「しかし、ヨーコちゃんがいなくなると淋しくなるなあ」
日売テレビのある楽屋。毛利小五郎、その娘の蘭、江戸川コナン、そして沖野ヨーコがいる。
「いやだ毛利さん、オーバーですよ。ほんの一週間じゃないですか」
「いーや、一週間も、だよ。ヨーコちゃんが日本に一週間もいない、なんてとても考えられないよ」
沖野ヨーコから小五郎宛に連絡が来たのはつい3日前のことだった。
日売テレビで放送している歌番組の収録があるからスタジオに見に来ないか、と言う誘いがあったのだ。
彼女の大ファンである小五郎のこと、一も二も無く了承し、こうしてTV局にやってきて、その上前もって沖野ヨーコが知らせていたのだろうか、普段は入ることが出来ないであろう、楽屋に入ってこうして話をしているわけである。
聞くところによると、今日の番組の収録が終わったあとは1日オフを貰い、その翌日、つまり明後日から彼女は雑誌の取材と写真集の撮影を兼ねてオーストラリアに行く、と言う話だった。これまでも何度か仕事で海外に出掛けたことのある彼女だが、南半球の国に行くのは初めてだ、と言う。
今は早春の日本と違って、オーストラリアは反対の季節、つまり夏から秋に変わる頃だから今から行くのが楽しみだ、とも彼女は言っていた。
「ま、とにかくさ。今度の写真集もちゃんと買うから」
「本当ですか? ありがとうございます」
「そうだよね。おじさんヨーコちゃんの写真集たくさん持ってて、中でもハワイで撮った、っていう写真集、『ヨーコちゃんのビキニ姿が拝める』とか言って大切にしてるんだよね」
コナンが言う。と小五郎が、
「余計なこと言うな!」
「え…、あれを?」
急にヨーコの顔が変わった。
「どうしたの、ヨーコちゃん?」
「嫌だ。あれ、恥ずかしかったんですから」
「そうかなあ。ヨーコちゃん、って着やせするタイプなのか結構いい体つきしてたよな…」
その時だった。
「ヨーコさん、リハーサル始まります」
楽屋のドアが開き、アシスタントディレクターがヨーコに告げた。
「わかりました。今行きます」
*
自分のリハーサルを終えたヨーコは本番まで時間がある、というのにスタジオの観客席の隅に小五郎たちがいたのを見つけると、彼らの隣に座った。
「…どうしたの、ヨーコちゃん?」
小五郎が聞く。と、
「ちょっと皆さんとお話したくて。それに…」
「それに?」
「次はルイさんのリハーサルだから、見ておこうかな、と思って」
「ルイさん…、って黒崎ルイさん、ですか?」
蘭が言う。
「うん、そうよ」
「やっぱり…。私、ルイさんの作った歌、って結構好きなんですよね」
「そう。あたしもルイさんの歌、好き。これならデビューしたときから自分で作詞作曲すればよかったのに、って思うんだけどね…」
いまやトップアイドルの地位を不動のものとしている沖野ヨーコだが、彼女のような幸運な例はごくわずかである。
一年の間にデビューする歌手というのは実に何百組とあるが、その中でモノになるのはわずか一握りしかいない。デビューからいきなりCDが大ヒットし、トップアイドルの階段を駆け上がっていく、なんて滅多にないことなのだ。そしてもっと大切なのは、その人気を維持していくこと。例えデビュー曲が百万枚売れようと、次の曲がからきし駄目だったら、それは「一発屋」という不名誉な勲章を手に入れることになるのだ。事実、そんな例は沢山あることなのだから。まあ中にはタレントや俳優に転向する人物もいないわけではないが、そんなはごく一部の例。大部分は人知れず芸能界を去っていくのだ。
沖野ヨーコは幸いそんなことにならず、デビュー曲がヒットし、そのルックスもあってか、出す曲出す曲が次々とヒットする、という幸運にも恵まれ、デビューから数年たった今もトップアイドルの座を維持していた。
