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第3章
昼食兼朝食を行き当たりで助けた酒場の主人の作った炒飯モドキで済ませ、ふと、主人と交わした世間話を思い起こしてみる。
「さっきの兵士達はこの国、ルートウォーターの兵士なんだよ」
「この町はアーモドン公爵の治めるタムドという宿場町だよ」
「ルートウォーター帝国は代々戦争によって築き上げられた国でね、今やこのファイレクシア大陸一の戦力を持った国家なんだよ」
「圧倒的な武力をもってルートウォーター提督はファイレクシア大陸の制覇を掲げているんだよ」
酒場の主人の話と今のこの状況がこの国を如実に表しているんじゃないだろうか。
「回れ回れー!」
「兵士3人を素手で制圧する力の持ち主だぞ!周り全て取り囲め!逃げ道を作るな!」
酒場から出て十数歩歩いた所でさっきの兵士が読んだのか20余名の兵士が押しかけ取り囲まれた。正直な所、あの程度の力量だと何人集まっても意味は無いんだが。俺、やっぱり最初の道で選択間違えたかなぁ?
「こいつかぁ?優男じゃねぇかよ!」
「その優男にやられた兵士達が集まってもなぁ。」
「貴様ぁ!!」
簡単に挑発に乗ってくる辺り、この兵士とか言うのは思慮短絡でさほど強くも無いって事が分かっている。実際この人数に対しても不可侵の膜出さずとも5分とかからず制圧出来るだろう。
「ふっ、割と好戦的みたいですねぇ。」
360度ぐるりと兵士に囲まれた中で目の前の兵士の後から赤茶髪をした男が歩み出て来た。
「ゼルド衛士長!」
赤茶髪のゼルドと呼ばれた男はこちらの目の前まで来ると軽く全身を品定めするかのような目線を向けてきた。
「ふぅ〜ん、大分鍛えてはあるみたいだね。」
「家の環境で色々あってな。」
「なるほど・・・ねぇ、ちょっと条件付けない?」
「何の条件だ?」
「貴方にはこれからこの20人の兵士と素手で戦ってもらいましょう。」
「それが条件か?」
質問を返す瞬間、ゼルドは俺の首に向かって抜剣してきた。
「・・・なぜ避けようとしなかったんですか?」
「ルールを出してまで戦闘させるんだ。ここで不必要なちゃちゃ入れはしないだろうと。」
「ふむ、面白い先読みですね。」
「それに・・」
ガイィン!!
突如出現させた膜によって停止していたゼルドの剣は弾かれる。
「俺にはこれもあるからな。」
「更に興味深いですね貴方は。出来るならその変な防御もしないでの戦闘をしてください。」
「随分と一方的なルールだな。そのルールに基いて戦った後はどうなるんだ?」
「貴方が負けた場合、衛士として我が軍に招き入れさせてもらいます。」
「ただの勧誘ならNOなんだがな。それじゃあ俺が勝った場合はどうなるんだ?」
「そうですね・・・もし、貴方が勝つことが出来たなら、貴方の望む物をこちらで用意致しましょう。」
「ふむ・・ちょっとはやる気が出たかな」
「それならばそういうルールで。」
ゼルドが円陣の外へと歩き出し、完全に円陣から外れると合図がかかった。
「全兵突撃―――!!!」
全方位からの突撃、剣による突きや槍による突き、薙ぎ払い等がタイミング良く襲い掛かってくる。
でも、元々の反射神経や体術もそれなりにあった方(主に鬼畜両親のシゴキにより開花)ではあるが、こちらに神として渡って来た事が何やら基本ステータスに変容を起こしているのが分かる。だって先程3匹のタコ討伐をした時もそうだが、意識を集中すると明らかに周りの動きが遅い。スローモーな世界に一人だけ倍速で動いてるような状況だ。
ドガッ!バゴッ!バギッ!ズドン!バキッ!ズムッ!
とりあえず1番近くにいた兵士の顔面に回し蹴りを当て脳を揺らす。
勢いそのまま近づいてきていた2人に左右の正拳を交互に叩き込む。顔面狙いで浴びせ蹴りの後は立ち上がる勢いで綺麗に喉にラリアットを振り抜く。ここまでの動作をやっても周りの兵士達の動きからすると0.1秒にも満ていないのだろう。まださっきいた場所に向かって突進姿のままの奴等もいる。やっぱりか。
体感的には1〜2分、実際には数秒程だろうか、群がっていた兵士はみな殴られ蹴られ、投げ飛ばされて戦闘不能になった。
パチパチパチパチ
「実に面白いものが見れましたね・・・」
「こいつらが弱すぎるだけさ・・」
ゼルドは拍手をし、笑いながら周りを見渡している。
「賭けは貴方の勝ち、ですか。どうでしょう?正式な依頼として衛士になってみませんか?」
「断るよ。こんな奴等倒しても自慢にもならない。」
ぶっちゃけ、元の世界のヤンキーの集団にも負けそうなくらいの動きの悪さである。
「それにあんたの顔にも、このくらいなら自分でも出来る、と書いてあるしな。」
ゼルドは図星かのように一瞬目を開き驚くと再び笑いながら話し出す。
「いやいや、私には剣に向かって殴り付け怪我をせずに相手を倒す事など出来ませんよ?」
・・・言葉に詰まるな。全力で動いてはいなかったとはいえ、兵士の全員が反応出来ていなかった速度をこいつは目で追っていたのか。少なくとも中の下ぐらいの戦力は持っているのか。何か他に特殊なものを持っていれば戦うとなるとめんどくさくなりそうだ。
「まぁいいでしょう。賭けにはあなたが勝ちました。さぁ、何を望みますか?」
「そうだな・・」
正直、何も考えていなかった。下手な事を望むとまたトラブルに巻き込まれそうだ。
「俺は今旅をしていてな?ちょうど路銀が心許ない所だ。まずは路銀を貰えると助かる。」
これからどこへ行くにしても金が無ければどうにもならない。これは許して貰えるだろう。
「いいでしょう。これを持って行きなさい。」
ゼルドは胸の中から革財布を取り出して投げてよこした。
「後はそうだな・・この国から出ようと思うんだが、どっちに行けばいいのか教えてくれ。」
教えてもらえたらさっさとこの国からさよならしなきゃ。衛士長なんて存在に目を付けられたんだ。この町、この国にいる限り何かと面倒な事がありふれてそうだ。
「あららこの国から出るのですか。些か勿体ない気もしますがいいでしょう。」
やはり俺を使ってまた何か起こる事を望んでいたようだな。あぶねーあぶねー。
ゼルドに案内されながら町を歩き入って来た門の所までやって来た。門から先の道も説明してもらい、さぁこれでさよならしようとした時だった。
「貴方とはいずれ殺り合いたいものですねぇ」
一瞬ゾクッとするような声の冷たさで告げられた言葉で、やはり早く立ち去って正解だと思えた。
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