第八話 ハッピーバースデー&メリークリスマス(1)
「メグ、誕生日、おめでとう! ついでに、メリークリスマ〜ス!」
みんなの明るい声が響き渡る。
今日はわたしの誕生日。
親しい友達の優ちゃんと明美ちゃんがわざわざ誕生日会を開いてくれた。
といっても、わたしの家で、お昼のお茶会だけどね。
なんで、昼から家にいるかというと、今日が祝日だから。
12月23日。
この日はわたしが生まれる少し前に祝日になった。
だから、わたしの誕生日はいつもお休み。
しかも、翌日はクリスマスイブ。
だから、わたしは誕生日には少し複雑な想いがある。
それは、いっつも我が家では、お誕生日会とクリスマスのお祝いが一緒だったから。
これは、子供心に悲しかったなあ。だって、もう少し離れてれば、楽しいことが2回あったはずなのに……。
それでも、昔はおとうさんやおかあさんと一緒に過ごす誕生日は楽しかった。
駅から続くプロムナードに、色とりどりに輝くクリスマスの飾り付けがされ、
そこから続く中央広場には、このために持ち込まれた高さ15メートルを超えるクスノキが、
雪色に輝く見事なクリスマスツリーになっていた。
その光景を見ながら、街中をみんなで一緒に歩いて、欲しい物を買って貰ったりケーキを買って帰ったりした。
でも、学校に行くようになってからは、一時期、その日友達と過ごせないのが悲しくなったこともあった。
いま? 今は……そうね。
親しい友達と集まって、誕生日会兼クリスマス会をするのが楽しい。
やっぱり二つ一緒だけど、もういいや。
みんな、街から離れたわたしの家に、わざわざ来てくれる。
みんなにはちょっと早いクリスマス会だよね。
だから、わたしは朝からお母さんに手伝って貰って、
みんなが来てくれたときに出すケーキを作った。
「これ、おいしい!」
甘い物好きの優ちゃんがそういってくれる。
うん、それなら、大丈夫だろう。
「よかった。あんまり自信なかったんだ」
「メグの腕も上達したねえ。御薬師くんに手伝ってもらった?」
「な!」
何いってるの、明美ちゃん!
「ちがーう。お母さんに手伝ってもらったの。それに、トモいなかったし……」
ハッとして、自分の失言に気づいた。明美ちゃんが、ニヤニヤしてみてる。
「あら? そうなんだ。ダメだなあ。彼女の誕生日にどこいったのかしらね?」
「明美ちゃん。だから、違う……」
「メグのために、なんか買いに行ってるんじゃないかしら?」
「優ちゃんまで……」
わたしはふくれた。決して怒ったわけじゃない、照れ隠し。
その顔を見て、明美ちゃんが、ちっちっちと指を振った。
「だめだめ、メグ。恋する乙女がそんな顔しちゃあ。御薬師くんに嫌われるよ」
「うるさい! トモは、そんなことで嫌ったりしないもん」
うわん。また失言だ。
優ちゃんがにっこり微笑んで、
「ご馳走様でした」
と舌を出した。
もう、いいよう。好きにしてよう。
ケーキ作りは……確かにトモにも手伝ってもらおうと思ったんだけど、出かけていた。
そういえば、ここ一週間ぐらい、トモは忙しそうであんまり話してないなあ。
本当に、何してるんだろう?
でも、わたしが誕生日にトモと過ごしたことなんて……
それはまあ、幼なじみだからあるにはあるんだけど……小学校までかな。
プレゼントもらったのもその頃だけだったような……
あれは、たぶんおばさんが選んでくれたのね。かわいいピン留めやリボンと、お手製のクッキーがおいしかった。
トモは、それをわたしに渡すや勝手にうちの料理を食べていったけどね。何やってたんだか。
中学以降はそんなこと無かったよね。
去年は何やってたんだっけ?たぶん、学校の冬休みスキー教室に行ってたんじゃないかしら。
今年は、いるはずだけど……
なんだかなあ。
わたしは、ちょっと考える。
別に、トモから何か欲しいわけじゃない。
だいたいトモがなんかくれる事なんて、滅多にない。(料理は、正当な報酬だからね)
でも、昔からわたしの無茶をきいてくれる。わたしのことを守ってくれる。
それだけで、いいよね。いいはずなんだ。
でも……誕生日なんだけどなあ……
「はい、メグ。これでも食べて」
明美ちゃんが、持ってきた冬限定・高級チョコレートを渡してくれる。
「御薬師くん、いないでも元気を出すんだ」
「だから、違うって……」
口に含んだそのチョコレートは、柔らかく淡雪のように解けて消えていった。口の中に上品な甘さが残った。
「うわあ。おいしい、これ」
「うん。うん」
「そうよね」
歓声のあとに、一瞬みんなの言葉が止まる。沈黙が訪れる。
わたしは、小さな声でつぶやいた。
「わたし……元気。二人とも……ありがとう」
優ちゃんも明美ちゃんも何もいわずに、微笑んでいた。
夕方にトモから電話があった。
「メグ。誕生日おめでとう」
「え? あ、ありがとう」
「あのさ、夜、時間ある? そっちの夕食終わってからでいいから……」
「あ、えっと……」
「パーティーとかあって、遅くなるんだったら、いいけど……」
「ううん。そんなに遅くは、ならないけど……何時頃?」
「9時頃とか?」
「いいよ」
「じゃあ、うちに来て。待ってる」
それだけいって、電話は切れた。
わたしは、なんだかドギマギしていた。
誕生日にトモに呼び出されるなんて、初めてだ。
|