第48章
馬車がラクル山の麓に着くと俺達は一様に武器を取り出した。馬車に使われていた竜馬が麓に着くと同時に周りを警戒しだしたのだ。
「俺達はここで結構です。早めに待合所に返ってください。」
「た、頼んだよ!」
馬車を運転していた人は一目散にその場から逃げ去った。
「あそこまで急がなくてもなぁ。」
「スピナーじゃないんだから仕方ないさ。魔物は一般市民には驚異でしかないんだから。」
そう言いながら周りへの注意をはらう。すると早速引っ掛かる者達がいた。
「・・・カトプレパスか。」
類人猿だが知能が高く道具を使ったりしてくる大型の猿である。猿といっても大きさは人の数倍あるんだが。特徴は額にある3つの複眼。その中でも真ん中にある瞳は真っ赤でそれを直視すると全身に麻痺を起こす魔術機能付きだ。ちなみに換金部位でもある。
「まずは前哨戦だ!各自魔眼には注意しろ!」
いうやいなや姿を現した1匹に銃をぶっ放す。しかし周りにある木をへし折りそれを前に投げる事で防御される。
「こんにゃろう!」
小賢しい知恵付けやがって、と一瞬ムカついたが、それならば、と意識を銃に込める。
弾丸ではなく、レーザーのような光線を。
そうイメージした弾は防御に投げられた木々を貫通しカトプレパスまで貫いた。
「おぉぉぉ!!」
雄叫びを上げながら戟を振り回しカトプレパスを倒していくラグナ。見るとラグナが倒す直前にカトプレパスの足が凍っていたり軽く感電し身動きが取れなくなっている。セェレとのコンビネーションは良いようだ。
「どらぁ!!」
スキンブルは数匹のカトプレパスとガチで殴り合いを仕掛けている。もっともスキンブルは相手の拳を避けている。その合間を縫ってエルトは魔眼を傷付けないように頭部を射抜いていっている。
「シャナ!エルトに負けるなよっ!」
「分かってます!」
シャナは俺が渡した剣ではなくアマノムラクモを召喚し周りに散りばめている。
「縛っ!ミコトさん今ですっ!」
「おぅ!」
腰から黒い刀、カオスを抜き動けなくなっているカトプレパスに向けて一閃。それで数匹の胴を真っ二つにした。残るは数匹となった所で1匹、一際大きなカトプレパスが現れた。
「シルバーパックか!!」
群れの統率者であり、頭も1番回る。俺が撃ったレーザー弾も防御せず回避した。
「・・・試してみるか。」
俺は訓練中の能力、時を操る力を試してみた。
ゆっくりと襲い掛かってくるカトプレパス達を避け、シルバーパックの頭上までジャンプすると脳天にカオスを突き立てた。
そこで時間が元に戻る。ふむ、感覚的には数秒か。出来るならもっと保持時間を伸ばしたり完全に停止させられるようにならないとな。
1人今後の目標を考えていると後ろの方でも戦闘が終わったようだ。
「ふひぃ〜、初っ端から面倒な相手でしたね。」
シャナが地面に座り込みながら休憩を取っていた。
「剥ぎ取りがてら少し休憩するか。」
俺も少し休憩したくなった。いきなり全力で時間を操ったせいか、全身の筋肉に疲労が感じられる。多分現実世界では亜音速に近い速度で動いているせいだろう。
剥ぎ取りを済ませると今度は山道を歩く。魔物が出なくても急な勾配や不安定な足場、はたまた毒蛇なんかにも注意しながら先を進む。すると発掘者達の休憩ポイントに到達した。
「散々な有様だな。」
ミルメコレオの襲撃にあったのは知っているが休憩所の小屋が見るも無惨なボロボロになっているのである。
「何匹のミルメコレオがいたらこうなるんだ?」
「100じゃきかなそうですね。」
穴だらけの周りを見ながらセェレが呟く。
「ここいらの地面や岩を動かして奴らを押し潰そうにも岩石の中にまで移動出来るんじゃ意味無いしな。」
「!分かった!分かりました!」
いきなりエルトが手を挙げた。
「一斉に呼び出して一網打尽にしちゃいましょう!」
「どうやるんだ?方法まで思い付いたのか?」
「はい!皆さんはちょっと下がっていてくださいね。あ、戦闘体勢はそのままで。」
そう言ってエルトは空に向かって弦を引いた。
「焼かれたら怒って出てきますよね?」
射出された矢は空中で散らばり炎を燈しながら穴の中に飛んでいった。
ピギィィィィィ
辺りに悲鳴が響いたと思ったら穴の中から一斉にミルメコレオが飛び出して来た。3メートルくらいの大きなミミズ。頭の部分に牙を持ち獲物を捕食する。
空中まで飛び上がり盛大にミミズが降ってくる様は女の子、特にラグナにヒットしたのは意外だった。
「気持ちわりぃぃぃぃぃ!!!近寄るんじゃねぇぇぇぇ!!」
