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    失われた宝玉 (10)エピローグ
 その日、学校を休んだトモは、翌日にはもう登校していた。
 わたしは、トモが回復したことを確認して、彼に犯人逮捕の計画をうち明けた。
 彼はわかっていたようにうなずいた。
 お父さんから聞いたのかな?
 計画っていっても、ただ、いつものように探すだけだけど。
 犯人は、もうずっと遠くに逃げているかもしれない。
 でも、探す。探し出す。
 わたしはそう決心していた。

 トモの部屋で、いつものようにカプセルを飲む。
 とたんに五感がとぎすまされていく。あらゆる音が、匂いが、わたしを取り巻く。
 その中から、あの男を捜す。
 あの男の足音、話し声、かすかな匂い。
 どこにいたって見逃さないんだから。
 わたしは集中した。今までしたことがないくらい。
 近くにはいない。
 もっと遠く。もっと広く。犯人の痕跡を探し求める。
 どこにいるんだろう? どこに行ったんだろう?
 ほとんど限界と思えるまで集中したその先に、一つの足音を聞いた。
 あの男の足音だ! 絶対間違いない。
 そこはどこ? どこにいる?
 わたしは近くで同時に聞こえてくる音を探した。
 あれは、電車? 電車なら、アナウンスは?
 なに? なんていった?
 ひがさき? ひがさきって言った?
 男の足音が遠ざかっていく。電車から遠ざかる。
 降りたんだ。駅を出たんだ。
 そこ。そこにいる!

 わたしは、トモに叫んだ。
「トモ! ひがさき! ひがさきっていう駅で降りた。そこにいる!」
 トモが、パソコンで駅を調べだした。
 それから、わお! と声をあげて、わたしに言う。
「メグ。100キロ以上離れてるよ。でも、見つけた。後の正確な位置は、彼に任せるよ」
 一羽のカラスが、彼の部屋の窓の外にとまっている。
 わたしはちょっと疲れて、トモのベッドに転がった。
 集中しすぎて頭がぼーっとしている。
 トモがカラスの鳴き真似をするのが聞こえる。
 あっと、真似じゃなかったかしら?
 窓のカラスが一声答えると、瞬く間に飛び去っていった。
 わたしは疲れてそのまま寝てしまった。


 そして、犯人は捕まった。
 彼は10年前の神官殺しの犯人として、ニュースで報道された。容疑を認めているという。
 わたしとトモのことは報道されなかった。
 おじさん達がどういう通報をしたのかわたしは知らない。
 だから、私たちの日常は今までとそれほど変わらなかった。
 少しだけ、トモは学校でもわたしのそばにいることが多くなった。
 だから、私たちは自然“付き合ってる”っていうふうに認識されるようになった。
 親しい友達の中には、
「永かったねえ。良かったねえ」
 といってくれる人もいた。
 でも、わたしにとっては、今までとそんなに変わったとは思っていなかった。
 いつも一緒にいることを、隠さなくなっただけよね。
 あとは、学校の行き帰りにネコたちだけじゃなく、くちばしの細いカラス達にも声をかけられるようになったことが変化かな。
 わたしも手を振って応えている。


 そうやって、家に帰ってきた今日。
 ご飯を食べた後、おかあさんがわたしの部屋をノックした。
 入ってきたおかあさんは、床に座ると、わたしにも座るように言う。
 なんだろう? なんかあったかな?
 おかあさんは、わたしの膝の手を取って、わたしをまっすぐ見て話し出した。
「メグちゃん。ちょっと大切な話があります」
 え? え? 
 なに? あらたまって?
 ひょっとして悪い話? 心の準備した方がいい?
「いいえ。決して悪い話じゃないけれど、心の準備は必要かな。だから、心して聞いて」
 えっと、なんなんでしょう? その話って?
「メグちゃん。この間トモくんが刺されたとき、その傷すぐふさがってたでしょう」
 そう、それは少し不思議に思っていた。でも、あれもトモの体質なんじゃないかと思う。
「いいえ。そうじゃないのよ。だから、これから言うことをよく聞いてね」

 それからおかあさんが話したことを、なんていったらいいだろう。
 わたしは、驚いて、信じられなくて、でも納得して、そして感謝した。
 だけど、そんなすぐには慣れないから、この事はわたしがもっと当たり前のこととして慣れたら話そう。
 それは、トモに話すときかもしれないけど。
 それまで、待ってて。
 
 
 
 第四話 失われた宝玉
 おわり 
 
 
 
 第四話『失われた宝玉』どうだったでしょうか?
 
 トモとメグの距離もぐっと近づいたかな。

 次回から、第五話

 『ラブレター』

 です。
 
 よろしく。
 
 
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