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  Alcemy of Blood 作者:QUATTRO
第4章
「この選択肢も失敗だったかもしれん・・」


町を出て指示されたままに真っ直ぐ進む。
まぁ他に道が無いため迷いようが無いのが助けではあるが。
しかし距離というものを考えていなかった。
タムドの町から歩き出して数時間した頃だろうか。
初めてこの世界にやって来た場所を通り過ぎ、更に歩き続けているが未だに森の中である。辺りは暗くなっており、月星が無ければ足元すら覚束なさそうな暗がりが道の先へと繋がっている。時折聞こえる森の中の草の葉擦れの音や奇妙な鳴き声、飛び立つ鳥達の気配が否応無く危険地帯だと言っている気がする。

ちょっと怖くなって小走りに小1時間進むと道の先には小さな松明と木でできた柵のような物が見えて来た。


「何かいかにも村!って感じがするなぁ」


衛士長のゼルドが言うには、ここはハルヴォアという村らしい。パチパチと燃える松明の門を通り、辺りを見渡しながら村の中を歩いていると真ん中辺りに焚火をしている集団が目に入った。


「あのぉ〜・・」

「っ!!何者かっ!!」

「いや!怪しい者じゃなくてね!?旅をして世界を歩いてまして!つい先程この村に到着出来まして!」


やべっ!この説明じゃ怪しさ全開じゃん!でも何とか説明しないと構えてる槍やら剣やらで攻撃してきそうだ。さすがに連続で敵視されるのは辛い。しかもそろそろ今日の宿を考えなくてはいけない。


「・・・旅の者と言ったな、貴様どこから来た?」

「えーっと、生まれは言っても分からない極東にある小さな島国です。ここに来る前はアーモドンという町にいました。」


よし、詳しく説明出来た!これなら怪しまれないだろう。


「アーモドンだと?ルートウォーターの兵士・・の様には見えないな・・武器も持っていないようだ」


「武器も持たずにアルゴスの森を歩んで来たというのか!貴様、魔士か何かか!」


ぎゃーっ!何か別の勘繰り入っちゃった!どうしようどうしよう!まだ言葉で煙に巻く程この世界の事知らないし!ってか真っ白のジャージの兵士って何だよ!!いるなら見たいわっ!


「待ちなさい」


村の男衆の緊張が高まっていた時、小さいのだが周囲に響くような声が辺りに広まった。


「あなたは ミコト ですか?」


人垣を割るように出て来た人の姿を見て俺は息が詰まった。赤色の髪をした少女はアーモドンでも見たが、造形の一つ一つが計算されつくしたかのような美しさなのだ。見た目からするとミコトより若干年下。その歳でこの美しさは先を見てみたくなる程だ。俺が軽く言葉を失っていると


「質問への解答を。あなたは ミコト ですか?」

「は、はぁ・・一応ミコトって名前ですけど・・・」


何とか思考回路を回し質問に応えたが俺はこの世界に今日来たのだ。こんな美人の知り合いどころか俺の名前を知ってる人もいないはずだ。


「着いて来て。」


そう告げると赤髪の少女は踵を返し歩きだす。


「しかしセェレ様!」男の1人が声をあげるとセェレと呼ばれた少女は再びこちらに振り返り口を開いた。


「これからこの方には爺様に会って頂きます。今夜はもう遅い。見た所旅の者の様ですし、明日の朝、皆さんに報告します。」


それだけを告げるとセェレは3度振り返り歩を進める。俺はその後をつけながら周りからの視線を受けた。


「うぅ、絶対何か勘違いされてるよ・・」






セェレの後をつけ歩き、1軒の家へと案内された。

中に入ると中世的というよりは現代的なログハウスといった所か。香でも焚いたのか、ほのかに花の香がする。


「これを。」


木で作られたコップに紅茶のような物が入れられ目の前のテーブルに出された。


「爺様を呼んでくる。」


それだけ告げると、セェレは家の奥へと消えて行った。


「これからどうなるんだろうか・・」


ゆっくり足を休めながら、これまでの事を考えてみる。元の世界からこちらの世界へ
「世界を創る為」にやって来た。アーモドンで変なイザコザに巻き込まれ、国を脱出し、森を歩き、このハルヴォア村にやって来た。そしてそこでセェレに連れられこの家へと迎えられた。事実確認はこれで大丈夫だろう。では、問題点は何なのだろうか?


