第18章
名前を喚んだ。喚んだには喚んだのだが静か過ぎる。こう、刀と銃がピカーっと光って皆がおぉ〜とか無いの?
そう思いながら目を開く。刀と銃はうっすらと光っているだけである。
「なんだか呆気ない気が・・・みんなどうした?」
見ると皆がこちらを見ずに空を見上げている。俺も思わず空を見上げる。
「そ、空だー!!」
気付いた兵士が声をあげる。俺の視界にあったのは天を覆い尽くす雲とその雲海を泳ぐ2匹の巨大な龍であった。龍が近付いて来ると武器の光も強くなる。白と黒の光がどちらも力強く光った為、明滅したかのように周りが見えなくなってしまう。眩しい光が辺りを覆いつくした時俺は両腕にとてつもない衝撃を受けた。
ズガガガガガッ!
「ぐあぁぁぁぁぁ!!」
もの凄い痛みと熱さで腕が千切れるんじゃないかという痛みの中、俺は意識を失った・・・・
「っ!!ここは・・・どこだ?」
俺が目覚めたら体はベッドに横たわり、周りは真っ白なシーツやベッドが列んでいた。
「気付きましたか?」
セェレの声がして扉の方に見遣ると容器に水を入れてきていた所だったようだ。
「お体の調子はいかがですか?」
コップに水を入れてこちらへ差し出しながら聞いてくる。
「あぁ、何とも無いよ。大丈夫だ。ありがとう。」
水の入ったコップを受け取りながら記憶を失った前の事を思い出す。空に龍が現れ武器が光り・・・
「セェレ、あの後、どうなったんだ?」
「どこから話せばよろしいでしょうか?」
「光が強まって何も見えなくなった後からでいい。」
「はい。あの後大きな音が鳴り光が弱まり見えるようになると、先ず目に入る物がありました。3本の爪で大地を掻いた痕、と言った方が分かり易い物でしたが、それが2つ、ミコトさんで交差するように痕はありました。そしてミコトさんの後ろには大きな卵がありました。ミコトさんはそれにもたれ掛かるようにして気を失っていました。」
「あの時腕から物凄い衝撃と熱が走ったんだ。」
「ミコト様の体には外傷も無いように見えましたのでそのまま安静にするように、とミラさんの指示でしたので。初めて完璧な精霊の召喚をした時には精霊を使役する契約為の証が体内に刻み込まれるのでそれで気を失ったのかと。」
「精霊との契約で気を失ったのか・・何か情けないな。」
「いえ、ミラさんがおっしゃるには光霊と闇霊という巨大過ぎる精霊との契約で無傷なのが奇跡なのだそうです。史上この2つの精霊との契約を果たした者達の精霊はあそこまで巨大でもなく、それでも体には重傷を負ったらしいですから。」
何てラッキー!まぁラッキーじゃなくて押し付けてきた母さん達が何等かの仕込みなんだろうけどな。
「そういや、大きな卵って言ったな?それはどうしてるんだ?」
「はい。卵には何やら文字が描かれており、神官の方達でも読めないとの事です。それと何やら近付くとガタガタと揺れる所を見ますと何か中に入っており生まれる寸前なのではないかと言われています。」
「俺が引き起こした騒ぎの後に出現したんだよな?少し気になるな。見に行こうか。」
ベッドから出ようとしてある事に気付いた。
「そういえばスキンブルはどうした?」
「あの光の後で現れたのだから絶対にミコトに関係する卵に間違いないっ!って言いながら変な学者が近付かないよう見張りをしています。」
その時の光景を思い出してか、クスクスとセェレは笑った。
「それは早いとこ現場に行ってやらにゃあな。」
そう言って俺とセェレは歩き出した。
「おぅ、ミコト!体は何とも無いのか?」
訓練所に出ると高さはスキンブルより少し大きいくらい、横幅はスキンブルの2倍くらいある白と黒の模様の卵がそこにあった。
「あぁ、全然大丈夫だ。それよりありがとな、卵の番をしてくれて。」
「まったくだぜ、近寄って来る学者が皆研究室に持って帰りたいだの何だの言って来るんだからな。」
自分から名乗り出た卵の番人が意外と面倒だった事に少し気が滅入っているようだ。
「んで、この卵はミコトに関係あるのか?」
「それを確かめに来たんだ。どれどれ?」
俺は文字が書かれていると言われた場所に目をやった。
そしてがっくりとうなだれた。
「ミコト、どうしたんだ?」
俺はスキンブルやセェレにも分かるよう、書いてある事をそのまま話した。
<新たな力を手に入れたみことちゃん。
おめでとー。
