(第11チェックポイント・マイアミへ続く) |