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    王の代人 (4)
 それから、二日目。
 今日は2学期の最終日だったので、トモは早く帰ってきた。
 明日は休日で、メグの誕生日だった。
 しかし、まだ目的のふたりは、発見できていなかった。
 トモが帰ってきたとき、杏ちゃんはすでに来ていて母親と楽しそうに話していた。
 かあさん、なんの話してるんだろう? とトモはちょっと思った。

 杏ちゃんと二人してトモの部屋にはいる。
 とたんに杏ちゃんの表情が曇った。その顔は明らかに焦りの色をしている。
 捜索し出して、今日で四日目。
 もうそろそろ見つけなきゃな。とトモも思った。
「杏ちゃん、そろそろまずいの?」
 杏ちゃんの表情が暗い。
「そうじゃな。両族の捜索の輪は閉じられつつある」
 そういって顔を上げる。その目に強い意志が宿っていた。
「じゃが、それだけ、こちらも見つけやすくなったという事じゃ」
「うん」
 それから、トモは捜索を開始した。
 しかし、3度の捜索でも見つけられない。
 トモは、杏ちゃんに起こしてくれるように頼んで疲労回復の薬を飲んだ。
 薬の作用でいったん眠り、起きてから、また探し出す。
 その2回目。
 もう夜も遅い頃、トモの意識の中に、かすかな光が映った。
 最初弱かったその光は、トモが集中するにつれて、キラキラと透明な輝きを増していった。
 それは、今までの影とは異質の存在。明らかな光の実体だった。
 それと共に、その側に深き水のみどりの輝きをトモは感じた。
 見つけた!
 絶対、これだ!
 トモは杏ちゃんに言う。
「いたよ。ふたりともいる。絶対そうだよ」
 杏ちゃんの表情がぱっと明るくなり、すぐにもう一度引き締まった。
「トモ、その場所へ案内を頼む」
「うん、わかった」


 トモは、玄関を出るときに母親に告げた。
「かあさん、ちょっと杏ちゃんと出かけてくる。もう遅いけど心配しないで」
 トモの母は、自分の息子をしばらく見つめて、
「ええ、わかりました」
 とだけいって、かすかに微笑んだ。
 外に出たトモは、杏ちゃんと手をつないだ。
 一瞬のうちに自分が宙に飛び上がっていくのを感じる。
 白い龍に変化した杏ちゃんが、トモを手の中に握っていた。
「あっちだ」
 トモは、かまわず腕をさした。
 たちまち龍は姿を消した。



 眠らない都市の雑踏の中にそのふたりはいた。
 青年は長身で少し彫りの深い整った顔立ち。太い眉が印象的だった。
 からわらにいる少女は、優しげな目元とバラ色の頬をした美少女で、腰まで届く長い髪と艶やかな肌をしていた。
 ふたりの顔に笑みはなく、それどころか深い憂愁が漂っていた。
 もし、このふたりを近くで見たら、誰もが振り向かずにおれなかっただろう。
 だが、雑踏の中で誰も彼らを気にとめる者はいないようだった。
 そこに彼らがいないかのように人が通り過ぎていく。
 彼らも、絶対に誰かにぶつかったりしなかった。

 不意に、後ろから青年の肩に手が掛けられた。
 驚いた青年は、とっさに手を振り払い戦闘態勢で振り返った。
「待った!」
 そこに、トモが両手をあげて立っていた。
「おまえは、誰……」
 言いかけて、青年はトモの側に立つ杏ちゃんを認めて驚愕の表情になる。
 後ろにいる少女に叫んだ。
あき、逃げろ!」
「待って!」
 トモがもう一度叫んだ。
 少女がビクッとして立ち止まり、もう一度動き出す前に、杏ちゃんが少女の手を取っていた。
 それを見て、青年が少女の方に一歩駆け寄る。
 その時、小さな杏ちゃんの腕が長身の青年の顔に向けて、ぴたりと差し出された。
「待つのじゃ、すい。そなたらを捕まえに来たわけではない」
 翠と呼ばれた青年が杏ちゃんを見、その隣にやってきたトモを見、それから杏ちゃんにつかまれて固まっている少女を見た。
 晶という少女の瞳には、驚きはあっても怖れはなかった。
 青年は、静かに闘気を消した。
 
 
 
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