そんな彼女の事務所の先輩に黒崎ルイ、というのがいた。
デビューはヨーコより一年ほど早かったのだが、なかなか芽が出ずに本人も事務所もそろそろ潮時か、と思っていた頃に「これが最後のつもりで出した」と自分で作詞・作曲して発売した新曲が当たり、ようやく注目されるようになったのだ。
それで自信をつけたか、それからの彼女は自分で作詞・作曲した曲でシングルやアルバムを出すようになり、今では沖野ヨーコと並ぶ事務所のトップアイドルとなっていた。
「…だからあたし、ルイさんがうらやましいんですよね」
「どうしてですか?」
「自分で作詞作曲できるなんてすごいじゃないですか。尊敬しちゃいますよ」
「あれ? ヨーコちゃん、この間出したアルバムに自分で作詞した曲あったよね?」
小五郎が聞くと、
「ああ、『ホワイト・バレンタイン・デー』でしょ? ダメダメ。あの詞書いてあたし、自分に作詞の才能が無いのがわかったんですから」
「そうかなあ…。オレはあの曲が一番気に入ってるんだけどなあ…」
「…あ、出てきた出てきた」
ヨーコのその言葉に全員がその方向を向いた。
黒崎ルイがマネージャーと話し合いながらやってきた。
「…あれがルイさんですね」
蘭が言う。
「そう。隣にいる人がマネージャーの矢島さん。あの二人、すごく仲がいいのよ」
そして黒崎ルイは何事か司会者やスタッフと打ち合わせをした後に、今度発売されると言う新曲を歌いだした。
小五郎の隣に座っているヨーコも身を乗り出してじっと見つめている。
確かに彼女の歌声は聞いている者を引き付けるようなものを感じる。
*
リハーサルが終わり、本番までの間に休憩時間が入ることになり、ヨーコは「衣装に着替えるから」と一人で楽屋に行き、小五郎たちは彼女の専属マネージャーである山岸栄一とともに局内の喫茶店に行き、話をしていた。
「…へー、山岸さん、オーストラリアに行ったことあるんですか」
「ええ、大学の卒業旅行で。あそこは日本と違っていろいろと面白いところなんですよね。オーストラリアに行くのはそれ以来だから楽しみにしてるんですよ」
そんなときだった。
「…山岸さん、ちょっといいかしら?」
一人の女性が山岸に近づいていた。
「…あ、美喜ちゃん。どうしたの?」
「美喜ちゃん?」
「あ、紹介します。この人は黒崎ルイのマネージャーで矢島美喜さんです。…美喜ちゃん、話くらいは聞いたことがあるだろ? 探偵の毛利小五郎さんだ」
「はじめまして、矢島です」
山岸が紹介すると、矢島美喜は小五郎たちに挨拶をした。
「…それで、何の用?」
「山岸さん、明後日からヨーコちゃんと一緒にオーストラリアでしょ? それで引継ぎとかしないといけないから…」
「ルイちゃんは大丈夫なの?」
「いや、その…」
「…『天の岩戸』か」
山岸が苦笑いをして言う。
「…なんですか、それ?」
蘭が聞くと美喜が、
「彼女はいつもリハーサルが終わるとしばらくは一人にさせてくれ、って言うんです。その間、彼女が呼ぶまで私ですら楽屋に入れないんですよ」
「ま、たぶん集中力を高めてるんでしょうけどね。…わかった、じゃ、今行くよ。あ、毛利さん、お金は払っておきますから」
そして二人は喫茶店を出て行った。
*
それから程なくヨーコが出演する番組の収録が始まるので関係者はスタジオに来てくれ、と言うアナウンスが入り、小五郎たちも喫茶店を出て、収録が行われるスタジオに向かって歩き出した。
…と、その時だった。
「あ、毛利さん!」
既に衣装に着替えたヨーコが小五郎の元に走ってきた。
「…どうしたんだい、ヨーコちゃん? もう収録が始まるんじゃないのか?」
「いえ、それどころじゃないんです!」
「それどころじゃない、って?」