ママは出来ると思っていたよー?そんな新たな力を手に入れたみことちゃんにママからプレゼントでーす。神竜ナーガっていうこの世界の龍の神様な生き物です。是非乗り物にしてね?あ、ナーガちゃんに乗るのに免許はいらないし、ナーガちゃんにはみことちゃんとの意思の疎通が出来るようになってるからね>
「改めてミコトの両親には同情するな・・・・」
「私もこれはさすがに・・・」
「いいんだ。みなまで言うな。言うだけ悲しくなる。」
何とか自分を取り戻すとピキピキと卵の割れる音が聞こえて来た。
「これは一応離れていた方がいいのか?」
「そうだな、意思の疎通は出来るようになっているらしいが、2人はともかく俺はここにいた方がいいだろう。」
2人を俺の後ろに匿い卵を見る。ピキピキという皹の入る音の他に目に見えるくらい卵自体にも皹が入っている。
「そろそろ割れそうだ。一応気をつけといてくれ。」
そう言って俺も刀の柄に手をかける。
「くるぞ!」
パキパキという音と共に卵全体に皹が入りバラバラと殻は崩れ落ちた。中からは金色に輝く1頭の竜が現れた。見た目は中華系の龍と言うよりは西洋系のドラゴンと言った方が正しいだろう。金色に輝く鱗を纏った体に背中に生えている真っ白な毛、そしてクリクリした真っ黒な瞳。
「これが・・・ナーガ・・なのか?」
自ずと出た言葉に答えるように頭の中に声が聞こえた。
「ナーガ ハ シュ ノ ナマエ。ワタシ ノ ナマエ ハ ナンジ ガ キメヨ。」
「・・この声は・・・・お前が喋っているのか?」
「どういう事ですか?」
「ソウカ、ナンジ ニハ ナカマ ガ イルノカ。ナカマ ニモ ワタシ ノ コエ ヲ トドケヨウ。コレデ ドウダ?」
「な、何だこの声は!?誰が喋ってるんだ!?」
「皆にも聞こえるのか?」
「ハナシテ イルノハ コノ ワタシ ダ。ナンジ ラ ニ ナーガ ト ヨバレテイル シュ ダ。」
近くで見物していた学者達はみな驚きで腰を抜かしている。近隣にいた兵士達は動揺を隠せないのか一様にドタバタと走り回っている。
「アラタメテ ハナソウ。ワタシ ハ ナーガ ト ヨバレテイル シュゾクダ。ナンジ ノ シエキスル コウレイ ノ シャイン ト アンリョウ ノ カオス ニ ヨバレ ココニ キタ。ナンジ ニ ワタシ モ シエキサセル タメニ。ワタシ ノ ナマエ ハ ナンジ ミコトガ キメヨ。」
「名前か・・・」
先程2匹の精霊にも名付けしたところだ。ミラさんの言う通り、名前を与えるというのはそいつの存在を認めるという事だろう。ちゃんとした名前がある事がそいつの個としての最初の1歩なのだろう。そして個の役割等を強化させるのだろう。あれか、役職とかそんな感じか。
「分かった。名前を与えよう。」
頭の中でしばし考えると、幼い頃飼っていた犬を思い出した。家族で俺に1番懐いていた愛犬。寝る時も一緒だったっけ。
そんな思い出に浸っていると少し笑みが零れた。
「決めた!リックス!お前の名前はリックスだ!」
そう叫んだ瞬間にナーガのリックスは勢い良く空へ飛び上がった。
グギャァァァァァ!!
何か嬉しそうな叫び声をあげているところを見ると、名前を気に入ってくれたようだ。
ひとしきり飛び回った後、ゆっくりと地上に降りて来た。
「ミコト!うでをだせ!」
中々無遠慮な物言いだが言われるがままに右腕を前に出す。するとリックスも同じように右腕?右前足?を延ばしてきた。一見握手をしているような形になるとリックスが言葉を紡いだ。
ワレ ナンジ ト ココニ シュジュウ ノ ケイヤク ヲ カワス
言葉が終わるとズクンと一際大きく鼓動がしたがそれ以外に何も変わった事は無かった。
「そう言えば精霊には魔力を与えるそうだがリックスには何を与えたらいいんだ?」
「ぼくもきほんてきにはミコトのまりょくをもらってる!でもたべようとおもえばなんでもたべれる!」
喜々として答える姿は何か犬のリックスのようだ。
「精霊2匹にリックスか・・俺の魔力足りるのかな?」
「だいじょうぶ!ミコトのいまのまりょくなら、ぼくををあと100ひきはしえきできる!」
リックスを100匹・・・それはすでにスピナーと言うより軍隊だろ。しかしリックスは興味深い事を言った。
「今の魔力・・だと?」
「そこら辺は私が話しましょう。」
いつの間にか現れたミラさんがこちらに歩み寄って来た。
ミラさんはリックスを見ると ナーガを拝見出来るなど光栄の極みです。 等と言ってリックスを喜ばせていた。
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