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    秋祭り (5)
「いや!」
 わたしは、精一杯もがいた。
 その時、目の前に音もなく黒い影が落ちてきた。
 男が躊躇して手を引っ込める。
 影は、コトリと何かを落とした。それは、緑に光る腕輪。わたしがお祭りで買った……。
 影が低く一声鳴いた。
「ふにゃ〜!」
 え? ネコ?
 瞬間、後ろで、バーンと大きな音がした。風が吹き込む。
「メグ、いる?」
 普段通りの声が聞こえる。わたしが聞きたかった声。
「トモ!」
 倒れて振りかえる事もできなかったけど、彼を呼んだ。
 目の前の男が顔を上げている。トモが一転して低い声で言う。
「おまえ、誰? メグに、なにした?」

 駆け出す足音が聞こえる。
 男が一瞬で立ち上がって、わたしから距離をとっていた。
 トモが男をめがけて駆けていく姿が目にはいる。
 トモが体ごと男にぶつかった。
 男はそのやつれた細身の体からは、信じられないことに、トモがぶつかってもビクともしない。
 男に組止められたトモが、逆の体ごと放り投げられた。
 トモの体が、板の上を跳ねる。
 わたしは、びっくりして声も出ない。

 トモは立ち上がると、もう一度走った。
 男の前で急停止して、男のだした腕をかわす。
 それから、お腹めがけて蹴りつけた。
 その足を男が遅れてつかむ。
 全然効いてない?
 トモが足で持ち上げられかけた。
 その時、男の顔にさっきのネコが飛びかかった。
 毛を逆立てて、顔に爪を立てる。
 男がたまらず手を離して、顔に持っていった。
 その隙に、トモが男のおなかに自由になった膝を蹴り込んだ。
 男がちょっとだけ、からだを折った。
 だけど、かまわず顔からネコを引き離し、その腕でトモの腹を殴る。
 トモがうっとお腹を押さえた。
 続けざまに、蹴り上げられた。
 トモが数メートル先まで吹っ飛ばされて、床に仰向けに倒れた。
 倒れたまま動くことも出来ず、うめき声を上げている。

「きゃああああああ! トモ! トモ!」
 ようやっと、初めて声が出た。
 あまりにも、強さが違いすぎる。
 なんで、なんで、効かないのよ。
「トモ、トモ、起きて! お願い!」
 トモの顔をネコがなめている。彼は動かない。
「しょせん、人間。俺のじゃまなどできん」
 そう言うと男は、何事もなかったようにわたしに近づいてくる。
 わたしは、トモを見つめているしかできなかった。
 男の手がわたしの帯に伸びる。
 わたしは片手一本で持ち上げられた。
 足を振って、何とかもがく。
 急に体が何回転もしたように思った。それだけで、浴衣の帯をきれいにとられていた。
 浴衣がはだけ、肌着があらわになる。
 肌襦袢を止めていた紐は、男が難なく引きちぎった。
 そしてわたしは、床に寝かされた。
 浴衣を大きくはだけさせられ、ブラとショーツが丸見えの格好で。
 気が動転して、もうどうしていいのかわからなかった。
 振り回されて自分がどっちを向いているのか、トモが何処に倒れていたのかもわからない。
 
 トモ、何処? 何処にいるの?
 お願い、助けて。
 わたしはここ。

 男がわたしの上にのしかかってくる。
「いや! やめて!」
 必死で体を振って、男を振り払おうとした。
 肩が片手で押さえつけられる。
 すごい力。わたしは体を動かすこともできなくなった。
 涙が、悔し涙があふれてくる。
「いやって言ってるじゃない。やめてよ!」
 わたしの言葉に少しも躊躇無く、男がブラを引きちぎった。
「イヤー! トモー!」
 絶叫した。
 もうダメ。
 涙があふれて頬を流れ落ちる。
 
 
 
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