雪が降った日は…
作:ともゆき


「ふあああ…」
 江戸川コナンは大きくあくびをひとつすると布団から置きだした。
「…うっ、さむ…」
 その途端全身に寒気が走った。
「…今日は随分寒いな…」
 そしてコナンはカーテンを開けた。
「あ…」
 外の光景を見て思わず口を開けるコナン。
「雪か…」
 そう、いつから降り出したのか、外は雪が降っており、うっすらと道路にも雪が積もっていたのだ。

「蘭ねーちゃん、おはよう」
「おはよう」
 台所でコナンと毛利蘭が挨拶を交わす。
「雪が降ってるね」
「そうね。昨日から随分冷え込んでたけど、雪が降ってくるなんて思わなかったわ。あ、もう一寸でご飯出来るから待っててね」
「うん」
 そしてコナンは席に着くと既に小五郎が席に着き、テレビを見ていた。
「…それではニュースです。まずは積雪情報です。昨夜から降り始めた雪は今朝になっても降り続いており、東京でも1センチの積雪を記録しております」
「…だとよ。学校に行くとき気をつけろよ」
 小五郎が言う。
「…この雪は今夜半まで降り、数年ぶりの大雪となることが予想されます。そのため、気象庁では注意を呼びかけています」
「…大変。コート出さなきゃ…」
 丁度朝食を持ってきた蘭が呟く。

「じゃ、行ってくるわね」
 そして蘭とコナンが外へ出た。
 雪は相変わらず降り続けている。
    *
 学校が終わり、コナンが事務所に戻ってきて間もなくのことだった。
「コナン君、いる〜?」
 事務所の外で歩美の声がした。
「何、歩美ちゃん?」
 コナンが事務所のドアを開ける。
「コナン君、米花公園に雪ダルマつくりに行こうよ」
「え?」
    *
 米花公園。
 学校帰りの子供達が来ているのだろう、既に米花公園は大勢の子供達がいて、おのおのが友達と遊んでいた。
 その中に元太と光彦の姿を見つけるコナンと歩美。
「…あれ? 灰原さんは?」
 光彦が聞いた。
「うん。誘ったんだけど、何か他にすることがあるから、って…」
「そうですか…」
 光彦が残念そうに言う。
(…フッ、アイツらしいな。オレだって事務所にいたかったよ)
「…ま、とにかくさ、まずは雪ダルマ作ろうぜ!」
 元太が言う。
「コナン君、一緒にやろ!」
 歩美が言う。
「う、うん」

 そして自然とコナン&歩美、元太&光彦と二組に分かれて雪ダルマ作りが始まった。
 元太達は下の大きい雪玉を作り、コナンたちはその上に乗せる小さな雪玉を丸める。
 やがてそれなりの大きさとなり、あとは乗せるだけとなった。
 そして4人が小さな雪玉を乗せ、雪ダルマが完成した。
「よーし、じゃ、後は手をつけるだけだな」
「ちょっと探してきますよ」
 そして元太と光彦がその場を離れた。

「…あの二人何処まで探しに行ったんだ?」
 中々戻って来ない二人に対しコナンが呟いたその時だった。
「えいっ!」
 不意に歩美が雪玉をコナンに向かって投げつけた。
「え?」
 完全に不意を突かれたコナンの顔に歩美の投げた雪玉が当たった。
「きゃははは!」
 歩美がそんなコナンの顔を見て笑う。
「やったなあ!」
 そういうとコナンも歩美に向かって雪玉を投げつけた。
 勿論歩美も負けじと雪玉を投げ返す。

「…あれ、コナン君と歩美ちゃん、雪合戦やってますよ」
 どこかで見つけてきたのだろう、雪ダルマに付けるべく枝を手にした光彦が元太に言う。
「…面白そうだな。オレ達も参加しようか?」
「賛成」
 そう言うと二人は雪玉を丸めてコナンに投げつけた。
 そして4人で雪合戦が始まった。

「只今」
「お帰りなさい」
 コナンが事務所のドアを開けると、いつの間に帰ってきたのか蘭が出迎えた。
「…? コナン君。コートに雪、着いてるわよ」
「え? あ、ああ」
 そう言われてコナンは慌てて雪を払い落とす。
「随分とやったみたいね」
「え?」
「米花公園で雪合戦してたでしょ? 帰りに園子と見たわよ」
 どうやら蘭が通りがかったのにも気づかずに雪合戦をやっていたらしい。
 コナンはそれを聞いて苦笑するしかなかった。
     *
 翌朝。
 昨日の雪はやんでいたが、数年ぶりという大雪だったこともあってか、かなりの高さで積もっていた。
 幸い、学校が今日は休みだと言うこともあって通学には困らないが。