戟を今まで以上に振り回しミルメコレオをズバズバと斬り裂いていく。その間もエルトは空に向かって矢を射る事を止めない。次から次へと出て来るミルメコレオ達にウンザリしながらも皆その武威を奮った。
大体1000匹くらいは倒しただろうか?一旦狩りの手を休め尻尾の針の剥ぎ取りを行う。正直かなりの量だ。剥ぎ取りが終わるとミルメコレオの死体は燃やして除去する。毒性の肉なんて食えたもんじゃない。
狩りを再開するために同じように弓矢を発射したが再開後は1匹も出なくなった。
「全部討伐したのかな?」
「いや、住み着いた穴を変えたんだろう。エルト、今度はあそこの壁一面に発射してみろ。」
「はい、分かりました。」
壁に無数に空いた穴に向けて矢を射るとまた大量のミルメコレオが飛び出てきた。
「エルト、手を休めるな!」
「はい!」
「ほら、ラグナ!行くぞ!」
「気持ち悪いぃぃぃぃ!!!」
相当こういった類が苦手なのか戟を振り回しまくっている。おかげで1番先頭にラグナを置けるんだがな。残りの4人で打ちもらしたミルメコレオを相手取る。1対多数でもそんなに遅れを取るような魔物ではないのだ。
壁から飛び出てくるミルメコレオも後が無くなるまで狩るとまた針の剥ぎ取り。ある種流れ作業である。
「次はこっちの壁だな。」
「はい。」
「近寄るなぁぁぁぁぁ!!!」
「今度はここだ。」
「はい。」
「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
こんな調子でミルメコレオ退治をしていた時だった。グラグラと地面が揺れたと思ったら地割れと共に巨大なミルメコレオが現れた。
「でかいな。」
「こいつらのボスって所か。」
「キングにゃ相応しくない面だけどなっ!」
ドゴッ!
スキンブルがおもいっきりアッパーで穴から引きずり出す。しかしわずかに動く程度だった。
「マジかよ!?どんだけ重てぇんだ?」
頼みのラグナは巨大なミミズに完璧に戦意喪失してしまっているようだ。
「しょうがないか!」
少しずつ斬り裂いていこうかと刀を振りかぶった瞬間、巨大なミルメコレオは大きな雄叫びをあげた。
ビギャアァァァァァァァ!!!
金切り声にも似たその雄叫びはミコト達の頭に直接響いた。
「くっ!」
「うぁぁ!」
「これはしんどいな!」
雄叫びをあげると穴の中に消え、再び地面が揺れると今度は足元から飛び出してきた。
「危ないっ!」
「うわっ!」
「今だ!!さっきの穴に炎を全開で打ち込め!!」
「「はいっ!!」」
その声にエルトもシャナも反応し先ほど飛び出して来た巨大な穴に純粋な炎をありったけの魔力で打ち込む。
ビギィィィィィィィ!!!
するともがき苦しむような素振りを見せた。
「スキンブル!あいつの重力を逆にしろ!」
「逆って斥力か?」
「いや、掛かってる重みを消すんだ!」
「わ、分かったやってみる!」
ミコトに言われた通り重力の向きを逆に向けてみる。上方へ上方へと押し上げられる巨大なミルメコレオ。
「よし!」
ミコトは刀を突き刺すと峯で持ち上げるようにミルメコレオを引っこ抜いた。
スポーンっという感じで抜かれたミルメコレオの全体像は9メートル程ありそうな巨大な姿である。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」
その姿を見て最後のとどめを刺したのはラグナだった。落ちてくるミルメコレオに対し戟の乱舞。力の限り振り回し続けた戟はミルメコレオが死んでも続けられ、皆が止めに入るまでラグナは戟を振り回し続けたという。
剥ぎ取りも全部済ませ、残っていた巣穴からミルメコレオがもう出て来ない事を確認すると山をおりる。帰り道でラグナがミルメコレオのせいで腰が抜けたのでスキンブルに背負わせ、一路馬車の待つ待合所まで歩いた。
「あんた達!生きてたんだねぇ。よかったぁ。」
運転手は律義に心配してくれたようだ。
「こんな所にいるのも何だ。さっさと町に戻ろうか。」
馬車に乗り込み町までの数時間の仮眠。町に着くと早速シーカーに届け出をした。大量過ぎるミルメコレオの針に受付嬢はビックリしていたが、換金するとクルト金貨6枚分になり今度はミコト達がビックリした。
シーカーから出ると町中の鍛冶職人や鉱山で働く人達が待ち構えており、何かと思いきや手荒い歓迎を受けまくった。
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