桜色の贈りもの (3)
一日が瞬く間に過ぎて、ゆっくりお風呂につかっている。
寒くなってきたから熱いお風呂が気持ちいいよね。
朝、男の子から渡されたピンクの卵も持って入って来ちゃった。
何となく、暖めた方がいいかなって思って。それに肌身離さずって言われたし。
この卵、お風呂の中でぷかぷか浮いた。
おもしろ〜い。
いや、遊んでるわけじゃないわよ。なんか、なにで出来てるんだろうって思って。
相変わらず、ピンクの模様がぐるぐる変化している。
そう言えば、トモに話すの忘れたな。
あの男の子の事も話しておいた方がいいような気がするのよね。
だって、黒金山のからすさんが関わってるし。
明日、会ったら話してみよう。
お風呂からあがって、髪をタオルで包む。
それから、杏ちゃんに貰った『龍の雫』を首に架けた。
そうそう、『龍の雫』はおかあさんに細手のネックレスを貰って、それを通し、こうやっていつも架けている。普段は目立たないように服の中に隠している。
でも、こうやって手に取ってみると、引き込まれそうな群青の輝きが、とってもきれいで、わたしは嬉しくなる。
それから、パジャマを着て、ぽっけにピンクの卵を入れる。
あ〜あ、今日は疲れた。もう寝なくっちゃ。
時計の針がそろそろ真夜中を指そうとしていた。
夢を見ていた。
わたしは高い木の上から野原を見下ろしている。
たぶん、どこか山の中。建物は一つも見えない。
目の下に少し広い原っぱがひろがっている。
そこに、なんだかいっぱい人がいる。
人かな?
確かに人の姿をしている者も多い。みんな、朝の少年のように昔の服装だ。
でも、人以外のものもいる。
どう見ても、たぬきや、きつね。鹿や熊。小さなリスもいるし、わたしが名前を知らない森の生き物たち。それが、みんな人のように服を着て、冠をつけて歩いている。
わたしは昔話の世界にいるのかしら?
そう思って見渡す先に、見覚えのある姿があった。
朝、出会った少年。椋の彦と名乗った少年が、手に小枝を持って、なにやら舞を踊っているようだ。
踊っているのは彼一人ではなく、10人以上の子供が、手に手に小枝を持って音頭をとっている。
その顔に笑顔があふれていた。
ああ、もしかしたら、これって、お祭りなのかな? 山の精霊達のお祭りなのかも。
そう思ってもう一度見回すと、人も動物も、手に手に杯を持って、何かを酌み交わしている。
きっとお酒よね。そう思った。
そう言えば、烏帽子をかぶったカラスの姿が目に入った。
あれって、黒金山のからすさんかしら? へえ〜、立派な姿。わたしは感心して見ていた。
目の前を、ピンクの花弁が舞い落ちた。
風に飛ばされたように、幾枚もの花びらが舞っていく。それが陽光に映えて、きらきら輝いた。
きれい。山桜なんだ。
その時、わたしは理解した。
この夢って、桜の精が見たことなんだ。きっとそう。
そう言えば、枕元にピンクの卵おいて寝たんだ。
わたしは夢の中で、奇妙に冷静にそう判断していた。
ところが……
桜の花びらが視界いっぱいに舞い降りたと思ったら、いつの間にか、わたしの傍らにトモの姿があった。
私たちはピンクの花びらの世界にいた。
さっきまで見えていた森の生き物たちも、もう見えない。
わたしの胸には、杏ちゃんの『龍の雫』がきらきらと輝いて……
ハッとした。
さっきまで自分の姿なんて知らなかったのに、わたしは今、自分が裸でいることを知った。
双丘の谷間に涙形のペンダントが輝いている。
トモがわたしを見てる。
あ、えっ? なんで?
恥ずかしさに、腕で胸を隠そうとした。
それより前に、トモの腕に掴まえられた。
あっという間に抱きすくめられる。
それから、キス。永く熱いキス。
頭の中が白くなっていく。
それから、柔らかい感触が唇を離れた。わたしはホッと息を吐いた。
トモの唇が次第に首すじへと移っていく。
なんだかくすぐったいような、でもドキドキする。
いきなり、トモのキスがわたしの乳首へと移る。
とたんに電流が流れたようなショック。体がぴくんと跳ねた。
わたしは、なんだか朦朧としてきた。
どうして? こんなこと経験無いのに?
どうして、体が反応するの?
わたし……どうなっちゃたんだろう?
あれぇ? これって、夢よね?
夢だったはずよね……
その答えが見つからないまま、意識が薄れていった。
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