「コナン君、おはよ〜!」
 昨日に引き歩美達が探偵事務所にやってきた。
 そして、コナンは歩美たちの誘いを受けて昨日と同じく米花公園に遊びに行った。
    *
「随分残ってますねえ…」
 歩道に残っている雪を見て光彦が言った。
「この分だと昨日オレたちが作った雪ダルマも残ってるかもしれないな」
 元太が言う。
「そうですね。多分残ってますよ」

 その時だった。
「…?」
 不意にコナンが立ち止まった。
「どうしたの、コナン君?」
 歩美が聞く。
「何か聞こえなかった?」
「何か、って?」
「米花公園のほうから何か破裂するような音が聞こえたんだけど…」
「行ってみようぜ!」
 元太の声に全員が駆け出した。

 丁度その時だった。
「やあ、みんな、どうしたんだい?」
 一台の車が停まって窓が開いた。
「あ、高木刑事」
 そう、その人物は警視庁捜査一課の高木ワタル刑事だったのだ。
「こんな時間にどうしたの?」
「ん、一寸用があってね。それより…」
 と言いかけたその時、そこにいた全員の脇を一人の男が駆け抜けていった。
 見るからに怪しい、と思ったのか、高木刑事が車を降りる。
 そしてスーツの中のホルスターから拳銃を抜くと男に向け、
「動くな! 警察だ!」
 その一言を聞いたか、男が立ち止まった。
 高木刑事は用心深く男に近付くと、
「…何をやってるんだ?」
 しかし男は何も言わなかった。
 高木刑事はとりあえず男を拘束する。
「この人、米花公園の方から来ましたよね」
 光彦が言う。
「とにかく行ってみよう!」
 コナンの声に全員がうなずいた。

 米花公園。
 丁度昨日、コナンたちが雪ダルマを作ったり、雪合戦をしていた場所に来た時だった。
「これは…」
 高木刑事が呟く。
 そう、彼らの目の前には物言わぬ死体が転がっていたのだった。
     *
 やがて高木刑事から連絡を受け、警視庁から刑事たちが米花公園にやって来た。
「いやあ、高木君。お手柄だったな」
 目暮警部が言う。
「いえ、たまたまいたからですよ。それより…」
「わかっておる」
 そう、高木刑事の連絡を受け、警視庁の面々が現場へやってきて現場検証が始まったのだった。
 死体は拳銃か何かで撃たれたのだろうか、被害者の倒れているあたりが血で真っ赤に染まっていた。

「…犯人はどうやら至近距離で被害者を撃ったようですね」
 鑑識課員が目暮警部に報告する。
「おまえがやったんだな!」
 高木刑事が先ほど捕まえた男に言う。
 しかし、男は何も話そうとしなかった。
 現場付近には何やら怪しい人物が他にいなかったこと、周辺の聞き込みをしたところ、丁度コナンたちが男とすれ違う前に「銃声がしてその後に男が公園から出て行った」と言う証言が取れ、その人相や体つきが高木刑事が捕らえた男とよく似ていたことから、この男が事件と何やら関わりがあるのは間違いがないようだが…。
 高木刑事は目暮警部に言われ男の身体を調べたのだが、拳銃のようなものを持っていなかったのだ。
 この男が事件と何やら関わりがあるのは間違いないと思われるのだが、肝心の証拠が見つからなければどうしようもない。
   *
 そんな様子をコナンたちが少し離れていた所から見ていた。
「…どうなんだろうな…」
 元太が呟く。
「そうですよね。あの人が何か事件に関わりがあるのは間違いないように思えるんですが…」
 光彦が言う。

 そんな中コナンはさっきからじっと現場を見ていた。
「…? コナン君、どうしたの?」
 歩美が聞いた。
「ん? なんでもないよ」
 そして再びコナンは現場を眺める。

 現場周辺に凶器となった拳銃を隠せるような場所はないし、もしあったとしたらそんなものとっくに警察が見つけているはずである。
 コナンはもう一度現場を見回す。

…と、コナンの目がある一点に集中した。
(…待てよ、もしかしたら…)
 そしてコナンは駆け出していた。
「ちょっとコナン君、待ってよ!」
 歩美が追いかける。それについていく元太たち。

