失われた宝玉 (8)
トモをずっと抱きしめていた。
彼の刺されたおなかを手で押さえ続けた。
血は、どうやら止まったようだった。でも、体の下に血だまりが出来ている。
トモの顔が蒼白だ。
早く病院につれて行かなきゃ。
おかあさん、早く来て。早く来て。
そう念じているわたしを呼ぶ声が聞こえた。
「おかあさーん! こっち! こっち!」
わたしは精一杯の声を出す。でも声がかすれて、大きく出ない。
それでも、おかあさんは、私たちを見つけてくれた。走ってきてくれる。
「メグ。トモくんの具合は?」
血だらけのお腹とわたしの手を見ながらお母さんが訊く。
「血は、血は止まったの。でも、いっぱい出たから。トモ、苦しそうなの」
おかあさんが、おなかに当てているわたしの手をどけようとする。
わたしは怖くて抵抗した。
「メグ。手をどけて、傷を見せて」
恐る恐る手を離す。
おかあさんが、トモのシャツをまくり上げて、傷を確かめる。
お腹はどす黒く染まっていた。
その真ん中に、傷が……スーと筋だけを残し、くっついていた。
ちょうど治りかけの手術跡みたいだった。
……良かった。これで血が止まったのね。
わたしはそう思って少し安堵した。
おかあさんが、その傷と、トモの体の下の血だまりとを見比べている。
それから、わたしの顔を見て、真剣な表情で言った。
「メグちゃん。あなた……。いいえ、トモくんを車まで運ぶわよ」
「うん」
私たちはトモを両側から支えて、車までどうにか引きずっていった。
わたしがトモと一緒に後ろの席に乗り込む。
おかあさんに見られていることはわかっていたけど、わたしはトモを抱きしめていた。
トモの体がとても冷たかったからだ。
車の中で、一言も話せなかった。おかあさんも何も訊かなかった。
わたしは病院に行くんだと思っていたけど、着いたのはわたしの家の隣、トモの家だった。
そこに、トモの両親が待っていた。トモのお父さんがいる。
ああ、そうだ。
おじさんはお医者さんだった。
おじさんはトモを車から降ろすのを手伝ってくれた。
それから、お腹の傷をちょっと見て、彼を担いで、彼の部屋でなく、座敷の方につれていった。
そこに布団が敷かれていて、トモは横たえられた。すぐに、おじさんが点滴の用意をする。
わたしは、トモのそばを離れたくなかったけど、促されて、手を洗うために洗面所に向かった。
血はなかなかとれなかった。お湯を出してきれいにした。
戻ってきたら、いつの間にかおかあさんがわたしの服を持ってきてくれていた。
わたしは血の付いた服を脱いでそれに着替えた。
それから、トモのおかあさんと、わたしのおかあさんの前で、事情を訊かれた。
おじさんはまだトモを見てるんだろうか?
わたしは、少しずつ話した。
人に頼まれて、ダムで宝探しをしたこと。
それを見つけることが出来たこと。(その方法は言わなかった)
頼んだ人が突然現れたこと。
その人が急におかしくなり、私たちに斬りかかってきたこと。
その人が言った話。10年前に神主を殺したという話。
それらを話し終えて、わたしは、またおえつを漏らした。
涙が止まらなかった。
トモが刺されたことが悲しかった。
その時、わたしは暖かな腕に抱かれた。
顔をあげるとトモのおかあさんが、わたしをやさしく抱いてくれていた。
「メグちゃん。ありがとうね。本当に、ありがとう。メグちゃんにトモを助けてもらうのは、これで何度目かしらね」
わたしは、訳も分からず聞いていた。
わたし、トモを助けた事なんて無い。
トモに助けられたことは何度もあるけど……今日だって……
「ううん。メグちゃん。あなたが助けてくれたのよ」
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