「ルイさんが…、ルイさんが楽屋で死んでるんです!」
「何っ!」
*
程なく連絡を受けたであろう、警視庁から捜査員が駆けつけてきた。
「…被害者は黒崎ルイさん、22歳。死因は後頭部打撲によるによる脳挫傷、間違いないな?」
目暮警部が聞く。
「はい」
検視官が答える。
見ると黒崎ルイは壁か何かに後頭部をぶつけたのであろう、壁に寄り添って絶命していた。
そして、唇の端からも一筋の血が流れていたが、それは既に乾いていた。
おかしなことに、死体のすぐ傍らには何かガラスの破片のようなものが落ちていた。
よく見てみるとそれはコップのようなもので何かで踏み潰したかのように粉々に砕けていた。
「…発見者は誰ですか?」
「…私です」
矢島美喜が名乗り出た。
「リハーサルが終わって録画取りが始まるまで、ルイは楽屋でしばらく一人にさせてくれ、って言うんです」
「どうしてですか?」
「いえ、集中力を高める、とか言っていつも彼女は本番前と言うと楽屋の中で一人になってるんです。ですから、私はいつものことだと思って、山岸さんと情報交換をしてたんですよ」
「美喜ちゃんの言うとおりです。その間美喜ちゃんと僕は、ルイちゃんの来週のスケジュールとか、僕もヨーコと一緒にオーストラリアに行くからその間の仕事の引き継ぎについて、とかいろいろ話してましたから」
山岸も言う。
「…で、なぜ彼女の楽屋に行ったんですか?」
「いつもなら10分くらいで私の携帯電話に連絡を入れて呼ぶのに、今日はなかなか呼びに来なくて…、本番も近いし、何か変だな、と思って、山岸さんやヨーコちゃんと一緒に楽屋に行ったら、彼女が…」
そう言うと矢島美喜は黙り込んでしまった。と山岸が、
「…で、とにかく警察を呼ぼう、ってことで僕が携帯電話で警察を呼んで、ヨーコに毛利さんを呼びに行かせたんですよ」
「…高木くん、聞き込みの結果はどうだね?」
目暮警部は傍らにいた高木刑事に聞いた。
「はい。録画撮りを終えて、彼女が楽屋に戻ってから、マネージャーの矢島美喜さんが死体を発見するまでの1時間ほどの間、彼女の楽屋に人の出入りはなかったそうです。スタッフのほとんどはスタジオにいて、本番への準備を続けてたそうですから」
「…その間、あなた方はどこにいましたか?」
「えーっと、確か…」
そう言いながら山岸はシステム手帳を取り出すと、ページをめくり始めた。
それに合わせるかのように矢島美喜も手帳を取り出すとなぜか片方の目をつぶりながらページをめくる。
「…ちょうど、山岸さんと打ち合わせをしていた頃ですね」
矢島美喜が言った。
「…そうだったね。美喜ちゃんが呼びに来たんだったね」
「ええ」
「…ということは目撃者は無し、か…」
「…となると、これは物取りの仕業ですかね」
小五郎が口を開いた。
「…矢島さん、何か無くなっているものはありませんか?」
「…そういえば、彼女の財布やクレジットカードが入っているブランド品のバッグがなくなってますね…」
「…うーん、やはりそうなると毛利君の言うとおり物取りの犯行なのかな…」
その時だった。
「警部」
鑑識課員が目暮警部の元にやってきた。
「どうしたのかね?」
「念のために割れたコップの周辺を調べてみたんですが…、こんなものが出てきたんですよ」
そして鑑識課員が袋に入ったものを取り出した。
なにやら透明で明らかにガラスとは材質の違う、プラスチックのようなものの破片が入っていた。
「…何かね、これは?」
「詳しくは調べてみないとわからないんですが、コンタクトレンズか何かではないかと」
(…コンタクトレンズ? 何でそんなものが…)
それを聞いたコナンの脳裏にひとつの考えが思い浮かんだ。
(…そうか! それであの人はあの時にあんな行動をしたんだ!)
