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    秋祭り (3)
 それからみんなして屋台に戻る。
 わたしとトモで両側から杏ちゃんの手をつないだ。なんだかちょっと恥ずかしい。
 私たちは、ヨーヨー釣りをして、射的でメダルをゲットして、トモが的当てボールをしている間に、杏ちゃんと二人でアクセサリー屋さんをはしごした。
 杏ちゃんに小さいきれいな髪飾りをあげて、それから二人で緑とオレンジに光る腕輪を買ってはめた。杏ちゃんはきらきらした目でその腕輪を見つめていた。
 楽しそうで、良かった。
 トモが戻ってきて、的当てボールでもらった緑のボールを見せてくれた。
 叩くときれいに光った。どうなってるんだろう?
 人が増えてきて、歩きにくくなってきたので、トモが杏ちゃんを背中に背負った。
 こうやってみると、トモも体が大きくなって、やっぱり男の子なんだなと思う。
 それから、飲み物とちょっとした食べ物を買って、私たちはもう一度ベンチに戻った。

「おもしろかった?」
 わたしは杏ちゃんに訊いた。
「うむ。久しぶりに楽しかったぞ」
 明るい声。出会ったときとは全然違う。
「そなた達に、礼をいうぞ」
「どういたしまして」
 杏ちゃんはちょっとわたしの方を見つめ、
「そなたの恋人は、ほんに優しいのう」
「えっ? あの、ちょっと、杏ちゃん」
 わたしは慌てた。トモに聞かれたかも。
 トモの方を見ると、まんざらでもない顔で、にやついてる。
 絶対聞かれた!
 えっと、えっと……でも、いいのか? 告白したもん。ね。
 そう思うとちょっと落ち着いた。
「そろそろ、帰る」
 杏ちゃんがそう告げる。
 送っていったげようかというトモの言葉を、近くだからと断って、彼女は参道を通らずに別の道に向かった。
「あなたもうまくいくように頑張ってね」
 わたしの言葉に、杏ちゃんは軽く微笑んで、帰っていった。
 トモにはなんのことかわからなかっただろうけど。


 それから、私たちはもう一回りしてから帰ることにした。
 その前にトモがお手洗いに立って、わたしはベンチに残った。
 右手の薬指には今日買ったビーズの指輪。それから腕輪が緑に光っている。
 浴衣の裾を直しながら、わたしは何となくぼんやりとしていた。
 参道を流れる人の喧噪から離れて、近くで虫の鳴き声が聞こえる。
 頬を流れる緩やかな風が気持ちいい。


 考えるともなしに人の流れを見ていたわたしの隣に、突然、誰かが座った。
 わたしはまだぼんやりとしながら振り返った。
 そこに、年かさの青年がいた。ひどく疲れたような表情をしている。
 その彼が、なぜかわたしの顔を見つめていた。
 わたしは、あれ? と思ったあと、急に意識がはっきりした。
「わたしに、何か用でしょうか?」
 青年は少しおどおどした態度でいう。
「今、小さな女の子と一緒じゃなかったか?」
 あれ? 杏ちゃんの知り合い?
「えっと、一緒でしたけど……お知り合いですか?」
「う、うん、まあ」
 なんだかおかしい。変な感じ。
「それで、わたしに何か?」
「あ〜、なんだ。その子……なに話してた?」
 やっぱりおかしい。
 もしかして、ストーカー? ロリコンの?
「なにって、別に。一緒にお祭りまわっただけですよ」
 男の表情がちょっと曇る。
「なんか言ってただろう。教えてくれ」
「わかりません。知り合いなら、直接訊けばいいんじゃないですか?」
「なんか言ったはずなんだ、そうじゃなきゃ、あんな楽しそうな顔するはずが……」
 男の表情が急に厳しくなって、わたしの方に近づいた。
 わたしは、危険を感じ立ち上がろうとした。いきなり、腕をつかまれた。
「やめてください!」
 立ち上がれない。
 手を振りほどこうとしてもがく。でも、がっちりつかまれた腕は全然ぬけない。
 かわりに緑の腕輪が抜け落ちた。
 わたしはトモに知らせようとして、口を開いた。
 その時、一瞬で天地が回ったようだった。
 わたしは声を上げることも出来ず、意識を失った。
 
 
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