第七話〜初冬のある日、メグちゃんが、かわいい男の子から預かったのは、
桜色をした卵形の、あるものだった。
第七話 桜色の贈りもの (1)
秋が終わり冬になろうかという頃なのに、昨日の夜はすごい嵐だった。
夜中にゴーゴーと強風が吹いて、町では街路樹が倒れたりした。
朝のニュースでは、竜巻が発生して屋根ごと飛ばされた家もでたようだ。
でも、今朝は一転して青空。台風一過のようによく晴れた。
わたしは、通学路をいつものように、近所のネコたちや電信柱の上で挨拶してくるカラス達に手を振って歩いていた。
トモは日直で先に行った。
ていっても、別にいつも一緒に登校してるわけじゃないからね。
たまたま一緒にいくことはあるけど。え〜と、週3回ぐらい。
それって、たまたまだよね。うん。たぶん……
いや、そんなことより、秋祭りからこっち、おかあさんの目が怖い。
あのあと、たっぷり怒られた。
わたしは、浴衣のことは、帯が苦しくなったから脱いだと言い訳した。
だって、それ以外思いつかなかったんだもの。
本当のことをいって、おかあさんを心配させるわけにいかないし。
トモとの事で、おかあさんが心配してるようなことはなにもないし。
そう言うしかないじゃない。
おかあさんは、その苦しい言い訳を、疑いながらも信じてくれた。
(本当はどうかわからないけれど。)
ごめんなさい。でも、後ろめたいことはやってないから、それだけは信じて。
でもね、おかあさんはわたしに責任のとれる行動をっていうけど、その責任ってなんなのかな?
もし、わたしとトモがこのまま、け、結婚、す、するとかいう約束をしたら……そしたら
……いいんだろうか?
あ、いや、えっと……なんか、火照ってきた。
でもね、好きな人と一緒になる事って、やっぱり期待してしまう。
だって、わたし、もうすぐ17になるんだもん。もう、子供じゃないよね。
……でも、まだ、大人でもないか。
そんな風にとりとめなく、考えながら歩いていたら、いつの間にか、その子はいた。
いつ現れたのか、わたしにはさっぱり分からなかった。
不意に気がついて、ぶつかるっと思って足を止めた。
目の前に、奇妙な男の子が立っていた。
歳は、たぶん小学校低学年ぐらい。でも服装が普通と違った。
これは、昔の日本の衣装? お公家さんの? 狩衣って言うんだっけ? ちゃんと烏帽子もかぶっている。
そんな、七五三の晴れ着か、お祭りの稚児さんのような格好の男の子が、わたしの顔を見上げている。わたしは不思議な気分で、とりあえずしゃがんで男の子に訊いた。
「わたしに、用があるの?」
男の子は緊張しているようだった。堅く結ばれていた口を開いて、精一杯の声を出した。
「天の姫御前は貴方なりしか?」
「はあ?」
えっと、どこかで聞いたような……
「黒金カラスの翁に聞きもうしたお姿そっくり。そなた様、天野恵殿ではござらぬか?」
「ええ、そうだけど……」
「ならば、やはり……我が探し人、天の姫御前様でござる」
その時、街路樹の上のカラスが一声鳴くのが聞こえた。
わたしはようやく思いだした。
そう言えば、黒金山で、カラスの長老にそんな風に名を呼ばれたことがあったっけ。
でも、その呼び方、どういう意味があるのかしら?
「えっと、もし、黒金山のからすさんの言うとおりなら、わたしのことだけど……あれ?」
この子?
「あなた、なんで、カラスの言うこと知ってるの?」
その時、男の子の顔に、ぱあっと安堵の笑みが広がった。
「良かった。良かった。これで、お使いを果たすことが出来る」
男の子は独り言のようにそう言うと、
「わたくし黒金山のさらに奥、七北山に住まいし精霊にございます」
と挨拶した。
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