そしてコナンは高木刑事に近寄る。
「…ねえねえ、高木刑事」
「どうしたんだい、コナン君?」
「あのね、おじさんが言ってたんだけど…」
そう言うと高木刑事に耳打ちをする。
「…うん、わかったよ」
そして高木刑事が出て行った。
(あとは、と…)
そしてコナンは時計型麻酔銃を小五郎に向けた。
*
「…皆さん、ちょっといいですか?」
いきなり小五郎の声がした。
何事か、と小五郎のほうを向く一同。
「どうしたのかね、毛利君?」
目暮警部が聞く。
「今回の事件の真相がわかったんですよ」
「何だと?」
「…私はなぜ、死体のすぐそばに割れたコップの破片があったのか、それがよくわからなかったのですが、ようやくわかったんですよ」
「どういうことだね?」
「死体のそばにあったガラスのコップはただ割れただけじゃなく粉々に、何かで踏み潰したかのように割れていました。何で犯人はそんなことをしたのか…。それは証拠を隠すためだったんですよ」
「証拠を?」
「念のために破片を調べてみたら、コンタクトレンズのような破片が見つかりましたね? おそらく犯人はルイさんと揉み合っているうちに、コンタクトレンズを落としてしまったんですよ。そしてルイさんが打ち所が悪かったのか死んでしまった…。それに驚いた犯人は逃げようとしたんですが、コンタクトレンズと言うのは小さいですからね。犯人は慌てていたこと、さらにコンタクトが外れてしまったこともあって見つけようにも見つけられなかったのでしょう。そこで側にあったガラスのコップを割って、さらには足で踏み潰した…。うまくいけばコンタクトレンズとコップの破片が混ざってわからなくなると思ったんでしょう。しかし、生憎とコンタクトの破片が見つかってしまった、とこういうわけです」
「じゃあ、犯人は…」
「ええ、先ほどあることをしていた人です」
「あること?」
「そうです。先ほど手帳を見た際に片目をつぶって見ていた人がいましたね?」
「まさか…」
「そう、片方のコンタクトが無くなって視力がアンバランスになってしまい、焦点が合わなかったためにそんなことをしていた、黒崎ルイさんのマネージャー。つまり矢島美喜さん、あなたです!」
それを聞いた全員が一斉に矢島美喜をみた。
…そのくらい経っただろうか、
「…殺すつもりなんて、無かったのよ…」
そう言うと矢島美喜の目に涙が浮かんだ。
「どういうことですか?」
「…彼女が死んだから本当のことを言うけど…。今までルイが作詞作曲した曲、っていうのは全部私が作った曲なの」
「何だって? それじゃ君は…」
「そう、ルイのゴーストライターだったのよ。あの子本当は作詞作曲の才能なんか全然無かったのよ。ルイが売れるきっかけになった曲だって私が作って『あなたが作詞作曲したことにして出しなさい』って言ったのよ。それが今までのあの子に無いタイプの曲だったから、ってヒットして…。それからは表向きはルイの作詞作曲、ってことになってたけど、本当は全部私が作った曲だったのよ」
「じゃあ、何でルイさんの事を…」
ヨーコが聞いた。
「あの子、歌が売れてからも著作権料はちゃんと何割かは私にくれたわ。でも、そうしているうちに図に乗るようになったのかしら、私に払う著作権料を今までの半分にする、って言い出したのよ。今までも何度か話し合ったけど、あの子はぜんぜん私の言うことは聞いてくれなかった。あの子との関係はもう最悪の状態になってたわ」
「そんな…。だって矢島さんとルイさん、ってすごく仲がよかったじゃない…」
