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    ゆきのお手玉 (8)エピローグ
 その瞬間、まるで雪が舞うように、キラキラと光が飛び散った。
 腕の中のゆきちゃんの姿が、消え去った。
 わたしは、両腕を自分の体に抱え込みながら、ただ俯いて、ゆきちゃんの消えた後を追っていた。
 涙があふれるのを止められない。
 どうして? どうして、こんな事になったんだろう?
 ゆきちゃんは、雪の精で……私たちと遊びたくて……
 でも、寿命が短くて……
 だから……あの時、もっと遊びたがったんだ。駄々をこねたんだ。
 ……わたしは、それがわからなかった。
 ただ、我が儘な自分を見ているようで、怒ってしまって……
 なんて、なんて、取り返しのつかないことをしたんだろう。
 あの時、もっと、遊んであげていれば……もっと、ゆきちゃんに楽しい日々をあげられたのに。
 おかあさん、わたし、どうしよう? わたし、全然、大人じゃないよ。
 ゆきちゃんの気持ちを察してあげられなかった。分かってあげられなかった。
 わたしは、まだ……とんでもなくダメな……

「メグ……メグ」
 どこか遠くでわたしを呼ぶ声がする。俯いていた顔を少し上げた。
 トモがひざまずいて、わたしの顔をのぞき込んでいた。
「トモ……」
 悲しいよう。わたし、わたし……
「取り返しつかない事した……」
「メグ」
「わたしが、悪かったんだ……」
「そうじゃないよ」
「わたしが……子供だったから」
「違うよ」
「わたしがばかだから……」
「メグ、そうじゃない!」
 トモがわたしの肩をがっしりつかんだ。
「聞いて、メグ。ゆきちゃんの寿命は変えようがなかった。それは、僕らには、どうしようもできない……」
「でも、あの時、もっと遊んであげていたら……」
 そうしたら……
「うん。そうだね。でも、それは、メグが悪いんじゃないよ。僕も一緒だったんだから。僕だって、気づかなかったんだから。あんなに不思議な出会いをしたのに。一緒に遊んでいたのに。あの子の冷たい手にも驚いたのに。……僕は、気づかなかった。ゆきちゃんが雪の精だなんて……」
 トモの顔が苦しそうに歪む。
「気づいていたら……もっと、ちゃんと捜していたのに。……僕らなら、捜すこともできたのに」
 それから、トモの声は優しくかわった。
「でも、メグはゆきちゃんを見つけた。そして、ちゃんと遊んであげたじゃないか。ゆきちゃんは、なんていった?」
 でも、でも……
「メグ。きみは、きみに出来る限りのことをした。それで、いいよ。それで、じゅうぶんだよ」
 わたしの心に、少しだけ暖かいものが流れ込んだ。
「でも、僕は……もっと強くなろうと思う。もっと大人になろうと思う。いろんな事を見過ごさないように……もう、こんな後悔をしないように」
 ハッとした。
 トモも、わたしと同じ事を考えている。
「わ、わたしも……そうなりたい。……なれる、かな?」
 トモがわたしの瞳を見つめる。
「なれるよ。だから、一緒にいこう」
 トモの言葉が、わたしの胸に落ちた。
 その言葉がまるで救いのように響いた。わたしの心を満たす。
 そして、改めて彼と一緒になりたいと感じた。

「ふたりとも」
 しばらく黙っていた杏ちゃんが、突然私たちを呼んだ。
 見ると、冬の空に見たこともない大きな虹が架かっていた。雨が降ったわけでもないのに。
「雪の精が天に召されていくのじゃ」
 虹の上を、何かがキラキラ光りながら遠ざかっていくように見える。
 じゃあ、あれは……。
 杏ちゃんが、こくりとうなずく。
 わたしは、もう一度空を見上げた。
 私たちは、ずっと、その光が消えていくのを、いつまでも無言で見つめていた。




 第九話 ゆきのお手玉
 おわり
 
 
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