「…ねえ、目暮警部」
「? どうしたんだね、コナン君?」
「拳銃はまだ見つからないの?」
「ああ。現場周辺はくまなく探したんだがな。まだ見つからんよ」
「本当に全部探したのかな?」
「…いや、まだ探していないところがあるよ」
「探していないところ?」
「あれだよ」
 そういうとコナンは昨日、元太達と主に作った雪ダルマを指差した。
「あの中に入ってる、って言うのかよ?」
 元太が言う。
「…いや、もしかしたら、と言うことがあるかも知れんな。高木君!」
「はいっ!」
 そう言うと高木刑事は雪ダルマに近付き、手袋をはめた手で雪ダルマを崩し始めた。
 一晩経ったとは言え、やはり雪ダルマは雪ダルマ。簡単に崩れ落ちてしまう。
 するとその中から、なにやら黒光りするものが見つかった。
 高木刑事が近付いてその黒光りする物体を引き抜いた。
「警部!」
 そう、彼の手には雪まみれの拳銃が握られていたのだった。
「…さあ、どうだね?」
「う…」
 男がそれを見てうめき声を上げた。
 それはその男が犯人であることを証明したようなものだった。
     *
 男が目暮警部たちに連行されていった。
 それを見送るコナンたち。
「…ねえ、コナン君」
 歩美が聞く。
「何?」
「どうして雪ダルマの中に拳銃が隠されている、ってわかったの?」
「なあに、簡単だよ。この辺に拳銃をとっさに隠せる所なんかないからね。だから雪ダルマの中に隠したんじゃないかな、って思ったんだ。雪ダルマに隠して上から新しい雪でふさげばわからないしね」

 その後の調べで男達はこの米花町周辺で活動している暴力団の構成員で、ある対立がきっかけで殺人までに発展したことがわかった。
    *
 事件から1週間ほどが過ぎ、先週降った大雪もようやく融けたと思ったある日、再び東京を寒波が襲い、また雪が降った。
 さすがに前回の大雪ほどではないが、それでもまた東京に雪が降り積もった。

「コナン君、いる〜?」
 毛利探偵事務所のドアが開き、歩美達が入ってきた。
「何、歩美ちゃん?」
「米花公園に遊びに行こう。元太君たちはもう行ってるよ」
 そう言う歩美の後ろには灰原が立っていた。
 おそらく歩美に誘われたのだろう。「仕方ないわね」と言う表情をしていた。
 それを見たコナンは苦笑いをすると、
「じゃ、歩美ちゃん。一寸待ってて」
 そしてコートを羽織ると外へ出て行った。
    *
 米花公園には既に大勢の子供達が遊びに来ていて、それぞれが雪ダルマを作っていたり、雪合戦をして遊んでいた。
 その中にコナンたち4人がいて、雪玉を投げ合っていた。
「…まったくみんな気楽でいいわね…」
 そんな4人をブランコに座って眺めている灰原。

 元太が光彦に向かって雪玉を投げた。それをかわす光彦。
…と雪玉は光彦の丁度後ろにいた灰原の顔面を直撃した。
「あ…」
 思わず口をあんぐりさせる一同。
 灰原は右手で雪を払いのける。
 灰原が肩を震わせている。
「よくも…、よくもやったわねーっ!」
 そういうと灰原は雪玉を元太に向かって投げつけた。
 そしていつの間にやら灰原も交えて5人で雪合戦が始まった。

「…ねえ、蘭。あれ見てよ」
 鈴木園子が話しかける。
 丁度二人は帰宅途中だったのだ。
「…みんな楽しそうね」
 蘭が言う。
「そういえば、小学校の時、雪が積もった日は雪合戦したわね」
「そんなこともあったわね」

…と、誰かが投げた雪玉が飛びすぎたのだろうか、園子の着ていたコートに当たった。
「あ、やったな、この!」
 そう叫ぶと園子は米花公園の中に入っていった。
「あ、ちょっと園子、やめなさいよ!」
 蘭が言う。
 そして園子は、その場にしゃがむと、雪玉を作る。
 そしてコナンたちに向かって投げつけた…、と思いきやいきなり180度向きを代え、蘭に向かって投げつける。
「あ…」
 完全に不意を突かれた蘭のコートに雪玉が当たった。
 園子が悪戯っぽく笑う。
「園子、待ちなさい!」
 そう叫ぶと蘭は園子を追っていった。

(おわり)


〜作者より〜

と言うことで久し振りの新作を書いたともゆきです。
実はこの作品、原型とでもいうべき話はかなり前に書いたんですが、それを今回原型を留めないほどに(笑)作り変えちゃって…。
私自身小学生の頃、雪が積もると学校で雪合戦をした思い出があるんですよね。今回はそんなことを思い出しながら書いてみました。
それに私自身、夏より冬の方が好き、と言うことがあるのかもしれませんが、「やっぱりミステリーの舞台は夏よりも冬の方が合っている」と思うのですが…。

それではまた。

尚、この作品に対する感想等は「名探偵コナンノベルズ」の掲示板の方にお願いいたします。











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう