ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
    桜色の贈りもの (2)
「わたくし黒金山のさらに奥、七北山に住まいし精霊にございます」
 と、男の子は挨拶した。


 ……せ、精霊? て、人じゃないって言うこと?
 あー、最近少し慣れてきたけど……やっぱり、驚きだわ。
「えっと、あの、精霊さんが……わたしに何か?」
 男の子はごそごそと服の中から何かをとりだした。
 彼の出した手の中に、きれいなピンク色をした卵形の石がのっていた。
 石って言うか、宝石なのかな? 大きさもちょうど卵大くらい。
 よく見ると、ピンクの模様が微妙に形を変えていく。っていうことは、宝石じゃない?
 でも、とてもきれいに輝いている。
 男の子は、そのピンクの卵をわたしに差し出した。
「これを、そなた様に預かっていただきたいのです」
 えっ? これを?
「どうして?」
 というか、
「これって、なに?」
 そう言うわたしに、男の子は説明を始めた。
「これは、精霊のゆりかごでございます」
「ゆりかご?」
「はい。その中には山桜の精が眠っていらっしゃいます」
 山桜? 確かに、ピンクに輝いてるけど……
「実は……昨晩の嵐の折り、突然の竜巻に我が山の守りたる千年桜が耐えきれず、倒壊してしまわれました。我らは、急ぎ桜の精をその中にお移しいたしました。
 普段ならば、すぐに若木にお移りいただくのですが、あまりにも傷ついておられ危険な状態なのでございます。
 それ故、天の姫御前様のお力をお貸しいただきたく、まかりこした次第。
 どうか、お願いいたしまする」
 男の子は、深々と頭を下げた。
 あの、えっと、ちょっと……
 わたしは、呆気にとられていた。
 なんだか知らないけど、そのピンクの卵の中に桜の精がいて、傷ついているって言うこと?
 それでわたしのところに来た? どうして?

 …………ああ! そうか。

 思い出した。
 あの日、おかあさんに告げられたこと。
 トモが傷ついた数日後に知らされた事実。
 もうずっとそんな機会はなかったから、忘れかけていた。でも、それって、
「わたしの力って、精霊さんにも働くの?」
 男の子がぴょこんと顔を上げると、息せき切ったように言った。
「それはもう、生きとし生けるもの全てに」
 ふ〜ん。そうなんだ。
 わたしは、ちょっと感動していた。
 それならば、この子の頼みを断るわけにはいかないわね。
「わかったわ。でも、いつまで預かればいいのかしら? それから、どうゆうふうに扱えばいいの?」
 男の子は満面の笑みを浮かべ、
「3日後には桜の精をお迎えにあがります。それまで、出来ますれば肌身離さずお持ちいただきますよう、お願いいたします」
「えっと、ポケットに入れてもいい?」
「はい。それは」
「わかった。じゃあ預かるね」
 わたしは、男の子からピンクの卵を受け取った。
 表面はつるつるしている。適度に堅く、頑丈そうだ。
 中の模様は変化し続けている。薄い縞模様が現れたかと思うと、渦巻き状に変化していく。
 とってもきれい。
 男の子がぺこりと頭を下げて、去っていこうとする。
「あ、待って。あなた、名前は?」
むくの彦ともうします」
 それだけいって、男の子は去っていった。
 わたしはその後ろ姿が消えるのを見送りながら、受け取ったピンクの卵をスカートのポケットに落とし入れた。
 
 
 
以下のランキングに参加しています。
cont_access.php?citi_cont_id=158005725&size=135
長編小説検索Wandering Network
オンライン小説ランキング
恋愛ファンタジー小説サーチ
NEWVEL


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。