「あれはそういうふりをしていただけよ。最近ではあの子とプライベートではまったく口を聞かなかったもの。仮に本当のことを事務所に話したって、私が担当を変えさせられるだけ…。だからルイとは仲のいいふりをしていたの。あの時もそうだった。楽屋でルイとこれからのことについて話し合ったのよ。でもいつも通り平行線…。ついかっとなって手を出しちゃったの。それで揉み合いになって私が突き飛ばしたら壁にぶつかって…。打ち所が悪かったのかしら、ルイがピクリとも動かなくなっちゃって…。怖くなって逃げ出そうとしたら周りがよく見えなくなって…。おそらくルイと揉み合ってるときに片方のコンタクトを落としたらしいのがわかって…。探そうとしたんだけど慌てていて見つからなかったのよ。もしコンタクトが見つかったら真っ先に私が疑われる…。それで前に読んだことのあるミステリー小説を思い出して、とっさに物取りの犯行に見せかけようと思って、そこにあったガラスのコップを落として砕いたんだけど…。やっぱり悪いことは出来ないのね」
「矢島さん…」
「…警部」
丁度そこへ高木刑事が入ってきた。
「どうしたのかね?」
「はい、ゴミ箱からこれが見つかりました」
そう言うと高木刑事はブランド物のバッグを取り出した。
「黒崎ルイが持っていたバッグか?」
「はい」
「…これも、あなたが捨てたんですな。物取りの犯行に見せかけるために」
「…そのとおりです」
TV局の玄関。
すっかり観念したか、美喜がパトカーに乗ろうとしていた。
と、
「…ヨーコちゃん」
美喜が心配だったのだろうか、わざわざ玄関前に来ていたヨーコに美喜が話しかける。
「…なんですか、矢島さん」
「今度のアルバムに入っているあなたが書いた『ホワイト・バレンタイン・デー』の歌詞、ルイや私に見せてくれたことあったでしょ?」
「え…、ええ」
「驚いたわ。あなたにあんな素敵な詞が書けるなんて思わなかったもの」
「え? でもあれは失敗作だ、って…」
「そんなこと無いわ、あなたの純粋な気持ちがよく出てる気がした。あの曲、私のお気に入りなのよ」
「矢島さん…」
「出来れば一度あなたの新曲を作曲してみたかったわ。ヨーコちゃん、これからもいい歌を歌ってね」
そして彼女を乗せたパトカーが去っていった。
ヨーコはいつまでもパトカーの去っていた方向を見ていた。
「…ヨーコ、行こうか」
山岸がヨーコの肩をポン、と叩いた。
「…はい」
そう言うとヨーコはあふれ出た涙を拭った。
「…ヨーコちゃん」
小五郎が話しかける。
「…なんですか?」
「その…、死んだ黒崎ルイや、マネージャーの彼女の分も頑張れよ」
「はい」
結局、ヨーコが出演した番組は内容を変更し、黒崎ルイを追悼する形になり、皮肉にも番組始まって以来の最高視聴率を獲得することになるのだが、それはまた後の話である。
そしてまた「黒崎ルイ作詞作曲の作品は全部マネージャーが作ったもの」と言う事実は語られることがなかった。ファンの夢を壊したくなかったのか、事務所がそういう事にしたのかはわからないが…。
*
2日後。
「ねえコナンくん。お父さん知らない?」
「え? ボク知らないよ」
小五郎がどこを探してもいないのだ。と、
「…蘭ねえちゃん。これ何?」
コナンが小五郎の机の上に置き手紙があるのを見付けた。
「どれどれ? 『ヨーコちゃんの所へ行ってくる。一週間で戻るから心配するな。戻って来るまで依頼は全部断れ。 小五郎より』って…」
「蘭ねえちゃん。もしかして…」
「…そうね。お父さん、あんなことがあったからかヨーコさんのことが心配で、彼女を追ってオーストラリアに行っちゃったんだわ…。昨日、引き出しの中で何かを探してたから変だと思ったのよ。アレ、パスポート探してたんだわ」
(…はあ、そこまでやるかね。困ったおっちゃんだ)
(おわり)
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