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    秋祭り (9)エピローグ
 それから、二人は帰っていった。
 男の人が杏ちゃんをおんぶして歩いていった。
 二人とも大丈夫かなあ。なんだかちょっと心配。
 わたしの方がずっと年下なのに、お姉さん気分だわ。


「僕らも帰ろうか?」
 トモが言う。
「あー!」
 その時わたしは気がついた。
 わたし、なに着て帰ればいいんだろう?
 浴衣の紐は全滅。帯は、自分で締められない。トモが結べるわけがない。
 つまり浴衣を着て帰れない。
「どうしたの?」
「えっと、浴衣が着れない……」
「ああ、そうか」
 トモはしばらく考えていたけど、
「僕が帰って、なんか服取ってこようか?」
 そう、いつもならそうしてって言うところだけど、今日は、もうなんだか独りになりたくない。
 だって、わたし独りの時ばっかり、なんかあるんだもん。
「う〜んと、トモ、あなたの上着貸して」
 わたしはトモのジャンバーをはぎ取った。それから、
「見ないでね」
 トモに後ろ向かせてから、浴衣と肌襦袢を脱ぎ捨てた。
 その上に、そのままジャンバーを羽織った。ブラもしてない。
 それから、振り返ってお尻を確認する。
 う〜ん。股下5センチっていうところね。
 何とかなるかなあ。ショーツ破られなくて良かった。
 これで、畳んだ浴衣持って隠せば大丈夫かしら。

「トモ、もういいわよ」
 トモが振り返って、その目がわたしの太腿に吸い寄せられる。
 それから、照れたようにそっぽを向いた。
 わたしはトモに近づいて、その手をつかむ。それを、わたしのむき出しの腿に当てた。
 トモがまじまじとわたしの顔を見た。
 え〜と、そんなに見たら、わたしも恥ずかしくなるよ。
「トモ、助けてくれてありがとう。貴方がいなかったらわたしは、今日死んじゃってたかもしれない。本当に、ありがとう」
 わたしはトモの手をさすった。その手は傷だらけだった。
「僕の方こそ……ごめん。もう少し早く見つけていれば、メグをあぶない目に遭わすこともなかったのに。あんな手紙を書いときながら、ダメだね」
「ううん。いいの。あなたは来てくれた。そしてわたしを守ってくれた。だから、ご褒美」
 わたしちょっと背伸びしてトモに抱きついた。
 たぶん、ショーツ丸見え。いいもん。
 それから、キスをする。トモと交わす幾度目かのキス。
 ついこの間ファーストキスだったのにね。それからよくキスしてる?
 でも、いつもドキドキする。わたしの中で、彼を好きな何かが駆け回っている。
 だから、心臓が高鳴るんだ。
 それから、ちょっとだけ、トモの手をお尻に回させてあげる。
 でも、まだダメだからね。それ以上はさわっちゃダメよ。
 わたしは意識の半分で、わたしって意地悪かなっと思いながら、自分の胸のドキドキを数えていた。


 家まで帰るのは結構大丈夫だった。
 もう暗いし、太腿出していても今時そんなに変じゃないよね。
 一応、お尻が見えないように気をつけたけど。
 門のところでトモと別れて、部屋にはいるまでが一番問題だった。
 だって、おかあさんに見つかるわけにはいかないじゃない。いいわけが面倒。
 わたしは、静かに静かに扉を開けて、廊下を歩いた……つもりだった。
 でも、おかあさんが、ひょいと部屋から顔を出した。
 わたしの格好を見て、みるみる眉間にしわが寄る。
「ちょっと、メグちゃん」
 わたしは、自分の部屋に向かって走り出した。
「おかあさんが、心配するようなことは、なんにもなかったから。ほんとだから。信じて」
 と叫びながら。


 
 第六話 秋祭り
 おわり
 
 
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