両親は世界創りと言ったが、既に世界があり国があるのは何故か。

歩いて来た森の事だろうが、アルゴスの森とは何なのだろうか。

村人がセェレと呼ばれる少女は何故俺の名前を知っているのだろうか。

そして、これから会わされる爺様とは何なのだろうか。


「考えるだけ無駄か・・・・誰か一緒に考えるなり答えるなりしてくんねぇかなぁ」

「その役、ワシではいかんかね?」


声のした方を見ると、セェレのような立派な赤毛と赤髭をはやした老人が出て来た。


「あ・・どうも、弥呼都といいます。」


「この村の村長をやっております、ヘライアといいます。」


見た目の歳の割にはきびきびとした動きでイスに座ると奥からセェレが俺に出した物と同じような茶を2人分持って来て席についた。



「では、何からお話しましょうかな?」


お茶で軽く喉を潤したのだろう。一呼吸置いてヘライアが切り出して来る。俺にとっては好都合だ。質問権を持っているなら聞きたい情報聞き出せるかもしれないし、ちょっとした態度の変化からも何等かの物は知り得るからだ。


「そうですね・・・まず、貴方達は私を弥呼都かと確認した。名前を名乗る前から私を知っていたのは何故ですか?」


質問による切り崩しでは最初はこのくらいから入るのが妥当だろう。



「ふむ・・・」


ヘライアは少し驚いた表情と少し悩む表情を混ぜた思案顔を見せると、また1口お茶を飲み口を開いた。セェレはこちらを伺ったまま口を開こうとはしない。


「その事を話すには、我が家に伝わる家伝をしなければならんな・・



最初 世界を作り出した男の神と女の神がいた

神々にはミコトと名付けられた子どもがいた

2柱の力を受け継いだミコトは 新たに世界を創り出す為に 神々の世界から人間の世界へと降りてくる

人々の世界を見て嘆いたミコトは その力を使い 人々に永遠の幸福による安寧を齎せる

黒髪黒眼のミコトは白い衣を纏い 世界に降りてくる

ミコトの意志は神の意志

ミコトに逆らわず ミコトを信じよ

我らミコトの使いとなるものなり



これが村人の知らない我が家に伝わる家伝じゃ。どうした?机に突っ伏して?」


なんっちゅーか、力が抜けた。立派に説明出来てるじゃねぇか!あれか、ガイドさんか!お手軽感覚で異世界創造ツアー参加してんのか!しかも異世界の住民にほとんどの真実教えてんのか!!

ふと脳みその片隅でもう帰れない実家で、笑顔で告げて来た両親の言葉がフラッシュバックする。


(父さんと母さんが色々弄ってある)


「この事かあのキチガ○バカップルがぁー!!!」


テーブルを強く叩き、イスから立ち上がると、ヘライアさんやセェレが驚いた顔をしている。


「どうした?ワシらの家伝に何かあったのか?」


心配そうに声をかけてきてくれるヘライアさん。若干イタイ子を見る目な気がしないでもないが、この人達は何も悪くないんだよな。代々伝わって来た家伝を守り、それらしき人物を見つけるとこうやって保護してくれたのだ。


「すいません、取り乱しました。」


素直に謝罪する。落ち着いて行動しないとこれからもイタイ子確定で対応されるかも知れん。


「家伝は・・大体合っています。多分、そのミコトは俺です。」

「ほぉ・・では君は神々の力を使えるというのかね?」


ヘライアさんとセェレは安堵と緊張が混ざった顔をしている。


「それらしき力は使えます。ただ、僕はただの人間です。神なんかじゃありません。」


「ふむ・・・力が使えるというだけで人間よりかは高位な存在になるのじゃがな。まぁ本人が違うと言うのだからの。」


まぁ俺の力は異質だろうし、使いようによっては無敵だと言える。でも俺は神なんて万能ではない。悩みもするし好みによる選別もする。飯だって食うし死ぬ事だってある至って普通の人間だ。


「ではミコト殿、ミコト殿はこの世界で何を」

グルルルルゥゥ


大きな音を立てて俺のお腹が鳴った。昼だけしか食べてないのだ。成長期はお腹が減るんです!!でも昼と同じようにこんなタイミングで鳴らなくてもいいだろうに・・・・


「くっ・・くく・・・はははははっ!ミコト殿はお腹が空いているようだ。セェレ、食事を御出ししようか。ワシも小腹が空いたわ。」


いそいそと食事の準備をしだすセェレに申し訳なさを感じるが、いかんせん胃袋も限界である。歓談もそこそこに夜の食事と今日の宿を確保出来たのは一応の好転だろうか。


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