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    失われた宝玉 (7)
 私たちは宝玉を拾ってダムに向かって帰っていった。

 わたしはまだ夢見心地だった。
 初めて人間以外のものと話した。それが、カラスなんて。
 でも、あのカラスたち、とっても頭が良さそうだった。
 そうよね。人じゃなくても偉いものは偉いんだわ。
 ちょっとカルチャーショックだ。
 トモは、慣れているのか何も言わない。
 ネコたちとも、こんな会話してるのかな? ネコの長老もいるのかしら?
 わたしはちょっと嬉しくなってきた。

 それにしても……よくわかんないことも言われたな。
 トモの家は、ご先祖様が薬師らしいのは分かる。
 でも王の薬師って何かしら?
 王って王様? 日本の王? 天皇かしら? それとも……?
 それに、わたしのこと、天の姫御前て?
 「あまのめぐみ」て言ったのに、よく聞こえなかったのかなあ?
 そうね。ちょっと耳が遠そうだったもんね。

 
 そんな風に考えながら、トモと二人ダムの遊歩道を歩いていると、向こうから男の人が小走りしてくるのが見える。
 驚いた。
 枝村さんだった。
 彼は走ってきて、私たちの前で止まった。
 肩で息をしている。それから勢い込んで訊いた。
「宝は、宝は見つかったかね?」
「ええ」
 トモが手の中の玉を見せた。
 彼はひったくるようにして、その玉を捕った。
 そして、顔の前でかざし、うっとりして玉を眺めている。
「でも、どうしたんですか? 今日も自分で探しに来られたんですか?」
 わたしは何となく不審に思って訊いた。
 彼がうわの空で答える。
「ああ、そうだよ。それにしても見つかって、良かった。これは、わたしの宝だからね……わたしの……」
 あれ?
 それって、先祖の形見じゃなかったっけ? わたしの宝?
 彼はふっとうつむき、私たちに背を向けた。
 それから……振り返って突然斬りつけてきた。
「うわあ!」
 トモがわたしをかばって、後ろに下がった。
 わたしは押されて倒れそうになる。
「何するんですか!」
 わたしは叫んだ。男の目が尋常じゃない。
「これはな、この宝はな、わたしのものだ。それを、あの時、あの神主のやつが、取りやがったから……わたしはやつを殺したんだ」
 なに?
 なに言ってるのこの人? どういうこと?
「やつは、最後まで隠し場所をいわなかった。だから、わたしはずっとこの機会を待っていたんだ」
 男が私たちの方をキッと見た。
「だから、これはもう誰にも渡さない。おまえ達にも渡さない。おまえ達が盗みにこれないようにしてやる。今、ここで……」
 やだ。おかしい。
 この人狂ってる。
 私たち関係ないじゃん。親切で見つけてあげただけなのに……。
 男がじりじりと近づいてくる。手にナイフが握られていた。

 トモがわたしを振り返って、叫んだ。
「メグ、逃げろ!」
 その時、男が飛び込むのが見えた。
 わたしは恐怖で固まった。
 トモがわたしの前に出る。
 そのおなかにナイフが刺さるのがはっきり見えた。
 トモが崩れ落ちる。
 頭の中が真っ白になる。
 それから、悲鳴が口から漏れ出た。

「きゃあああああああっ!」
 
 
 
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