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    失われた宝玉 (5)
 そして、今日。私たちは出かけた。
 バスに揺られて1時間。ダムは前に来たときと同じように、水を落とされている。
 私たちはでも、ダムの下には向かわなかった。
 ダムの上の遊歩道を通りぬけ、その向こうに見える山道を入っていく。
 この前来たとき、たしかこっちの方にカラスたちは飛んでいった。
 しばらく歩くと、ダムを眼下に見下ろすようになる。
 それから道はダムを離れ、鬱蒼とした森に入っていった。
 しばらく行くと少し広い場所に出る。
 周りを高い木が取り囲んでいた。

 トモが立ち止まって木の上を見上げる。
 わたしも見上げると、遠くにポツリポツリと黒い影が見えた。
 あれかな?
 トモが黒いカプセルを出して、わたしにも一つくれる。
 トモが先に飲んだ。
 それから、大きな声で、「カアー」と鳴いた。
 わたしも飲み込む。
 ちょっとのどの辺りがいがらっぽい。
 トモがあげている鳴き声の意味が分かった。
「どなたか、カラスのおさはいらっしゃいませんか? ここのカラスのみなさんを束ねている方は?」
 上の方から言葉がかかる。
「おまえ、なにもんだい? こんなとこになにしに来た?」
「俺たちの長老になんの用だ?」
 トモが答える。
「探し物があって来ました」
「探し物?」
「なんだ?」
「どれだ?」
「あなた達の長老様に伝えてもらえますか?」
「伝えたらどうなる?」
「どうなる?」
「ちゃんとお礼もします」
 トモがそういうと、方々で声があがる。
「お礼?」
「お礼だって」
「長老は?」
「呼んでこい」
「何処にいる?」
「呼んでこい」
 何羽ものカラスが飛び上がり、どこかに消えていった。

 わたしはその様子を呆気にとられて見ていた。
 へえ……普通に会話するんだ。へえ……
 トモがわたしの方を見てにっこり笑った。
 たしかにこれは楽しいかも。人以外と話せるなんて……


 ばさばさと音がして、3羽のカラスが広場に降りてきた。
 真ん中の一羽は大きくて威厳があった。
 3羽の後ろにさらに数羽が降りてくる。そのうち一羽が口を開いた。
「そも、何者であるか?」
 トモはちょっと困って、
「えっと……ただの人間。高校生だけど……」
 トモ、それでわかるわけ?
「なにゆえ、人間が我らの言葉を話す?」
「ちょっと、説明が難しいんだけど……そういう薬があって……」
 そういうと、一番真ん中にいたカラスが、ちょっと顔を上げた。……ように思う。自信ないけど……
 でも、そのカラスが口を開いた。
「そなた、その薬、いかに手にいれた?」
「自分で、つくったんです」
 そのカラスが羽を広げる。
 大きい。2メートル近いんじゃないかしら?
 それから羽を納め、また訊く。
「そなた、名は?」
「御薬師友之」
「なんと、御薬師と……」
 彼は再び羽をはためかした。
「そなた、王の薬師くすしであったか。……王、亡かりし今、王の薬師も、もはや絶えたと思っておったが……」
 
 
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