番外編〜メグの誕生日前のある日。トモが杏ちゃんから頼まれたのは、”人”捜しだった。
シリーズ初めてのトモくん視点。いつもよりハードにお届けします(笑)
番外編 王の代人 (1)
それは、メグちゃんの誕生日の五日ほど前のある日、御薬師友之は悩んでいた。
放課後の道をひとり、とぼとぼと帰りながら物思いに耽っている。
えっと、もうすぐメグの誕生日だよな。
な、なんか、プレゼントしてもいいんだよな?
ちゃんと、好きっていったんだし、付き合ってるんだし。
でも、どうしよう。何がいいんだろう?
メグが欲しい物って、なんだろう?
だいたい、女の子に贈り物した事なんて無いからなあ。全然、わかんないや。
う〜んと、そう言うときは……
誰かに訊く? ……て、誰に?
贈ったことのありそうな奴とか?
トモはちょっと考えて、首を振る。
ダメ、ダメ。
そんなこと恥ずかしくて、相談できるか!
……じゃあ、メグの友達に、それとなく訊いてもらうとか?
……えっと、却下。たぶん、メグに知られるのが、オチ。
それなら、メグに直接訊いた方が、いいのか……
でも、それはなあ。
え〜っと、どうしよう?
そんな事をうだうだ考えていたトモは、いつの間にか自分の傍らを並んで歩いている小さな影にしばらく気がつかなかった。
あれ?
ようやく目に留まったのは、白い和服姿の小さな女の子。
足を止めて見つめると、女の子が顔を上げて、にこっと微笑んだ。瞬間、思い出した。
「杏ちゃん!」
「ひさしぶりじゃな、トモ」
彼女の髪に、見覚えのある髪飾りが揺れる。あの時、お祭りでメグがあげた……
その時のことが、トモの脳裏に急速にわき上がった。そして、思った。
「あれ? もしかして、矢七さんと何かあった?」
トモは、杏ちゃんの許嫁の名を出して訊いた。
「いいや。そうでは、ないがの……」
杏ちゃんがちょっと頬を染めて、否定する。
「そなたに、頼み事があるのじゃ」
「え? 僕に?」
トモは、ちょっと意外な顔をして答えた。
「そうじゃ。そなたの力を借りたい」
そう言った杏ちゃんの声は、もはや真剣そのものだった。
トモの家まで歩く間、杏ちゃんは相談については何も言わなかった。ただ、一度足を止めて、
「メグは、変わりないかの?」
「うん、毎日元気だよ」
「ひと月ほど前に、何ぞあったかの?」
え?
トモは、少し考えて山桜の一件を思いだした。
「そういえば、有ったような、無かったような……」
「どのようなことじゃ?」
トモは簡単にその時のことを話した。
「そうか、そなたがいたのなら、大丈夫じゃったな」
「どうして?」
トモは怪訝に思って訊いた。
「いや、少し気になってな」
杏ちゃんは、それだけいうと、また、すたすたと歩き出した。
「かあさん、いる?」
門をくぐり家の玄関で、トモは母親を呼んだ。傍らには一緒にやってきた杏ちゃんが佇んでいた。
廊下をやってきたトモの母は、杏ちゃんをみて、ちょっと目を見開いた。
「あら、あら。かわいいお客さんね。トモ、どなた?」
トモが少し口ごもる。
「あ、えっとね。こないだ、秋祭りの時に知り合ったんだ。杏ちゃんって言うんだ」
「そう、杏ちゃん」
杏ちゃんが、母親に、丁寧にお辞儀する。
「お初にお目にかかる。トモの母上どの。よろしくじゃ」
「まあ! こちらこそ、よろしく」
トモの母は、そう言ってから、ちょっと思案顔になった。
「じゃあ、かあさん。僕の部屋で話すから」
トモはそう言って、先に立って廊下を進んでいく。
杏ちゃんが、またお辞儀しながら、母親の傍らを通り過ぎた。
それを見ながら、トモの母はつぶやいた。
「杏ちゃんって、どこかで、聞いたかしら?」
部屋に入って、トモは自分のイスに座った。杏ちゃんにはそばのベッドを示して、
「そこに座ってよ」
杏ちゃんが、ちょこんとベッドに飛び乗って腰を下ろす。足が揺れた。
「えっと、それで、僕にどんな相談かな?」
トモがいつもと変わらない調子で尋ねる。
メグがそばにいたら、トモを小突いたかもしれない。
だって、杏ちゃんの頼み事なんだから。普通ではないはずだ。
トモもそれは感じていた。でも、杏ちゃんの口からでた言葉は、
「人捜しを、頼みたいのじゃ」
「人捜し?」
それって、なんでわざわざ僕のところに? 杏ちゃんなら、僕の力なんて必要ないだろうに……
トモはしばらく考えていたが、杏ちゃんに尋ねる。
「人って、ほんとにヒト? もしかして、人の姿をした何かじゃないの?」
杏ちゃんが、ニコッとして、うなずいた。
ああ、やっぱりとトモは思う。
「それって、誰?」
「……我が族の若者と、もうひとり」
我が族という言葉に、トモはドキっとした。
「我が族って、つまり、龍の青年っていうこと? それが、杏ちゃんみたいに人の姿でいるんだね」
「そうじゃ」
「その人が、行方不明なの? なんか大変なことがあった?」
「それはの……」
話し出した杏ちゃんの顔には、もう笑みはなかった。
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