第六話〜秋祭りに一緒に出かけたトモとメグ。
その夜ふたりは、浴衣姿のかわいい女の子に出逢った。
でもって、メグちゃん危うし?!
第六話 秋祭り (1)
今日はお祭り。秋祭り。
夕方から神社の境内にいっぱい夜店がでる。
わたしはおかあさんに浴衣を着せてもらった。
浴衣の柄は、ちょっと薄目の藍色に秋の草花があしらってある。密かにお気に入り。
でもまだ、一人で帯が結べない。だって、着物なんて、年に1回着るか着ないかだもの。
それに、帯が苦しいし、歩くのだって裾が引っかかって、歩きにくいんだぞ。
それでも、まあ今日は着物で行こうかな。
い、いちおう、トモと一緒だし。久しぶりに二人で出かけるし……。
え、えっと、報告。
ラブレター騒動(騒動と思ってるのはわたしだけ?)から、もうすぐ一月。
この間、特に進展なし(なんの?)。
以上、終わり。……ダメ?
でもね、派手に告白したわりには、二人ともいつもと変わらない。
今更というか、どう変われというのかって感じ。
まあ、16年の腐れ縁だからね。こんなもんでしょ。
それでも、今回はめずらしく、トモがお祭りに誘ってくれた。
だから、まあ一つ、浴衣でも着ていこうかなあ。
なんて……。
「メグちゃん、なにしてるの? トモ君来たわよ」
わっと。
おかあさんが下の階からわたしを呼ぶ。
わたしは、急いで階段を下りた。
トモは、まあ、いつもの格好ね。
私たちは、もう暗い夜道をゆっくり歩いた。
そういえば、歩くとき、えっと、て、手を繋ぐようになったのが、今までと変わった所かな?
私たちの町の秋祭りは、比較的大きなお祭り。
夏のお祭りよりも人出が多い。
神社の境内いっぱいに屋台がでる。
秋祭りだから、収穫を祝うお祭りだけど、別名『龍神祭り』ともいう。
神社の裏手に大きな池があって、そこが龍神池って言うから。
それに、言い伝えもある。
ずっと、ずっと昔、この池に龍が住んでいたって言うの。
龍は青年の姿で村に現れ、村娘が恋をした。
でも、その恋を許されなかった娘は、この池に身を投げたそう。
その娘を龍の青年は助けたのかしら? それは伝わってないのだけど。
きっと助けたわよね。そうじゃなきゃ、かわいそう。
もしそうじゃなかったら、わたしだったら、ひっぱたいてるわね。
神社の参道はかなり長い。200メートル位あるんじゃないかしら。
私たちが着いたときには、その両側に屋台がびっしりと並び、まだ数は少ないものの、華やかな浴衣を着た女性も、そこかしこに見えた。
私たちは、どんな屋台がでているのかを見定めながら、参道を歩いた。
金魚すくいやヨーヨー釣り、射的や輪投げなどのゲームから、くじ引き、アクセサリー、おもちゃの屋台。
もちろん、たこ焼き、お好み焼きに、じゃがバターや、焼きそばなんかの食べ物屋台も多い。
時期的に、かき氷なんかはないわね。
長い参道の両側を見ながらとりあえず、通りすぎた。
あっ、途中で一度だけ、指輪を買ったけどね。
カラフルなビーズで出来た、細工物の指輪。
100円の安物だけど、妙に気になって立ち止まって眺めてしまった。
そしたら、トモが買ってくれた。
なんだか、嘘! って思ってしまう。
トモがなんかくれたことなんてあったかなあ? ちょっと不思議な感じ。
わたしは、それを右手の薬指にはめた。
「へっへー、かわいい?」
わたしが右手の甲をみせて訊くと、
「あー、うん」
トモはぶっきらぼうに答えた。
なんでそこで照れるかなあ、トモは。ほんとに、もう。
200メートルの参道を歩くのに、なんやかんだで、30分以上かかった。
その先の神社の境内には提灯が掲げられ、数は少なくなるけど屋台もあった。
参道と境内の間に、少しひっそりとした空間があって、休憩用のベンチがいくつかあった。
私たちはまず、なんか食べることにして、さっき見てきた屋台からどれがいいか話し合った。
トモは屋台の定番、焼きそばがいいといった。わたしは、たこ焼きがいいかな。
だんだん人が多くなってきていたので、わたしがベンチで待って場所を確保して、トモが買ってきてくれることになった。
トモが人の多くなった雑踏の中に消えていった。
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